インタビュー

人類の革新始まる!? 「脳活動でザクを動かす」、川島隆太博士インタビュー

認知症、ストレス……様々な不安に向き合い、より楽しい生き方ための脳科学

 現在NeUではセンサーとセットに、「集中力を増すトレーニングをする」、「脳を効率よくリラックスさせる」という2つのシステムのサービスを行なっている。しかし「脳を鍛える」というだけでは足りないと川島博士は言う。食や生活習慣、様々な要素を組み合わせ、「健康」を求めるシステム作りが、脳科学だけでなく多くの分野で求められている。1つの分野での健康への方法提示ではなく、多彩な分野での全体的な健康的な生活を送るための指標を作ることが、学問の1つの役割だ。NeUはそのキープレーヤーを目指していく。

 そして「ビッグデータ」の活用だ。NeUのサービスを活用する人が増えることで、脳の活動を計測しながら様々な試みを行なうことで、各個人の差や、効率、より良い方法のためのデータなど様々なデータが蓄積されていくこととなる。

 「毎日『脳トレ』を行なっているとある日異常値が出た。それは病気の予兆かも知れない。データの蓄積がされることで当人が自覚していない病気を事前に察知し、より速く治療へ導くことも可能になります。脳梗塞や脳出血の場合、やはり異常な値が検知されるんです。今後利用者が増え、より詳細なデータを蓄積することで、『脳トレ』が病気を事前に検知するということもできる。血圧を測るように脳活動を計り健康状態をチェックする、『病院に行って下さい』と告知できる。このシステムの目標の1つはここにあります」と川島博士は語った。

発表当日のセミナーでは川島博士自らパイロットとなり脳活動でザクのコントロールを試みている

 次世代の研究開発は、「センサーからの解放」だ。ヘッドバンドでセンサーをつけてなくても、家の中にいたり、普段の生活で脳活動が計測できる。この環境が可能になればより細かいデータの蓄積が可能となる。センサーをつけて日常生活を送ってもらい、同じような反応が人体の他の部分で計測できないか、そういった研究が深まっていくことで脳活動をもっと容易に計測できるようになるかも知れない。実験は様々な方向性が考えられる。

 認知症の回復というのは「脳トレ」が生まれる最初の目的であり、こちらの研究は進められている。何らかの事態で機能を損傷してしまった人へのリハビリプログラムも今後求められるところだ。そして「病気にさせないこと」が最大の目標だという。それこそがNeUの最大の社会的使命だ。脳科学を通じて、病気を防ぎ、大病を発症させない。「脳の健康」、そのためのアプローチを行なっていきたいと川島博士はコメントした。

 ザクに関しては、脳活動での操作だけにはこだわらない。操作はコントローラで行ない、脳活動を感知すると“必殺技”が出るようなシステムも面白いだろうと川島博士は言う。「思考でロボットを動かす」というのは面白く、活用できれば脳のストレスを低減してくれる。魅力的な“遊び”であり、今後もこの方向性の研究もしていきたいとのことだ。チームでザクを動かし、皆の心が1つになった時に何らかの機能が発動する、ロボットアニメそのままのシステムだって可能なのだ。

 「どういう心の状態にすればザクを動かすか」という自分の内面を見つめる行動は現代社会に求められていることだと川島博士は指摘する。現在でも自分を見つめる方法として、ヨガや瞑想などもあるが、もっとわかりやすい“遊び”にすることには意味があるのではないか? 精神を集中すると車が走り出す「スロットカーレース」のような遊びならばどうか? この方向のアイディアも無限大だ。

様々な未来が考えられるが、まずは研究を進めていくこと。NeUの商業的アプローチはその1歩となる

 今回、「脳活動でザクを動かす」という取材をきっかけに、川島博士がNeUで何を目指しているかを聞くことができた。「脳トレ」は脳を鍛えるだけでなく、その根本的な目標は「健康」にあるのだ、という考えは感心させられた。脳活動を確認することでその効果がきちんと確認できるというのは、納得させられるところがある。

 そして「ザクを動かす」というのもまた楽しい。心の状態がスイッチを入れるというのはSFマインドを刺激するし、敢えてその行動を「遊び」と定義し、心身のストレス軽減に活用しようというのも楽しい。動く、動かないで目くじらを立てるのではなく、動くと楽しい、そういう遊びだというのは、今後の玩具の方向性としてはまさにうってつけではないだろうか。この方向性の玩具が出てきて欲しいし、今後この研究が進むと、様々な演出も可能になるのではないか。エンタメ業界としても興味深い研究である。