インタビュー
SMP [SHOKUGAN MODELING PROJECT]開発者インタビュー
2021年9月15日 00:00
懐かしの名作をSMPで現代に蘇らせる方向性も追求。その代表が「クラッシュギア」
――ここからは現在までに決定しているラインナップについて伺えればと思います。皆さんがそれぞれ担当された発売予定、あるいは発売済みの商品について、ポイントなどをアピールしていただければと思います。
Y氏:では「百獣合体 ガオキング」を担当した私から。「ガオキング」は元々「逆転王」と同時発売の第1弾となる予定だったんですが、生産の都合上1週後の発売とさせていただきました。「百獣戦隊ガオレンジャー」は今後もSMPでシリーズとして続けていきたいと考えていて、百獣合体のコアとなるキャラクターですので、その後に続く設計は重視しつつ、SMPシリーズの第1弾となるはずだった商品ですので、今できることの全てを詰め込んだ仕様となっています。先ほどのお話しした「Scene」、「Motion」、「Proportion」のキャッチフレーズに則って、劇中で見せた活躍を余すところなく再現できるような商品となっています。ちなみにスーパー戦隊シリーズに関しては、9月発売予定の「百獣合体 ガオマッスル/ガオライノス&ガオマジロ」を最後に、企画担当が私からMへとバトンタッチします。
M氏:はい、それが既にブログでもご覧いただいているシルエットの機体ですね。「ガオレンジャー」は今年20周年を迎えて、作品やメカも非常に人気が高いので、皆様が期待されているところまでは走りきりたいなと先々のラインナップも考えています。もちろんそれだけではなく、懐かしいと思えるようなスーパー戦隊シリーズのメカなども構想中ですので、楽しみにお待ちいただければと思います。
――スーパー戦隊シリーズも長いですから、ラインナップを選ぶのも大変そうですね。
M氏:そうですね。毎年1タイトル増えていきますから、僕らもどれだけ追いつけるかというところで、昔から受け継いできたバトンをできる限り上手く回していきたいと考えています。意識するのはやはり、昔のデラックス玩具を持っていた、あるいは欲しかったという方が満足できるような、当時の商品をアップデートした内容で、それは新旧作品に関わらず、反映させていきたいですね。
――パッケージなども、毎回当時の玩具を意識したもので楽しいですね。
M氏:実はあのデザインは、当時のパッケージを作っていただいた会社にお願いしているんです。最初にあるのが先人に対するリスペクトですので、パッケージでそれを踏襲しつつ、内容でさらにいいものにして出すという形ですね。
――続いては「太陽の勇者ファイバード」などが控えていますね。
Y氏:「ファイバード」は私の担当で、「勇者王ガオガイガー」や「勇者指令ダグオン」から続く勇者シリーズの商品で、こちらは既に次の勇者も並行して準備中です。
――勇者シリーズのメカは、各社から発売されていますが、そことの差別化などはどうお考えでしょうか。
Y氏:自分が勇者シリーズが好きということもあり、各社から勇者シリーズの商品が出て嬉しいということもあります。SMPシリーズの開発担当としては、ユーザーに勇者シリーズの醍醐味である変形合体のギミックを楽しんでもらえる商品の開発を心がけています。当時の勇者シリーズの玩具もギミックなどかなり完成度が高かったので、そのいいところを引き継いで、変形合体と可動を両立して楽しめるものを追求していきたいですね。
――「ファイバード」にもそこは反映されているわけですね。
Y氏:はい、もちろん。お客様にも実際に手に取っていただければ、きっと楽しいと感じていただける商品になっていると自負しています。
――12月からは「クラッシュギア」のシリーズが展開されますが、このラインナップは意外でしたね。
JIN氏:「クラッシュギア」は2001年の発売で、アニメも同年の放映で、今年20周年を迎えるんです。去年スーパーミニプラで発売した「GEAR戦士電童」も20周年で、ユーザーが凄く盛り上がってくれたんです。20年経過すると、当時小学生だったユーザーが30歳前後の“懐かしい”と感じてくれる年代になっていて、同じ「ギア」つながりで20周年を迎える「クラッシュギア」はやるしかない、と思ったのが企画のきっかけでした。元々バンダイの製品ですし、他がやってこないという自信もあり、半ば無謀な選定でしたので、かなり異質なキットになっていると思います。
――JINさんも「クラッシュギア」世代なんですか?
JIN氏:はい、私自身も世代でファンではあったんですが、実は日曜朝とかに放映されているこの手の番組って、特別ファンでなくても世代なら誰でも見ていて、見たことを忘れていることも多いんです。そういう人達が大人になって、商品を見かけて作品を思い出して懐かしくなって買いたくなるというのが、これら20周年作品のコンセプトになると思うんです。
あと「激闘!クラッシュギアTURBO」って、2003年にアニメが終了して、それ以降玩具も番組の配信もなかったんですよね。当時の玩具をテーマにした作品は、商品展開が終わるとそこで終わって埋もれてしまうことも多くて、そこにフォーカスするのも面白いと思ったんです。
――そういう作品を改めて商品化できるのも、SMPシリーズのいいところですね。
JIN氏:そうですね。再販のことはあまり考えず、周年企画として面白さを重視した展開ができるというのも、食玩の強みなんですよ。そこに関しては、作れるからといって何でもかんでも作って、ユーザーに飽きられてしまうかもしれないという危機感の裏返しでもあるので、全員が常に緊張感を持って企画に臨んでいます。
――この「クラッシュギア」は、どのような商品仕様になるのでしょうか。
JIN氏:こちらも「Scene」、「Motion」、「Proportion」という基本コンセプトに則っていて、同時発売のシリーズ内でのパーツ交換ができることで、劇中のキャラクター達がやっていたカスタマイズのシーンを再現できるようにしています。プロポーションはもちろん見た目の再現で、タイヤを動かすと歯車によって武器が動くギミックを搭載していて、可動の部分も楽しめるようにしています。
――パーツ交換は全ての機種でできるんですね。
JIN氏:はい、シャーシ以外のパーツは全てばらせるので、ブロックトイのような感覚で組み替え遊びができるようになっています。
――このシリーズはアソートがちょっと特殊ですね。
JIN氏:アソートに関しては、「逆転王」と「トッキュウザウルスセット」と同じ概念でして、単体で買いたいという方に向けて特に人気のあった「ガルダイーグル」と「鎧輝」をラインナップして、そこからさらに踏み込んで楽しみたいという方向けに、「EX1」と「EX2」という、他の車種を絡めたセットを用意させていただきました。
――この「クラッシュギア」から先のプランについては、順次発表されていく形になりますか?
Y氏:はい、実は最初にお届けしたPVで「創聖のアクエリオン」をラインナップしていることをお知らせしていて、こちらは私が企画担当なんですが、今できている試作がかなりいいものになっていまして、まもなく発表させていただけると思います。話題的にホットな作品が今後もラインナップされていきますので、ご期待いただければと思いますね。
スピンオフブランド「SMP ALTERNATIVE DESTINY」は、メカデザイナー宮内利尚氏がデザインアレンジを手がける
――スピンオフアイテムとなる、「SMP ALTERNATIVE DESTINY」として発売される「ガンバスター」についてもお聞かせください。このブランドは、どのような立ち位置となるんでしょうか。
Y氏:こちらは冒頭でもお話しした、SMPの立ち上げにおいて計画していたスピンオフの企画で、「超造形」という造形に特化したブランドとなります。弊社の商品で例えると、コレクターズ事業部の「METAL BUILD」や、ホビー事業部の「Figure-rise Standard Amplified」のような、デザイナーによってアレンジされたゆえの格好良さを追求した商品ですね。劇中の再現だけにとどまらないアレンジが入った商品がトレンドにもなっていて、我々も同様のアプローチの商品企画として、このブランドを立ち上げました。
デザインは今現在「SDガンダムヒーローズ」を担当されているメカデザイナーの宮内利尚さんで、アレンジラインのデザインをやってみたいということを伺っていたことが、このブランドを立ち上げるきっかけにもなりました。
――ということは、宮内さんがこのブランドのメインデザイナーになるということですね。
Y氏:はい、このガンバスターに限らず、今後このシリーズは宮内さんにメインデザイナーとして携わっていただきます。実は「ALTERNATIVE DESTINY」のブランド名も、宮内さんと相談して決めたものでして、宮内さんと我々とタッグがこのブランドの目玉となります。
――その第1弾にガンバスターを選んだ経緯をお聞かせください。
Y氏:単純に私が「トップをねらえ!」という作品を好きだったというもありますが、事前に宮内さんにラインナップ候補となる作品別のメカをイラストを描いていただいて、その中にガンバスターがあったんです。選定にあたっては営業にも相談をしたんですが、海外からの商品化希望キャラクターの中にもガンバスターがあって、両方が合致したことが選定の決め手となりました。
――このデザインのコンセプトはどう決められたのですか?
Y氏:私も宮内さんも「トップをねらえ!」が好きだったということもあって、それぞれの妄想を膨らませた結果として浮かんだ“IF”の設定がコンセプトになっています。妄想といっても、元のガンバスターのテイストを大きく損なわないデザインにするということは最初から宮内さんと決めていたので、新たなディテールはかなり入れていますが、シルエットはガンバスターだと一目でわかるようなデザインにしていただきました。
――確かに、アレンジはされていても、ガンバスターだと一目でわかりますね。
Y氏:さらに劇中から静止画を数百枚キャプチャーして、そこで確認できた細かなディテールも盛り込んで、元のデザインに対するリスペクトを踏まえたアレンジをしていただいたんです。実際に手に取って組み立てていただくと、そうしたこだわりもわかっていただけると思いますよ。
――公式サイトを拝見すると、可動に関してもかなり力を入れているそうですね。
Y氏:今回宮内さんにデザインを依頼するにあたり、デザイン完成後の外観の形状を3Dで造形してもらったんです。その3D造形を元に、アクションフィギュアなどの玩具デザインを業務としているT-REXさんに内部形状の設計をお願いしました。その内部には過去に発売した商品の設計なども取り入れていただいて、SMPの「Motion」部分を成立させる可動を実現することができたんです。
その結果、造形は宮内さんのセンスがしっかり反映された「超造形」でありながら、SMPのDNAもちゃんと引き継いでいる商品となっています。
――サイズはどのぐらいとなるのでしょう。
Y氏:頭までの高さは約17cmで、肩の部分も含めると24cm近くあります。
――パーツ数はいくつぐらいになりそうですか?
Y氏:全部で200パーツ強になると思います。
――パッケージはどのようなデザインになるのでしょう。
Y氏:これもまたSMP本線とは違う、ハイブランドだとわかる方向性で考えていて、シックなデザインで、それだけを飾っておきたくなるものにしようと考えています。またスリーブも用意していまして、それによりガンバスターの魅力が伝わるものにしていきますので楽しみにして頂ければと思います。
――専用の拡張パーツも別途発売されるそうですね。
Y氏:はい、キックとダブルバスターコレダーを再現できる拡張パーツを用意しています。実は拡張パーツはこれだけではなくて、別のオプションも企画中でして、そちらも発表をお待ちいただければと思います。
――それでは最後に、今後のSMPシリーズの抱負について、代表してYさんに一言いただければと思います。
Y氏:SMPシリーズは、皆さんの声があってこそのブランドだと思っています。SNSで積極的に発信したり、アンケートから思いの丈をぶつけていただいたりしても結構ですので、担当者はそれを商品化の参考とさせていただきます。皆さんと一緒に作っていけるブランドとして、10年以上続けていけるよう、これからも盛り上げていければと考えています。今後ともよろしくお願いいたします。
――SMPの今後の展開に大いに期待しています。ありがとうございました。
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