特別企画

TCG「ゲートルーラー」にいま何が起こっているのか!?

池田氏解職処分の終了、プロジェクトへの復帰、誹謗中傷への警告、新たな提訴。話題に事欠かない「ゲートルーラー」最新動向

 「ゲートルーラー」は、株式会社大遊が2020年12月26日に発売を開始したトレーディングカードゲーム(以下TCG)である。「ゲートルーラー」については、本誌でも報じてきたように、開発総責任者であった池田芳正氏に対するブシロードからの訴訟、池田氏の大遊代表取締役の辞任、第2弾スターターデッキの仕様の不備、池田氏による個人への強要・誹謗中傷が問題視されたことによる「ゲートルーラー」プロジェクトからの解職といった、ゲーム以外で幾度も“騒動”を起こしてきた。

渦中の人物である池田芳正氏

 そして年の瀬押し迫ってきた12月下旬になって、「ゲートルーラー」周辺でさまざまな文書が公開され、またTCGコミュニティの間で物議をかもしている。一体何がどうなってるのか、さっぱり分からないという人も多いことだろう。筆者は、ライターとして「ゲートルーラー」について取材してきたかたわら、元公式インフルエンサー、現在は公認サークル代表として定期的にゲートルーラー交流会を開催してきた。今回の騒動について、公式情報をベースに解説していきたい。

 まず、その前段階の“騒動”である、池田氏解職については、こちらの記事を見ていただきたいが、ここではそのあとに起きたことを触れていく。

【「ゲートルーラー」のここまでの流れ】
 2020年12月26日 「ゲートルーラー」第1弾発売
    ↓
 2021年1月8日 池田氏およびスタジオ池っちに対するブシロードからの訴訟
    ↓
 2021年1月13日 池田氏が大遊代表取締役および取締役を辞任
    ↓
 2021年2月26日 大遊の新代表取締役の村田正樹氏が池田氏を広報の任から解くと表明
    ↓
 2021年3月15日 「ゲートルーラー」第2弾発売。スターターキット「NYゾンビ事変」の仕様不備が明らかに
    ↓
 2021年5月28日 新広報S氏による公式YouTube番組「ゲートルーラー放送局」がスタート
    ↓
 2021年8月4日 個人への強要や誹謗中傷が問題視され、「ゲートルーラー」プロジェクトから池田氏を解職。また、代表取締役2名と取締役1名が辞任。同日新運営が今後の商品展開と開発体制について公表
    ↓
 2021年8月6日 ブシロードと池田氏の和解成立

10月29日に第3弾が発売されたが… 公認大会が東京で開催されない?

 時系列で整理すると、8月4日の池田氏解職というニュースは驚きであったが、広報Sをはじめ新運営の対応には好感が持てるものであった。第3弾の発売日が10月29日であることが発表され、既存ルーラーのスペックの見直しなどの発表が定期的にゲートルーラー放送局で行われ、新たに「ゲートルーラー」に興味を持つプレイヤーも出てきた。

 2021年10月20日(公開は22日)に、8月4日に辞任した代表取締役員の代わりとなる新たな代表取締役員として、高本毅司氏と播野拓一氏が就任したことが発表された。「ゲートルーラー」第3弾は予定通り、10月29日に発売された。しかし、「ゲートルーラー放送局」は10月28日に公開された第18回を最後に更新が途絶え、Twitterのゲートルーラー公式アカウントも11月18日から更新されなくなってしまった。

 運営になにかあったのではないか?という憶測を呼ぶ中、12月15日には久し振りに公式アカウントが更新されたのだが、その内容は「2022年1月度公認大会開催店舗一覧を更新した」というものである。公認大会開催店舗については、公式サイトに掲載されているが、2022年1月に公認大会を開催する店舗はかなり減ってしまっており、東京都内では1軒もなくなってしまっている。

ユーザーによる1周年記念オフが中止になった経緯

 12月26日に発売一周年を迎えることになるが、公式サイトもTwitterアカウントも沈黙したままという状況が続いた中、「ゲートルーラー」の総合ルールを執筆し、その後もルールマネージメント(プレイヤーからのルールに関する質問への返事など)を担当していた進藤欣也氏が12月11日に次のようなTweetを行った。

 このTweetは、「ゲートルーラー」運営に何か大変なことが起こっているのではないかという憶測を呼んだが、それが決定的になったのが、12月25日にYouTuber「蛹の虫籠」氏が企画していた「ゲートルーラー」発売1周年記念オフ会が、突如前日夜に中止を表明(代わりにさまざまなTCGを遊ぶフリー対戦会が行われた)したことだ。この中止表明動画(現在は削除されている)で、「蛹の虫籠」氏は「公式から連絡があって開催できなくなった」と述べていた(あくまで「公式」とだけ発言しており、「ゲートルーラー公式」ではないことに注意)。これを見た視聴者の多くは、「ゲートルーラー公式」がユーザーのオフ会を潰したと受けとったと思われるが、それに対して、ゲートルーラー公式アカウントは即座に次のような発言を行い、完全にそうした見方を否定した。

 「蛹の虫籠」氏は、今回のオフ会を開催するにあたって、公認店舗と公認サークルの協力を受けており、公式にもオフ会開催の認可をしばらく前から求めていた。しかし、前日まで何の返事もなかったため、やむなく非公認で開催することにしたという。

 しかし、非公認のオフ会を前日突如中止するというのは、非常に不可解な出来事である。

池田氏が電撃復帰した理由

 その答えの謎は、12月24日の夜更新されたゲートルーラー公式サイトのお知らせにあった。そのお知らせのタイトルは「第4弾発表&池っち店長復帰について」というものである。

第4弾発表&池っち店長復帰について

 上記リンクを読んでいただきたいが、その内容は第4弾の新情報と、池田氏の解職処分が終了し、「ゲートルーラー」プロジェクトへの復帰という、驚くべきものであった。池田氏復帰の理由は、「池っち店長から謝罪があり、『録音騒ぎ』についても、当事者の一人から『誤解である』と説明があった」「開発を委託した制作会社との間にトラブルが発生した」「池っち店長の解職後、複数ユーザーから続投を望む声があった。また第3弾の売上げが第2弾より大幅に低下した」の3つが挙げられている。

 このうち、新たな火種となっているのが、2つめの理由だ。ゲートルーラー公式サイトでは、具体的な社名を挙げていないが、簡単に言うと、ギャラの支払いでもめているということだ。公式サイト側では、「タダでもいいからゲートルーラーを作らせてほしい。」との熱意あるアピールを受けなどとある。

 それに対して、その制作会社スタジオアックス代表である中条兜氏は12月27日夜、次のようなTweetで真っ向から反論を行った。この反論の中で中条氏は、株式会社遊縁に対して、法的措置を交えた支払い請求を行っていることを明らかにしている。遊縁とは、池田氏がオーナーの会社で、カードショップ「カードキングダム」の母体でもある。また、遊縁の代表取締役は播野拓一氏であり、大遊の現在の代表取締役でもある。

 要するに、今年の夏以降の新たな運営体制とは、遊縁、大興印刷、スタジオアックスの3社が協議して構築されたものなのだが、池田氏がその約束を反故にしたというのが、中条氏の主張だ。池田氏の主張と中条氏の主張は180度異なるが、どちらかが正しいのかは今後、明らかにされていくだろう。

 また、12月24日の公式サイトでのお知らせの最後には、苛烈化する池田氏への誹謗中傷への対策として、そうした分野に強い専門の法律事務所に監視業務を委託したというコメントがある。詳しくは後日詳しく説明するとあるが、すでに池田氏を誹謗中傷する内容の動画をアップしていた複数のYouTuberが謝罪コメントを出し、関連動画を削除していることから、法律事務所からの警告が行われたものと推測される。「蛹の虫籠」氏がオフ会を中止することになったのも、おそらく法律事務所からの警告が原因であろう(その場合、確かに公式アカウントからの中止要請ではないといえる)。

大興印刷からのリリースでラストピースが揃った

 そして12月28日、「ゲートルーラー」のカード印刷・製造および大遊の株主であった、大興印刷が次のようなリリースを出した。

【合弁会社の合弁解消と株式譲渡に関するお知らせ】

合弁会社の合弁解消と株式譲渡に関するお知らせ

 これによると、大興印刷は遊縁との合弁会社である大遊について、12月10日付けで遊縁との合併契約を解消し、保有する大遊株式を全て遊縁に譲渡し、大興印刷は大遊の経営参画から撤退したとのことだ。理由は遊縁との経営方針の違いにより、スケジュールが大幅に遅れたこととされているが、その原因となったのがさまざまな騒動であったことは間違いないだろう。大遊の株式は900株発行されているが、譲渡前は大興印刷が450株、遊縁が450株で、両社が50%ずつ株を持ち合っていたのだが、譲渡後の現在は、遊縁が900株持つことになり、遊縁が100%の株主となる。大興印刷は、大遊の経営権を返上し、大興印刷から選出されている役員も12月10日に辞任した。

 なお、今後「ゲートルーラー」の印刷・製造はどうなるのかということが気になるが、今回のリリースの中で、2022年春リリース予定の「ゲートルーラー」第4弾の製造や発売、出荷管理については、業務提携を継続し、大興印刷の離脱による製品品質に与える影響をなくすように尽力すると表明されている。

 つまり、第4弾の印刷・製造面については安泰といえるが、その後どうなるかは不透明であり、今後の「ゲートルーラー」にとって厳しい船出となりそうだ。