インタビュー

トミカ50周年の集大成「トミカ絆合体 アースグランナー」開発者に聞く!プロジェクトに込めた情熱

“合体ロボット×トミカ×変身ヒーロー”男の子の夢詰め合わせ

 「日本の子どもたちに国産車のミニカーで遊んでもらいたい」という想いのもと誕生した「トミカ」。その第1弾を飾ったのは「トミカ ブルーバードSSSクーペ」で、1970年8月18日に発売された。以来、「トミカ」は実際に街を走っている車をモデルとし、新型車の登場や自動車のトレンドの変化にも合わせて時代とともに歩んできた。2020年1月時点で、1,050以上の車種を発売、累計販売台数は6億7,000万台を超える。

 そんなタカラトミーのミニカー「トミカ」シリーズは今年2020年で誕生から50周年を迎える。「アニバーサリーに相応しい企画を」という思いから生まれたのが「トミカ絆合体 アースグランナー」というプロジェクトだ。TVアニメ、ホビー展開する本作は、トミカを軸に、変身ヒーローと巨大ビークル、そして変形合体するロボを組み合わせた、“全部入り”の作品となっている。

 タカラトミーの集大成とも言える「アースグランナー」。プロジェクトの成り立ちや今後の展開について、同社で玩具開発を担当している井上拓哉氏(ロボ担当)と、安田陽介氏(なりきり、コアグランナー担当)の2人にお話を伺った。

今回のインタビュイー
井上拓哉氏(ロボ担当)
安田陽介氏(なりきり、コアグランナートミカ担当)

ミッションは“前作を越えること”

 「アースグランナー」の前シリーズにあたる「トミカハイパーレスキュー ドライブヘッド 機動救急警察」は、プロポーションにすぐれ、かっこいい玩具として仕上がった。始動した「アースグランナー」プロジェクトに求められたのは、そのかっこよさを越えることだったと井上氏は話す。そこで、プロジェクトは“総合力”に焦点を当てた。変形・合体・音声・変身ヒーロー・なりきりグッズとの連動ギミックなど、ありとあらゆる要素を取り入れることで、シリーズ最高峰となることを目指したのだ。

 プロジェクト開始から約3年を経て、TVアニメ「トミカ絆合体 アースグランナー」は、4月5日よりテレビ大阪・テレビ東京系列全国6局ネットで毎週日曜あさ9時30分から放送されている。本プロジェクトでは、アニメでの演出と、それを忠実に再現したロボットの玩具、ヒーローのなりきりセットといったグッズを展開。トミカを中心に、大人も子供も楽しめる商品・コンテンツをラインナップしていく。

4月より放送中のTVアニメ「トミカ絆合体 アースグランナー」

 アニメの作中では、搭乗者の駆動兄弟がコアグランナーと呼ばれる車に乗り、ヒーローに変身、コアグランナーと中型ビークルのガオグランナーが合体、ガオグランナー同士が合体しロボット形態に変身するという一連の流れで変形・合体アクションを見せる。このシーンにすべてのマシンやアイテムの魅力を集約し、たたみかけるように演出する。子供の目には、変身アイテムやヒーロー、ビークルの変形、合体、そして決めポーズを取るロボットの姿が映る。それらのかっこよさを一目で分かるように伝える演出となっている。

トミカを軸としたラインナップ

 7月現在発売中のアースグランナーは、「レオチータ」と「イーグルシャーク」の2種。
それぞれ1台のコアグランナートミカと2台の大型ビークル「ガオグランナー」が変形合体してロボット形態を取る玩具だ。

「レオチータ」(写真左)と「イーグルシャーク」(写真右)

 各商品の軸となるのは当然トミカだ。コアグランナートミカは「レオトミカ」と「イーグルトミカ」をベースに「コアグランナーレオ ターボファイヤートミカ」や「コアグランナーイーグル エアロトルネードトミカ」など、各3種のバリエーションがラインナップされている。これらトミカはそれぞれ発光・音声ギミックを内蔵。ルーフがスイッチとなっており、押し込むことでアニメ作中のボイスや走行音、クラクションなどと共に紋章が点灯する。

 収録ボイスは各30種にものぼり、時間にして合計150秒以上。しかも収録パターンはバリエーションモデルごとに異なる豪華仕様だ。この音声ギミックは、ガオグランナーとの合体時には合体時の専用ボイスが、なりきりアイテムでの使用時にはアイテム用の専用ボイスやサウンドが鳴る仕組みとなっている。トミカ車体裏とガオグランナーなどのトミカ接続部分には接点が設けられており、合体時に金具がコンタクトすることで音声パターンが変わるという仕組みだ。

発売中のコアグランナートミカ6種 [各1,320円(税込)]
「CG01 コアグランナーレオトミカ」4月18日発売
「CG02 コアグランナーイーグルトミカ」4月18日発売
「CG03 コアグランナーレオ ターボファイヤートミカ」5月16日発売
「CG04 コアグランナーイーグル エアロトルネードトミカ」5月16日発売
「CG05 コアグランナーレオ トルクロックトミカ」6月20日発売
「CG06 コアグランナーイーグル スクリューウェーブトミカ」6月20日発売

 なりきりアイテムは、作中で駆動兄弟が変身する際に使用する腕輪状のデバイス「ヒーローチェンジギア アースブレス」、そして、ビークル形態のガオグランナーやロボット形態のアースグランナーを操るためのハンドル型変形デバイス「トリプルチェンジギア アースハンドル」の2種を展開している。それぞれコアグランナートミカを装着することで専用の音声ギミックで遊べる玩具だ。

ロボット玩具アースグランナー

 ロボット形態のアースグランナーは、全高約25cmという大型の玩具だ。前シリーズのドライブヘッドでは、ロボットの全高は約20cm。一回り大きいサイズ感は、トミカを設計の軸に据えたことで生まれた。ドライブヘッドではトミカを頭部に載せる構造を取ったが、アースグランナーではトミカを内蔵するのだ。大型化は設計上仕方ない部分だが、それによって、「ちょうど子供の手に収まらない大きさとなり、重厚で本格的な玩具として満足感を与える」という狙いが井上氏にはあった。

「トミカ絆合体 アースグランナー EG01 アースグランナー レオチータ」4月18日発売、定価7,480円(税込)
「トミカ絆合体 アースグランナー EG02 アースグランナー イーグルシャーク」6月6日発売、定価7,480円(税込)

 大型化したことで、本体重量は増加した。それでも遊びやすさや耐久性を維持するために、アースグランナーにはタカラトミーがこれまで玩具開発で培ってきた技術の粋が結集されている。

 まずは豊富な可動域。腰はロール軸を備え回転、肘・膝には二重関節を採用、180度近くまで折りたたむことができる。股関節は3軸を組み合わせたジョイントパーツを採用、胴体と干渉するまで自由に動かすことができるので、膝立ちでバランスを取らせることさえも可能だ。間接各部には重量に耐えるためダイキャストを使用。さらにクリック間接を採用しているため、展示するときにポージングを固定でき、変形遊びによる間接の摩耗にも強い。

広い可動域を生かしたアクションポーズ

 「アースグランナー レオチータ」では、百獣の王ライオンをモチーフに上半身は赤、下半身は黄色を基調としたカラーリングとなる。各部の造形や発色など、TVアニメ作中と全く同じものを玩具で再現するために妥協は許さなかったとロボ開発の井上氏は語る。特に頭部の角はTVアニメにも引けを取らないシャープさで研ぎ出されている。形状を再現する一方で、かなり柔らかい軟質パーツが使われており、安全性への配慮も十分だ。

 上半身は派手な赤とライオンのたてがみをイメージしたゴールドが差し色となっている。開発を担当した井上氏に「レオチータ」のこだわりポイントを尋ねた時、氏が指し示したのがここだ。「レオチータ」のボディは赤や金色は、いずれも樹脂の成形色で再現。金色部分はアニメ同様の輝きが得られるよう、成形はテストを重ねて実現したものだという。

玩具の「アースグランナー レオチータ」
TVアニメでの「アースグランナー レオチータ」

 一方「イーグルシャーク」では、上半身が飛行メカ「ガオグランナーイーグル」である点が「レオチータ」とは大きく異なる。当然変形の仕組みも違う。イーグルでは翼を折りたたんで肩を展開するという方式だ。その翼にこだわりがあるという。

 翼に埋め込まれたホイールは、ビークルの車輪としての役割は持たない。「ホイールは一体成形にしてしまった方がコストも抑えられたのではないか」という疑問が当然浮かぶ。だが、「イーグルシャーク」を含めたアースグランナーは、作中でホイールの回転によりパワーを高める。アニメ同様のアクションを玩具で再現できるようにすることこそが重要だと井上氏は語る。

玩具の「アースグランナー イーグルシャーク」
TVアニメでの「アースグランナー イーグルシャーク」

こだわりの変形合体

 ロボ開発の井上氏は、「可動域やプロポーションに優れる、というだけならトミカである必要はない」と語る。トミカであることを最大限生かす。その考えの基に考案されたのが「アースグランナー」の合体ギミックだ。合体時にはトミカは大型のビークルに収納される形をとる。トミカの姿は見えなくなってしまうが、合体時に鳴る音声ギミックはトミカから発信されるため、そこにトミカが存在する意味が確かにある。

 合体機構は、発売中の「レオチータ」および「イーグルシャーク」では、ぞれぞれ胴体と脚部を担う2台のガオグランナーが合体する構造。腰部分のジョイントは共通となっており、脚部を取り替えることで、アニメ本編の形態を再現することもできる。腰部は細く一見もろそうに見えるが、腰の回転が可能であり、遊んでいる最中にバラバラにならないようロック機構も備えている。

変形してレオチータの上半身になる「ガオグランナー レオ」
レオチータの下半身「ガオグランナー チータ」
イーグルシャークの上半身「ガオグランナー イーグル」
イーグルシャークの下半身「ガオグランナー シャーク」

 合体時にトミカから音声が発せられるのは、このアースグランナーで初めて搭載された新しいギミック。例えば「レオチータ」の場合、「ガオグランナーレオ」と「コアグランナーレオ」の合体時に、檜山修之さんのボイスで専用の合体音声が鳴る。さらに、「ガオグランナーレオ」を胴体とし、「ガオグランナーチータ」との合体時にはまた別の合体音声が鳴るのだ。これらは、TVアニメの合体シーンと同様の演出となっている。アニメを見ながらアースグランナーの合体遊びを行なうことが、この商品の最高の遊び方だという。

アースグランナーなりきり玩具とコアグランナートミカ

 主人公たちがヒーローへと変身するのは、トミカシリーズでアースグランナーが初めての試みだ。トミカとヒーローを繋ぐ要素として、なりきりアイテムを展開する。現在発売しているのは、「ヒーローチェンジギア アースブレス」、「トリプルチェンジギア アースハンドル」の2種。

 「アースブレス」は、ブレスレット状のデバイス。作中では左腕に装着し、トミカを取り付けることで主人公の駆動兄弟がヒーロー「グランナーR」、「グランナーK」へと姿を変える変身アイテムの役割を担う。玩具の「アースブレス」は、作中同様のスケールで腕に装着できる。

 商品には、コアグランナートミカを取り付けると、「アースブレス」専用の音声が鳴るギミックを搭載。ホイール回すとアースエナジーのチャージ音が鳴り、もっと回すように促される。TVアニメでも、ホイールの回転によりアースグランナーをパワーアップさせるシーンがあり、作中同様の演出を遊びとして再現しているのだ。作中のパワーアップシーンを見ながら、なりきりグッズで子供が遊ぶ、それが安田氏の描いた風景だった。

「トミカ絆合体 アースグランナー ヒーローチェンジギア アースブレス」5月30日発売、定価5,478円(税込)

 「アースハンドル」は変身したヒーローの武器でもあり、グランナーのハンドル兼アースグランナーの操縦デバイスでもある。ハンドル、ハンドルソード、ハンドルガンの3形態の変形が特徴となっている。ハンドル形態はコアグランナーの操縦、ハンドルソード、ハンドルガンはグランナーが戦う際に使うほか、アースグランナーの操縦デバイスにもなる。こちらも「アースブレス」同様コアグランナートミカに対応しており、各形態の変形時にトミカから専用ボイスが鳴る仕組みを持つ。

 ハンドルソードやハンドルガン変形することで、グッと印象も変わる仕組みになっており、さらに、遊んでいる最中に形態が変わってしまいケガをすることがないよう、ボタンを押すまで変形しないようロック機構を取り込むといった工夫も施している。

「トミカ絆合体 アースグランナー トリプルチェンジギア アースハンドル」5月30日発売、定価4,378円(税込)

 ロボットのアースグランナーを含め、これらのなりきりアイテムそれぞれに対応した専用ボイスが、コアグランナートミカには用意されている。前述のとおり各トミカに約30種ものボイスが収録。車体をスケルトン化したバリエーションモデルなどでは異なる音声となっており、膨大な収録量になっていると安田氏は語る。TVアニメのアフレコよりも先に玩具の音声収録を行なっているケースもあるのだという。

 豊富なボイスは組み合わせを変えることで異なる音声が聞けるため、コレクション欲をかき立てる。また、繰り返し音声で遊んでいると低確率で再生されるレア音声も存在する。レア音声はTVアニメでも一部シーンで用いられるセリフとして収録しており、聞けば分かるようなものになっている。こうした遊び心もトミカの魅力を引き上げる要素の1つとなっている。

第3のアースグランナーが登場。まだまだ広がるアースグランナーの世界

 複合コンテンツとしてすでにさまざまな遊び方を提供しているアースグランナー。TVアニメでは、6月放送の第10話で主人公たちのライバルにあたる熊猫カケルが登場。ここからはスピンガー(敵の怪獣)だけでなく、アースグランナー同士の戦いが描かれるのだという。そんなライバルが駆る第3のアースグランナー「サーベルパンサー」は8月下旬に発売を予定している。

「トミカ絆合体 アースグランナー EG03 アースグランナーサーベルパンサー」8月下旬発売予定。定価8,580円(税込)

 「サーベルパンサー」はなんと、3機のガオグランナーが合体する構成。それでいて既存の「レオチータ」および「イーグルシャーク」との組み換えにも対応している。新商品が出るほど、発売済みの商品にも遊び方が増えていくのがアースグランナーシリーズの特徴だ。

 また、アースグランナーのすべての機体には合体で使用していないジョイント穴や軸が多数設けられている。その規格は5mmで統一されており、説明書にない組み上げ方も想像力次第で実現できる。このジョイント規格は同社から発売中の「ゾイド」シリーズとも共通しており、シリーズを越えた合体遊びにも対応できる懐の深さも持つ。

 タカラトミーの集大成としてラインナップを広げていくアースグランナー。子供にとってはトミカ×ロボット×変身ヒーローという男の子が好きな物詰め合わせのような熱量を持つコンテンツだ。大人として、こうした玩具を手に取らなくなって久しい筆者の目にも、そのどれをとっても「トミカってここまで進化したんだ」という驚きを伴う商品に仕上がっている。50周年を迎え、進化を続けるトミカのこれからには注目していきたい。

「トミカ絆合体 アースグランナー」の商品ラインナップ