特別企画

「マクロス」よりプラモデル「クァドラン・ロー “ミリア” (劇場版)」を全塗装

全高259mmの迫力あるハセガワ製キット。グラデ塗装で曲線ボディがダイナミックに映える

【クァドラン・ロー “ミリア” (劇場版)」

開発・発売元:ハセガワ

発売日:2023年12月2日

価格:6,380円

 ハセガワが展開するマクロスプラモデルシリーズより、メルトランディ軍のエースパイロットであるミリア639が搭乗するクァドラン・ローがキット化されました。1/72スケールでの立体化ということで、全高は259mmにも及ぶ迫力あるキットとなっています。今回はプラモデル「クァドラン・ロー “ミリア” (劇場版)」を、劇中をイメージした全塗装で仕上げていきます。

女性兵士にて構成されたメルトランディ軍によって運用されたバトルスーツ

 「クァドラン・ロー “ミリア” (劇場版)」は、1984年に劇場公開された映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」に登場するバトルスーツです。メルトランディ軍のエースパイロットであるミリア639によって運用され、劇中では統合軍スカル小隊の隊長であるマクシミリアン・ジーナスと死闘を繰り広げました。ミリア639の搭乗するクァドラン・ローは赤を基調とした専用カラーに塗装されており、パープルを基調としたカラーリングの一般機とは差別化されています。

スナップフィットの採用と多彩な成形色でそのままでも十分に楽しめるキット

 今回制作する「クァドラン・ロー “ミリア” (劇場版)」は、ハセガワが展開するマクロスシリーズの最新キットとして12月2日に発売されました。接着剤なしで組み上げられるスナップキットで、6色の成型色によって作られたパーツは組み立てるだけで設定に近い配色となります。また、一部塗り分けが必要な箇所は水転写デカールによる塗り分けが採用されており、無塗装派ユーザーにも嬉しい仕様となっています。

「クァドラン・ロー “ミリア” (劇場版)」を全塗装で制作

 それでは「クァドラン・ロー “ミリア” (劇場版)」を制作していきましょう。今回は設定どおりの配色を行ない、キット自体もプロポーションの変更等は行なわず制作して行きます。

今回使用したツール類。接着剤は用途に合わせて3種類を使い分けています。
今回使用した塗料類。各仕上げ色は組み立て説明書のカラーレシピを参考にし、そのカラーに合わせて影色を選定しました。

 まずはキットの様子を見るために仮組みを行ないます。本キットはこれまでにハセガワから発売されてきたバルキリー系のキットとは異なり、接着剤なしで組み立てられるスナップキットです。仮組とその後の解体が簡単に行なえる仕様となっています。

仮組みを行なったクァドラン・ロー。しっかりと設定通りに色分けがされており、素組でも十分かっこよく仕上がります。
パイロットフィギュアはグレーによる単色成型となっており、この箇所だけは組み立てに接着剤が必要です。

クァドラン・ローの曲線美を際立たせる合わせ目処理と後ハメ加工

 今回制作するクァドラン・ローは機体の曲線美を最大限表現できるように造形されています。各部の装甲は美しいカーブを描いていますが、素組みでは合わせ目が出てしまう箇所もあります。また、本キットの膝関節は曲げた際にスラリとした大腿部が見えるよう可動軸の位置が調整されており、大腿部は脛パーツによる挟み込みの構造となっています。今回の作例では、塗装前に各部の合わせ目処理を行ない、大腿部には後ハメ加工を施すことで塗装の効率化を図ります。

挟み込みとなっている膝関節の断面。可動軸が膝裏のカバー内側に位置しています。
後ハメ加工には大腿部内部フレームを黒線部分で切断して分割、外装パーツは黒ハッチング部分を片面1mmずつ削り、差し込み用のスリットを作成します。
加工が完了した大腿部パーツ。切り離した内部フレームをあらかじめ脛パーツに挟み込んでおくことで後ハメを可能としています。なお、塗装後の組み立ては切断部分を接着剤で固定します。

 後ハメ加工が完了したら合わせ目消しを行ないます。今回の合わせ目消しには流し込み接着剤を使用して合わせ目消しを行ないました。

合わせ目消しにはクレオス「Mr.セメントSPB(ブラック)」を使用して合わせ目消しを行ないました。

光沢仕上げを見据えた既存モールドの彫り直し

 今回の作例ではクァドラン・ローの外装パーツを光沢仕上げにて塗装を行ないます。プラモデルを光沢仕上げにて制作する際には、光沢クリアーを何層も吹き重ねることで光沢を表現していきます。クリアーを何重にも重ねると、ハセガワのキットの特徴ともいえる細くシャープなモールドは埋まってしまうことがあります。そこで、あらかじめモールドを深く彫り直すことで対策しておきます。

モールドの彫り直しはニードルにてモールドをなぞり、深く彫り直していきます。
ニードルによって彫り直したモールドは毛羽立ちがあるので、ナイフで面を整えて完了です。
モールドを彫り直す前のパーツ(写真左側)と彫り直したパーツ(写真右側)。モールドがシャープになっていることがわかります。

下地色の選択によって雰囲気が大きく変わる立ち上げ塗装

 パーツの加工が完了したら塗装に入ります。今回の塗装ではキットのカラーレシピを参考に仕上げ色を決定し、その仕上げ色に合う影色を塗装していきます。私はキットを塗装する際の技法として立ち上げ塗装をメインに行なっています。この塗装方法は、パーツのエッジ部分やモールド部分に影となる色を入れることで立体感を際立たせる塗装方法です。立ち上げ塗装の一種としてパーツを真っ黒に塗装した後に仕上げ色で立ち上げる「黒立ち上げ塗装」が有名ですが、今回の作例では仕上げ色と同系色を使用した立ち上げ塗装を行なっています。クァドラン・ローは赤系統の配色が多いため、下地のサフはホワイトを選択しました。

影色を塗装した前腕部パーツ。仕上げ色が赤色ということで影色は赤褐色を選択しました。
影色を塗装したつま先パーツ。仕上げ色はパープルがかったグレーなので影色はダークバイオレットを選択しました。

 私は仕上げ色に合わせた影色を選択する際のポイントとして、可能な限り「黒」以外の色を選択することを心がけています。今回の作例では赤色に対する影色として赤に茶を加えた赤褐色を選択しています。なお、パープルについてはこの色自体が暗い色をしているので例外的に黒を加えたダークバイオレットを選択しています。

仕上げ色を立ち上げた前腕部パーツ。立体感と重厚感のある仕上がりとなりました。
仕上げ色を立ち上げたつま先パーツ。スミ入れをしなくても凹モールドがはっきりと見えます。

 この調子で各パーツを塗装していきます。今回の作例では外装の各パーツをグラデーションにて、関節部等の配色はベタ塗で仕上げました。

重厚感のある塗装に仕上がったクァドラン・ロー

 それでは塗装が完了したクァドラン・ローを見てみましょう。機体上部のアンテナは2種付属しており、塗装前と塗装後では異なる形状のパーツを選択しています。

【正面】
塗装前
塗装後
【側面】
塗装前
塗装後
【背面】
塗装前
塗装後

 立ち上げ塗装を行なうことで立体感と重厚感がある仕上がりとなりました。各部のディテールを見ていきましょう。

各関節には可動域が設けられているので少しポーズをつけてみました。外装パーツの光沢とつや消しの対比により全体を引き締めています。
肩部関節は3軸可動のため、大きく可動させることが可能です。
クァドラン・ローは左右対称の形状となっているため、左右どちらに向けても安定してかっこよくポーズを決めることが可能です。
後ハメ加工を施した脚部。本キットでは膝関節の可動軸が膝裏にあることで膝を曲げた際も脚部の曲線美が損なわれません。
脚部の可動で表情をつけることができます。胸部の中口径速射インパクト・カノンはボールジョイントで可動します。
中口径速射インパクト・カノンは内部を関節色に塗装することで使用感のある仕上がりとしています。
バックパックの白色のラインはデカールによるマーキングとなっています。
背部のメルトランディ文字によるミリアのイニシャルマークはデカールにて再現されています。
関節色としているGSIクレオスの「黒鉄色」はメタリックカラーながらツヤ消し仕上げとすることで主張しすぎないよう、注意して塗装しています。
ミサイルハッチのマーキングは展開時専用のデカールが付属するので難なくマーキングを表現できます。
バックパックと膝のミサイルには細かいモールドが施されているため、スミ入れのみで立体感が出ます。脚部および背部のミサイルハッチは、部品の差し替えにより、開/閉状態が再現可能です。
関節を曲げることで両手を前で組むようなポージングも可能です。
指パーツは一体成型のため、関節部の黒色は先に塗装した後にマスキングを行ない、パープル部分を塗装するときれいに仕上がります。
コクピット内部までしっかりとディテール表現されています。ミリア639のフェイスパーツは、瞳のデカールが付属しているので簡単に仕上げることが可能です。
コクピット内部のディスプレイは表示内容がデカールにて再現されています。
ミリア639のパイロットスーツはクァドラン・ローの外装と同様に立ち上げ塗装で仕上げました。

 いかがでしょうか。今回制作したクァドラン・ローは全高259mmの迫力あるサイズ感と程よいパーツ数による組み立てやすいキットとなっています。パーツの色分けも成型色で対応しているだけでなく、白色や黒色の塗分けは水転写デカールにて塗りわけることが可能なので、これまでにマクロスキットを作ったことがない無塗装派ユーザーにも満足できるキットではないかと思います。この記事をきっかけにクァドラン・ローにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

今回使用した工具一覧
使用工具品名
ニッパーGSIクレオス Mr.シャープネスニッパー両刃タイプ
ニッパーゴッドハンド アルティメットニッパー5.0
ナイフタミヤ モデラーズナイフ
ノコギリGSIクレオス Mr.モデリングソー・ラージ (0.1㎜刃付属)
やすりピットロード PY06「フィルムスティックやすり 600番」
やすりピットロード PY07「フィルムスティックやすり 400番」
やすりゴッドハンド 神ヤス #600
やすりゴッドハンド 神ヤス #400
やすりゴッドハンド かまぼこヤスリ 8mm 単目 細目
接着剤クレオス Mr.セメントSPB(ブラック)
接着剤セメダイン ハイグレード模型用
接着剤造形村 瞬間接着剤 高強度タイプ 「剛着」
パテフィニッシャーズ ラッカーパテ
デカール軟化接着剤GSIクレオス Mr.マークセッター
今回使用した塗料一覧(クァドラン・ロー)
工程使用塗料
下地ガイアノーツ サーフェイサーエヴォ ホワイト
下地色(レッド)ガイアノーツ ボトムズカラー ブラッドレッド
上塗り(レッド)クレオス Mr.カラー あずき色+マルーン
下地色(ピンク)クレオス Mr.カラー ピンク+パープル
上塗り(ピンク)クレオス Mr.カラー ピンク+パープル+ガイアノーツ Ex-ホワイト
下地色(パープル)ガイアノーツ ボトムズカラー ダークバイオレット
上塗り(パープル)クレオス Mr.カラー パープル+エアクラフトグレー
下地色(コックピット)クレオス Mr.カラー 艦底色
上塗り(コックピット)クレオス Mr.カラー RLM23レッド
上塗り(関節)クレオス Mr.カラー 黒鉄色
部分塗装(ブラック)クレオス Mr.カラー つや消しブラック
部分塗装(センサー基部)クレオス Mr.カラー シルバー
部分塗装(センサーカバー)ガイアノーツ クリアーイエロー
部分塗装(ディスプレイ)ガイアノーツ Ex-ブラック
トップコート(光沢)ガイアノーツ Ex-クリアー
トップコート(つや消し)クレオス Mr.カラーGXスーパースムースクリアー<つや消し>
スミ入れタミヤ スミ入れ塗料(ブラック)
ウォッシングタミヤ タミヤエナメル フラットブラック
今回使用した塗料一覧(ミリア639)
工程使用塗料
下地ガイアノーツ サーフェイサーエヴォ ホワイト
下地色(レッド)ガイアノーツ ボトムズカラー ブラッドレッド
上塗り(レッド)クレオス Mr.カラー あずき色+マルーン
下地色(ピンク)クレオス Mr.カラー ピンク+パープル
上塗り(ピンク)クレオス Mr.カラー ピンク+パープル+ガイアノーツ Ex-ホワイト
下地色(イエロー)ガイアノーツ ナスカカラー マンダリンオレンジ
上塗り(イエロー)クレオス Mr.カラー イエロー
上塗り(バイザー)クレオス Mr.カラー パープル+ガイアノーツ Ex-ホワイト
上塗り(肌)クレオス Mr.カラー LASCIVUS(ラスキウス) ホワイトピーチ
上塗り(髪)クレオス Mr.カラー デイトナグリーン+ガイアノーツ Ex-ホワイト
上塗り(唇)クレオス Mr.カラー マルーン
トップコート(光沢)ガイアノーツ Ex-クリアー
トップコート(つや消し)クレオス Mr.カラーGXスーパースムースクリアー<つや消し>
部分塗装(ブラック)タミヤ タミヤエナメル フラットブラック
チークタミヤ ウェザリングマスター<Hセット> ピーチ