特別企画

発売から2年が経過したTCG「ゲートルーラー」の現状

デッキメーカーのハッキング騒動やベストブースターの封入率問題など話題に事欠かないTCG

 大遊から2020年12月26日に発売された「ゲートルーラー」は、“池っち店長”こと池田芳正氏が発案したTCGであり、ルールを司る「ルーラー」の選択によって、プレイ感覚が大きく変わることが特徴だ。

 HOBBY Watchでも度々「ゲートルーラー」について取り上げてきたが、正式サービス開始から2年が経過して、プレイヤーの数は減少し、扱う店も減ったように思う。筆者はというと、ゲートルーラーから引退したわけではなく、現在でもだいたい月2回のペースでTCGショップをお借りしてサークル交流会の主催を続けてはいる。参加者は4名~8名と多くはないが、喜んで参加してくれる人がいる限り続けていこうと思っている。

 そんなある日、急に過去の記事のPVが跳ね上がった。おそらくSNSの影響だと思われるが、「ゲートルーラーってもうサービス終了したんじゃない?」と思っている人が多いことに気付いた。実際、限りなくそれに近い状況だとは思うが、2023年6月までの公認大会の受付が行なわれており、少なくとも2023年6月まではサポートが続くと思われる。そこで、過去の記事を今初めて見て「ゲートルーラー」を知ったという人や、以前「ゲートルーラー」をプレイしていたがもう離れてしまった人、ウオッチ対象として「ゲートルーラー」に興味がある人などに向けて、数少ない現役プレイヤーとして現在のゲートルーラーの状況をまとめてみた。

発売開始から現在までに発売されたゲートルーラー関連製品

 ゲートルーラーは、2020年12月26日にスターターデッキ「妖怪&巨大ロボ」、スターターデッキ「魔竜召喚」、第1弾ブースターパック「地球&異世界連合軍結成!」が発売され、正式にサービスが始まった。現在までに発売されたゲートルーラー関連製品(スリーブやムックは除く)は、以下の通りだ。

 2020年12月26日 スターターデッキ「妖怪&巨大ロボ」「魔竜召喚」、第1弾ブースターパック「地球&異世界連合軍結成!」

 2021年3月25日 スターターデッキ「竜王と共に」「NYゾンビ事変」、第2弾ブースターパック「邪神襲来」

 2021年10月29日 第3弾ブースターパック「エース参戦!」
 2022年3月31日 第4弾ブースターパック「装着!俺がヒーローだ!」
 2022年11月18日 第5弾ブースターパック「叫べ、誓いを胸に」
 2023年1月27日 DX対戦スターターセット「竜型決戦兵器VS覚醒アリス」
 2023年3月17日 ベストブースターパック

 つまり、サービス開始から2年3ヶ月で新規ブースターは5弾(ベストブースターパックは基本的に第1弾から第3弾までのカードの再録)まで、デッキも5種類しか発売されていない。通常のTCGでは年に4回程度、新規ブースターが発売され、その間には特別パックが発売されることが多い。また、デッキも年4~6種類程度発売されるのが一般的だ。「ゲートルーラー」はもともと、他のTCGよりは発売ペースをゆっくりにすると表明されていたが、このペースでは熱心にプレイしている人には物足りないというか、環境が変わらず飽きてしまう。特に、1弾と2弾の間は3ヶ月ほどで特に問題はなかったが、2弾と3弾の間は7ヶ月、3弾と4弾の間は5ヶ月、4弾と5弾の間は7カ月半と3弾以降、発売ペースががくっと落ちてしまっている。運営も、間隔が空きすぎてしまったという自覚はあるようで、店舗などに配布される第5弾発売宣伝ポスターのキャッチコピーは、「生きていたのか…… ゲートルーラー!!」というウケを狙った自虐的なものであった。

【第5弾の店舗ポスター】
キャッチコピーが「生きていたのか…… ゲートルーラー!!」であった、第5弾発売宣伝ポスター

第4弾からカードサイズが変わる。新弾の度に多くの不備が見つかる品質の低下

 ゲートルーラーは、運営のゴタゴタによって当初のスタッフがどんどん抜けていってしまい、代わって運営するはずだったメンバーも池田氏の復職後、辞めてしまった。そのため、第4弾以降、カードに関する不備が非常に多くなっている。それを全て挙げると、とんでもない量になってしまうので、ここではその一部、特に大きな問題だけを挙げる。

 まず、第4弾では、ノーマル仕様のカードのサイズが第1弾~第3弾までと異なるという、TCGとしてはかなり致命的な不備があった。ゲートルーラーの第1弾から第3弾まではシンガポールの工場で印刷されていたが、第4弾では国内工場で印刷されている。工場の変更が原因であろうが、第4弾に関しては封入率も当初の発表と大きく違っていたり、封入の偏りが酷いといった問題もあった。

 さらに、第5弾は、中国工場での印刷に変わったのだが、今度はカードに使われている紙が変更になったようで、カードが厚く、堅くなった。スリーブに入れた状態で伏せた状態で山札からめくろうとしても、明らかに第1弾~第4弾までとは感触が異なり、筆者でもドローの瞬間に「あ、これ第5弾だな」と容易に分かるほどである。こちらもTCGとしてはかなり致命的なのだが、幸か不幸か「ゲートルーラー」には賞金や高額プロモカードがもらえるような競技的な大会がないため、そこまで問題視されていないというか、プレイヤーも半ば諦めた状態でプレイしている感じだ。

 また、第5弾については、カートン(ボックスをまとめて出荷する段ボール箱)に入っているボックスの数が予告と違ったという、これまたとんでもないミスがあった。本来1カートンは20ボックスのはずだったが、工場のミスによって12ボックスになっていたと公式では説明されているが、それにともないカートン特典プロモカードを12ボックス購入者に送ったり、20ボックス購入者に新たなプロモカードを送るというアナウンスがなされたが、これもなかなか届かなかったというトラブルもあった。

 さらに、第5弾はテキストの不備もとても多かった。発売日に
第5弾カードエラッタ集が公開されており、17枚のカードについてのエラッタ(テキストの修正)が発表されているが、実際はその17枚以外にもテキスト不備があるという体たらくだった。

 中でも有名なのが、「タカオニ」というカードである。「タカオニ」のテキストの一番下の項目は、「■自分の侵略次元のカードから君が受けるダメージは」で切れており、その下のフレーバーテキスト「ヴィルス。侵略次元よりもたらされた謎の瘴気により、肉体を変化させられ自我を失った者達。」に続くように読めてしまう。フレーバーテキストは、TCGの世界観を補うためのテキストであり、プレイには直接影響しない。正しいテキストは、「■自分の侵略次元のカードから君が受けるダメージは0になる。」というものだが、1行丸々記載が消えてしまっているのだ。

 こうしたエラッタを含めると、第5弾までで判明しているエラッタは95種類もあるという。他のTCGでは、エラッタがあったとしても1つの弾に1、2枚程度が一般的であり、「ゲートルーラー」のエラッタはいくらなんでも多すぎる。エラッタが多いTCGは、カードに書かれているテキストが信用できないわけで、まともにプレイする意欲が失われてしまう。

 また、大会賞品などとして配られるプロモカードのミスも多い。例えば、ウインターフェスの参加賞として配られた「GPR-106 恐艶道士・白骨夫人」の右下をよく見ると、「COMMANDE」という文字がうっすら見える。これは、最近のゲートルーラーのカードイラストの一部は、タイのTCG「CommandeerTCG」から借りているためで、その画像の「COMMANDE」という文字が残ってしまっているのだ。こういうミスも、画像のレイヤーをいじれる人がいなかったのかとか、そもそも文字入りの画像しかもらえなかったのかとか、実際に配るまで誰も気付く人がいなかったのかとか、いくつも頭に疑問符が浮かぶ。ちゃんとした運営ならまずあり得ないだろう。なお、「恐艶道士・白骨夫人」は第5弾にも入っているのだが、そちらではこの文字は消えている。

【カードテキストやイラストの不具合】
第5弾の「タカオニ」
テキストをよく見ると、「~君の受けるダメージは」で切れている
ウィンターフェス参加賞プロモカードの「恐艶道士・白骨夫人」
右下に「COMMANDE」という文字がうっすら見える

そしてDX対戦スターターセットではスタッツが変わるという大きなミスも

 ミスが多いのはブースターパックだけではない。2023年1月27日に発売されたDX対戦スターターセット「竜型決戦兵器VS覚醒アリス」は、1つのパッケージに「竜型決戦兵器」デッキと「覚醒アリス」デッキの2つのデッキが入っており、1つで対戦ができるというものだ。全てのカードがフォイル仕様になっていたり、再録カードや新規カードも強力なものが多く、鳴り物入りで登場した製品だ。

 このスターターセットに含まれている「A7 マッドハッター」と「竜型決戦兵器”裂雷”空戦形態」というカードは、どちらも再録カードである(「A7 マッドハッター」は第2弾、「竜型決戦兵器”裂雷”空戦形態」は第4弾に収録)。再録カードは、エラッタがなければカードテキストやスタッツ(HPやATKなどの数値)はそのまま、フレーバーテキストやイラストなどは変わることもあるというものだが、「ゲートルーラー」では、何と再録によってカードのスタッツが変わるという、こちらもあまり他に例がないミス(デュエル・マスターズでも最近あったことはあったが……)だ。

 具体的には、「A7 マッドハッター」はHPが本来1だったのだが、「竜型決戦兵器VS覚醒アリス」に収録されている「A7 マッドハッター」のHPは3になっており、「竜型決戦兵器”裂雷”空戦形態」のHPは本来2だったのだが、「竜型決戦兵器VS覚醒アリス」に収録されている「竜型決戦兵器”裂雷”空戦形態」のHPは3になっているのだ。強化と言えば強化だが、同名カードは、再録されてもスタッツやテキストが同じで相互に互換性があるという、TCGの鉄則を破るものだ。

 さらにまずいのは、その対応である。ゲートルーラーの公式アカウントが、「一部のカードにミスが発見されました。大変申し訳ございません。現在、交換対応及びお詫びのプロモーションカードをお送りする準備を進めております。」というツイートをしたのは、発売から2日後の1月29日であり、その対応が公式サイトに掲載されたのは、発売から4日後の1月31日である。

 しかも、通常は初出のスタッツにあわせた正しいカードを刷り直して、DX対戦スターターセットの購入者に送付するというのが本来の対応であろうが、「ゲートルーラー」は刷り直しには2ヶ月以上かかるという理由で、DX対戦スターターセットに含まれているほうを正しいスタッツとして、以前のカードをエラッタしてHP3として扱うという対応を行った。これによって、「A7 マッドハッター」の壁としての性能は大きく上がったが、本来想定されていたゲームバランスを崩してしまわないのかという懸念が残る。また、1月29日に表明していたお詫びプロモカードというのも一切なくなった。

 このように「ゲートルーラー」は、公式アカウントが表明したことが実際には守られないということが非常に多く、それもプレイヤーが離れていく原因となっている。

【DX対戦スターターセットでのスタッツ違い】
左が第2弾の「A7 マッドハッター」。スタッツの数字は上から3/1/1。右がDX対戦スターターセットの「A7 マッドハッター」。スタッツの数字が3/3/1になっている

待望の「デッキメーカー」登場もあまりに酷い出来で1日で非公開に

 そうした“やるやる詐欺”の中でも、最も大きなものが「デッキメーカー」である。デッキメーカーとは、PCやスマホを使ってデッキ構築ができるツールであり、「ゲートルーラー」のような構築の縛りが厳しいTCGで、気軽にデッキを作るためには必須ともいえるツールだ。

 以前は、「ゲートルーラー」用に非公認のデッキメーカーが公開されており、それを利用していたプレイヤーも多かったが、2022年1月15日にそのデッキメーカーの公開が中止された。以前から「ゲートルーラー」運営もデッキメーカーの重要性は理解しており、公式デッキメーカーの開発に取り組んでおり、2021年6月25日にYouTubeの公式チャンネルで公開された「ゲートルーラー放送局第3回」では、開発中のデッキメーカーの画面や動作の様子が明らかにされた。しかし、公式デッキメーカーの登場は遅れに遅れ、2022年9月8日には、「デッキメーカー遅延の原因について、ご説明とお詫び」という文書が公式サイトで公開された。その後も、Twitterの公式アカウントで、デッキメーカーが近日中に公開されるというツイートが何度かあったが、ようやく2023年3月2日に公式サイトで公開が行われた。

【ゲートルーラー放送局第3回「新システム公開!」】

 しかしこのデッキメーカーがとても酷い出来で、アカウント管理ができていない、マイデッキの登録後の修正ができない、コスト計算やルーラーごとの構築制約の反映など、デッキメーカーとしての基本的な機能が実装されていないだけでなく、XSS攻撃(Webサイトの脆弱性を狙ったサイバー攻撃。フォームに実行可能な文字列を入力し、他の悪質なサイトへ誘導したりする)などを防ぐための最低限の対処も行われていなかったため、デッキメーカーの画面が改変されたり、他のサイトへ飛ぶなど、デッキメーカーとしてまともに利用できない状態になった。

 このデッキメーカーに関する運営の対応もまた杜撰なものであった。まず、3月2日18時34分に公式アカウントが、デッキメーカーの公開を表明した。

 このツイートには、「まだミスやバグが残っていると思いますので、その際はお問合せフォームからご報告ください。順次修正してまいります。」とあり、テスト運用的なニュアンスもあったが、3月2日の23時49分に公式アカウントが以下のようなツイートを行った。

 公式は、デッキメーカーにクラッキングが行われていることを認識していながら、公開を停止するという考えはなかったようなのだ。これはセキュリティ関係者なら、とんでもない判断だと口を揃えるだろう。本当に悪意を持った人がデッキメーカーに攻撃を仕掛けていたら、マルウェアなどに感染させられてしまう可能性も十分にあったのだ。そうした批判が集中したのか、翌3月3日の15時38分に再度次のようなツイートを行った。

 この時点でもまだ公開を続ける意志を見せているのだ。しかし、さすがにこのままではまずいと判断したのか、初公開から1日と少し経った3月3日の22時13分に次のようなツイートを行い、デッキメーカーの公開を中止した(実際にはツイートの前に公開が中止されていた模様)。

 その後、デッキメーカーについては以下のようなツイートが行われ、脆弱性について対処する予定だが、いつ再公開されるかの目処は立っていないということと、攻撃を仕掛けた者に関して弁護士に調査を依頼したということを表明した。

 仮にも企業が運営する公式サイトにおいて、最低限のサニタイジング(サーバーに送信された文字列を検査し、安全なものに変換すること)も行っていないフォームを用意するというのは、セキュリティの観点から見ると信じられないことだ。再公開する際には、デッキメーカーとしての機能追加はもちろんだが、セキュリティ面でも十分な対策を講じてもらいたい。

最新のベストブースターでは封入率詐称が

 このように、「ゲートルーラー」は2022年以降、製品のクオリティがどんどん低下しているだけでなく、運営自体もどんどんいい加減になっている。筆者がサークル交流会開催のために、プロモカードの送付依頼のDMをDiscordの公式アカウントに送っても、なかなか返事が返ってこないなんてことはいつものことだ。

 「ゲートルーラー」の最新製品が「ベストブースター」だが、こちらは第1弾~第3弾のカードの中から利用頻度が高いと思われるカード171種類と新規SRレア5種類、キャラクター入りエナジーカード4種類の合計180種類から構成されるパックだ。

 また、ベストブースターはまた印刷が日本工場へと変更されている。再録がほとんどなので、大きな問題はないかと思われたのだが、今回は封入率が公表されているモノと違うボックス(一般的にエラーボックスと呼ばれる)が多数存在するという、また別の大きな問題が見つかっている。封入率というのは、1ボックスを開けて入手できるレアリティの内訳を示すもので、一般的なTCGでは、例えば、スーパーレアが6枚前後などのようにある程度誤差が含まれているような書き方をすることが多い。多少のエラーボックスでも問題とはならないからだ。しかし、今回のベストブースターでは、全てのレアリティの枚数が「約」や「前後」などを付けずにズバリ記載されている。

 しかも、公式サイト内の参照するページによって、その封入率が違うのだ。2023年1月20日に公式サイトのお知らせ内に掲載された「ベストブースター全収録カード公開!」では、1箱にレジェンドが1枚、新規SRレアが1枚、SRレアが4枚、★★★★が12枚、★★★が15枚、★★が33枚、★が95枚、エナジーが1枚、ルーラーが3枚で、さらにボックス特典プロモとして新規SRレアが1枚と書かれている。★★★以上がいわゆるフォイル仕様(キラカード)になっており、1パックに1枚必ずフォイルカードが含まれるわけだ(ベストブースターは1ボックスが33パック)。

 しかし、発売日に更新された商品情報の商品詳細ページを見ると、「全パックにキラカードが入り、激レアだったSRレアが1ボックスに7枚封入と、大サービスのブースターセットです!!」

 と書かれている。こちらは細かい封入率は書かれていないが、SRレアが1ボックスに7枚と書かれている。1月20日のお知らせでは、SRレアは新規と再録合わせて5枚であり、ボックス特典プロモの1枚を加えても6枚にしかならない。この7枚という数字はどこから来たのだろうか? 「ゲートルーラー」はこのように本来同じはずの情報が公式ツイートと公式サイトで違っていたり、公式サイト内でもページによって違っているということが多々あり、何が正しい情報なのか分からないことも問題だ。

 実際に、ベストブースターを買った人の報告では、パックから出るのは新規SRレア1枚、SRレア4枚で、ボックス特典プロモが1枚というのが基本のようだが、パックから新規SRレアが1枚も出なかったという人もいた。また、問題なのが★★★★の数で本来12枚とされているが、11枚や10枚だったという人も存在する。★★★★が11枚の場合は、★★★が1枚増えて16枚となり、フォイル仕様の合計枚数は変わらないようだが、★★★★が10枚で、★★★が16枚しかなく、パックから出たフォイルの枚数が32枚(本来は1パックに必ず1枚フォイルが出るはず)というボックスもあるようだ。

 そこで筆者も1ボックスだけだが、ベストブースターを購入して実際に開封してみた。結果は下の写真に示した通りで、レジェンドが1枚、新規SRレアが1枚、SRレアが4枚、★★★★が10枚、★★★が17枚であった。お知らせに書かれている内容とも、商品詳細に書かれている内容とも一致しない。また、封入の偏りについても、第4弾よりはマシになっているようだが、★★★17枚のうち、2枚被っているのが2種類ある(「龍血姫 キメララ」と「破邪七支刀 呼ぶ子」)のと、3枚のルーラーのうち2枚が被っているのがやや気になる。今回のベストブースターは、こうしたエラーボックスが異常に多いようだが、公式はこの件については何も表明していない。特に、公式サイトの商品情報の記述「1ボックスにSRレア7枚封入」を期待して購入された方はがっかりするのではないだろうか。

【ベストブースター1ボックスの開封】
ベストブースターのボックス
全部で180種類のカードが収録されている
1パック5枚入りで、1ボックスには33パックが入っている
蓋を開けたところ。一番手前側にボックス特典プロモカードが入っている
中味を出してみた。一番上がボックス特典プロモカードだ
ボックス特典プロモカードとして新規SRレアの「妖狐 西岳」が入っていた
ベストブースターのパック。地の銀色の面積が大きく、ちょっと寂しい見た目だ
「MADE IN JAPAN」と書かれている
最初の1パックの中味。左上が★★★の「サクラノセイ」でフォイル仕様になっている
ボックスに1枚入っているレジェンドレアは「たたり鬼」だった
ボックスから出た新規SRレアは右の「異界神クトゥグア」であった(左はボックス特典プロモカード)
ボックスから出たSRレア。こちらは商品情報通り4枚である
問題の★★★★。公式サイトのコラムでは12枚と書かれているが、10枚しかなかった
その代わり★★★が本来15枚であるべきところが17枚になっており、★★★以上のカードの枚数は33枚と正しくなっている
1ボックスに3枚収録されるルーラー。ただ「レギオン」が被っているのが気になる
キャラクター入りエナジーカード

プレイしてみたいという人には朗報も

 以上が、最近の「ゲートルーラー」の製品や運営周りの状況だ。市販のTCGとしてかなり滅茶苦茶だと驚かれた人も多いだろう。実際はここに書いていない問題や運営の不手際などもまだまだたくさんある。それで実際にプレイしている人はいるのかというと、いることはいるが、一般流通に乗って販売されている現役TCGとしては最もプレイヤー数が少なくなってしまったのではないかと思っている。筆者が主催しているサークル交流会では4名~8名程度の方が参加してくれているのだが、ゲートルーラーの公認大会を開催している店舗は全国でももう数店舗しかない。また公式サイトに開催予定が書かれていても、実際にはプレイヤーが参加していないといったこともあるだろう。

 「なんでそんな酷い状況なのに続けてるの?」と聞かれることもよくあるが、筆者は、サークル交流会を楽しみにしてくれている人のためというのが半分、あとはまあここまできたら最後まで見届けてやろうというのが残りの半分だ。テキストの不備や裁定変更などもあり、厳密にプレイしようとするとかなり難解だが、手札を持たないドライブルーラーのプレイ感覚は他のTCGではあまり味わえないもので、筆者は割と気に入っている。

 もっとも、TCGの中で「ゲートルーラー」が一番面白いと思っているわけではないが、ボードゲーム感覚で遊ぶには悪くはない(ドライブルーラーは確かに運ゲーの要素が大きいが、その運を最大限に引き上げるためのデッキづくりが楽しい)。正直、いつサービスが終了してもおかしくない現状なので積極的に他人に勧めるつもりはないが、サークル交流会に参加してくれている方は「ゲートルーラー」が面白いと思っているからこそ、わざわざ交通費や参加費を払って参加してくれているのであろう。

 しかし、「ゲートルーラー」を始めたいという人がいても、シングルはおろかパックを扱っている店もごくわずかというのが、まず大きな壁となる。もちろん、駿河屋など通販でゲートルーラーを扱っている店もあるが、シングル価格もそう安いわけではない。

 ちなみに、最近秋葉原にオープンしたTCGショップ「カードン」は、どんなTCGでも扱うということがセールスポイントとなっており、すでに「ゲートルーラー」のカードが多数買い取りに持ち込まれ、ストレージやショーケースに「ゲートルーラー」のカードが並んでいる。シングル価格もかなり安いので、「ゲートルーラー」に興味を持った人は行ってみることをおすすめする。

 また、カードンは、プレイヤー主催の大会などに店内デュエルスペースを使わせてくれるというとてもありがたいTCGショップであり、4月以降、「ゲートルーラー」の交流会をカードンで行わせてもらえるようになりそうだ。Twitterのカードン公式アカウントでも告知があると思われるので、ご興味のある方は参加してみては如何だろうか。

【カードンでの「ゲートルーラー」の取り扱い】
秋葉原に新しくオープンしたTCGショップ「カードン」
ストレージコーナーにはゲートルーラーも並んでいる。この写真は3月17日に撮影したもので、まだストレージは2本しかないが、今は10本近くに増えている
「ゲートルーラー」ストレージの中味
高価なシングルカードはショーケースにも並んでいる。こちらも同じく3月17日に撮影したもので、今はこの数倍のカードが並んでいる

「ゲートルーラー」の今後は?

 「ゲートルーラー」の今後だが、製品としては、初心者向けスターターデッキ「外道ビート」が2023年5月末から6月中旬に発売される予定となっている。最近は、当初の予定から発売が遅れることが日常茶飯事となっている「ゲートルーラー」だが、「外道ビート」は新規カードは5種類のみで、残りは再録カードとされているので、比較的開発も容易であろう。多少遅れることはあっても、6月末か7月までには出るのではないだろうか。問題は、次のブースターパックだ。第6弾となるブースターパックは「神と魔王」(仮称)という名前と2023年春から初夏に発売予定という告知が、2022年10月4日に公式サイトに掲載されているが、「外道ビート」のあとに登場することになるため、早くても8月か9月になりそうだ。

【スターターデッキ「外道ビート」の告知】
初心者向けスターターデッキ「外道ビート」。この画像では春となっているが、2023年5月末~6月中旬発売に向けて調整中とのこと

 プレイ環境についても先行きは怪しい。以前は公式Discordサーバーでも、オンライン大会「紫電杯」や「関羽杯」が行われていたが、2023年2月を最後に音沙汰がなくなっている。その代わり英語で行う国際的なDiscord大会「WORLD DISCORD CUP」が3回開催されているが、スタート時間が日本時間だと午前1時になるということもあり、日本からの参加者は少ない。

 また、一時期は14団体が存在したゲートルーラー公認サークルも、現在ちゃんと活動しているのは筆者のところを入れても片手で数えられるほどしか残っていない。店舗大会についても、状況は同じだ。その打開策として、新規公認サークルを募集するという告知が2022年10月26日に公式アカウントからなされた。筆者も、活発な新規サークルがいくつか増えれば、多少プレイ環境がマシになるかと期待していたのだが、その後待てど暮らせど募集が始まらず、筆者もDMでどうなっているのか問い合わせたことがある。告知から4ヶ月以上経った2023年3月3日に、ようやく新規サークル募集が開始された。しかし、実際に新規サークルに募集した人に聞いたところ、まだ一切返事はないそうで、実際にサークルの活動を開始できるのは、いつになるのかさっぱりわからない。

 このように「ゲートルーラー」は、商品も運営も問題山積のTCGであり、その評判が知れ渡っているため、今後、プレイヤーを増やすのはかなり難しいだろう。それでも、筆者は最後まで続けようと思っている。