特別企画

「ゲートルーラー」を手がけた池田芳正氏、ブシロードに訴えられる

池っち店長が最高責任者を務める「ゲートルーラー」の今後は?

1月8日発表

 2021年1月8日、ブシロードから「池田芳正氏およびスタジオ池っちに対する訴訟の提起に関するお知らせ」というリリースが発表された

 その訴訟の内容は、ブシロードが“池っち店長”こと池田芳正氏および、同氏が代表を務めるスタジオ池っちに対して、「契約義務違反、著作権侵害および信用毀損行為に対する損害賠償請求」を行なうというものだ。もちろん、これだけでは何がなんだかよく分からないという人がほとんどだと思うので、その内情を説明すると共に、サービスを開始したばかりのTCG「ゲートルーラー」への影響を解説する。

ブシロードから訴えられた“池っち店長”こと池田芳正氏

なぜ池田氏はブシロードから訴えられたのか

 まず、なぜ池田氏はブシロードから訴えられたのか。少し長くなるが説明しよう。

 ブシロードは、2014年にTCG「フューチャーカード 「バディファイト」」(以下、「バディファイト」)の販売を開始したのだが、もともと「バディファイト」のゲームシステムや主要キャラクターなどの原作を担当していたのが、池田芳正氏(正確には、池田芳正氏が代表を務めるスタジオ池っち)である。「バディファイト」は、アニメやマンガなどのクロスメディア展開も行なわれ、人気を博した。その後も池田氏とブシロードはタッグを組んで、「バディファイト」を展開していったが、2015年半ばで池田氏の原作製作に関する委託契約が終了。以後、「バディファイト」は池田氏の手を離れることになる。

 こうした原作付きTCGにおいて、原作者の発言は作品の世界観に与える影響が極めて大きいため、池田氏とは原作製作の契約終了後も、「バディファイト」に関する秘密情報の保持およびブシロードの許可がない作品情報の不開示といった契約がブシロードとの間で結ばれていた。しかし、過去に、池田氏はTwitterなどで、「バディファイト」原作者として、公開されていないキャラクターに関する設定などの情報を発信していた。そうした発言が、「バディファイト」ファンの反感を招いたこともあった。ブシロードは、これまで2度にわたって、その契約の遵守を文書で池田氏に要請し、池田氏もそれに対して謝罪の言葉を表明していたという。

 しかし、また最近になって、DiscordやYouTubeなどで池田氏が上記の契約に違反する情報発信を何度も繰り返して行なっていた。さらに、池田氏が投稿した動画には、ブシロードおよびアニメの著作権を保有している「バディファイト」製作委員会の承諾を得ずに、アニメ「バディファイト」の画像が無断で使用されていた。また、池田氏は、DiscordなどのSNSにおいて、ブシロードに関して事実に反する、当社の営業上の信用を害する発言も行なっていた。

 これらのことから、ブシロードもついに堪忍袋の緒が切れ、池田氏およびスタジオ池っちに対して訴訟を行なうことにしたというのが、訴訟に到る経緯である。リリースの「過去2度にわたり契約の遵守についてのお願いを行ない、それぞれ謝罪をいただいたにも拘わらず、改めて上記の契約義務違反、著作権侵害および信用毀損行為が行われたことから、当社としては、話し合いによる解決は困難と判断し、やむを得ずスタジオ池っちおよび池田氏に対して訴訟を提起することを決定いたしました。」との文面からは、ブシロードの池田氏およびスタジオ池っちに対する強い怒りが読み取れる。

 ブシロードとしても、もともとは協力して製品を開発していた「バディ」ともいえる池田氏を提訴することは避けたかったのであろうが、2度の注意にもかかわらず、再びこうした事態を引き起こした池田氏を放置しておくことはさすがに企業イメージを毀損すると考えたのであろう。

池田氏は即座にスタジオ池っちを解散し、大遊社長も辞任する決意を表明

 この訴訟のリリースを受けて、池田氏はどういう発言を行ったのだろうか。池田氏はもともと、1月8日の夜にYouTubeで生放送を行なう予定だったのだが、訴訟されたことで、Twitterで次のような発言を行った。

 さすがに生放送はできないかと思われたのだが、午後11時過ぎに次のような発言が行われ、24時に生放送が行われることになった。

 生放送のアーカイブが下記YouTubeになる。

【池っち店長生放送】

 冒頭4分ほど、この話題について触れた。その内容は、

・この話は数ヶ月前からブシロードの法務部から話が来ていて、池田氏も弁護士を通して対応をしていた
・話すなということを話したので、100%僕が悪い
・だから訴訟には誠実に対応する
・戦いではなく、一方的にブシロードの言うことが正しい
・自分は罰を受けなければならないと思っている
・可能な限りの謝罪をさせていただく
・スタジオ池っちは、個人会社なので潰す
・自分は社長にふさわしくないので、ゲートルーラーを作っている大遊の社長を辞任したい

 放送後、Twitterアカウントでも次のような発言を行っている。

 また、ゲートルーラー公式Twitterアカウントも次のような発言を行なった。

 これらの発言から窺えることは、池田氏は、「ゲートルーラー」の販売元である大遊の代表取締役社長を辞任するが、「ゲートルーラー」の制作から手を引くわけではなく、今後も引き続き「ゲートルーラー」を素晴らしいTCGにするために全力を注ぐということだ。

【ゲートルーラー】

 今回、ブシロードから訴えられたのは、あくまで池田氏個人およびスタジオ池っちであり、「ゲートルーラー」や大遊が訴えられているわけではない。そのため、直接的にゲートルーラーの展開が阻害されるわけではないが、原作者や元最高責任者が、TCG業界大手のブシロードに訴えられたというのは、「ゲートルーラー」にとって大きなイメージダウンになることは間違いないだろう。

 「ゲートルーラー」第1弾の商品を販売していた店舗でも、今春発売の第2弾を発注するかどうか躊躇うところが増えてもおかしくはない。第2弾の世界観や構築済みデッキに関する情報も、池田氏から少しずつ明かされていただけに、このタイミングで訴えられたというのは、「ゲートルーラー」にとって大きな痛手となる。

 「ゲートルーラー」は、実際にプレイし、自分でデッキを構築してみないと、その本質的な楽しさや面白さ、難しさがわかりにくいTCGである。今回のことで、ゲートルーラーを敬遠する人が増えてしまうことを残念に思っている。しかし、以前から炎上気味であったとはいえ、またこれで知名度自体は上がったことも、間違いないだろう。TCGファンの一人として、一刻でも早く訴訟問題が解決することを望んでいる。