特別企画

オールドファンも夢見た「うる星やつら」ラムのハイクオリティフィギュア! 世代を超えた魅力を持ったキャラクター表現【コトコレ】

【コトブキヤコレクション2023[Winter]】

開催期間:2月4日~2月12日

開催時間:各日10時30分~19時30分(2月4日のみ12時開場)

場所:秋葉原ラジオ会館10F イベントブース

入場料:無料

 「コトブキヤコレクション2023[Winter]」の新作展示において、個人的に強い興味があったのがフィギュア「ARTFX J ラム」である。そう、「うる星やつら」のラムのフィギュアである。

 2022年の新作アニメ「うる星やつら」は、かつて大ブームを巻き起こした「うる星やつら」のリメイク作品だ。オリジナル要素が極めて強かった1981年のアニメ版「うる星やつら」とは路線を変え、高橋留美子氏の原作寄りの作品となっている。

 描かれる場面もまた1980年代風で、その上で非常にテンポを大事にして細かいギャグを入れるという、独特のベクトルでのアニメ化されている。「現代の『うる星やつら』とはどんなものか」を模索する、とてもユニークで挑戦的な作品だ。

【ARTFX J ラム】
原作後期のデザインを感じさせながら、現代の美少女キャラクターとしての要素も多分に持つ新作アニメ「うる星やつら」のラムのデザインを再現。発売日・価格未定

 そして"ラムのフィギュア"は、ただ単にアニメキャラクターのフィギュア化にとどまらない魅力があると、筆者は思っている。もちろん造型や彩色、プロポーションなどフィギュア商品としての評価軸はあるが、現代のアニメキャラクターでありながら、ノスタルジックヒロインという、まさに現在の「うる星やつら」と同じように複雑な背景があるフィギュアだと思うのだ。本稿では造型、フィギュア表現を見ていきながら、思い入れも少しだけ語りたいと思う。

 まずはきちんと「ARTFX J ラム」を見ていきたい。フィギュアはアニメ版のキャラクターデザインを大事にした、非常に丁寧なフィギュア表現がされている。2色に塗り分けられた青い髪、虎ジマのビキニ、健康的でなめらかなラインを描く肢体、右手にソフトクリームを握っているのが、自由気ままなラムっぽい。フィギュアとして「誰かの視線を感じてポーズを付けている」のではなく、彼女の生活で見せる姿をそのまま立体化したような、自然な雰囲気のあるフィギュアとなっている。

虎ジマビキニというかなりセクシーな衣装だが、健康さと、透明感がある不思議なキャラクターだ
白目が大きかったり、顎の丸いラインなど、1980年代のアニメキャラ風のバランスだ

 顔に対して白目が大きな割合や、小さな鼻、丸みを帯びた頬などは1980~1990年代のアニメキャラクターのデザインバランスだ。それでいながらつり目がちの目の細かなまつげの表現や、複雑な色合い瞳の印刷表現など、アニメが大事にしている「レトロさを持ちながら、現在の美少女キャラクターとしての表現」をしっかりと再現しているところが確認できる。現代のラムは独特の透明感があって、フィギュアはそれをきちんと再現していると感じた。

 筆者は2022年にはコトブキヤのフィギュア、「真希波・マリ・イラストリアス」と「ヴァンパイア美少女 モリガン」のレビューをしたのだが、どちらも"腰"の見事な曲線の表現が印象に残った。セクシーな雰囲気をとてもうまく表現したポイントだと感じたのだ。「ARTFX J ラム」も腰から太ももにかけてのラインに強いこだわりを感じた。ツンと上を向いたお尻のラインが健康的なセクシーさを感じさせる。

 ラムは普段着が虎ジマのビキニのみという、当時でもかなりセクシーだが色気を強調するというよりも健康的な明るさがある。あまり凹凸を強調させない少女らしさも持ったボディラインの表現も健康さを感じさせるポイントだろう。

 そしてこの服装だから、腕のラインやお腹、太ももに造型と塗装表現に繊細さが問われる。肩からひじに掛けての華奢な造型と、ひじや脇などにシャドウを入れる塗装の自然さなど、実はフィギュア表現として高度な技術を要求させるモチーフなのかもしれない。今回は前方のみしか見られなかったが、ぜひ後ろ姿も確認したいフィギュアである。

 台座のポップな表現は、こちらも見方によってはレトロである。ネオン管でのLumの文字とか、1980年代のわたせせいぞう氏のイラストを思わせる。現代でももちろん見られる表現だと思うが、やはり「うる星やつら」という作品そのものが、過去と現代を行き来するような独特のバランス感覚の作品であり、ソフトクリームや、台座の小道具は、そういった1980年代当時の時代感も匂わせてくれると感じた。

ポップな台座は、見方によっては昭和っぽい
角度を変えても違和感を感じさせないのは、コトブキヤのフィギュア表現の見事さだ

 「ARTFX J ラム」は、メインターゲットは現代のアニメのファンだが、アニメと同じように、かつて「うる星やつら」のアニメを見たり、コミックスを読んだ人にも強く魅力を感じる商品だと思う。現代風の要素も持ちながら、高橋留美子氏の原作後期の、かわいらしさを大いに増したラムともイメージが重なる、絶妙なファンアイテムとなっていると感じた。幅広いユーザーが手に取ることを期待したい。

 実はラムに関してはコトブキヤは過去にとても興味深い挑戦をしている。「ARTFX J ラムちゃん」という商品を2014年に発売しているのだ。コミック「うる星やつら」の35周年を記念して制作されたこのアイテムに筆者は、「この商品を起爆剤に、1980年代のキャラクターがフィギュア化されるかも」、という期待を持った。

【ARTFX J ラムちゃん】
2014年に発売された「ARTFX J ラムちゃん」。今回のフィギュアと較べると、キャラクターデザインが現代風だ

 1980年~1990年代はまだフィギュア文化が未発達で、アニメやコミックからは魅力的なキャラクターは多数生まれたものの、ファンアイテムとしての立体物は本当に少なかった。熱心なファンがガレージキットを出したりもしたが、高い模型スキルがなければ完成させられなかった。あの頃のキャラクターがフィギュアになって欲しい、そのフィギュアを手にしたい、という想いは筆者は今でも少なからず残っている。

 2014年の「ラムちゃん」は現在の視点から言うとデザインが当時風で原作ファンが夢見た「ラムのフィギュア」とはちょっと違っていたのかもしれないと、今になると思う。今回発表され「ARTFX J ラム」は、1980年代のファンも強い魅力を感じるフィギュアになっている。このフィギュアの人気で、何か新しい波が来るかも、そういう期待が生まれた。