インタビュー

「SHODO デジモン」開発者&デザイナーインタビュー

「デジモン」ファンの熱意を汲んだ、こだわりのラインナップと造形に注目!

【SHODO デジモン1】10月26日発売予定

【SHODO デジモン2】12月発売予定

【SHODO デジモン3】2021年4月発売予定

価格:各950円(税別)
【SHODO デジモン3 コンプリートセット】

2021月4月発売予定
価格:4,500円(税別)
※プレミアムバンダイ限定

 バンダイは「デジモンアドベンチャー:」の食玩「SHODO デジモン1」を10月26日に発売する。「SHODO」は「仮面ライダー」や「ウルトラマン」などを中心に展開される食玩のシリーズで、全身十数カ所以上が可動するアクションフィギュアやその乗り物などを、手軽な価格とサイズでリリースしている。この「SHODO」シリーズで、デジモンが発売されることに驚いたファンも多いだろう。

 2020年4月にリブートされたTVアニメ「デジモンアドベンチャー:」に合わせて企画された「SHODO デジモン」シリーズは、10月26日発売に一般発売される第1弾を皮切りに、現在第3弾まで発売が予定されている。

「SHODO デジモン1 コンプリートセット」
「SHODO デジモン2 コンプリートセット」

 「SHODO」シリーズとは、“掌サイズで動くフィギュア”から2文字を取って「SHODO」(掌動)と名付けられた食玩フィギュアシリーズ。これまでは仮面ライダーなどを題材としてきたが、今回はデジモンが題材ということで既存シリーズとは一線を画す。モチーフがシンプルな人型ではなくなったため、全高は約8cmと若干小型化したものの、翼や角などが生えているためボリューム感は増した。価格は各950円(税別)となる。

 デジモンの中でも人気の高い「ウォーグレイモン」を筆頭に、各弾3種類ずつの内容がラインナップ。2021年4月発売予定の第3弾は、「オメガモン」、「リリモン」、「ズドモン」の3種。一般発売版の他に、「デジモン」シリーズのキャラクターデザイナーである渡辺けんじ氏がイラストを描き下ろしたオリジナルのパッケージに入った「SHODO デジモン3 コンプリートセット」が現在プレミアムバンダイで予約を受け付けている。

 今回、第1弾の発売を前に、渡辺氏と「SHODO デジモン」の企画を担当したバンダイキャンディ事業部の林佳奈子氏にインタビューを敢行。「SHODO」で「デジモン」シリーズを出すことになった経緯や開発秘話、商品の見どころなどを訊いた。

「デジモン」キャラクターデザイナーの渡辺けんじ氏(写真左)とバンダイキャンディ事業部の林佳奈子氏(写真右)

ファンの期待に応えるために、第3弾までを企画し、主要なデジモン9体がフィギュアで揃う

――まずは「デジモン」シリーズを、食玩の「SHODO」で出すことになった経緯からお聞かせいただけますか。

林氏:元々私はBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部に所属していて、そのときに「S.H.Figuarts」シリーズなどで「デジモン」を担当させていただいた時期があったんです。「デジモン」ファンのお客様は凄く熱心で、当初から要望もたくさんいただいていたんです。

 ウォーグレイモン、メタルガルルモン、オメガモンなどは単体でも人気があるので、これまでもたくさん商品化の例があるんですが、他のキャラクターってなかなか商品化の機会がなくて、お客様からは他のデジモンもラインナップしてほしいという声がたくさんありました。私自身も同じ世代なのでその気持ちは凄く分かりつつも、力及ばず、メインキャラクター以外の商品化はなかなか実現できなかったんですよね。

 「デジモン」のシリーズはその後「超進化魂」という変形させて楽しむ、アクションフィギュアとはまた違ったジャンルのシリーズを展開して、以降商品化はお休みしていたんですが、いつかお客様の要望に応えたいということをずっと考えていました。

 それがちょうどこの2020年に、リブートされたTVアニメ「デジモンアドベンチャー:」が始まるという機会が訪れまして、それに合わせて何かできるかもしれないと提案させていただいて、今回ようやく商品化することができたんです。

渡辺氏:今回は単発ではなく、最初からこの第3弾までやると決まっていると聞いて驚いたんですよ。

林氏:はい、企画を提案したときから第3弾までやることを決めていました。第1弾を出して受注の様子を見て、という従来通りの展開ですと、またコンプリートできない可能性も出てきてしまいますから、それは絶対に回避したくて、提案時から第3弾までやるという点が絶対条件で、もしそれができないならやらないぐらいの気持ちでしたね。

――そのときから「SHODO」での企画だったんでしょうか。

林氏:はい、「デジモン」はもともと弊社がおもちゃとしてたくさん商品化していたので、ファンの方は可動フィギュアが好きなのではないかという印象があったんです。また食玩という性質上、サイズはあまり大きくできないので、ポーズ固定ではなく動かして遊べるものとして「SHODO」を選びました。

――渡辺さんにはどのようなオファーがあったんですか?

渡辺氏:最初にお話をいただいたのは今年の頭ぐらいで、限定版のパッケージを描いてほしいということだったんですが、最初から「3体ずつ、3種類をこの並びで」ということだったので、「早いな」と思いました(笑)。この段階から全部やるつもりということが分かったので、描くときの意気込みは普段と少し違う気分でしたね。

コンプリートセットのパッケージを、渡辺氏が手がけている。なおこちらの2種は予約が終了している

林氏:S.H.Figuartsを担当していた頃から、渡辺さんのイラストが入ったパッケージは発売後のアンケートなどで凄く評価が高かったので、今回も商品の魅力を高める要素としてお願いしたいと思っていたんです。「デジモン」を食玩のアクションフィギュアとして発売するのは初めてなので、お客さんにとって価値の高いものとして、コンプリートセット用のイラストをお願いしました。

渡辺氏:私の絵が入るのは、バンダイさんの商品ならではですよね。食玩なので、フィギュアとしては大きさや可動がある程度制限されてしまいますので、その部分を絵で補完できるようなものを描けたらいいなと思っていました。

――具体的にはどんなポイントを意識されましたか?

渡辺氏:あまりこぢんまりとしないようにして、ポーズも大きめにしたほうが面白いのではないかという部分は意識していました。

林氏:ポーズもキャラクターごとに違っていて、凄く個性を感じられましたね。動くことで魅力が出るアニメの絵ともまた違って、1枚の絵としてパッケージに印刷されることになったときに成立する格好いい絵ですので、上がってきた作品を眺めてずっとニヤニヤしていましたね(笑)。

渡辺氏:(笑)。それと、第1弾・第2弾に関してはデジモン3体の向きがそれぞれ同じという依頼もちょっと珍しかったです。決められたサイズの中にただキャラクターを置くだけでは寂しいので、うるさくない程度にエフェクトを入れたりして、チャレンジ的なこともしましたね。

林氏:私からはかなりざっくりとした依頼をしていたんですが、想像してた以上に格好いいものが上がってきて、部内でみんなに見せびらかせました(笑)。過去に弊社で「デジモン色紙ART」というミニサイズの色紙の食玩を出していて、そちらでも渡辺さんにイラストを描いていただいていたんですが、その担当者からも「生き生きしている」と言われて、凄く嬉しかったんですよね。ざっくりとした依頼だった分、自由に描いていただけたことがプラスに働いたのかもしれませんね。

――キャラクターのラインナップに関してはどういうチョイスだったんでしょうか。

渡辺氏:ウォーグレイモンとメタルガルルモンがやはり主人公的なポジションになるので、第1弾と第2弾は彼らメインとしつつ、第3弾ではそこにオメガモンを据えて、あとは天使系とワイルド系でバランスを取りました。オメガモンを除いた8体で、アニメのメインキャラクターである“選ばれし子供たち”のデジモンが揃うことにもなります。

8体のパートナーデジモンが勢揃い

造形はもちろんのこと、塗装にも強いこだわりを持って開発

――開発で苦労された点はありますか?

林氏:まずは企画が通るまでの苦労もあったんですが、開発的なところでは、これまで商品化された機会が少ないデジモンの造形には苦労しました。ウォーグレイモンやオメガモンなどは商品化の機会も多いので参考にできるんですが、ガルダモンなどはあまり機会がなく、しかも要所が鳥の意匠で人型とは違った構造をしているので、手や足などは立体化したときにどんな構造になるのか検討を重ねました。この手だけでも3~4回作り直していますからね。

「SHODO デジモン1」にアソートされるガルダモン

渡辺氏:その甲斐あって、上手い落としどころの造形になっていますよね。サイズの割に可動も多いですし。

林氏:そうですね。逆にウォーグレイモンなどは、過去に商品化されたものを持っている方も多いと思うので、それと比較したときに「この値段だから(クオリティ的に)仕方ない」とは思われたくなくて、可能な限り動かしても楽しめるよう努力しました。

 あともう一つ悩ましかったのはカラーリングですね。「金なのか、黄色なのか」みたいなところで、原作イラストのイメージを持っている方と、アニメのイメージを持っている方がいるので、その最大公約数としての色の仕様を決めるのは時間をかけましたね。

ウォーグレイモンも第1弾の「SHODO デジモン1」にアソート

渡辺氏:色だけでなく、部位によって光沢やつや消しなど、質感も変えてますからね。

林氏:とにかく安っぽく見えないように、固そうなところは光沢、生身っぽいところはつや消しにとか、シルバー系でも色味を変えて陰影を演出するとか、そこは結構こだわったところです。

渡辺氏:色が好みではないという人は、塗装してもいいですからね。その余地があるのも食玩としての良さですよね。この大きさに対して、造形も結構がんばっていますし。

林氏:フィギュアで造形するにあたり形の嘘がつけないんですが、サイズ的に全てを造形すると、耐久性が落ちてしまったり、見た目が悪くなってしまったりするので、そこはできるだけ違和感が少なくなるように工夫をしました。

 例えばホーリーエンジェモンなどは、羽衣を体から浮いた状態にしているんですが、最初の試作の段階では全身に羽衣をまとわせて、なおかつ翼も可動させられるようにしていました。でもこの大きさでそれをやってしまうと、ちょっとポーズを取らせるだけで可動部が動きすぎてしまって、フィギュアとして遊びづらくなってしまったんです。そこで、羽衣は前に見えるところだけを造形して、翼も前に来るようにして固定することで、フィギュアとしての遊びやすさを優先させたんです。

「SHODO デジモン2」のホーリーエンジェモン

渡辺氏:アトラーカブテリモンとかは、それと対極的でいいですよね。全体的にみっちりした感じがあって。

林氏:そうですね。アトラーカブテリモンは腕や足に関節をあえて使わずに、造形で全体の表情が出るようにしていて、ボリューム感も出して雰囲気を作りました。見た目がリアルなので、原型のCGが上がってきたときは「怖っ!」と思ったんですが、実際に造形になって手の上に乗せたりしてみると意外に可愛くて(笑)、個人的にも凄く気に入っています。

アトラーカブテリモンのリアルな造形には渡辺氏も満足

アメコミを意識して自由に描いたことが、現在のイラストのタッチに繋がる

――渡辺さんは完成したものを見ていかがでしたか?

渡辺氏:人型のデジモンがよくできていると思いました。人間の体型だと、可動部分が決まっていて面白みが少ないんですが、周りに飾りを上手くあしらって、造形としても楽しめるんですよ。あとはパッケージを描いたときに、まったく違ったタイプのデジモンが3体並んでいて、それだけでも面白かったので、フィギュアが9体並んだときはさらに面白くなるんじゃないでしょうか。

――これらのデジモンをデザインされた当時は、どのような流れで作られたのでしょうか。

渡辺氏:元々は電子ゲームの「デジタルモンスター」のドット絵をイラストにする依頼があって、それを素直に起こしたんですけど、「(ドット絵の)まんまじゃないか!」って怒られたんです(笑)。そりゃそうですよね、「イラストで起こせ」って言われたものを起こしただけですから(笑)。それが発表の1カ月ぐらい前という切羽詰まった時期だったので、「じゃあ私の好きにやらせてもらうので、文句は言わないでね」と釘を刺して描いたのが、あのイラストなんです。

 私はアメコミが好きで、当時はまだ対象の10歳前後の男の子にアメコミはそれほど浸透していなかったので、あのタッチでモンスターを描いたら面白いかもと思ったんですよね。黒ベタの部分を多めに入れることで、描かなくてもいいところも出てくるので、それで時間を短縮して、1カ月で全キャラクターを完成させたんです。

林氏:あの数を1カ月って凄いですね!当時見たときに、ドット絵とイラストのギャップが激しかったことを覚えてます(笑)。「たまごっち」はイラストがドット絵そのままだったのに(笑)。

渡辺氏:私はその「たまごっち」のドット絵も打ってました(笑)。

林氏:そうだったんですか!? 私が女児だった頃に、「たまごっち」のドット絵は、ノートによく描いてましたよ(笑)。

渡辺氏:その世代の方が一緒に仕事をしているのは凄いことですよね。あれから約25年が経って、林さんと同じ世代のファンの方が今大人になって、そこに刺さるものを今も作れるのは本当にありがたくて、やってよかったと改めて思いました。

――いよいよ第1弾の一般発売と、第3弾のコンプリートセットの予約時期を迎えるわけですが、商品を楽しみにしている方にメッセージをいただけますでしょうか。

林氏:フィギュアとして実際に触って遊んでいただくものなので、1つでもいいので試しに買っていただければ、印象も変わるのではないかと思います。もしそれで気に入っていただけたらぜひ全種揃えて、この並びを実現してもらいたいです。たくさん買っていただけて好評であれば、もしかするとその後の展開の可能性も期待できるかもしれませんので……(笑)。

――シリーズ展開の構想もあるんですか?

林氏:企画者としての構想はもちろんありますが、実現できるかは第3弾までの評判次第ですので、何卒よろしくお願いします!

――渡辺さんはいかがでしょうか。

渡辺氏:フィギュアがこのサイズでありながら、とにかくよくできているので、それをさらに魅力あるものとして感じられるパッケージを書かせていただきました。コンプリートセット第3弾のパッケージもラフに着手したところですが、ここで終わりではなく、次にも繋がるように、買っていただいた方に満足していただけるようなものを描ければいいなと思っています。

――ありがとうございました。

第3弾にはオメガモンも登場。今回のインタビューで試作品を見せていただいたが、監修中とのことで撮影は控えた。かなりのかっこよさなので完成品への期待も高まる。渡辺氏が手掛けるパッケージイラストにも注目だ