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池っち店長こと池田芳正氏、「ゲートルーラー」プロジェクトから追放へ

大遊幹部も総辞任、「ゲートルーラー」は新体制で開発継続へ

8月4日発表

 トレーディングカードゲーム「ゲートルーラー」を開発・販売している大遊は2021年8月4日、「ゲートルーラー」公式サイトにおいて、「弊社開発スタッフによるSNS上での不適切な発言についてのお詫びと処分に関するご報告」という文書を公開し、元開発総責任者である池田芳正氏を一切の役職から解くことを明らかにした。

 今回問題の発端となったのは、大遊の開発スタッフである池田芳正氏が、遊縁が運営するDiscordサーバー「カードキングダム Discord店」内の「discord居酒屋」において、個人への強要・誹謗中傷を含む複数の不適切な発言を行なったことによるもの。

 処分の内容は、「ゲートルーラー」プロジェクトの開発ディレクターであった池田氏を、開発・広報・運営・その他ゲートルーラー関連業務とプロジェクトから外すという、かなり厳しいもの。池田氏は、今後「ゲートルーラー」プロジェクトから完全に追放され、今後一切公式な立場として「ゲートルーラー」に関わることができなくなった。さらに、代表取締役の村田正樹氏、代表取締役の松本好史氏、取締役の高本隆彦氏の3名も、今回の件の管理者責任を負って総辞任した。大遊の後任人事については、後日改めて発表される。

 また、遊縁に対し、「discord居酒屋」に関するクレームと改善の要求を行ったことも文書では明らかにされており、今後、「discord居酒屋」がどうなるかについても関心が集まっている。

 もともと「ゲートルーラー」は、池田氏が考案したTCGであり、「ゲートルーラー」を開発・販売するために同氏が代表取締役となって株式会社大遊を設立した経緯がある。池田氏へのインタビューの中でも、同氏は「ゲートルーラー」が自分の集大成的な存在であると語っていた。

 それがどうしてこのような事態になってしまったのか、その事情を説明していきたい。

ブシロードに訴えられたことが転落の始まり

 「ゲートルーラー」は、ブシロードから販売されていたTCG「バディファイト」の原作・原案や、TCGショップ「カードキングダム」の創業者として知られる池田氏が考案したTCGであり、2020年12月26日に正式発売された(プレリリースとして一部のショップでは12月12日から販売されていた)。

 第1弾のスターターデッキにルール説明書やプレイシートが付属していなかったことや、カードの記述と総合ルールの記述に齟齬があるなど、いくつかの問題はあったが、完全新規のTCGのリリースは久し振りであり、池田氏の知名度やVTuber/YouTuberなどを使ったプロモーションもあり、当初の滑り出しは上々であった。

 その雲行きが怪しくなったのは、2021年1月8日、ブシロードから「池田芳正氏およびスタジオ池っちに対する訴訟の提起に関するお知らせ」というリリースが発表されたことである。

 あくまで池田氏個人および池田氏の会社への訴訟であり、「ゲートルーラー」を開発・販売している大遊への訴訟ではないが、会社の代表が訴訟されたというのは、「ゲートルーラー」にとっても痛手となる。そこで大遊は、2021年1月13日、「ゲートルーラー」公式サイトで「ご報告」と題したお知らせを発表し、池田氏本人の申し出により、代表取締役および取締役を辞任し、後任として村田正樹氏が代表取締役に就くことが明らかになった。

 また、2月26日には、代表取締役の村田氏より、「ゲートルーラー」公式サイトにおいて、「代表よりユーザー様へ」と題した文書が発表され、池田氏を広報の任から解くことが表明された。

池田氏のTwitterの発言は公式なものではないと明言

 このように、2021年3月以降、池田氏のTwitterアカウントでは、ゲートルーラーに関する公式な発言はできないことになっていたはずなのだが、実際にはゲートルーラーの新弾に関する設定など、公式サイトより先に池田氏のTwitterアカウントで明らかにされることも多々あった。また、「ゲートルーラー」発売以前から、池田氏はTwitterでの発言が炎上することが多く、いわゆるアンチとの対立を生み出す原因となっていた。

 そうした中、2021年3月25日に第2弾が発売されたのだが、第2弾スターターデッキ2種が、当初池田氏が語っていた内容と異なる仕様になっていたことで、また池田氏と「ゲートルーラープレイヤー」の間で軋轢が生じることになった。具体的には、池田氏が、スターターデッキには必ず2枚以上同じカードを入れる(ルールで1枚しか入れられないレジェンドカードは除く)と言っていたのだが、スターターデッキ 「竜王と共に」には「黄金剣」が1枚しか入ってなかったことと、もう一つのスターターデッキ「NYゾンビ事変」には、2種類のルーラーカードが入っているのだが、そのうちの1種類のルーラーカードを使うと、デッキコストがオーバーしてしまい、そのままではプレイできないという問題であり、運営側が素直にミスを認めて謝罪していれば、騒ぎもすぐ収まったと思われるのだが、運営側の対応もあまり褒められたものではなく、プレイヤーの池田氏や運営に対する信用がさらに低下することになった。

 その後、ゲートルーラー公認サークル制度の開始やロードマップの開示など、ゲートルーラー運営も以前に比べるとかなり改善したと思われたが、池田氏のTwitter発言は相変わらずであり、2021年7月9日に、「ゲートルーラー」公式サイトで、ゲートルーラー公式情報に関するお知らせが公開された。このお知らせの内容は、ゲートルーラーの公式情報を発表するメディアは

 ・「ゲートルーラー」公式ホームページ
 ・「ゲートルーラー」公式Twitter
 ・「ゲートルーラー」公式YouTubeチャンネル
 ・「ゲートルーラー」公式Discordサーバー
 ・店頭告知・掲示物(ポスター等)

のみであり、個人アカウントを含む、それら以外から発信される情報は公式情報ではないというものである。このお知らせの中で名指しされているわけではないが、事実上池田氏のTwitterアカウントを指していると考えてよいだろう。

「discord居酒屋」で何があったのか

 今回の池田氏への処分は「discord居酒屋」において、個人への強要・誹謗中傷を含む複数の不適切な発言を行なったことによるものとされているが、実際には何があったのだろうか。筆者は、discord居酒屋に参加したことは一度もないが(池田氏の生放送は聞いたことがあるが)、今回問題とされているのは、discord居酒屋に参加したゲートルーラーのプレイヤーに対して、質問があるならまずは素性を明かせと池田氏が強要し、「恫喝」したということである(他の問題もあるようだが、大きな問題とされているのはこちらであろう)。該当部分の音声を聞いたところ、「恫喝」という言葉は少し強すぎると感じたが、ゲートルーラーの情報を求めて参加したプレイヤーに対して、「声出せ!」とか「お名前は?」とか「どういう方?」と聞くのは(実際には年齢しか明かしていないが)、今の世の中だとパワハラと取られても仕方がないと思われる。コンプライアンスに対する要求が厳しい現在では「アウト」と見なされる発言だろうが、この発言だけで解職が決まったわけではないのだろう。これまでの池田氏のTwitterやdiscord居酒屋での発言(暴言と言われるものも少なくない)の積み重ねがあり、いわば「数え役満」として今回の処分が決まったのだと思われる。

 池田氏および居酒屋常連と、そうではない一般のゲートルーラープレイヤーとの間でのdiscord居酒屋の位置付けに齟齬があることが根本的な問題だと筆者は考えている。池田氏は、あくまで気軽に常連と雑談をおこなう場所としてdiscord居酒屋を位置づけているのに対し、ゲートルーラープレイヤーは、ゲートルーラーに関する未公開情報を聞けると思って参加したのであろう(以前はdiscord居酒屋でゲートルーラーの未公開情報について池田氏が話すことも度々あった)。

 discord居酒屋は、有限会社遊縁が運営している「カードキングダム Discord店」の中にあり、「ゲートルーラー」発売よりもかなり前から、池田氏が自由に発言を行う酒場として多くの参加者を集めていた。「ゲートルーラー」を開発・販売している大遊とは、別の組織であり、大遊が直接discord居酒屋を閉鎖することなどはできない。しかし、今回、大遊はdiscord居酒屋の存在そのものを問題視し、遊縁に対してクレームと改善の要求を行ったと表明している。

 TCGショップ「カードキングダム」の運営母体である有限会社遊縁を設立したのは他でもない池田氏であり、今は池田氏は代表を退いているが、依然としてオーナーであり、遊縁に対しては大きな影響力を持っている。こうした事情もあり、遊縁の対応が注目されるところだ。

「ゲートルーラー」自体は予定通り展開を続ける

 産みの親である池田氏を失った「ゲートルーラー」プロジェクトだが、大遊は今後の展開について、「今後の商品展開と開発体制について」と題したお知らせを公開した。これによると、

 ・第3弾「エース参戦!」は、既に開発が終了し、生産体制に入っており、予定通り発売する。発売日は近日中にアナウンスする。
 ・第4弾は、一部カードの設計・開発は池田氏が着手済み。残りを新体制で引き継いで進める。
 ・それ以降の商品は、新体制に完全移行した上で開発を行う予定。

とのことで、池田氏が外れても、予定通りの展開を続けるようだ。

 第3弾は海外では10月末に発売されることが表明されており、日本でも同時期に発売される可能性が高い。池田氏がプロジェクトから外れたあとも、「バディファイト」は5年ほど続いており、「ゲートルーラー」は非常に厳しい状況ではあるが、今後立て直していけるのか、新体制に期待したい。