特別企画
ヘタ仙人の「プラモデルを楽しもう!」、横山宏氏のSF世界を満喫できる「ドーヤネン シュトゥルムケーファー」
2021年11月11日 00:00
- 【ドーヤネン No.001 シュトゥルムケーファー】
- 開発・発売元:海洋堂
- 発売日:11月17日
- 価格:6,600円(税込)
- オンラインショップで販売中
こんにちは。ヘタ仙人です。今回は海洋堂から発売された1/35スケールのキット「ドーヤネン No.001 シュトゥルムケーファー」をご紹介したいと思います。
このシュトゥルムケーファーは、イラストレーターでありモデラーでもある横山宏氏によるSF作品『Ma.K.(マシーネンクリーガー)』に登場するメカです。Ma.K.とはなんぞや? という話はこの後たっぷり語るとして、今回の「ドーヤネン No.001 シュトゥルムケーファー」は海洋堂の初の本格プラモデルキットというところも注目です。
『Ma.K.』のメカの魅力、1/35というスケールでの表現、そしてプラモデルとしての組み立てやすさ、完成品のカッコ良さ。独特の世界観を持つこのメカが、どんなプラモデルになったかを語っていきたいと思います。
横山宏氏によるデザインや世界観が素晴らしい『Ma.K.』
Ma.K.とはなんぞや? という方にご説明しますと、遡ること1982年4月発売の月刊ホビージャパンに掲載された『SF-3Dオリジナル』というページを皮切りに連載開始、その後月刊モデルグラフィックスでも展開され、多くのファンを獲得してきた人気シリーズです。
その変遷については『Ma.K.in SF3D ARCHIVE 2010.3-2011.2 vol.1』(ホビージャパン刊)の冒頭に詳しく書かれていますが、1980年代のホビージャパン連載当時から「SF3D」としてキット化が行なわれ、現在では「Ma.K.(マシーネンクリーガー)」というシリーズ名で多様なプラモデルが発売されている、多くのモデラーを魅了してやまない作品なのです。
ストーリーは、29世紀の地球を舞台に、「シュトラール共和国」と「地球独立・傭兵軍」による戦いを描いています。今回のシュトゥルムケーファーは、シュトラール側の兵器であり、そのコクピットの形状にシュトラール軍的な意匠が認められます。
さて、Ma.K.の特徴ですが、横山宏氏によるデザインやミリタリーテイストあふれる世界観が素晴らしい点、さらに模型発の企画であるため、模型遊びが無限にできてしまう、つまりは作り手側の自由度が高い点、そして関わるモデラーが、横山宏氏ご本人はもちろん、MAX渡辺氏をはじめとしたレジェンドな人々であり、つまりは楽しい作例がこれでもかと飛び出してくるシリーズである点など、「デザインが魅力的で作って楽しい、さらにシーンが盛り上がって継続している」ということになると思います。
その輝きは今でも、ウェーブやハセガワといったメーカーから製品がリリースされるなど、続いているというわけです。そして、そこに海洋堂が新しいMa.K.のシリーズとして投入したのが、今回の「ドーヤネン No.001 シュトゥルムケーファー」になります。海洋堂によるMa.K.のキットは、1/35スケールのカプセルキット「ガチャーネン」がありましたが、ここに本格プラモデルとして「ドーヤネン」シリーズが展開されるというわけです。
Ma.K.は1/20スケールからスタートしたので、その大きさがスタンダードといったイメージもありますが(ほかのスケールのキットも、存在しています)、シュトゥルムケーファーは四脚歩行の重戦車的な大型メカであって、ガチャーネンと同様1/35での立体化です。これは、1/35のミリタリーキットの部品を転用するなどの楽しみもあるのかなあと思いました。
また、海洋堂によれば「誰でも「作る楽しみ」を体験できる『Ma.K.』の魅力が詰まったキット内容」とのことで、確かにランナー8枚、パーツ数115個というお手軽さ。サクッと組んで飾るもよし……なのですが、むしろ組んですぐに色を塗る遊びをしてみたい、と思わせる内容です。それから、ここは強調したいところですが、「パーツを触るだけで楽しい」キットなんですよね。やっぱりデザインと造形が素晴らしいからでしょうか。原型が、海洋堂で数々の名作を送り出した谷明氏によるところもうれしい点です。
想像力を刺激するパッケージやパーツ構成
では、実際に作っていきましょう。まずは箱から。こちらはCMや映画のアートディレクターである土井眞一氏の作品が使われており、現在発売中の月刊ホビージャパン2021年12月号でも作例が紹介されています(この号はシュトゥルムケーファーが徹底攻略されていて、一読の価値あり)。谷明氏のクレジットが入っているところもポイントですね。
お次は中身です。ランナーが8枚とご紹介しましたが、その中の4枚は脚部を構成する同じ形のものなので、実は全体的に構成が単純で組みやすいんですよね。なお、塗装例の写真を印刷したシートが入っているのもうれしいところ。Ma.K.はカッコいいイラストによる塗装例や作例が数多く存在していますが、自分のイメージ通りに、勝手に色を塗るのも、これまた楽しいと思います。ハイレベルな完成品の写真を見て、自分のできるレベルで想像力を膨らませて、色を塗るのもよいのではないかと。
お次にパーツ群ですが、いやぁ! やっぱりいいですね! 触るだけで楽しい造形とは先程申し上げましたが、こうして、造形というかデザインに手で触れられるというのが、プラモデルの楽しさだなあと。
複雑な曲面で構成された機体上面の大きなパーツはもちろんのこと、機体下部のメカ部分はスケールモデルのような細かいディテール。SF作品とはいいながら、こうした、「メカ」というよりも、現存するキカイ的な力強さが細かいディテールで表現されているところが楽しいわけです。
よく、クルマのエンジンなどを見て「かっこえぇ~」って思いまけれども、まさにそれですね。下部のエンジン?部分の細かいモールドだったり、装甲部分の小さなリベットも美しいです。
ロボットものなどのキャラクタープラモとは違い、スケールキット的なエンジン周りのディテールだったり、上記したように上面は造形の「手触り」が感じられる曲面構成だったりして、これまでロボットだけしか作ってこなかった方には、違う世界を味わっていただければと。
もっともまあ、ロボットものも進化しているので、それが「メカメカしくなくスケールキットっぽくない」という話ではないので、一概には比べられません。また、スケールキットと比べるとどうか? という話になると、もっとパーツが細かいものも多いので、本キットがパーツ数を抑えて組みやすいですねといえばそのとおりなのですが、スケールキットでもそういう商品は存在します。
ただ、これまで未来的でヒーローチックなロボットものだけしか作っていなかったという方、特に機械の油臭さみたいなものに魅力を感じる方にはおすすめです(とはいえ、Ma.K.も宇宙用の機体や航空機もあるので、これまた断言はできないのですが)。