インタビュー

「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」開発者インタビュー

「本物のガンダム」への第一歩として、本物のガンダリウム合金を作る!

【ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム】

12月より順次発送

価格:220,000円(税込)

※2次受付終了済み

 ついに予約が開始された「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」その価格にもかかわらず受注ページがオープンした瞬間に売り切れ、改めてファンの熱意を実感させた。

 ガンダリウム合金、アニメではガンダムの強さに説得力を与えるための設定の1つとも言える架空の金属だが、BANDAI SPIRITSはこの合金を素材から考え、現代の技術で実現可能な、ニッパーの歯も通らない硬さ、18mのロボットとして地上を歩き回れるであろう軽さを併せ持つ金属を作り上げた。

 多くのプロダクトは既存の技術の活用だ。しかしガンプラを生み出すBANDAI SPIRITSはこれまでも新素材を開発し、様々な技術を開発しホビー業界を牽引してきた。今回はついに新たな金属「ガンダリウム合金」を開発し、それを商品として活用したのだ。

 まさにガンプラ40周年の記念商品としてふさわしい「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」はどういった想いで生まれたのか、新素材を作り出して進めるプロジェクトにはどのような苦労があったのか、今回、本商品を担当したBANDAI SPIRITS ホビー事業部開発担当の齊田直希氏に話を聞くことができた。

これがガンダリウム合金モデルのガンダムだ!

全く新しい「ガンダリウム合金」を作り出すことから始まる夢のプロジェクト

 今回一番最初に聞いたのは「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」の企画の経緯だ。"ガンプラ"を作り続けるBANDAI SPIRITSホビー事業部が、"合金モデル"にどうして挑戦することになったのだろうか?

 齊田氏はこの合金モデルは「GUNPLA EVOLUTION PROJECT」の1つであると語った。この「GUNPLA EVOLUTION PROJECT」は、5年前、ガンプラ35周年を迎えた2015年に立ち上がり、様々な「EVOLUTION POINT」というアプローチを行なうことで40周年のガンプラを盛り上げようというプロジェクトだ。

 その1つのアプローチが、「プラモデルの表現」。それまででも「エクストラフィニッシュ」や、「グロスインジェクション」によって、無塗装でも表面処理をすることで金属のような光沢を加え、まるで本当に金属でできた「本物のMS」であるかのような"素材感"を演出するガンプラを発売してきた。このアプローチでたどり着いた答えが、「ガンダリウム合金を作る」というものになったと齊田氏は語った。

 齊田氏はこの「ガンダリウム合金を作る」という企画は、「ロマン企画」だという。この「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」は、ガンプラにおける"本物の質感表現"がテーマとなっていると答えた。本物、つまりアニメ劇中で活躍するRX-78-2ガンダムが目の前にあったとすれば、それはどんな装甲を持っているか、触るとどんな感触があるか、それを表現するための企画だというのだ。

金属ゆえの重厚感が伝わってくるその装甲表面の表現に注目

 「ガンダリウム合金」は、ルナチタニウムという月でしか採れないチタンを素材とした合金だ。しかしまず最初の問題は、それがどんな金属かわからないことだ。チタンとアルミニウム、希土類イットリアという設定に近いであろう原料を候補として出し、とにかく合金を作ってみよう、というのがプロジェクトのスタートとなった。「それらを混ぜるとどんな金属になるか?」ということすらわからなかったのである。

 設定に近い原材料を混ぜ合わせるとどんな金属になるのか、まずとにかくやってみよう、というのがスタートだった。そして初めて試作を作った時、「富野由悠季監督は、この金属をすでに予想していたんだろうな」とスタッフは感じたという。試作としてできたガンダリウム合金は、ニッパーの刃など全く通さない、ダイヤモンドリューターで削ることでしか加工できないような、ものすごく硬く、それでいながら実際のガンダムの装甲ならこのくらい軽くなくては動けないだろう、と思わせる軽さを併せ持つ金属だったという。「この合金ならば機動兵器であるMSに使える」そういう実感をもたらさせるものだったと齊田氏は語った。

 「ここでメチャクチャ重い金属ができたら、そこにはリアリティは感じなかったと思います。このくらいでこのくらい重いのだから、ガンダムに使ったら設定重量を軽く超えてしまう。『ああこのくらいの重さならばMSの装甲に使えるな、地上でもきちんと歩けるな』という、点と点が線となるというか、MSのリアリティを実感できた瞬間でした」。試作品を手にした感想を、齊田氏はこう語った。

 ちなみにこの合金を商品として使うにあたっては、”MIM”という技法が必要となる。亜鉛ダイキャストのように型に流し込むのではなく、原料となる金属の粉末素材を混合し、金型を使って要求する形に成形して焼結して完成となる。素材をグリーンペレット(一般的に小さい固まりを指す)化して型を作り、ゲート処理をして窯で焼いて”焼結”させる。この焼結という作業で素材はどうしても縮んでしまう。この収縮を予想し、こちらが求める形にするために、最新のMIM技術を用いることにした。

”MIM”技法で成形されたパーツ群

 ガンダリウム合金を活用することにあたって、齊田氏が実感したのが、「月で製造することの意味」だという。ガンダリウム合金は月で採掘できるルナ・チタニウムを使う。ガンダムの装甲は月面で作られた、という設定があるのだが、地球上で本商品に活用するガンダリウム合金を焼結して成型する場合、重力で歪んでしまうのが大きな課題となった。

 「今回の商品では1パーツ1パーツ地面と平行に置かないと、焼結の時に歪んでしまうんです。それはやはり重力のせいなのです。『月の低重力なら、宇宙の無重力ならもっと加工が楽だろうな』と実感しました」と齊田氏は語った。ここでも「ガンダム」の設定の奥深さを感じたという。

 それはまさに「本物のガンダムを実際に作る」という興奮を齊田氏にもたらした。「今回、1/144サイズは、最初の1歩だと思っています。この知見が、いずれ作る1/1、全高18mの本物のガンダムに繋がっていくんじゃないか、そう思ってます」と齊田氏は語った。今回様々な課題や反省点も見つかった。それらは、いずれ作る「本物のガンダム」へ活かされていくのだ。

 BANDAI SPIRITSは、「1/1 ガンダム立像」、そして18mの実物大ガンダムを動かし一般公開することを目指すプロジェクト「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」を進行しているが、この「ガンダリウム合金」を作るプロジェクトもこれらの流れの1つなのだ。その先には「本物のガンダム」がある、ということなのである。

 そしてガンプラを生み出すBANDAI SPIRITSだからこそ、「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」はガンプラであり、組み立て式モデルだ。ただ装甲はニッパーも通らないガンダリウム合金のため、骨格をPVCで、装甲をこの骨格に取り付けていくことで組み立てる。

 BANDAI SPIRITSは、金属骨格に樹脂製の装甲を取り付ける「ハイレゾリューションモデル」や、樹脂の可動骨格に外装を取り付けていく「RG(リアルグレード)」があるが、「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」はそこまで可動に注力したものではなく、可動は最低限のものとなっている。プラモデルとしての構造、組み立てる楽しさ、そういう視点での要素を盛り込んだものになっているという。この組み立て要素は「ガンプラへのリスペクト」が込められていると齊田氏は語った。

そのメタル感に圧倒されるリアビュー

 完成品ではなく、プラモデルなのは、本商品がガンプラ40周年記念商品の1つであり、「プラモデルであるべき」というANDAI SPIRITSホビー事業部のこれまでの40年の積み重ねとプライドを持っており、組み立てて質感を感じてもらうことこそ、目指すものだ。

 「今回は22万円という非常に高価なものになりましたが、私達の願いとしては、今後技術の積み重ねで量産ができるようになり、ガンプラのMGやPGなどに活用できればと思っています」。齊田氏は今後発表される新PG「PERFECT GRADE UNLEASHED 1/60スケール RX-78-2 ガンダム」の担当者でもあり、この新PGの"質感表現"というところで、ガンダリウム合金の知見が活かされるとのことだ。

 「この40周年のタイミングでは最初に『ガンダリウム合金モデル』として皆様にお見せしましたが、10年後に発売されるPGでは、装甲の一部がガンダリウム合金になっている、というのも目標として持っています。ガンダリウム合金はこの商品で終わりではなく、今後も活用していく技術となります。特別なものではなく、素材として実用化していきたい、そう思っています」と齊田氏は語った。

 しかし、全く新しい素材だったからこそ、苦労も多かった。素材はとてもデリケートなもので、前述の重力によるたわみなど、1/1000ミリ単位でのズレが商品に影響してしまうため、1,000日位の開発期間が必要となった。プラモデルならば数カ月、かかっても1年というプロダクトと比べると非常に長い開発期間だ。

 最大の難点は「シールド」。パーツが他のパーツに比べるととても大きく、焼き方、配置、様々なポイントを工夫して、何とかたわまないように試行錯誤を繰り返したとのことだ。「この商品への開発の苦労は、アニメの劇中で、本物のガンダムを作った技術者達も同じように苦労したんだろうな、と思いましたね」。

 そういった苦労する素材を扱いながらも精度は下げない。「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」のモールドは、「RG 1/144 RX-78-2ガンダム」に近い、つまり1/144サイズの従来の製品で一番密度の濃い情報量を目指している。「RG 1/144 RX-78-2ガンダム」は、「1/1 RX-78-2 ガンダム立像」のディテール表現を1/144サイズで実現させた商品である。ここも「本物のガンダム」への追求の姿勢の現われ、というわけなのだ。

実物大とRGから落とし込まれたディテール感が素晴らしい

「従来のプラモデルだと、色分けによりガンダム特有の色になっています。色分けとモールド表現の相乗効果で情報量が増しますが、今回のモデルは単色の金属ということもあり、モールドの深さには気を使いました。陰影表現など見る角度によって重厚感を持たせられるようにモールド表現にもこだわっています。HGのモールドではあっさりとしていて金属としての深みが出なかったと思います。RGクラスをベンチマークとすることで今回のディテールとなりました」と齊田氏は語った。

 ちなみに、ダイヤモンドリューターならば削れるというガンダリウム合金だが、ディテール表現は金型によるもので、後加工というものは行なっていない。金型のディテールを焼結作業で歪まないように持っていく、そこにも苦労があったとのことだ。

 ただパーツは「金型から出したまま」のものではない。焼結作業は金型にはめ込むのでゲート跡が残る。これらを削るなど1パーツ1パーツ手作業で処理を行なう必要がある。プラモデルとは段違いの手を掛けた作業を丁寧に行なってパーツは作られているという。

 今回は特にゲート処理には気を使った。これはプラモデルを設計するための基本中の基本ではあるが、ガンダリウム合金を扱うに当たり、改めてゲートの位置、見え方、ゲート処理の方法を考えさせられたという。プラモデルで蓄積のある分野だが、今回のガンダリウム合金は、ゲートの処理に対して初心に戻る必要があったとのことだ。

 一方で少しでもキズや歪みが出たらそのパーツは使えない。このため「規格落ち」のパーツもかなり多かったとのこと。ガンダムの規格に満たなかったパーツで作られた「陸戦型ガンダム」を思わせるエピソードである。それだけ「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」は非常に高い精度、厳格な規格を満たすパーツで構成されているというわけだ。

 「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」は金属でしか実現できないエッジの立った表現、金属が生む陰影の表現などプラスチックとは大きく異なる部分も実感させられたとのこと。ここは是非注目して欲しいと齊田氏は語った。

このモールドの深さにも細かな気配りが

 1つ筆者が気になったのは、プレイバリュー。商品ではガンダムはビームライフルを握っている。このビームライフルは着脱できるが、ビーム・ライフルのトリガー部分は再現できていないためABSのプラ製で、手の穴に差し込む形になっているとのことだ。ビーム・サーベルはバックパックに固定となっており、引き抜くことはできない。

これらABSパーツがどのように使われるのかも要注目だ

 ガンダリウム合金は非常に硬度の高い材質なため、手に持っても傷はつかない。触ることで「本当のガンダリウム合金の硬さ」が感じられるという。「お客様それぞれにガンダリウム合金のイメージってあると思うんです。今回は1/144スケールという形ですが、それでも感じるところがあると思います。『思ったより重い・軽い』、『冷たい・温かい』……こう言った思いが次のステップに繋がっていく。むしろここで完成してしまうと次へのチャレンジもできなくなってしまう。私たちは次のもう1ステップ超えたものを……50周年、60周年を目指して行きたいと思っています」と齊田氏は語った。

 BANDAI SPIRITSはプラモデルにおいて、ポリキャップの活用、性質の違う樹脂素材を組み合わせることでの効果など、ずっと素材にこだわり、積極的に新技術を投入している。今回は金属の新素材を提案するというこれまで以上の新しい挑戦となった。それは日々様々な挑戦を行なうバンダイホビーセンターのこれまでの設計・生産技術の進化というものがあったからこそできたと、齊田氏は語った。

 「新しい金属を作って、商品にする。『よくぞできたな』という感想を持っています。他のプロダクト、つまりここまでの挑戦と成果の蓄積のないところではできなかったと思うんです。レイヤードインジェクション、強化した樹脂素材KPS、ABSを使わない、などなど、これまでのガンプラ、プラモデル作りへの挑戦があってこそ、ガンダリウム合金へ挑戦できたんだと思っています」。

 「これは自分の上司の言葉なんですが『リアルにイメージできないものはできない』という言葉を私自身信じていまして、10年、15年前にはきっとこのガンダリウム合金はできなかったと思うんです。ですが35周年を超えた時に『無理かもしれないけどチャレンジしてみようか』というところまで来れた。それだけバンダイホビーセンターのレベルが上がったということだと思います。このガンダリウム合金ができたのは私達にとっても1つの到達点、マイルストーンになったと考えています」と齊田氏は語った。

 アニメ劇中ではガンダリウム合金はより量産性に優れたガンダリウムγ(ガンマ)が開発されたり、ニュータイプの意思に反応するサイコフレームなどが開発されるが、現実のガンダリウムもここで終わりではなく、今後進化していくという。

美しいアクリル製の台座が付属する

 齊田氏は実は「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」の他に、「PERFECT GRADE UNLEASHED 1/60スケール RX-78-2 ガンダム」、さらには「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」も手がけている。「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」が素材の1つの到達点ならば、「PERFECT GRADE UNLEASHED 1/60スケール RX-78-2 ガンダム」は"ガンプラ"としての1つの到達点だという。このように商品ごとに明確なテーマを持たせ、プロジェクトを進めているという。逆を言えばそのように色々な"究極"を求められるほど、BANDAI SPIRITSホビーセンターの研究要素、そしてノウハウが豊富だと言うことである。

「ENTRY GRADE 1/144 RX-78-2 ガンダム」9月発売予定、価格は770円(税込)

 BANDAI SPIRITSがガンプラで大事にしているのは"本物感"である。ガンプラの先に本物のMSがあるのではないか、お客様にそう思ってもらえるような商品作りは、作り手にとっての強い願いであり、お客様に夢を見てもらいたいポイントだ。PG、MG、RG……様々なテーマで、特に「RX-78-2 ガンダム」はその時代の究極であり、その後のガンプラのスタンダートとなる。

 40周年で「HG 1/144 RX-78-2 ガンダム [BEYOND GLOBAL]」、「HG 1/144 ガンダムG40 (Industrial Design Ver.)」など様々な「RX-78-2 ガンダム」の商品が40周年記念で登場したが、これらも含め、「ガンダムというものの"答え"は1つじゃない」と言うことなのだろう、と齊田氏は指摘する。「これもまたロマンだと思うんです。年齢でも、思い入れでも、それこそ全ての人の中にそれぞれ別のガンダム像がある。そういった様々な人に応えるガンダムを追求していくのが私達のプライドなのかなと思っています」。

「HG 1/144 RX-78-2 ガンダム [BEYOND GLOBAL]」6月発売、価格は2,200円(税込)
「HG 1/144 ガンダムG40 (Industrial Design Ver.)」2019年12月発売、価格は3,300円(税込)

 齊田氏は「1/1 RX-78-2 ガンダム立像」を目の前にした時、「もうちょっとプラモデルも進化しないとダメだ」と悔しい思いを抱えたという。だからこそいかにプラモデルが常に進化していかないといけないというプレッシャーも日々抱えている。お客様はガンプラを通じて、1/1の"本物のガンダム"を見ている。BANDAI SPIRITSはそこを超えていかなくてはダメだ、それが齊田氏の、そしてBANDAI SPIRITSのプライドなのだという。

お台場に展示されていた「1/1 RX-78-2 ガンダム立像」

【動くのか?ガンダム 夢への挑戦!】
18mにガンダムを動かそうという「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」。これらもガンダリウム合金と同じ、"本物のガンダム"を追い求めるプロジェクトだ

 それと共に、1つ1つ手を動かして組み上げていく「プラモデルを作る遊び」は大事にしていきたい。昨今のゲームやバーチャルでは味わうことのできない"手を動かしてモノを作る"、"様々な気づきを得る"、"構造を知る"といった体験を通じて、込められた技術を実感する、商品を作ることの情熱を知る、それこそが模型業界がお客様に提供する商品への技術の向上に繋がっていると齊田氏は思っている。そして模型業界の技術への驚きが、世の中の様々な技術へ影響をして欲しいという想いももっているとのことだ。

 「『ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム』は組み上げていくことで、本物のガンダムの装甲の手触りはこうなのではないか、本物のガンダリウム合金の重さはこうなのではないか、そういった実感を得ることができると思います。組み立てないと”重み”を感じられない。”重み”とは装甲のことだけはなく、この商品を作り上げたエピソードなども解説書にまとめてあります。これらも読んで、背景も噛みしめて、世界観に浸りこんで、組んで欲しい。そう思います」と齊田氏は語った。

 ちなみに、「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」は、組み立ての難度は高くない。シンプルに、誰でも簡単に”スタチューモデル”(ディスプレイモデル)として飾れるようになっているとのこと。PVCの内部フレームに装甲を取り付けていくことで、ガンプラならではの「本物のガンダムを組み立ててるような楽しさ」をきちんと感じるものになっているとのこと。

頬のチンガードから耳にかけてのシャープさに脱帽

 話を聞けばガンダリウム合金モデルがいかに革新的で、ユニークな挑戦であることがわかる。工程の難しさ、複雑さも含め価格がどうしても高価なものになるのは仕方がないとは思うが、やはりもう少し手が届く価格帯の商品で、ガンダリウム合金を味わってみたい。

 齊田氏は「もちろんこちらとしても技術はそのまま、実用的な生産ラインというものも模索していこうとは思います。GMのような量産型のような方向性も面白いかも知れないですけどね(笑)。今回はまさに夢の第一歩、という感じです」。プロダクトの最初、ノウハウの確立、という意味でも価格、という意味合いもある。限られた人しか手にできないが、だからこそアイテムとしても大きな魅力がある。

 最後にユーザーへのメッセージとして齊田氏は、「今回の「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」はロマンある商品だと思っています。BANDAI SPIRITSの現時点の最高峰の商品としての位置づけですし、まずは質感表現の40周年の回答をご用意いたしました。手に取っていただいた皆さんには”プラモデル”としていったん楽しんでいただいて、その設定の深堀だったりとか、ガンダムの世界の妄想みたいなところだったりとかを実際手に取って頂ければなと思っております」と語った。

月で精製されたとされる”ルナ・チタニウム”=”ガンダリウム”をまとって月に降り立つガンダム

 筆者は生粋のガンプラモデラーであるが、ガンプラを作り始めた子供の頃から”金属外装のガンダム”が欲しいとずっと思った。それはやはり原作のガンダムが「ガンダリウム合金製」という設定だったためだ。その想いがようやく実現した。12月にはユーザーの元に届く。まさに、「こんなにうれしいことはない」という想いだ。

 今回開発担当者にインタビューすることもできたのは、ガンプラファンとしてグッとくるものがあった。齊田氏は筆者よりずっと若く、インタビュー中の熱いまなざしやその言葉からは強い想いが伝わってきて、筆者は心の中で「今後のガンプラをお任せします!」という言葉を送った。

 筆者は「G40」や「BEYOND GLOBAL」などの「RX-78-2 ガンダム」を作ることで、様々なアプローチの面白さを感じ、改めてガンプラ技術のレベルアップに驚かされたが……今回インタビューを聞いたことでバンダイホビーセンターにいつか行きたいという想いはますます強くなった。

 「ガンダリウム合金モデル 1/144 RX-78-2 ガンダム」以降も「ENTRY GRADE」や「PG UNLEASHED」といったさらなる「RX-78-2 ガンダム」も登場する。筆者は技術革新を見るのが好きだ。それを叶えてくれるガンダムとガンプラの今後を見守っていきたいと思う。ガンプラ40周年はダテじゃない!