インタビュー

ガンプラを作りたいと思う全ての人が満足できるクオリティを! 「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」開発者インタビュー

【ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム】

9月4日発売(ガンダムベース東京・福岡限定先行販売予定)

価格:770円(税込)

【ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム (ライトパッケージVer.)】

12月発売予定

価格:550円(税込)

 9月4日にガンダムベース東京・福岡で販売された「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」。初心者向けを謳い、770円(税込)という価格を実現しながら、少ないパーツ数での組みやすさ、彩色やシールがなくても実現している色分け、自由なポージングが可能な関節、カッコイイプロポーションとガンプラユーザーの多くを驚かせるクオリティを実現している。

 今回、本商品の一般店頭販売の「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム (ライトパッケージVer.)」が決定した。発売時期は12月、店頭販売版はシールド、ビームライフルという武装をなくす代わりに価格を550円(税込)とさらに下げ、より多くの人が手に取りやすい環境を目指しているという。また、「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」は10月に欧米・東アジアを中心に海外で販売予定という所も注目ポイントである。

 「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」はなぜ、どういった想いで生まれたか? BANDAI SPIRITSホビー事業部はこの商品に何を託したのか? 今回、BANDAI SPIRITS ホビー事業部開発担当の齊田直希氏に話を聞いた。

 齊田氏は前回の「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」、そして今後続報が発表される「PERFECT GRADE UNLEASHED 1/60スケール RX-78-2 ガンダム」を担当している。3つのプロジェクトでそれぞれテーマの異なる「RX-78-2 ガンダム」を追い求めた齊田氏は、「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」にどのような想いを込めたかを聞いていきたい。

【ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム】
ガンダムベース東京・福岡で先行販売された「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」。初心者向けでありながら、驚くべき可動と、カッコイイプロポーションを実現している
「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」を手がけたBANDAI SPIRITS ホビー事業部開発担当の齊田直希氏

最新の技術で組みやすく、たっぷり遊べるガンプラを作りたい!

 やはり一番気になるのは「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」の企画背景だ。BANDAI SPIRITSの初心者向けプラモデルブランドである「ENTRY GRADE」だが、ガンダムはこの企画向けに生まれた商品ではなかったという。

 「誰でも作れて、その作った作品がハイクオリティで、かつ簡単に組み上がるガンプラを実現したい」。まずこのコンセプトの元「RX-78-2 ガンダム」をモチーフとした商品を開発しようというテーマでプロジェクトは始まったという。「ENTRY GRADE」が提示するコンセプトと同じではあるが、「ガンプラとして開発する」という「ENTRY GRADE」とは別ラインでのスタートだった。

 1/144スケールでの「RX-78-2 ガンダム」は様々な商品が出ている。40周年を記念した
「HG 1/144 RX-78-2 ガンダム [BEYOND GLOBAL]」も発売されているが、「これを買えばガンプラが始められる」という入門用キットは本当にあるのか? 齊田氏はこういった疑問を持ち、そのテーマに近い2015年発売の「HGUC 1/144 RX-78-2 ガンダム」でも「初めてプラモデルを作るユーザーにとって、ハードルが高いのではないか」という感想を持ったという。

【HG 1/144 RX-78-2 ガンダム [BEYOND GLOBAL]】
ガンプラ40周年記念商品の1つ。「HGシリーズ」で培った技術を集約し、大河原邦男氏デザインの「RX-78-2 ガンダム」を立体化したプラモデル。6月6日発売

【HGUC 1/144 RX-78-2 ガンダム】
2015年7月25日発売。当時の最新フォーマットでのキット化。2001年版に比べパーツ数はほぼ変わらないが可動箇所、可動範囲が大幅に増した

【ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム】
「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」。770円(税込)という価格帯で、高いクオリティを実現している

 ところで、「HGUC 1/144 RX-78-2 ガンダム」は可動などのギミックを当時の最新技術で実現した上で、低価格帯にまとめているのだが、さらに初心者向けにできないか、そこが企画の出発点となったという。

 「初心者向けガンプラ」という視点では、2017年よりスタートした「GUNPLA EVOLUTION PROJECT.」の中で生まれた「HGAC 1/144 リーオー」がある。EVOLUTION POINT「Fine Build(簡単組立)」というテーマで、「新機動戦記ガンダムW」の登場する敵キャラの量産機「リーオー」をモチーフとしたプラモデルで、非常に簡単に組み上げられ、良く動く。価格も1,100円(税込)で、ファンならば量産機らしく数を揃えやすい。

【HGAC 1/144 リーオー】
2018年5月11日発売。EVOLUTION POINT「Fine Build(簡単組立)」で、新しい関節構造による幅広い可動域と関節の組立時間短縮を実現。様々な遊び方がSNSにアップされたという

 この商品はユーザーから好評だった。「すごく組みやすい」という感想も得られた。発売日直後にSNSで様々な作例が掲載された。齊田氏はこの反響で改めて「買ってすぐに組め、たっぷり遊べて、満足できる」という本商品の良さに改めて気がついたという。「プラモデルはお客様に作ってもらうと言うことが大事だ」。

 買って満足するのではなく、すぐ箱を開けてその勢いのまま組み上げてしまう、そういう勢いが「入門用ガンプラ」には必要ではないかと齊田氏は考えた。そして、「最新の技術で組みやすく、たっぷり遊べるガンプラを作る」というコンセプトが固まってきたという。

 実は齊田氏は「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」の前に、「買ってすぐに組め、たっぷり遊べて、満足できる」というコンセプトをオリジナルIPでチャレンジしている。それが「30 MINUTES MISSIONS」だ。組み立てが簡単でとことんカスタマイズが楽しめるシリーズはヒットとなった。「30 MINUTES MISSIONS」は上から順に組んでいくという、「HGAC 1/144 リーオー」からさらに進化させた組みやすさを導入している。この技術をさらに発展させ、「RX-78-2 ガンダム」で表現できないか? そう齊田氏は考えた。

【30 MINUTES MISSIONS】
「30MM 1/144 eEXM-17 アルト[ホワイト]」、2019年6月29日発売。“量産機”をコンセプトに直観的でわかりやすいランナー配置とシンプルなパーツ構成で簡単に組み立てられる。オプションパーツが豊富で、カスタマイズが楽しいシリーズだ

 「HGUC 1/144 RX-78-2 ガンダム」、「FG 1/144 RX-78-2 ガンダム」といった商品もまた、“組みやすさ”を考えた商品であった。しかし「FG 1/144 RX-78-2 ガンダム」は組みやすいが足の付け根が動かないし、色分けも少ない。「HGUC 1/144 RX-78-2 ガンダム」は色分け、可動共に優秀だが、組み立てが複雑なところがある。「買ってすぐに組め、たっぷり遊べて、満足できる」という齊田氏の考える「初心者向け」という評価では、満点を得られない部分がある。

 「今の技術とアプローチの蓄積を活用すれば、満点を与えられる初心者向けガンプラが作れる。ハイクオリティで、組み立てやすい。一見矛盾するようなポイントもきちんと実現できるのではないか? そういう想いで『ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム』は生まれました」と齊田氏は語った。

組み立てやすく、良く動くプラモデルを、できるだけ少ないパーツで実現する

 「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」の大きなセールスポイントは可動だ。齊田氏が「めちゃくちゃ動く」というように、非常に良く動く。足首なども良く動き、様々なポーズを取らせることができる。

 しかもこの可動を少ないパーツで実現させている。これまでのガンプラからいかにパーツを削減してこの可動を実現するかも齊田氏が挑んだ部分だったという。ガンプラは“基本的なパーツ分割のフォーマット”がある。齊田氏は「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」のパーツ設計においてここに囚われず、全くまっさらにし、1からパーツ分割を考えたという。

 「だからこそ今までできなかったことに挑戦するきっかけになりました」と齊田氏は語る。これまでのガンプラの設計の基本は従来のものに“足して”発展させる方向だった。関節を増やすために、装甲分割を表現するために、よりディテールを細かく表現するために、パーツやスジ彫りなど様々な要素を足していくのがガンプラの方向性だった。しかし「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」では、パーツを敢えて減らしていきギミックを実現できるか、というテーマに挑むこととなった。社内ではこの方向性を「引き算の美学」と呼んでいるという。

【少ないパーツ数】
箱に入っているランナーは4枚だが、このように繋げると実質2枚のランナーで成型されているのがわかる。このパーツを組み立てると、1/144 RX-78-2 ガンダムが組み上がるのだ

 パーツを金型から抜くアプローチや、各パーツをブロック化して組み上げていく方向など、「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」はこれまでのガンプラとは異なるパーツ分割が行わなれている。ブロックごとに組んでいくので、従来のガンプラで多用されている「パーツの挟みこみ」が極端に少ないのだ。

 子供など様々な人が遊べるようにする「ユニバーサルデザイン」的な思考も本商品には取り入れられている。パーツの組み方を間違わないように上下が間違うとパーツがはまらないようにすることで、誰でもきちんと組み立てられるようにしている。

【簡単な組み立て】
ブロックのように組み合わせていくだけで組み上がる

【色分け】
色分けも細かく非常に工夫されている

 特に齊田氏が気に入っているのが頭部の組み立て。パズルのように上からどんどんかぶせていくだけで完成するという。特にV字アンテナの基部の赤いパーツをカメラ部と一体化することで、ストレスなく組み上げられる。これまでの「RX-78-2 ガンダム」をモチーフとしたプラモデルで、ユーザーはどこにストレスを感じていたか? という点を洗い出し、そこに改良を加えるという方向で設計されたものだという。

 「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」は発表してユーザーの反応がよかった。本商品はガンプラファンの期待に応える「MG 1/100 ウイングガンダムゼロEW Ver.Ka」という非常にリッチなガンプラと同時発表だったが、こちらと負けないくらい大きな反応があったとという。

【頭部】
重ねるだけでガンダムの複雑な頭部ができあがる

 「誰でも組めるRX-78-2 ガンダム、というのをユーザーは求めていたんだと思います。それは実は意外な部分もありました。MG、RGと複雑に進化していく方向性がありますが、シンプルな方向性を提示した特しっかりとユーザーが評価してくれた。それはガンプラにはまだまだ進化の可能性があるんだ、ということを実感させてくれました。未来が見えました」と齊田氏は語った。

 「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」は海外でも10月に発売される。それは「ガンプラを世界に」という想いのためだ。日本や東アジアでは大きく受け入れられているガンプラだが、欧米をはじめとした地域ではまだガンプラに触れていないユーザーも多い。「ガンプラに興味はあるけど、何を買っていいかわからない」という海外ユーザーに“決定版”といえる初心者向けガンプラを提示したかったのことだ。「海外の人達にもっと広くガンプラを触って欲しい」そういう想いを「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」は託されている。

 組みやすさと、低価格が「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」の大きなセールスポイントだ。この価格帯はこれまで以上の流通経路にアクセスすることができたという。より幅広い、多くの国のお店に置いてもらえるガンプラ。ホビー事業部はこの商品がガンプラを買う“きっかけ”になって欲しいと思っている。「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」は、ガンプラで最も品数の多い1/144スケールである。このプラモデルを皮切りに、他の商品を手に取って欲しい。まさにこのプラモデルをスタートにして欲しいとのこと。

【腰ブロックのVの字】
齊田氏お気に入りの腰ブロックのV字の装飾も、パーツの組み合わせで表現。これまではシールで表現されることも多かったが、本商品ではしっかりと部品の組み合わせで表現されている

 一方、「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」の日本での一般販売は12月となる。この際、より価格を抑えると言うことで武器を同梱しない。価格は550円(税込)となる。武器を同梱しないのは、他の1/144のプラモデルの武器を使えるためだ。手の形そのものが他の「HG」と同じ武器を持てる手になっているので、様々な武器を持たせることができるとのことだ。「ビルドシリーズ」等の武器も持てるとのこと。ちなみに、「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」はビームサーベルの刃がついていない。こちらも同じ他の商品から武器を使って欲しいという考えからのもの。

 「このキットをスタートに、そして中心においてガンプラの世界に入ってきて欲しいと思っています。武器を構えさせたいから他のガンプラを買う。仲間や敵のガンプラを買う。好きなシリーズのガンプラに挑戦する……まずはやはり“組み立てる”事が一番大事だと思います。このプラモデルを組み立てて遊んで欲しい、そう思っています。プラモデルに触れる喜びを感じて欲しいです」と齊田氏は語った。

 「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」は当初の想定を大きく上回った反響を得た。「ENTRY GRADE」のガンプラを増やして欲しいという声も受けているが、色分け、シンプルなパーツ構成、組みやすさなどは、「RX-78-2 ガンダム」をモチーフにしたから実現できた設計とも言える。他のモチーフでパーツが増えたり、プラモデルとして難しくなってしまえば、「ENTRY GRADE」というコンセプトから離れてしまう。次の商品をどうしていくかは、現在検討しているとのこと。

 齊田氏は「私自身は『ENTRY GRADE』はHGと共存していくべきだと強く思っています。『ENTRY GRADE』はガンプラの世界に入るきっかけであり、ユーザーにはそこからHGで世界を広げ、より深いガンプラの世界に入っていって欲しいと思っています」と語った。

作った人に高い満足を与えるために強くこだわったプロポーション

 「ガンプラの世代交代、子供達にガンプラを手にして欲しい」、そういった想いは様々な商品から強く伝わってくる。こういった背景も「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」が生まれた理由ではある。

 「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」の対象年齢は8歳以上だ。齊田氏は「ガンプラ初心者って8歳というわけではなく、8歳から60歳くらいじゃないかと思ってます」と語る。だからこそ本商品の“デザイン”は低年齢層に訴求するものではなく、大人も納得するカッコ良さを追求した。だからこそ「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」は、“最高のベストプロポーション”を目指して作られた。

 プロポーションは齊田氏が最もこだわった部分。ベストプロポーションと呼ばれる姿を実現するために検討を重ね、金型製造の前に光造形で作った試作品の時点で5回もリテイクを繰り返したという。製作期間は限られていたがそれでもギリギリまで粘った。「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」にとって最も力を入れたポイントだと齊田氏は語った。

【ベストプロポーション】
組み上げた時、最新のガンプラであることを実感でき、満足感を与えるプロポーションは、何度も検討を重ねた部分

 当時、ガンプラブームを見ながらも触っていなかった人達。子供の頃にガンプラは触ったけどやめている人達、そういう人にも手に取って欲しいキット、という想いが込められてる。誰でも組み立てられ、組み上げると「今のガンプラってこんなにかっこいいのか!」と感心させられるクオリティ、そこを目指したデザインだ。

 完成したプロポーションにこだわるというのは、完成品やフィギュアにも通じるアプローチである。しかしだからこそ齊田氏は“作る”にこだわりたいという。「組む工程には、“物語”があると思っています。『ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム』では組み立てる楽しさを実感して欲しい。組むことで構造がわかる、関節がどうして動くか理解でき、可動域を納得できる。だからこそ自分で組んで欲しい。自分で組み立てる楽しさは是非伝えたいと思っています」と齊田氏は語った。

 「この少ないパーツでこの動きができるのか!」という驚きも齊田氏がユーザーに感じてもらいたいところだ。「今のガンプラってスゴイ!」ユーザーにそう思ってもらいたい。ガンプラの最新の技術が実感でき興味がわくのは本商品の魅力の1つだ。コンセプトである「引き算の美学」をじっくり堪能して欲しいとのこと。最小のパーツで最高のパフォーマンスを引き出す、ということが、「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」のテーマである。

 「10年ぶりにガンプラを触った人は、確実に驚いてもらえる。そういう商品ができたと自負しています。BANDAI SPIRITSホビーセンターの技術を実感して欲しいです。これは組み立て済みのフィギュアでは実感できない、プラモデルだからこそわかる感覚だと思っています」。これを触ることで否が応でも「他のガンプラはどうなっているんだ? 最新の技術とはどんなものなんだ?」という気持ちが盛り上がる。最新の技術、設計者の思いをプラモデルから汲み取って欲しい、というのが齊田氏の願いだ。

【デイテール表現、色分け】
こちらも作った人を驚かせる色分けとディテール表現だ

 齊田氏は、「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」、「PERFECT GRADE UNLEASHED 1/60スケール RX-78-2 ガンダム」も担当している。特に「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」と「PERFECT GRADE UNLEASHED 1/60スケール RX-78-2 ガンダム」は真逆の存在だという。この2つをやっていたからこそバランスや、仕様に対する割り切りができたところもあるとのこと。

 「PERFECT GRADE UNLEASHED 1/60スケール RX-78-2 ガンダム」という最高峰、最もプラス方向で振り切った商品を手がけているからこそ、「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」というコンセプトが出せた。その上で「40年間様々な設計者が挑み、それぞれの解答を出した『RX-78-2 ガンダム』には、まだまだアプローチの余地、解答がある」と齊田氏は実感した。

 「PERFECT GRADE UNLEASHED 1/60スケール RX-78-2 ガンダム」だからできるガンダム像、ガンダリウム合金という従来にはない素材へのアプローチ……まだまだ掘り下げられる要素は多い。富野由悠季監督が考え、大河原邦男氏が描いた「RX-78-2 ガンダム」は、まだまだ可能性が隠されていると仕事を進めながらつくづく実感したという。

 「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」は何をもたらすか、という質問に齊田氏は「ガンプラの面白さは最新の商品だけでなく、昔の商品が今でも生産され、手にできることだと思います。『ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム』に触れた後は過去の思い出のガンプラも手にして欲しいです。『この時はこんなアプローチをしたんだ』という過去の工夫を実感してください。40年間の進化の歴史を改めて実感でいて欲しいと思います」と答えた。

 一番最初に出たガンダムからガンプラは40年間進化し続けている。ガンプラは常にその時代の最高峰の技術を提示し続けたプラモデルである。低年齢層の、まさに「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」が初めてのガンプラとして手にした子供にはこれからの40年の進化を見て欲しいと齊田氏は語る。

 「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」は“ユーザーを繋げてくれる可能性がある”と齊田氏は考えているという。模型入門や、早く作るタイムアタックコンテストなどのイベントも可能だ。齊田氏自身は模型の同好会や、お店を中心としたコミュニティが、昔より減り、昨今の新型コロナ感染防止対策でさらに難しくなっている状況の中、「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」をオンラインで組み立てるような繋がりにも期待している。

 「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」は低価格ですぐ組み立てられるので、改造のベースとしても思いっきり使って欲しいという。失敗してももう1度挑戦できる。「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」を素体としてガンガン使い、色々なことを試して欲しいとのことだ。塗装やスミ入れなど、模型技術のステップアップを色々試せる素体にも使って欲しいと齊田氏は考えているとのこと。

 齊田氏に「これから挑戦したいものは?」と質問をぶつけると、「海外でガンプラという文化を広げられるガンダム作品を作っていきたい」と答えた。世界中の人達が言葉や文化を越えてガンプラで通じ合えるようになって欲しい、そう強く思っているという。「“楽しい”は世界共通の言葉だと思っていますので、その中心がプラモデルであり続けて欲しいです」と齊田氏は語った。

 ユーザーへのメッセージとして齊田氏は「『ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム』はガンプラ40年の歴史を実感できる商品です。そしてこれからのホビー事業部の進化の新しい出発点だと思っています。是非これからの進化にもご期待下さい」と語った。

【よく動き、よく遊べる】
幅広い可動域でたっぷり遊べるのは大きな魅力だ

 ガンプラは楽しい。丁寧にパーツを切り出し、しっかり説明書通り組んでいけば、多くの人が驚くほど複雑な機構とギミックを持つ、高品質のプラモデルを完成させられる。「俺がこんなに複雑でカッコイイメカを完成させたのか」と高い満足感を得ることができる。それは塗装や整形、加工など他のプラモデルで必須とされる技術がなくても得られるというガンプラが実現した間口の広さである。

 「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」はさらに多くのユーザーにガンプラの魅力をアピールできる商品だ。ユーザーをガンプラに引き込む大きな要素として「完成した姿がたまらなくカッコイイ」というポイントを強調するという考え方はとても感心させられた。作った上での満足感を追求する、というのは、とても魅力のあるアプローチだと思う。