特別企画

対決の刻、来る。「HGUC 1/144 ナイチンゲール」VS「RG 1/144 Hi-νガンダム」

小説で紡がれたアムロとシャアの最後の戦いをガンプラで実現!

「RG 1/144 Hi-νガンダム」(左)と「HGUC 1/144 ナイチンゲール」(右)
【RG 1/144 Hi-νガンダム】

発売日:2021年9月11日(11月・2022年1月再販予定)

価格:4,950円(税10%込)

サイズ:全高約155mm

【HGUC 1/144 ナイチンゲール】

発売日:2021年7月22日(9月・12月再販予定)

価格:7,700円(税込)

サイズ:全高約211mm

 先日お届けさせていただいた、「HGUC 1/144 ナイチンゲール」と「RG 1/144 Hi-νガンダム」のレビューいかがだったでしょうか。双方たくさん読んでいただけたようで筆者もほっと胸をなでおろしています。どちらも1/144スケールにもかかわらず、ナイチンゲールはその巨大な機体を設定どおりにガンプラに落とし込んでいるのとHi-νガンダムはRGシリーズならではのハイディテールと超絶可動をそのサイズに押し込んでいる意欲作でした。

 筆者も作りながらそれぞれの設計思想の違いや機体を表現するための構造などを見ることができて新鮮な思いで組み立てていくことができました。どちらにも言えることが一つありまして、「作りやすい」という一言に尽きると思ったのも面白かったです。ガンプラは“複雑”・“難しそう”といった印象を面白いくらいに無視してくれている造りでした。レビューを読んでいただいて“なんだ簡単だね”と思っていただければ幸いです。最初はパーツ数に圧倒されるかもしれませんが、気が向いたときに進めるだけでいつしか完成していると思いますので、ぜひチャレンジしていただければと思います。

【簡単組み立てでこのクオリティ】
「RG 1/144 Hi-νガンダム」。前回のレビューから引き続きBANDAI SPIRITSより発売前のサンプル品をお借りして使用しております。サンプル品のため実際の製品版とは異なる可能性がございます
「HGUC 1/144 ナイチンゲール」。こちらはレビュー用に製作した一般流通品です
動かしたらもっと感動します!

 今回は同じガンダム作品の2機が待望の同スケールで揃いましたのでブンドド企画をお届けしたいと思います。原作となる小説版「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」は映像化されていない作品です。改めて小説を読み返し、復刻されたドラマCDを聴きながらアムロとシャアの最後の戦いを妄想しつつ、ガシガシ動かしてみました。なお、本稿には「機動戦士ガンダム」から「逆襲のシャア」に至るシリーズ作品の一部ネタバレを含みますがご了承ください。

 タイミングがよいというか、先日復刻版ドラマCD「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」が届きました、これは32年前……つまりはカセットテープ時代に発売された音源をCD化したというものです。筆者も当時聴いたかどうかさえ覚えていませんでしたので、こちらが届くのも楽しみにしていました。富野由悠季監督著の小説は発刊当時読んだ記憶があるものの、32年の刻の流れの中、ディテールはぼやけてしまっているということもあって今回の企画のためにCDと小説、ブルーレイでも復習してみました。

【復刻されたドラマCD】
映画の主要キャストが声をあてた「ベルトーチカ・チルドレン」が聴ける!

 「ベルトーチカ・チルドレン」では一部キャラクターの名前が違います。例えば「ナナイ・ミゲル」は「メスタ・メスア」、「ギュネイ・ガス」は「グラーブ・ガス」といった具合です。アムロの恋人「チェーン・アギ」は「ベルトーチカ・イルマ」になっています。νガンダム(小説内では“Hi-ν”との記載なし)はアムロが基礎設計はするものの、月へ催促しに行くのではなくベルトーチカ自らの操縦でラー・カイラムへ運んできたり、サイコ・フレームはネオ・ジオンからアナハイムへの提供ではなくシャアが“わざと”放棄してアムロに鹵獲させたグラーブのサイコ・ドーガ(映画ではヤクト・ドーガ)から移植してしまったりとだいぶ状況が異なります。

 小説に登場するνガンダムとナイチンゲールですが、前述のとおり“Hi-ν”との表記はありませんし、描写を見る限りナイチンゲールではなく“サザビー”をイメージして書かれているようにも思えます。Hi-νとナイチンゲールは小説内の「GUNDAM MOBILE SUIT DATA BASE」というコーナーにたった1枚ずつ掲載されているイラストがあるだけなのですが、32年の積み重ねで様々な媒体で取り上げられ、いつしか小説版νガンダムはイラストを基に“Hi-νガンダム”とし、ナイチンゲールはそのイラストのデザインのものだということで定着してきました。諸説あります。

 アムロがニュー(新)ガンダムを開発中だということを知ったシャア。フィフス・ルナ降下作戦において、どうしても決着をつけたい宿敵アムロがリ・ガズィという非力なモビルスーツに乗って表れたことに落胆します。

 シャアは、一年戦争ではジオン公国軍に所属し、地球連邦軍のアムロとは敵対し負け越しました。続くグリプス戦役(機動戦士Zガンダム)では、シャアは地球連邦軍の腐敗を正す側に回ります。その最中でアムロの所在といまだふさぎ込んでいる彼の状況を確認し、自らの存在とカミーユ達若者の奮戦ぶりを伝えることで奮起させ、共に戦うことになります。

 そしてハマーン・カーン率いるアクシズのネオ・ジオン軍が負けた第一次ネオ・ジオン抗争(機動戦士ガンダムZZ)後、シャアはタイミングを見計らって計画していた“アクシズ落とし作戦”を敢行します。その大命題は「地球に居続ける人々を粛正する」として「すべての人類は地球外で暮らし、地球の再生を待つ」と掲げているのですが、シャアにとってそれはついでの作戦でした。宿命のライバル・アムロと同一の条件でないと“戦って(勝って)も意味はない”という思いが一番先にあったのです。そう、ララァを殺し自分を負かしたアムロに仕返しをするためです。

 と、まぁ大筋は映画版と同じなのですが細かく違う部分もあり、大きなトピックとしてはアムロとベルトーチカに子供ができていることがこの小説版の醍醐味です。この子供の存在が物語の明暗を分けることになるのですが気になる方は一読することをお勧めします。あとがきを読むと監督は本来この小説(というか初期プロット)の構成で映像化したかったということですが紆余曲折を経て現在の形になったとのこと。映画公開時は不可能だったでしょうが、40周年を超えたガンダムならば小説版準拠の映像化も可能性はあるはずです!いずれこの目で観れる日が来ることを祈っています。

小説を読み、情景を思い浮かべ、ガンプラで表現してみる!

 ガンプラってパーツが並べられたランナーから切り出して組み立てることでカッコイイモビルスーツをその手にすることができる、ガンダムグッズの中でも根幹をなす最大のプロダクトでもあります。単に組み立てるだけでも楽しいのはもちろんなんですが、40周年を超えたガンプラの技術進歩はめざましく直立で飾ってるだけでも映えますし、技術進歩で培われた可動性能はアニメのイメージ通りのポージングをも可能にしてくれます。

 そこで、小説と復刻CDを復習したうえで脳裏に浮かんだ情景を今回の2機「HG 1/144 ナイチンゲール」と「RG 1/144 Hi-νガンダム」で表現してみたいと思います。サイコ・ドーガやギラ・ドーガ、アルパ・アジール、リ・ガズィ、ジェガンもありませんので映画の映像や絵コンテ、みなさんの想像とは全く違うものになっています。他に合成も行いましたのでガンプラだけではできない画像になっていますがそこはご了承くださいませ。

 以下、テキストは富野由悠季氏の書籍「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア―ベルトーチカ・チルドレン」(角川スニーカー文庫)より引用および一部再編しました。

フィフス・ルナ地球降下成功。アクシズを手に入れたシャアはアムロを待つ!

シャア:「やることはやった。あとは、天に任せる……ナイチンゲール、出るぞ」

アムロ:「Hi-νガンダム行きます!」

 アムロは多数の敵機に囲まれ、反射的にフィン・ファンネルをピラミッド・バリアとして使用、その強大なエネルギー量はHi-νガンダムを守るだけで手いっぱいだった。フィン・ファンネルは沈黙した。

アムロ:「……ブライト!核ミサイル!」

シャア:「あれかっ!……やるな、ブライト!」

 ナイチンゲールはファンネルを一発残した状態でロンド・ベルの核ミサイル攻撃をはねのけた。射出したファンネルはその爆発の中で蒸発した。この時点で両機とも使い果たしてデッドウェイトとなっていたプロペラント・タンクは切り離している。

 互いの意識をサイコミュ・システムが感知しあったのか、サイコ・フレームが呼び寄せたのか、ライバルの二人は間を置かずして会敵を果たした。ビーム・ライフルでけん制しあう両機はその間合いを詰めていくのだった。

シャア:「アムロ!来たかっ!しかし、もう遅いなっ!」

アムロ:「……!? 貴様を倒せれば、アクシズは、止められる!」

 壮絶なビーム・ライフルの応酬の中、アムロはアクシズの核ノズルにとりついていた。そして一基の核ノズルを停止させることに成功、二基目にかかろうとしていたが……。

アムロ:「……エネルギー切れ!? もう少しだってのにっ!」

シャア:「もうアクシズは、地球の引力に引かれて落下している!」

 史上まれにみる長時間の戦闘はお互いエネルギーを消耗し、ビーム・サーベルでの戦いに移行していた。

アムロ:「くっ!ビーム・サーベルがっ!? 」

シャア:「そこまでかっ!? やる!」

アムロはHi-νガンダムをアクシズに降下させ、内部からアクシズを破壊しようとしていた。ナイチンゲールのシャアがそれを阻止せんと後に続くがアムロはそれを察知していた。

アムロ:「革命はいつもインテリが始めるよな!? しかし観念的な理想論だけだからいつも過激なことしかやらない……理想は高いが官僚と大衆に飲み込まれて世間から逃げ出すだけだ。それがあなただよ、シャア!」

シャア:「アムロッ!」

 すでにブライトのプチ・モビ部隊が爆薬のセットを完了していた。それを知ったアムロはHi-νガンダムへと戻った。同時にシャアもナイチンゲールへ到達していた。

アムロ:「ナイチンゲールッ!ここまでだな!シャアっ!」

シャア:「クッ!何いっ!」

 ガンダムは、逆転したのだ。グワッ!ガンダムの左指がナイチンゲールの頭部の装甲をひっかけて、剥がした。さらにHi-νガンダムは渾身の力を込めて左パンチを繰り出し、ナイチンゲールをアクシズに叩き落とした。

アムロ:「逃がすかっ!」

シャア:「そうかな?」

アムロ:「舐めるなと言ったっ!お前一人を行かすかよっ!」

シャア:「アウッ!アムロ、やってくれたっ!? しかし、このままではアクシズの半分は地球に落ちる!私の勝ちだ、アムロ!」

アムロ:「させるかって言ってるっ!」

シャア:「アムロッ!何をするのだっ!」

アムロ:「なんでもやるんだよ!それが宇宙を汚した我々の仕事だっ!貴様の力を吸い取ってでも、アクシズを阻止するっ!」

シャア:「や、やれるものかっ!」

 Hi-νガンダムはナイチンゲールのコクピット・カプセルと共に全推力を出し切ってアクシズを押し返そうとしている。それに気付いた地球連邦、ネオ・ジオン両軍のモビルスーツ達も加勢に来た。しかし、大気との摩擦熱とシステムのオーバーロードで爆装する機体もある。

シャア:「アムロが、他のモビルスーツを排除しているのか……!? 」

アムロ:「余分な命は、いらないんだ!俺とシャアだけでっ!しかしアクシズの進路は、まだ変わらないっ!」

 サイコ・フレームを通して地球やその周辺で生きている者たちの意思がHi-νガンダムに集まってきてガンダムは白く発光していた。

アムロ:「あぁ……な、なんだ!? ぼくは、世界を見ているのか……パパ……って!ベルトーチカ!」

シャア:「自分のことだけで、わたしは精いっぱいだったのか?そうでは、あるまい?そうでは……」

シャア:「……しかし、アルテイシア、この結果は、地球に住んでいるアルテイシアには、よかったのだな……」

 オーバーロード・ウェーブで無線がブラックアウトする中、アクシズの後部はその白い光に包まれて徐々にその軌道を変え始めていた。まるで太陽に落ちるように宇宙を走った。そして、アムロとシャアは閃光の中に消えていった……

 もう……ナイチンゲールのさえずりは、聞こえなかった。

「HG 1/144 ナイチンゲール」と「RG 1/144 Hi-νガンダム」の2つを組んで撮影してみて

 いやもう、夢中で作って夢中で撮影している自分がいました。ガンプラ2つを連続で造り、そのレビューだけではなくこういったシーンの撮影を行うために小説を読み返したり復刻ドラマCDを聴きこんでみたり、もちろんブルーレイも見返したりもしました。「ベルトーチカ・チルドレン」を通して「逆シャア」を再認識できる体験はとてもよかったと思います。

 今回、この撮影のためにどちらもいつもにないくらいガシガシ動かしてみましたがまったく関節がへたらなかったこともお伝えしておきたいと思います。いまだ映像化がかなわない「ベルトーチカ・チルドレン」ですがガンプラであればその世界観を再現することも可能ですね。どちらのガンプラも出来が良すぎますのでぜひ手に取って組んでみていただきたいと思います。

【Hi-νガンダム VS ナイチンゲール】
とてもよく動くこの2機!ビンタシーンもばっちり再現できます

 もっと時間があればアクシズ表面のジオラマを作ってご覧いただきたいとも考えたのですが……それはまたチャンスがあればやってみたいと思います。チャンスや可能性という意味ではナイチンゲールがキット化できるのですからいつの日か「HGUC 1/144 アルパ・アジール」なんかも見てみたいと思ってしまいましたがみなさんはいかがでしょう?そして今回の特別企画はいかがだったでしょうか。楽しんでいただけましたら幸いです。