特別企画

連載第3回「"撃つ姿が美しい"モデルガンの世界」

盛大な発火を楽しめるリボルバー「S&W M19」で、さまざまなカートリッジを撃ち比べ

 モデルガンならではの「撃つ姿」のカッコ良さを紹介する連載企画。これまでは「オートマチックモデルガン」の発火について紹介してきた。オートマチックのモデルガンでは火薬のエネルギーを"排莢"にも使う。一方でリボルバーは機構がシンプルで音と火花など、迫力ある発火の楽しみに全エネルギーを振り分けることができる。

 リボルバーのモデルガンは排莢アクションこそないが、シリンダーが回り、ハンマーが落ちると「バアン」という大きな音と共に火花と煙が銃口からだけでなく、シリンダーと銃身の間からも漏れ出る。火薬のエネルギーが発火のみに向けられているため、勢いも増しておりより派手だ。次弾を撃つときにシリンダーが回るという動作が、オートマチック拳銃とは違う独特のキャラクター性を持っている。

 そして購入時に同梱されている「シングルキャップカートリッジ」だけでなく、オプションで「ダブルキャップカートリッジ」、さらには「トリプルキャップカートリッジ」でよりド派手な発火を楽しめるのである。

 なによりリボルバー拳銃を発火させるアクションは、自分が刑事ドラマの刑事や西部劇のヒーローになった気持ちにさせてくれる。そして今回「リボルバーの発火」というテーマでチョイスしたのが「S&W M19 4インチ コンバット マグナム」。「ルパン三世」の次元大介の銃である。

.357マグナムのモデルガンカートリッジのバリエーション

 今回はタナカワークスの「S&W M19 4インチ コンバット マグナム ヘビーウエイト Ver.3」を使って、リボルバーの発火の魅力、カートリッジによる発火の違いを紹介したい。

リボルバーモデルガンならではの楽しさ

 銃を一般人も使えるアメリカでは、護身用であってもコンパクトオートマチックが主流になりつつある。もちろんリボルバーを護身用として選ぶ人もいるが、リボルバーは愛好家向けや狩猟など特定用途でのニーズが多いという。

刑事ドラマの金字塔「太陽にほえろ」松田優作演じるジーパンこと柴田純刑事は、命中精度が高く殺傷力が低いという設定の「ミリタリーポリス22」というリボルバーを使用する

 日本では、リボルバー拳銃は警察など公的機関で採用される装備品として主流である上に、刑事ドラマやアニメ、マンガでも登場人物が使用するアイテムとして登場する機会も多く。往年のハリウッド映画でもリボルバーは印象的に使われているので、趣味のアイテム、「憧れのアイテム」として存在感は依然衰えない。

 リボルバーは装弾数も5発ないし6発であるモデルが多く、リロード(再装填)もオートマチックと比較すると時間がかかる。火力や制圧力といった面ではオートマチックの方が有利だが、それでもリボルバーを選ぶ理由はその構造にある。

スイングアウトしたシリンダーに収まったカートリッジ。「戦闘準備完了」という雰囲気が良い

 リボルバーの構造は、回転式弾倉である「シリンダー」が撃つたびに回転して装填された弾薬を発射するのが基本となる。トリガー(引き金)を引くだけでハンマー(激鉄)を引き起こして落とす動作となるダブルアクション、ハンマーを指で起こして引き金を引くシングルアクションのどちらか、または両方が行える。

 西部劇に登場する銃の多くは撃つたびにハンマーを起こすシングルアクション方式で、最近の銃はシングルアクション・ダブルアクションの両方が行えるものが多い。一部ハンマーを露出させていないダブルアクションのみのリボルバーもある。機構によって銃の形状や運用方法も変わってゆく。オートマチックも同じだと思うが、リボルバーの場合にはその使い分けが明確に出る気がする。

 「咄嗟に抜いてシリンダーにある全弾を撃ち込む」なら短銃身のリボルバーで、ハンマーシュラウド(覆い)付きが良い。「ハンマーを起こし、狙いを定めて狙い撃つ」、「ある程度の交戦距離がある状況で撃ち合う」などの状況では、バレル長のあるシングル・ダブルアクション両方使えるモデルが良いなど、想定するシチュエーションによっても選ぶ銃が変わってくる。こういった空想をするのもガンマニアの楽しみだ。

S&W M19 ”コンバットマグナム” 4inchについて

 魅力あるリボルバー拳銃の中で、今回使用する、「S&W M19 ”コンバットマグナム”」は「ルパン三世」に登場する銃の名手、次元大介の愛銃として有名だ。作品や時期によってM19の4インチだったり2.5インチだったり、さらにはM27を使う作品もあるが、筆者としてはアニメ「ルパン三世」が自分の原体験であり、「S&W M19 4インチ」が次元大介の銃として印象が深い。

 そのコンバットマグナムを目にも止まらぬ速さで抜いて立ちはだかる敵を「早撃ち0.3秒」で倒してゆく。そんな姿に憧れを持ち、自分でも手にしたいと思い、タナカワークスの「S&W M19 4インチ コンバット マグナム ヘビーウエイト Ver.3」を入手した。

【『次元大介』 予告動画 | プライムビデオ】
Amazon Prime Video「次元大介」予告編より

 もう1つ今回の発火紹介にM19を選んだ理由がある。それはM19の設計が、元々「.38スペシャルカートリッジ」向けのKフレームを拡張し、「.357マグナムカートリッジ」も撃てる銃として設計されてた「さまざまなカートリッジを撃てる銃」という能力を持つためだ。4インチというのも、「カートリッジの違いによるマズルフラッシュ(銃口からの火花)の差がわかりやすいかも?」と思った。

.38スペシャルと、.357マグナムのモデルガン用カートリッジとS&W M19 4インチ

 今回使用したモデルガン、タナカワークスの「S&W M19 4インチ コンバット マグナム ヘビーウエイト Ver.3」は、S&W Kフレームのモデルガンとして最新のVer.3機構を採用し、刻印などもリアルに再現されている。タナカのVer.3機構は、スムースでコントロールしやすいS&Wの独特のメカニズム、いわゆる”チチバン”も忠実に再現する。

 「チチバン」とは、ダブルアクション時に、トリガーを引いた際のトリガー、シリンダーストップ、ハンマーが連動し、シリンダーがロックされてからハンマーが落ちる機構の作動音からきている。トリガーを弾き始めに「チッ」とシリンダーストップが解除され回転が始まったシリンダーと接触する音が鳴り、2回目の「チッ」でシリンダーがロックされる。その状態でトリガーを絞り込めば、実質シングルアクションと同様の精度が得られるというもの。

 いつハンマーが落ちるかのタイミングをはかりにくいダブルアクションにおいて、S&Wの機構は射撃タイミングを射手が把握しやすいので射撃精度が上がると評価されている。その機構を再現しているので、ダブルアクションで遊ぶ際に、リアルさが感じられて気分が盛り上がるのだ。

 ゆっくりトリガーを引くとわかりやすいが、素早くトリガーを引いても「チチッ」の音は確認できる。次元も銃撃戦の最中でこの音を頼りに狙いを定めていたのだろうか?とイメージがふくらむ。

 かつてはこの「チチバン」を再現するには細かな調整が必要だった。手間暇かけてパーツを調整し、正確な動作を再現していたものが、買った時にすでに再現できているというのも隔世の感がある。

タナカ 標準(シングルキャップ).357マグナム カートリッジ

 いよいよ発火をしていこう。現行のリボルバー用カートリッジは、外寸を同じにすれば内部構造はある程度自由に設計できる。タナカやハートフォードでも、標準のシングルキャップカートリッジの他、ダブルキャップカートリッジを開発し、オプションとして販売している。さらに、サードパーティメーカーからもトリプルキャップなど、さらにたくさんの火薬をセットできるカートリッジも存在する。

タナカとハートフォードのスマイソン(スモルト)と、KSCのキングコブラ(いずれも、.38Special, .357MAGNUMカートリッジを使用する銃)で、メーカー純正カートリッジを相互に入れ替えてみたり、サードパーティのトリプルカートリッジをセットしてみる。サイズが合えばシリンダーに収まり、発火させることも可能だ
シングル、ダブル、トリプルとさまざまなカートリッジを準備。撃つのが楽しみだ

 最初に紹介するのが、タナカのリボルバーに標準で付属するのがこの形式のカートリッジだ。キャップ火薬を1つセットして、発火を楽しむ。リボルバーは前述のように火薬のエネルギーを100%音とマズルフラッシュに使えるので、シングルキャップで十分迫力ある。

タナカ純正のシングルキャップカートリッジ。シンプルな構造でスタイルもいい
火薬をセットするために分解した様子。プライマー(カートリッジのボトム側インナー)パーツの先端に突起があることで、発火を確実にする工夫が凝らされている
【タナカ S&W M19 4inch標準カートリッジ(シングルキャップ)の発火】
シングルキャップでの発火の様子。銃口から火花も確認できるし、音もしっかり聞こえる。迫力もあってシングル(ノーマル)カートリッジでも十分という気もする

タナカ .357マグナム ダブルキャップ カートリッジ

 最近タナカから発売された、ダブルキャップカートリッジは、キャップ火薬を二つ使用して迫力ある発火を楽しむことができるとしている。標準カートリッジがホローポイント弾を模したデザインとすると、ダブルキャップカートリッジは、セミ・ジャケッテッド・ホロー・ポイント(SJHP)弾のようなデザインで、雰囲気もアップ。他の種類のカートリッジとあわせてカートリッジケースに収納した際も見分けがつきやすい。

タナカ純正のダブルキャップカートリッジ。お値段も納得の高級な仕上がり。メッキされたカートリッジケースは撃った後のメンテナンス性にも優れる
火薬をセットするために分解した様子。デザートイーグルのダブルキャップカートリッジと構造が似通っている。カートリッジ底部の刻印もリアルな感じで良い。
【タナカ S&W M19 4inch、タナカ製.357マグナム ダブルキャップ カートリッジの発火】
ダブルキャップでの発火の様子。火花も多く出て、音も大きくなっている。発砲後の銃口からの煙も多くて雰囲気がある。シリンダーギャップ((バレルのフォーシングコーン、銃身の根本とシリンダーのわずかな隙間)からの火花が漏れる様子も迫力を感じる

C-TEC .357マグナム トリプルキャップ+1 カートリッジ

 C-TECから発売されている、トリプルキャップ+1カートリッジは、発火のためのキャップ火薬に加えて、音や火花のための火薬を最大3つ、合計4つのキャップ火薬をセットできる。ここまでする必要があるのかというくらいカートリッジの設計限界にチャレンジしている。デザインも、セミ・ジャケッテッド・ホロー・ポイント(SJHP)をイメージしており底面の刻印もあってリアルさも感じられる。購入時はスプリングがセットされており、空撃ちカートリッジとしても使えるのがよい。

C-TECのトリプルキャップ+1カートリッジ。パーツ数も多く、複雑な構造になっている
火薬をセットするために分解した様子。発火用として薬莢部に1つ、火花や音など演出用のキャップ火薬を弾頭部のパーツに最大3つセットできる。
【タナカ S&W M19 4inchC-TEC .357マグナム トリプルキャップ+1カートリッジの発火】
トリプルキャップ+1での発火。もはや爆音と言って良い轟音と盛大な火花となる。シングルキャップはモデルガンの音だとイメージできるが、トリプルキャップはそれ以上の迫力を感じる。火花も、銃口だけでなくシリンダーギャップからも漏れて迸る様子が見て取れる。銃へのダメージを考えると頻繁に使うのは躊躇われるが、機会ができたら撃てるように、手元に置いておきたいカートリッジでもある

爆音と硝煙で浸れる世界観

 リボルバーでのシングルキャップ、ダブルキャップ、トリプルキャップカートリッジをそれぞれ試した。オートマチックと異なり、火薬のパワーをモデルガンの動作に使用しなくて済むので、キャップ火薬の数が増えるほど、銃口から出る火花や硝煙(ケムリ)の迫力が大きくなる。

上からトリプルキャップ+1カートリッジ、ダブルキャップカートリッジ、シングルキャップカートリッジ。火薬量が増えるほどスタイルも凝った作りになっているように思う

 発火以外でも、スタイルの違うカートリッジがあると、気分によってカートリッジを選んだり、カートリッジのスタイルや仕組みから、このカートリッジは精度を高めた特別製、これは威力を高めたもの、などの設定を自分のイメージで割り当てて、銃へのセットをするなどロマンを楽しむ際にも使える。

 実際の発火では、セットしたキャップ火薬の分量の差による違いが感じられた。同じ環境で撃った時の感じは、シングルでは「バンッ!」ダブルでは「バァンッ!!」という感じの音。煙もダブルの方が多いと感じる。トリプルキャップ+1では「ドガァン!」という感じの音になる。射手側も、撮影側も、発射の圧力、銃口周囲の空気が圧縮され圧力が迫ってくるのを感じるほどの迫力だ。煙も多く出るので強力な銃を撃っている!という気になる。大迫力なので満足感も高いが、あまりにも大きな音なので、ちょっとやり過ぎたかも?と思ってしまう部分もあった。

 モデルガンの発火体験には、2つの注意点がある。1つは大きな音がするので発火する場所を選ばなければいけないこと、もう1つがモデルガンの宿命とも言える発火の衝撃によるモデルガンの破損や、火薬カスの掃除などのメンテナンスだ。今回、トリプルキャップカートリッジの体験は、ファストドロウ(早撃ち競技)の練習会の休憩時間に、周囲の許可を得て撃ってみた。それ以外にも、モデルガンの発火体験会などが各地で開催されている。XなどのSNSでも、開催告知や参加者募集が行われているので、そういった場に参加して発火体験をするのも良いだろう。

 また、筆者の自宅はリフォームによってペアガラス構造となり、断熱性能だけでなく、遮音性も向上した。外の騒音が伝わりにくいだけでなく、室内の音も漏れにくい。カーテンを閉めてモデルガンを撃っても大丈夫だろうと思い、最近は自室で撃つことも増えた。

 もう1つの課題、モデルガンの破損は火薬を爆発させるモデルガンにおいては避けては通れない宿命でもある。火薬カスや硝煙は腐食の原因にもなるし、発火させることは銃に負担をかける。メーカー純正品のダブルキャップカートリッジであってもパッケージには「通常より銃本体への火薬によるダメージが大きくなります」などと注意書きがある。いわんやトリプルキャップカートリッジをや、である。

 しかしこういったカートリッジが市販されていることこそ、「迫力のある発火を体験したい!」、「少しでも本物の銃の気分を味わいたい」という気持ちの現れだろう。実際、筆者はトリプルキャップの発火に大満足だった。「壊れるかもしれないから発火はしない」というモデルガンユーザーもいるかもしれないが、筆者はやはり発火を楽しみたいし、発火の楽しさを勧めていきたい。

 モデルガンは安全性確保のため、バレルやシリンダーのにインサートがあり、必要最小限の強度しかないので破損しやすいと言われる。メーカーもそのように案内しているし、ユーザーもそのことを理解して手にしている。しかし、必要以上に破損を恐れる必要はない。筆者の経験では、MGCのモデルガンなども含めて多くのモデルガンで遊んできたが、発火で壊れた、破損したという事例はわずかしかない。実銃だって弾を撃てば銃本体に影響は出るし、メンテナンスや補修も必要となる。発火させることでより実銃に近い体験ができる、というのは間違いないのだ。

 筆者は発火をこれからも楽しんでいきたいし、その結果、破損してしまったとしても後悔はない。現行製品はパーツ供給もあるので修理やメンテナンスは容易な上、修理作業に不安な場合はメーカーに送れば修理してくれるので気兼ねなく撃って楽しめる。破損を過度に恐れず、気軽にモデルガンの発火体験にチャレンジしてもらいたい。

 もちろん、筆者も入手したすべての銃ですべて発火をするわけではない。モデルによっては飾る用、ブルーイングなど仕上げを楽しむ用、操作感を楽しむダミーカート仕様など、その銃の性質によっても変わってくる。限定モデルなど「動かすことすら勿体無い!」と思う「保管用」アイテムもあるが、レギュラー製品で再販も繰り返されているモデル、人気のモデルなら遠慮なく撃てる。そういう意味でも、タナカのS&W M19 ”コンバットマグナム” は、永遠のマスターピースとも言える定番アイテムで、機構も改良されバージョンアップを繰り返し発売され続けているので、「バンバン撃てる銃」の1つと言える。

 また、ダブルキャップカートリッジやトリプルキャップカートリッジであっても、常に規定数のキャップ火薬を詰める必要はないということも触れておきたい。必要に応じて、キャップ火薬の量を選べるので、追加でカートリッジを買う際は、あえてダブルキャップやトリプルキャップカートリッジを買って、状況に応じてセットする火薬を調整してもよいだろう。大きな音が出せる会場などに行くことを考えて、トリプルキャップカートリッジを持っておきここぞと言うときに発火させる、というのもオススメだ。ぜひ魅力的なモデルガンの世界に足を踏み出してほしい。