特別企画

「遊戯王」で全てのデッキを1キルデッキにしてしまった最凶カード「ダーク・ダイブ・ボンバー」の全盛期をキミは知ってるか!?

宇宙最強カード列伝の第1回は登場から15年が経過したDDB

【ダーク・ダイブ・ボンバー】

2008年11月15日 登場

 爆アドォォォ!アドえもんです! 筆者は普段YouTubeにて「遊戯王」を中心にカードゲーム動画を投稿している愉快でうるさいオジサンだ。

 今回の企画は「宇宙最強カード列伝」と題して、とんでもなく長い歴史を持つ「遊戯王」カードの中でも“色んな意味で”特に名高い連中を、そのカードが生まれた日に合わせて紹介するといった内容になっている。今となっては禁止カード化していたり、エラッタ(効果の弱体化)されて見るも無惨な姿になってしまったカードの全盛期の姿や時代背景なんかも合わせて若いプレーヤーに伝承していこうという感じだ。

 という訳で今回紹介するのは 15年前の今日、2008年11月15日に発売された「CRIMSON CRISIS クリムゾン・クライシス」にて収録した「ダーク・ダイブ・ボンバー」だ!

 頭のイニシャルだけをとって「D・D・B」と呼ばれたり、ガラケー時代のテンキー入力の名残で「佐々木」という別名を持つ大人気(?)モンスターの1人。筆者が最も大好きと言っても過言ではないシンクロモンスターでありながら、当時を知る多くのプレーヤーが嫌いと答えるカードでもある。登場後に多くのシンクロデッキで爆撃を起こしまり、当時史上最速の禁止カードとして牢獄にぶち込まれていった彼の歴史を紐解いていこう……!

あらゆるデュエルをいとも容易く終わらせた最強バーン効果とは!?

 まずはこのカードの能力についてザックリ振り返っておきたい。

 現在使用できる「ダーク・ダイブ・ボンバー」の効果は完結に説明すると「1ターンに1回、メインフェイズ1に自分のモンスターをリリースするとそのモンスターのレベル×200ダメージを与える」という効果となる。こう見るとメチャクチャシンプルだな!? そしてこのテキストは2014年以降にエラッタ(効果の弱体化)を受けた後の効果となっており、エラッタ前のテキストは上記から「1ターンに1回」の部分と「メインフェイズ1」の部分が無くなるだけで後は全て同じ能力である。

 相手のカードを無力化するタイプのエースを出し合う現代の「遊戯王」目線でみれば「ただのバーン効果持ちをそんなに恐れる必要があるの?」と思ってしまうかもしれないが、恐らくエラッタ前の効果だった場合は現代でもコイツはトップレベルでダメなカードである。

 つまりエラッタ前と後の違い、「メインフェイズ1」に限定した部分と、現代遊戯王ではありとあらゆるカードについている「1ターンに1回」という制限が無かったが為にこのカードは多くの惨劇を生んでしまったのだ……!

【【#遊戯王】こんな遊戯王に…”未来”なんて無い!〇〇禁止にしろ杯!『召喚ドラグマ』vs『幻影騎士団』【#爆アド】】
様々な追加ルールで当時の「ダーク・ダイブ・ボンバー」を使えた時のデュエルがこちら。ヤバイポイントが多いがその中でも奴の恐ろしさの片鱗がわかると思う

 なぜ強すぎたのかを説明すると、「遊戯王」では「1ターンに発動制限の無いバーン効果(効果ダメージ)」は悪用される実例を幾つも生み出してきたゲームなのだ。古の時代に遡れば「サイエンカタパ」から現代に至るまで、先行1ターン目キルを比較的簡単に可能としてしまうカードはその度に総じて禁止カード化している。

 最近では時代の変化でカード1枚あたりの強さが増し、1~2枚から無限にモンスターを生み出す事ができてしまった事で「キャノン・ソルジャー」系列のカードが一気に禁止カードになってしまったり、同じようなバーン効果を持っていて簡単にサーチ・リクルートが可能だった事で巻き添えを受けた「アマゾネスの射手」などもその代表だ。現代のパワーカードによる無限の展開力を用いてしまえば、どんなに使いづらいステータスのカードであっても展開ルートの中でデッキからアクセスして場に出力し、制限の無いバーン効果でダメージを与え続け、相手に何もさせずに勝てる方法が幾つも生み出されてしまう環境が出来上がっているのである。

トゥーンまで含めたキャノンソルジャー一族が禁止カード化され根絶やしにされてる理由はここにある
ステータス的にも「ギアギガント X」、「トゥーンの目次」等で簡単にアクセスできてしまったりなど、制限の無いバーン効果を持つには危険すぎる存在になってしまったのだ
展開カード側が直接的な要因でダメになったカードも数多く存在する。エラッタ前の「ファイアウォール・ドラゴン」なんかは特に多くの先行ワンキルを生み出す原因になっていた印象だ
他にも「アマゾネスの射手」における「M.X-セイバー インヴォーカー」のような「特定のステータスにならアクセスできますよ~!」的なカードが数多く生まれてしまったのもバーンによるワンキルを助長してしまった

 で、ここからが本題なのだが。今回の主役である「ダーク・ダイブ・ボンバー」はこの「遊戯王」における“バーン事情”に革命を起こしてしまった存在なのである。

 何故ならコイツはどんなデッキからも簡単に呼びだせる「キャノンソルジャー」だったからだ。

 今までのバーンキルの話は「特定の先行ワンキルデッキ」としてデッキを組む事が前提でゲームが崩壊しかけていたというニュアンスの話だったが、「ダーク・ダイブ・ボンバー」に関してはその軽すぎる召喚条件からありとあらゆるデッキから飛び出してきて来ていきなりゲームを終わらせてくるのである。

 召喚条件が「チューナー+チューナー以外のモンスター」となっており極めて緩く、これが引き金となって、彼が禁止カードとなった14年前のカードプールですら先行1キルをできる展開ルートがかなり存在していた。何よりもほとんどのデッキがバトルフェイズで適当にダメージを与えた後にメインフェイズ2で「ダーク・ダイブ・ボンバー」を作れば勝てるような環境になってしまったのだ。

 では当時の「ダーク・ダイブ・ボンバー」を用いたパワーのあるデッキを思い出してみよう。

全盛期を「ダーク・ダイブ・ボンバー」と共に走り抜けたテーマたちを振り返ろう……

儀式と組み合わせた「デミス1キル」

 「高等儀式術」から闇属性レベル4の通常モンスターを2体を落とす事で「終焉の王デミス」を呼び出し、デミスの効果でフィールドを全破壊した後に「ブラック・ボンバー」を召喚して高等儀式で落としたモンスターを蘇生して「ダーク・ダイブ・ボンバー」をシンクロ召喚。2体で相手にダイレクトアタックした後にメインフェイズ2で「ダーク・ダイブ・ボンバー」効果を使用し、自分自身とデミスを相手のライフにシュートする事で丁度8000削りきるといったデッキだ。このデッキは当時目線でも専用デッキに分類されるのでまだマシである。

デミスのブッパからジャストキルまで美しい流れでキルが可能なコンボ
筆者が心の底から愛している「ブラック・ボンバー」が存分に活躍できるデッキだったのでメッチャ好きだった

シンクロ全盛期を代表するデッキの1つ「ブラックフェザー」

 当時基準だと「黒い旋風」や「ゴッドバードアタック」などの強力な魔法・罠カードを使ってアドバンテージ差をしっかり広げつつ、テーマ内のモンスターを含めて状況に合わせたシンクロモンスターを簡単に生み出せる所が強みであり面白さとなっていた。

 が、状況に合わせて簡単に好きなレベルのシンクロ召喚を行なえるという柔軟性が本記事の中心人物である“奴”を呼んでしまう。

 一瞬でも隙を見せようものなら「BF-蒼炎のシュラ」を召喚してから「BF-疾風のゲイル」と「BF-黒槍のブラスト」を特殊召喚されて、ゲイルで攻撃力を半減された後にシュラがモンスターを破壊し適当にモンスターをリクルート。総攻撃をした後にメインフェイズ2で「ダーク・ダイブ・ボンバー」を作ってモンスター全員を相手のライフにシュートすれば大体ゲームが終わっていた。

自力がしっかりあるテーマなのに、よりにもよって一番簡単に特殊召喚できる最強モンスターのゲイルとブラストのレベル合計が偶然にも7ってのがヤバかったよね……

元祖墓地利用テーマかつ、形を変えることで長い間環境に残り続けた「ライトロード」

 最強エースである「裁きの龍」や当時は強かった「ライトロード・エンジェル ケルビム」等で盤面を荒らしつくした後、墓地肥やしの過程で「ゾンビキャリア」が落ちてようものなら「ケルビム+ゾンビキャリア」や「ルミナス+ライコウ+ゾンビキャリア」で「ダーク・ダイブ・ボンバー」をシンクロ召喚。「裁きの龍」と「ダーク・ダイブ・ボンバー」でダイレクトアタックからメイン2に相手のライフにシューしてゲームセットである。

 手札と墓地の落ち具合が良い時は特殊召喚で大量に湧きまくった「裁きの龍」や「ライトロード・ビースト ウォルフ」をバトル前に射出し続けるだけで勝てる時もあった程だ。

テーマ的に特殊召喚を連打できる事に加えて、墓地から簡単に出てくるチューナーが居た事も当時としては大きかった
純然たるライトロードの動きをしている“ついでに”運が良いと「ダーク・ダイブ・ボンバー」が出てきてワンキルする所がまたなんとも……

 もう何となく察しがつくと思うが、このように汎用性のあるバーン効果持ちがEXデッキに入ると、ほとんどのテーマが不意に簡単なワンキルをできるようになってしまうのだ。何よりも最悪なのは環境デッキに留まらずほとんどのシンクロ召喚をできるデッキが「ダーク・ダイブ・ボンバー」を出すことで勝てる状況を生み出せるようになってしまった事だろう。

 この当時は大会だけでなくフリープレイでもメイン2での「ダーク・ダイブ・ボンバー」を絡めた1キルは当たり前。展開力が高いデッキの上振れで稀にターンが回ってこないで敗北という事例が続出する事となった。良い感じにゲームをプレイできたとしても中盤にライフを少しでも失えばいつでも銃口を頭に突き付けられてる気分になるため、控えめに言ってゲーム体験として健全なものでは無かっただろう。

 加えて当時は手札誘発と呼べる存在も「D.D.クロウ」位しかまともな選択肢が無く、シンクロ全盛期は特に「遊戯王」全体の“展開力”が上がり始めた時期でもあったため、そこに合わせて汎用性が高すぎるバーンカードとして「ダーク・ダイブ・ボンバー」が登場してしまったのは色々と悪い方向に噛み合ってしまった感が否めない。今でこそ「無限泡影」での無効や展開に「灰流うらら」など対抗手段が存在するが、「エフェクト・ヴェーラー」すら無い時代に展開のゴールがバーンキルという点が当時の印象を下げた要因ではと思っている。

 多くの悲しみを残した後、2009年9月1日に当時としては史上最速となる290日という速さで「ダーク・ダイブ・ボンバー」は禁止カードとなってしまった。ちなみに筆者はかなり悲しんだが、周りのプレーヤーは誰も悲しんで無かった。

デッキによっては「D.D.クロウ」による除外妨害、バトルによるダメージを「冥府の使者ゴーズ」や「トラゴエディア」で緩和する事で対抗できてはいたのでメタゲームとして面白い部分もあった。ちなみに運が悪いと返しのターンに出てきたゴーズやトラゴエディアをダークダイブボンバーで発射されて負けることもある。酷すぎィ!

悲しきテキスト修正! 時の流れで全盛期のトゲトゲしさは見る影もなく……!

 そんな「ダーク・ダイブ・ボンバー」も今ではエラッタによるテキスト修正、さらに時代が進んだことで召喚方法の追加や現代のカードの性能が“パワーカード過ぎる”事によって良くも悪くも強さが霞むような存在となってしまっている。

 個人的にはアニメで登場した際のカッコ良さやが凄まじかったり、当時の環境がそこまで嫌いではなかった事も合わさって思い出深く大好きなカードなのだが、「遊戯王」の歴史的には凶悪なカードとして名を残している印象の方が強いだろう。このカードの登場以降は簡単にバーンダメージを飛ばせる汎用EXモンスターが生まれなかった事からも、彼の登場が「遊戯王」の歴史の中で重要な要素となったことを裏付けている。

ちなみにその後に登場した召喚条件やバーン条件が重くなったシンクロモンスターである「マジックテンペスター」も違う時代に禁止カードとなっている。やっぱEXデッキから大ダメージのバーンを狙えるカードはアカンて!!!

 とはいえ、弱体化したこのカードにも使い道が全然あるのが「遊戯王」の面白い所。

 例えば無限にパワーカードが存在する現代カードプールであれば、1体のモンスターのレベルを40以上にする事で「ダーク・ダイブ・ボンバー」による先行ワンキルが今でも可能だ!

 レベルアップ効果を無限ループさせてレベルを上げ続けるも良し、「幻獣機」モンスターや「ミラー・レディバグ」のようにレベルをタコ盛りできるカードと「ギャラクシー・クィーンズ・ライト」をデメリットの発生しないように組み合わせて使うも良しと、様々な方法で活躍させられる方法が残されている。ぜひ決闘者諸君は「ダーク・ダイブ・ボンバー」の黄金時代に思いを馳せながらデッキ構築を試してみて欲しい。

 こんな感じで今後もヤバすぎる時代を作ったカードを紹介していく、その時はチェックしてくれると嬉しいぞ! それではグッッッッ爆アドォォォ!!!