特別企画
水鉄砲をモデルガン塗装技術でカッコ良く仕上げてみよう!
プライマーからペーパーがけ、キャロムショットで重厚な色に
2024年8月27日 00:00
昨今の水鉄砲は、ブローバックアクションするものがあったり、シリンダーが回転するリボルバータイプがあったりと、機構がリアルなものもある。デザインも凝っていて筆者のようなモデルガンファンもグッと来る商品が増えてきた。
しかしモデルガンファンとしては一目で玩具だとわかる派手な色がちょっと手に持っていると気になるのだ。どうして水鉄砲は玩具っぽい色なのだろう? そこで凝ったウォーターガン「エレクトリックホワイトショット」や、「イーグルショット」を販売しているカヨ通商に問い合わせてみた。
すると「子供に使用して貰うから玩具っぽいデザインにしている。現在の多くの水鉄砲は、玩具としてよりわかりやすく、使いやすく進化したのではないか? 現在はコスプレ需要や、水鉄砲を大人も遊ぶようになって、リアル風な商品も増えている」と返事をいただいた。水鉄砲がトイガンとして凝ってきているのは、昨今の流行なのだという。とても納得できるお話だ。
それならばこの凝ったギミックのある水鉄砲を、もっと実銃風に塗装してみよう、というのが今回の企画である。モデルガンは昔から「組み立てキット」という塗装済み完成品より安価なラインナップがあり、このキットを模型技術なども応用して実銃風の塗装を行う文化がある。トイガンのカスタムメーカーが、モデルガン専用塗料を販売していたりもするのだ。この塗料を使えば、よりリアルな水鉄砲にできるかも? ということで、挑戦してみた。
塗装の前に、下準備
今回塗装用に用意したのは、YONGDINGという中国メーカーの「リボルバー水鉄砲」。引き金を引くとシリンダーが回り、10m近く勢いよく水が出るというなかなか撃ちがいのある水鉄砲だ。2つセットで価格は1,399円と価格も手ごろである。
今回の水鉄砲カスタマイズに際して、念入りに準備しようと思い、パーツごとに分解して塗装することを試みた。しかし、作業してみてわかったのだが、最近の水鉄砲は水漏れ防止のためにパーツが融着されており、分解が困難な状態となっていたのだ。
試行錯誤して、なんとかグリップ部は外せたのでその状態で塗装するとにし、本体部分は分解を諦めてそのまま塗装することにした。なお、こじ開けるために工具を入れて抉ったりした部分は、パテで埋めて紙やすりで整え、補修した。
表面を整えて下地処理
可能な限り分解したパーツは中性洗剤で洗浄。水をよく切ってよく乾燥させた。通常のプラモデルやモデルガンの場合は、これにで塗料を使っても大丈夫なのだが、水鉄砲の素材はさらに準備が必要だった。
グリップ部に直接塗料を塗ったところ、塗装部が一部剥げてしまう部分があった。樹脂の材質や塗料の成分の相性などで、うまく塗料が乗らなかった部分があったようだ。そこで、本体の塗装には、下地処理のためにプライマー(下地剤)を吹いて塗料が乗りやすいように整えた。
今回プライマーに使用したのは「染めQ プライマー スプレー ミッチャクロン」。「ミッチャクロン」は建築でも使う万能と言えるプライマーで、金属から樹脂まで幅広い種類の素材に使用でき、塗料を定着させやすくできる。モデルガンでも金属パーツへの使用などに使える。
さらに銀に塗装する銃の方はGSIの「Mr.プライマー サーフェイサー」も使用した。こちらも金属パーツや、レジンといった塗装が食いつきにくい素材に塗料を乗せるために使用するものだ。ミッチャクロンは透明、「Mr.プライマー サーフェイサー」はグレーなので、銀色の下地にぴったりなのだ。
モデルガンの手法で塗装していく
プライマーが乾いたら、塗料を塗っていく。今回は、シルバー系とブラック系の2種類で塗ってみることにした。塗装は缶スプレーやエアブラシを使用した。
ブラックの方は、黒、薄くシルバー、黒の順で塗った。最初に塗ったのはアサヒペンの「艶消し黒」、表層は、キャロムショットの「ケミカルカラー」の「ブラックスチール」で、最終的にスポンジタイプのペーパーで研いて金属っぽい艶感を出すようチャレンジしてみた。
キャロムショットというのは、モデルガン・ガスガン・エアガンの通販だけでなく、カスタムも行っているメーカーで「ケミカルカラー」という塗料シリーズも販売している。ケミカルカラーはモデルガンの塗装にぴったりなのだ。「ブラックスチール」はその名の通り金属的な光沢を持つ黒鉄色に仕上げられる。
シルバーの方は金属粉が含まれるファインケミカルジャパンの「ステンレスカラーコート」を塗った後で、ペーパーかけ、バフかけを行っって、キャロムショットの「チタニウムシルバー」を塗った。一部バーツは、ウレヒーローの「メッキシルバー」を塗って、質感の違いを演出してみた。
バフかけというのは塗装の荒れ(表面のダマとかザラザラ)を簡単にペーパーでならして整える作業。金属粉を含んでいる塗料の場合、塗装面にばらつきが出るのでこれをならす必要がある。塗料を塗ってバフかけを何回か繰り返した後、塗料を吹き付け仕上げた。
グリップは、シルバーの方は、ラバーグリップをイメージしてアサヒペンやアトムペイントの黒系の塗料を複数使って塗った後、艶消しのクリアを吹いてマット仕上げにした。
ブラック用のグリップは木製グリップをイメージして、アサヒペンやアトムペイントのブラウン系の塗料と黒、グレー系、を重ね塗り、マジックで木目を描いてさらに茶系を重ね塗り、一部をペーパーで研いて再塗装という感じで、木製感を出せるように試みたが、いかがだろうか?
全体が乾いたところで、組み立て完成。
今回は「カッコイイ外見にする」というのがメインテーマで、これまでのテクニックを活かして塗装してみた。外観としては満足いくものとなったが、"水鉄砲"として機能が低下してしまった。具体的には塗装で発射口が塗料で塞がれてしまい水の出が悪くなった。さらに分解を試みたために、黒の方に水漏れが生じてしまった。そして、塗料の厚みでシリンダーとトリガーの連動がぎこちなくなったり回転しないタイミングが生じてしまうことがあった。
もう1つ反省点がある。できるだけ塗装を簡略化しようとしたが、結果として「最初にペーパーがけすればもっと楽だったかもしれない」と思った。ペーパーがけも簡略化するためにバフ(硬めのフェルト)にコンパウンド塗って、リューターで磨いてしまったが、もっと丁寧な方法で仕上げた方が良かった。ペーパーがけも番手を徐々に細かくしてゆくなどの工程を省き、いきなりバフかけをするなど力技を使ってしまったが、もっと丁寧な方法で仕上げた方がよかった。これらの経験は今後に活かそうと思う。
ただ、水鉄砲の塗装はモデルガンの塗装の練習にも向いていると感じた。今後は、昔のモデルガンを塗装してリアル感を向上させたり、ヘビーウェイト樹脂ならではの「ブルーイング」にチャレンジするなどディテールアップの方法も紹介していきたい。