特別企画

「F.S.S.」より、予約受付中「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」の魅力に迫る

ABSの強度を活かした関節可動、PSの成型色で半透明装甲を表現

【VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト】

10月12日発売予定

価格:8,470円

9月29日まで予約受付中

 ボークスが9月29日まで予約を受付、10月12日に発送を予定しているインジェクションプラキット(プラモデル)「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」。価格は8,470円で、9月29日まで予約受付中だ。注文は下記商品ページで行うことができる。今回、「ボークス F.S.S.シリーズ展 2024夏」で商品担当者から話を聞くことができた。

 インジェクションプラキットとは、熱で溶けたプラスチックを金型に高圧で流し込む射出成型によるパーツを組みたてる、いわゆるプラモデルだ。VSMS(VOLKS SUPER MODELING SERIES)は、ボークスが追求し続けるメカロボットの可動機構・造形表現を、インジェクションプラキットで表現するシリーズで、「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」が第一弾となる。本商品は永野護氏のマンガ「ファイブスター物語(F.S.S.)」に登場するロボット「GTM(ゴティックメード)」の初のインジェクションプラキットである。

 これまでボークスでは半完成品のアクションフィギュア「ABSOMEC GTMカイゼリン」からスタートし、ポーズを固定するレジンキット「HSGK(HIGH-SPEC GARAGE KIT)」でGTMを展開していたが、今回はプラスチック主体で、ユーザー自身が組みたて、"動かす"ことも可能な商品となる。その開発のこだわりはどこにあるだろうか?

設計、成型色にこだわった「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」

 GTMの大きな特徴として膝や肘などの関節が非常に大きく、レールを縦に重ねたようなこれまでの関節デザインと大きく異なる、印象的な形をしていることが挙げられる。この構造は「ツインスイング関節」という、レール状の関節部に沿ってスライド可動するだけでなく、ねじれ方向にもスイング可動が行える非常に独特なデザインの関節だ。「ABSOMEC GTMカイゼリン」はツインスイング関節を立体物で表現したところに魅力の1つがあった。「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」はその技術をフィードバック、こちらでも関節の動きがしっかりわかるという。

イベントでは3体の見本を展示、下から「成型色」と、「彩色と動きを表現」、「彩色」とテーマが持たされている

 「ABSOMEC」は金属パーツなどマルチマテリアルでツインスイング関節を表現していたが、「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」ではプラスチックの金型の技術だけでツインスイングならではの動きを表現しなければいけないため、金型での成型上の制約、強度を考えた肉厚など、インジェクションキット設計の技術を総動員してその表現に挑んだとのことだ。

 今回の展示は、「成型色のもの」、「彩色したもの」に加え、「特に動きを見せるためのもの」が用意されており、GTMならではの関節表現を確認できるものとなっている。ツインスイングの部分はレールによるスライドだけでなく、ねじれも加え、その動きの表現を実感できるようにしてある。「製品を実際に組んでいただくと、ツインスイング関節の構造や、動きの自由度などが実感できると思います」とのことだ。

 キットにはボールジョイントを併用しているところはあり、そういったところは渋み(関節をしっかり保持させる固さ)を出すために、ポリキャップを使っているが、ツインスイングはプラ素材で表現している。特に膝はABSの渋みと設計によって、自由度としっかりとしたポージングを実現するスイングスライド機構を実感できるという。

【成型色】
こちらはあえて未塗装で、成型色を提示した見本
GTMならではの、ダッカスならではのデザインをしっかり立体化している
フレームはABSを使用、可動の自由度に加え、渋みを活かしてポーズを決めやすくなっているという
装甲部分は透明度のあるPSを使い、半透明装甲の雰囲気を再現

 ひじや膝のツインスイング機構の面白さはもちろん、腹部の蛇腹構造も注目ポイントだ。人間の背骨のように節が連なる腹部だが、しっかりと曲がり、なおかつ保持するという。GTMは下半身と上半身にボリュームがある一方で、腹部は非常に細い。上半身の重みを支える腹部の設計も製品を組みたてて確認してみたいところだ。

 製品の成型色そのものも注目したい。「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」はフレーム部分は銀色で、外装に緑がかった黒い装甲を纏っているが、よく見るとその装甲は透明であるのがわかる。ダッカスは設定上でも装甲部分は半透明装甲であり、素材においてその設定を感じさせるものにしてある。製品はクリアのダークグリーンであり、塗装をしなくても雰囲気が出るようにしたとのこと。フレームはブラウンメタリックの成型色となっている。

【動きを見せる】
こちらは彩色に加え、GTMならではの動きを見せた展示
肘や膝のツインスイングはもちろん、上腕の可動などで、「GTMはどのように動くロボットなのか」ということを、組みたて、動かすことで実感できるという
複雑に動く腹部に注目。保持力なども注力ポイントだ
塗装により、フレームと装甲の素材の違いなどもより明確になっている

 展示品は開発途中のテストショットのためまだ磨き込みが足りないとのことだが、成型色でしっかり"光沢感"は追求したいという。外装はPS、フレームはABSを使い、それぞれの部位にあった素材を使い分けている。設定画の雰囲気に最小限で近づけたければ、腹部の蛇腹構造の部分をシルバーのメッキ風に仕上げれば良いのではないか、とのことだ。このほか製品にはデカールが入り、腕の勾玉のマークなども補完できる。このほか武器のガット・ブロウ(剣)など、塗装部分の細かいところを挙げればきりがないが、ユーザーができるだけ手間を掛けずに設定画に近づけられるように成型色やデカールを工夫している。

【塗装によるディテールアップ】
彩色して、素立ちの状態で展示。細部をチェックするのが楽しい
腹部と腕のフレームの色の違いなどもしっかり確認できる
装甲の塗り分けなど、塗装するときの参考になるモデルだ
装甲の裏側の塗り分けなども見ることができる

 成型色だけでもしっかりダッカスの魅力を表現している。その上で彩色してある展示は、装甲の裏側などもしっかり塗装されていて、モデラーが手を入れればどこまでも作り込める可能性も提示している。ユーザーがどこまで作り込みができるか、「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」はこういった点を考えた商品となっていると感じた。

腕の勾玉のマークはデカールでも表現される
フレームと装甲、そして装甲の内側の塗装など、細部をチェックするのが楽しい

破烈の人形と、カイゼリン、広がるインジェクションキットの可能性

 会場で話題を集めたのが、「VSMS 1/100 破烈の人形」と「VSMS 1/100 カイゼリン」の発表だ。今後、GTMをインジェクションキット化していくラインナップが一気に2つ提示されたのだ。

 「破烈の人形」はマンガ「F.S.S.」の15巻においてダッカスと激しい戦いを繰り広げる。ダッカスと対峙するように並べてもらうために、第2弾で破烈の人形を選んだという。そしてカイゼリンはボークスにとってGTMの商品第一弾である「ABSOMEC GTMカイゼリン」のモチーフである。ぜひ「ABSOMEC」と「VSMS」の違いを感じて欲しいとのことだ。

 インジェクションキットである「VSMS」の大きなセールスポイントはレジンでの繊細な表現が可能な「HSGK」と比べても遜色のない精密な造型表現を実現できたところだ。可動を考えたアレンジのほか、今回の商品化にあたり「HSGK」と解釈を変えた部分もあるとのこと。「VSMS」は特に"動かして良さをより深く実感できる"というところに注目して欲しいと担当者は語る。関節の渋みにもこだわっており、ポーズを取らせてじっくり眺めるのも楽しい。

【VSMS 1/100 破烈の人形】
ダッカスvs破烈の人形。会場でも対決を意識したディスプレイに
GTMとしての共通項目はありながら、デザインは全く異なる
破烈の人形の武器は圧倒的な破壊力をもつ特殊な剣だ
複雑な装甲は関節強度の見直しなど、細かく調整が行われているという
デザインの異なる頭部も同梱される予定

 ツインスイングの関節はもちろん、腹部の蛇腹構造も接着せず、傾けた状態でずっとポーズを維持できている。「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」はまず動かしてみて、「GTMというのはこういう動きをするロボットなんだ」ということを実感して欲しいとのこと。

 また、手首や指も可動し武器の保持もできる。五指が動くような所までは関節は入れていないが、手首の自由度と武器を握らせる動きは製品で確認してもらいたいとのことだ。独特の関節を持ち、剣で戦うGTMは剣をどう持ちどう振るうかは工夫したいところ。「VSMS」はその楽しさを実感できる。

【VSMS 1/100 カイゼリン】
カイゼリンは非常にスマートな雰囲気だ
女性的なシルエット、肩の装甲の造型の細かさも驚かされる
ガット・ブロウ(武器)を前腕に収納可能
半完成品の「ABSOMEC」とインジェクションプラキットである「VSMS」の違いをしっかり確認できる商品となるとのこと

 GTMは一見シルエットは似ているところがあるが、騎体によってデザインが異なる。例えばダッカスと破烈の人形では腹部の蛇腹構造のデザインも大きく違う。このため、関節設計なども騎体ごとにパーツ設計を考えていく。GTMの表現として経験値は溜まっていくものの、パーツの流用など安易に活用できる部分は少なく、それがまた製品を手にし、組む楽しさにも繋がる。設計に当たり「騎体ごとの見せ場」を意識してデザインを行っていくとのこと。

 特に破烈の人形は、ダッカス、カイゼリンに比べ装甲のデザインが複雑でその分重量も増す。製品として、動かしやすさ、ポージングのしやすさも考えてバランスを考えた設計を行っている。また、カイゼリンは劇中同様前腕に剣を収納できるギミックもきちんと盛り込んでいる。カイゼリンは透明パーツも多いので、素材の組み合わせ、見せ方も現在頭を悩ませているとのことだ。

【腹部】
腹部のデザインも全く違う。デザインと関節強度を両立させる設計も大きな課題だ

 「VSMS 1/100 ダッカス・ザ・ブラックナイト」は組みたてるのはもちろん、やはり"動かして"みたい。GTMは大きなひじと膝関節、節が連なる蛇腹構造の腹部、腕なども関節以外でもカーブを描く構造で、どう動くのか、どんな構造なのか、ぜひ作って確かめてみたい。GTMというユニークなロボットを立体物を通じてより深く知ってみたい。発売が本当に楽しみだ。