インタビュー
惑星Zi生まれ!? 「ゾイドワイルド」史上最大「ゼログライジス」誕生秘話をタカラトミーに聞く
意外なこだわりはモーター連動で“にょろん”と動く尻尾
2020年9月18日 12:00
タカラトミーが展開する組み立てキット「ゾイド」(ZOIDS)。1983年からスタートしたシリーズは、昭和・平成という2つの年代を経て、第3期にあたる「ゾイドワイルド」の展開を2018年から始めている。
「ゾイドワイルド」シリーズにおいて、“最大級”と銘打って8月に登場したのが「ZW44 ゼログライジス」だ。ティラノサウルスよりも大型の肉食恐竜であるギガノトサウルスをモチーフとし、恐竜というよりも怪獣然とした姿で禍々しく立体化。大きさだけでなくギミックの完成度も最高峰となる。
令和の「ゾイド」の顔とも言える「ゼログライジス」。本機の開発秘話やシリーズの今後の狙いを、「ゾイドワイルド」シリーズの生みの親とも言えるタカラトミーの高橋久直氏、内藤豪氏に尋ねた。両氏がそれぞれ手に持っているのが今回のテーマとなる「ゼログライジス」だ。
親子で楽しむ組み立てキット「ゾイド」の歴史
時代を超えて続くゾイドの人気は、動物や恐竜をモチーフとした機械生命体という設定もあり、世代を問わず多くの人々から認知されたところにある。組み立てキットとしては入門向けで、主なターゲット層は今も昔も小学生だ。内部に電動あるいはネジ巻き式のモーターを搭載しており、作って飾るだけでなく、モチーフとした生物独自の動き方まで再現しているところがシリーズに受け継がれる独自の要素となる。
1999年から2006年頃に展開した「平成ゾイド」では、親子で楽しめる組み立てキットとして、さらに間口を広げた。ちょうど「昭和ゾイド」に親しんだ世代が親となり、子供の創造力を育む玩具として人気を博したのだ。また、同時期に放送されたTVアニメ「ゾイド -ZOIDS-」を皮切りとしたシリーズも、当時画期的だったフル3Dでゾイドを表現したことで、組み立てキットの人気を後押しした。
2018年に展開を開始し、今年3年目を迎える「ゾイドワイルド」シリーズは、入門向け組み立てキットとしての性質をさらに強化。「平成ゾイド」で育った世代もちょうど20代~30代ぐらいの年齢となっており、親子で楽しむ組み立てキットという“勝利の方程式”を踏襲している。
「ゾイド」は接着剤・ニッパーなしで完成する真のツールレスキットに進化
まずは「ゾイドワイルド」シリーズがどういうものなのか、そのコンセプトと狙い、現状や今後の方針を内藤氏に伺った。
――「ゾイドワイルド」も2020年で3年目を迎えているわけですが、現在のリリース状況はどんな感じでしょうか?旧シリーズと比較した盛り上がりなどはいかがですか?
内藤氏:リリース状況では、一部限定品などを除いて「ゼログライジス」でシリーズ通算44体目となります。1年目は24体、2年目以降には20体のゾイドが新しく世に出ました。10月からは新シリーズがスタートし、新商品が発売予定です。
ゾイドワイルドシリーズも歴代シリーズと同様に小学生を中心にご好評をいただいております。
「ゾイドワイルド」から新しく取り⼊れた要素として、まず生物の骨格から見つめなおして、新たなデザインを行っていまして、より生物的なアプローチを求めていったのが、骨格(ボーン)システムになります。
さらにゾイドの組み立てには新たに「発掘・復元」という設定を加えて、実際の恐竜が化石から発掘されて復元されるように、子どもの組み立てにストーリー性を持たせることで、よりリアルに感じて、没入感をもってもらえるようにしています。
骨格を組み立てて、アーマーをつけて完成というのがゾイドワイルドの特徴で、より生物らしいフォルムがベースになってゾイドになるという2段階の楽しさがあります。
そして「ゾイドワイルド」にはもう一つ、組み立てて動きだすという基本的な魅力に、新たな動きの価値・インパクトとして加えたギミックが「ワイルドブラスト」になります。生物のモチーフに根ざして、より攻撃的な形態に変化するアクションギミックとなっています。それぞれのゾイドによって固有の必殺技があるんですが、ワイルドブラストの驚きとカッコよさもゾイドワイルドシリーズが子供たちから人気を得られた要素だと思っております。
――「ゾイドワイルド」は「歴代ゾイド」に比べると作りがガラッと変わったように感じます。主なターゲット層はどう考えていますか?
内藤氏:ターゲット層は変わらず小学生で、小学生全般をメインに考えています。最近はスマートフォンなど手軽に遊べるモノが普及してきたこともあって、子供たちのおもちゃ離れがより低い年齢層から生じるようになってきています。そこで、「ゾイドワイルド」では対象年齢を6歳以上とし、6歳の子供でも組み立てられるよう組み立てキットとしての難易度を下げることを意識しています。
――組み立て難易度を下げるために工夫した点はありますか?
内藤氏:ゾイドワイルドの立ち上げ時に昔のゾイドを子どもたちに組み立ててもらうなどして、調査をしたところ、普段から組み立てキットにあまり触れていない子はゾイドの組み立てに苦労していたと聞いています。ですので、ゾイドワイルドシリーズでは、ニッパーを必要としないランナーを無くした仕様にしています。
また説明書も進化しました。発掘・復元という設定になぞらえて「復元の書」という名前でフルカラーでより見やすい冊子形式にしまして、パーツを原寸サイズで照合できる「発掘見取り図」というページも用意しています。
――「ゼログライジス」の説明書では、先頭の折り畳みページを展開することで組み立て方とパーツ一覧を常に同時に見られる形でしたね。この作りには感銘を受けました。歴代シリーズと比べて組み立てキットのスケールも変更されていますが、ここには何か狙いがありますか?
内藤氏:12年ぶりの復活ということもあり、今の子どもたちはゾイドを知らない状態でしたので、ゾイドをより身近に感じてもらうために、ちょっと見上げて目が合う距離感を重要視して、ゾイドに対して相棒感であったり、ゾイドは実際にいるんだと感じてもらえるサイズにするため、スケールを変更しました。
「ゾイドワイルド」史上最強クラス・最大級のゾイド「ゼログライジス」
「ゾイドワイルド」シリーズにおいて、最大のゾイドとして8月8日に発売したのが「ゼログライジス」だ。シリーズ従来のゾイドが骨格に装甲を組み付けるタイプであったのに対し、本機はフレームがむき出しという一線を画した構造を持っており、大きさや強さだけでなく、その設定上も謎を秘めた特別な存在だ。
ギガノトサウルスをモチーフとした「ゼログライジス」だが、最新のギガノトサウルス種の骨格標本からは大きくアレンジを施した姿で立体化。手足をヒロイックに大型化し、背中から尻尾の先端に至るまで針山のように重火器を備えたシルエットが印象的だ。ボディ各部には血管のように紫のラインが走り、この部分には毒液が循環しているという設定。他のゾイドとは一線を画す、強さや威圧感が滲み出る超大型ゾイドだ。
キットの内蔵モーターは電池による駆動となっており、スイッチを入れると歩行とワイルドブラスト形態への移行を繰り返す。歩行時には巨大な尻尾を左右へ振りかざしながら前進。ワイルドブラストでは上体を大きく持ち上げ、胸部を開口。心臓に当たる部分からグライジス・コアと呼ばれる砲身を露出させるアクションになる。露出した砲身はLEDで発光・回転する。ただでさえ巨体の「ゼログライジス」が、上体を反らせることでさらに大きく見え、圧倒的な存在感を放つ。
ここからは「ゼログライジス」の生みの親である高橋氏にその誕生秘話を伺った。
――「ゼログライジス」は「ゾイドワイルド」最大のゾイドということですが、既存のラインナップとの対比はいかがでしょうか。今後はシリーズ全体として大型化の傾向になったりしますか?
高橋氏:これまでの「ゾイドワイルド」で大きいゾイドというと、「デスレックス」や「オメガレックス」といったティラノサウルス型のものや、スピノサウルス型の「ジェノスピノ」になります。それらを越えたサイズで登場したのが「ゼログライジス」です。パーツ数も約1.5倍とサイズにふさわしいボリューム感に仕上がっています。
内藤氏:シリーズ全体としては、今まで通り、M型を中心に発売していきたいと思っておりまして、大型化は考えておりませんが、ただ今後、発売する可能性はありますので楽しみにしていてください。
――モチーフとしてギガノトサウルスを選んだのはなぜですか?
高橋氏:ティラノサウルスよりも大きい恐竜ということでギガノトサウルスをモチーフとしました。歴代シリーズにも「ゴジュラス」などティラノサウルス系をモチーフとした大型ゾイドがいるのですが、デザイン的にはそちらに近づけています。「ゾイドワイルド」では基本的には最新の骨格標本に近づけていたのですが、「ゼログライジス」は特別に恐竜というよりも怪獣を意識しています。歴代シリーズに親しんだ方には特に分かりやすいシルエットではないでしょうか。
また、「第1期ゾイド」では、最大級の大きさを誇る「キングゴジュラス」というゾイドをリリースしているのですが、ギミックやデザインは「ゼログライジス」の参考になっていて、ワイルドブラストの砲身回転と発光のギミックもここから発想を得たものになっています。
カラーリングにもこだわっていて、体色のベースにはシルバーとグレーの2色を使っています。シルバーは金属感を高める特殊な成形色を発注していて、こだわったポイントの1つです。主張しすぎない色合いにすることで、本機の威圧感を強めるような配色としています。
――なぜこんなに大量の重火器を装備させたのですか?
高橋氏:背中に満載したのは⼀⾔で⾔うと派⼿さを出したかったからですね。最強のゾイドとイメージしているので、どの⾓度から⾒ても強そうに⾒せたいと思いました。⼿⾜などに武装をつけることもできますが、後ろから⾒た際の迫⼒も考えると背中に⼤量の武装を取り付けるのがベストでした。
――ゾイドといえば動きのあるキットですが、アクションの特徴を教えてください。
高橋氏:まずはワイルドブラストですね。「ゼログライジス」の開発を始めた時、各部の詳細を詰める前に最初に考えたのがこのギミックです。天に向けて咆哮するようなポーズを取らせることが最も重視した点でした。普段隠している部分から隠し武器がせり出してくるというのがこだわりで、砲身は常に発光しているので普段も肋骨の隙間から光りがのぞくというのも意識しています。
もう1つは、尻尾の動きに注目してほしいです。「ゼログライジス」で初めての試みとなるのですが、尻尾の節が連動して動くようにリンクを仕込んでいて、尻尾の先端までダイナミックかつ自然に左右に振る動きを実現しています。
――大きさ故に開発で苦労した点はありますか?開発期間などはいかがでしょうか。
高橋氏:「ゼログライジス」は価格が定価8,500円(税別)ということで、高いキットであるからには大きさが必要です。しかし、大きすぎてもいけない。大きくなると組み立ても難しくなるし、モーターの負荷も考えないといけないので、これらのバランスを取ることが大変でした。これ以上大きくなると動きに支障が出てくるので、これしかないという究極のバランスを突き詰めています。
開発期間としては約1年です。ここはほかの商品と大きく変わりません。
――装甲と骨格が一体化しているなど、ほかのゾイドとは違う点を強調されてますが、公開できる裏設定などありますか?
高橋氏:機体の何箇所かに逆三角形のエンブレムがあるのにお気づきでしょうか。このエンブレムは歴代シリーズの「ゼネバス帝国」のものです。「ゾイドワイルド」の舞台は地球、「ゼネバス帝国」があったのが惑星Ziということで、実は「ゼログライジス」はほかのゾイドとは出自が異なります。ではどのように地球に移動してきたのか、という部分は不明とさせていただきますが、出自の違いが特異性や強さの由来の1つです。
――たしかに、惑星Ziのゾイドは設定上もワイルド大陸のゾイドに比べて巨大なので、そこの生物ということは強さも納得ですね。最後に、ゾイドファンや未来のゾイドファンに向けたメッセージをいただけますか。
高橋氏:ゾイドは作ってみないと面白さが分からない部分もあります。ただ組み立てて終わりじゃなくて、自分で組み立てたものが動き出すというところにも感動があります。まずは小型ゾイドから触って頂いて、「ゼログライジス」を1つの目標と定めていただければと思います。「ゼログライジス」は組むのも大変だと思いますが、できあがった時の感動もひとしおです。焦らず時間をかけて、じっくりと組んでいただきたいです。
内藤氏:ゾイドは、パッケージを開けた瞬間から発掘して復元している感覚を味わいながら、組み立て遊びを楽しむことができて、さらに一生懸命に作り上げたゾイドが命を吹き込まれたかのように動き出す感動も体感することができるキットです。そして、自分の妄想と自由な発想でオリジナルゾイドを作る改造遊びもゾイドが持つ、もう一つの魅力です。組み立て・動く・改造、ゾイドでしか味わえない体験をお子様はもちろん、お父さん・お母さんも一緒になって、楽しんでいただければと思っております。また今後もみなさんに驚きと楽しさをより感じもらえるゾイドをお届けしたいと思っておりますので、是非ご期待いただければと思います。
――ありがとうございました。
以上、タカラトミーの高橋氏と内藤氏にお話を伺った。本稿掲載の頃には放送中のTVアニメ「ゾイドワイルドZERO」においても「ゼログライジス」が大いに活躍している頃合いとなるだろう。まさに「ゾイドワイルド」シリーズ史上最大級のゾイドとして振る舞う同機の強さはもちろん、作中で元気に動く尻尾にも注目してほしいところだ。また、今後しばらくは「ゼログライジス」が「ゾイドワイルド」における最高級のキットとなる。クリスマスも近づいているので、男の子へのプレゼントとして選択肢の1つにいかがだろうか。
© TOMY/ZW製作委員会・テレビ東京