特別企画

宇宙に手を伸ばす「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」の実物大ガンダム像が見せてくれる「宇宙での暮らし」はどのようなものか?

【「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」上頭式】

10月23日 開催

 バンダイナムコホールディングスは、出展する民間パビリオン「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」の実物大ガンダム像を初めてメディアに公開し、実物大ガンダム像の設置安全祈願とともに頭部をドッキングする「上頭式」を実施した。

 家などを建てるとき、屋根の最上部を取り付ける際、工事の安全を祈願して「上棟式(じょうとうしき)」が行われる。プロジェクトでは建物の骨組みまで完成したことを祝う儀式「上棟式」になぞらえ、実物大ガンダム像の頭部設置時に行う安全祈願を「上頭式」と名付けているという。

神道での「上頭式」が行われる実物大ガンダム像。日本ならではの光景だ
クレーンでつり上げられ、ガンダムの頭が設置された

 「実物大ガンダム立像」は法律的にも建築物扱いであり、建築物のためのノウハウも大いに活かされている。また、多くの人が訪れる実物大ガンダム像を見た場合、事故などが起こらないように安全祈願を行う神事も自然に思える。

 一方海外ではこのガンダムの頭に向かって神事が行われる風景はファンタスティックに写るようだ。上頭式はこれまでの実物大ガンダム立像でも行われており、その写真がXや掲示板などで拡散され話題を集めてきた。ガンダムという架空の、SFロボットというポップカルチャーの存在に、"神道"という宗教の儀式が行われるというのは独特の異世界感を生み出すのだろう。ひょっとしたら宗教というメジャーな存在が、ポップカルチャーを認めた、というような衝撃があるのかもしれない。日本ならではの価値観を感じる、というわけだ。

完成した実物大ガンダム像のディテール

 今回、「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」の実物大ガンダム像は、2020年12月19日~2024年3月31日まで横浜の山下ふ頭で稼動していた「動く実物大ガンダム」を活用したものだ。このため設定として割り振られている制式番号は「RX-78F00/E ガンダム」と、「動く実物大ガンダム」の「RX-78F00 ガンダム」からEを加えたものとなっている。

 「動く実物大ガンダム」は稼動するためこまめなメンテナンスが必須であり、安全基準の観点からも最初の稼動予定期間はずっと短い予定だったが、コロナ禍で見ることができなかった来場者への配慮や、何よりも現場スタッフの努力によって、稼動期間が大幅に伸び3年以上の展示が行われた。「動く実物大ガンダム」は可動支柱に持ち上げられ手足を動かすというコンセプトだが、それでも「18mのロボットが歩く姿はどのようなものか?」を目の前で感じさせてくれる存在だった。

横浜の山下ふ頭で稼動していた「動く実物大ガンダム」。比べるとパビリオンのガンダムは左半身にパネルのような装備が加えられているのがわかる。サイコフレームだったりするのだろうか?

 お台場の「実物大ユニコーンガンダム立像」や福岡の「実物大 νガンダム 立像」、上海の「実物大フリーダムガンダム立像」もそうだが、建物や木々と対比できる場所に18mを超えるMS(モビルスーツ)の立像が建っているという姿は、「ガンダム」作品の冒頭において、日常生活に突然MSが出てくる驚きを思い出させる。18mの"巨人"を目の前にした衝撃。

 劇中でのMSの登場は"戦争の始まり"を意味する恐怖の対象なのだが、現実世界で立つガンダム達は、「いつか本物のMS(巨大ロボット)を目の前で見たい」という人達の夢を叶えてくれる存在だ。目の前で見るだけでなく、例えばゆりかもめの窓からガンダムが見えると、「現実に巨大ロボットがいて、街に立っているとこう見えるのか」という特別な感慨が生まれる。実物大ガンダム像はロマンをかき立てる存在なのだ。

 「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」の実物大ガンダム像は大阪・関西万博を訪れる多くの人が見ることとなるだろう。他のガンダム立像を見た人もいるとは思うが、多くの人が初めて「ガンダムというのはどれだけ大きいか」を実感できると思う。筆者自身も初めてお台場で実物大ガンダム立像を見た衝撃は忘れられない。ガンダムを知らない人も、18mの巨人が目の前にいる実在感を感じてもらえると思う。

 「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」の実物大ガンダム像は、膝を突き、右手を空に高く掲げた姿での展示となる。その姿は「未来を見据えて、人類と共に新たな宇宙時代を切り拓く姿を表している」という。

 アニメ「機動戦士ガンダム」では、"宇宙へ移住した人々が起こした戦争" が描かれる。放映当時の1979年という時代では、「人類は地球から宇宙に生活の場を移す」という未来はリアリティのある未来に感じられた。当時は大人や子供でも「宇宙での移住は難しくても、せめて月に観光旅行には」という想像をしている人は少なくなかったのではないか。しかし「ガンダム」放映から45年以上たってもその夢はまだ実現できない。

福岡の実物大νガンダム立像「RX-93ff νガンダム」。建物との対比がMSの実在感を高める
2017年の「実物大ユニコーンガンダム立像」公開を記念したセレモニーではスペシャルメドレーが演奏された。人との対比も面白い

 「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」は、ガンダムシリーズが描いてきた「宇宙での暮らし」や「まだ実現していない科学技術」を新たな未来の可能性として捉え、臨場感のある完全新規映像と、フェーズ0から7までのパビリオン空間によって描き出す。そこでは人々が軌道エレベーターで気軽に宇宙ステーションへ移動し、モビルスーツと人類が共存する、「宇宙で暮らすことが当たり前になった未来」を体験できるという。

 軌道エレベーターは「機動戦士ガンダム00」で大きく取り上げられた。「機動戦士ガンダム」は人類が宇宙での生活を始めた"宇宙世紀"が舞台となるが、「ガンダム00」など"アナザーガンダム"は同じく人類は宇宙に進出しているものの、設定は大きく異なる。様々な世界観があるなか、「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」はどのような解釈で宇宙の生活を提示してくれるか、とても楽しみである。

 「宇宙での暮らし」というのは、それこそ1961年4月、ユーリイ・ガガーリンが人類初の有人宇宙飛行を成し遂げたときから人類が夢見ていた未来であり、1970年に大坂で開催された日本万国博覧会でも話題を集めたテーマだ。現代の最新技術とと予測、そしてガンダムの世界観を融合させた「宇宙での暮らし」とはどのようなものか、非常に興味がそそられるテーマである。