インタビュー

山下しゅんや氏とコトブキヤが生み出すBISHOUJOシリーズの進化に迫る!

シリーズが続くことで生まれた山下しゅんや氏ならではの「カッコイイ初音ミク」

 もう1つ、BISHOUJOシリーズの"幅"を提示する商品として取り上げたいのが、「BISHOUJO ReMIXシリーズ 初音ミク」である。こちらは企画者はしょーぐん氏とは別の無糖氏という担当だ。

 このフィギュアのコンセプトは「ギターソロを魂を込めて弾くカッコイイ初音ミク」というもの。初音ミクは様々なメーカー、ブランドでフィギュア化しているが、山下氏が挑戦する新しいアレンジとして「BISHOUJO ReMIX」というブランドを立ちあげてのアプローチとなる。山下しゅんや氏自身がベースギターを演奏する経験もあり、企画の無糖氏も音楽の知識があるということで、特に音楽にこだわった方向でのフィギュア化となったとのこと。

【BISHOUJO ReMIXシリーズ 初音ミク】
山下氏のこだわりが色濃く出た「BISHOUJO ReMIXシリーズ 初音ミク」。これまでにない初音ミクのイメージに挑戦した作品と言えるだろう

 初音ミクは様々なクリエイターがアレンジを行なっているが、「BISHOUJO ReMIXシリーズ 初音ミク」に関しては山下氏のアレンジがかなり強い。表情はもちろん、衣装に関してもカラーリングはオリジナルのイラストに近づけながらも、フリルがついていたり、胸元の差し色など、各所で独自色が出ている。また腰の後ろの布が大きく広がり、シルエットも派手になっている。

 今回に関しては企画者側が「こういう衣装で、こういうポーズで」といった細かい提示をあえてしておらず、「ギターソロのカッコイイ初音ミクを!」というシンプルなテーマを元に、山下氏がかなり自由度を持ってイラストを作成したとのこと。

 シリーズ全体の監修ということでしょーぐん氏もイラストをチェックしたが、担当側からはほとんど修正や注文なしに、山下氏の最初のイラストからほとんどぶれずにフィギュア化まで進んだ。「私自身も山下さんのイラストはすごくかっこよく感じましたし、今までにない初音ミクだと感じました」と、しょーぐん氏は語った。

 「MY LITTLE PONY美少女」は特に顕著だが、「BISHOUJOシリーズ」での山下氏への発注はモチーフキャラクターや、フィギュアのコストで変わってくるという。企画側できっちりコンセプトを提示するもの、版元からの要請が強いもの、元のキャラクターイメージが強い場合はあえて山下氏アレンジ力に任せ、提示を少なくする場合もある。

従来の初音ミクのイメージを変える大人びた雰囲気

 しかしその中でも「BISHOUJO ReMIXシリーズ 初音ミク」は、山下氏のフリーハンドの割合が強い。「山下氏が提示されたテーマでどんなイラストを仕上げてくるか?」その提示ができるのはこれまでBISHOUJOシリーズを続けた信頼あってのこそのものだ。

 しょーぐん氏が驚いたのはやはりフィギュアが着ているコートのアレンジと、グッと大人びたアレンジだ。初音ミクは少女といえる年齢層のキャラクターとして描かれることが多いが、「BISHOUJO ReMIXシリーズ 初音ミク」は等身も含め大人の女性の雰囲気がある。版元側もこの方向性でオッケーが出るというところで、改めて「初音ミク」と言うキャラクターの懐の深さを感じたという。

 今回の見所は"ピンクの差し色"。このセンスは山下氏ならではの要素とのこと。塗装も手が込んでおり、ハイクオリティなフィギュアに仕上がっている。そしてギターだ。フィギュアと共にギターのリアルな造形は強くこだわっており、"もう1つの主役"といえる注目ポイントとのことだ。

ギターの造形のこだわりも見所
髪の毛残った塗装など、注目ポイントの多いフィギュアだ

 山下しゅんや氏とのBISHOUJOシリーズは10周年を超え、なおも様々な商品を生み出し続けている。色々なクリエイターの様々なアレンジ、という広がり方ではなく、1人のクリエイターとのタッグという唯一無二の価値を生み出し続けているシリーズとなった。

 「ファンの声からは、『山下しゅんや氏のデザインなので、どのフィギュアも顔が似ている』という声もあります、しかし私は本当にそうかな? と思うんです。目や口元には共通するラインがあるところはあると思う。しかし、各キャラクターのコスチューム、ポーズ、雰囲気、どれもそのフィギュアならではの魅力を持っていると思っています。担当だからこその思い入れですが、本当に山下さんは強いこだわりでイラストにしてくださっています。そのラインナップも含め、BISHOUJOシリーズは唯一無二の存在だと思っています」としょーぐん氏は語った。

 BISHOUJOシリーズは改めてとても面白いシリーズだと感じた。山下氏がマーベルやD.C.、さらにはホラー映画のキャラクターやゲームキャラクターなど本当に様々なモチーフに挑戦するというだけでも注目だが、それを立体化する事でさらに楽しさが広がる。それはイラストが持つ味だけではなく、フィギュア化された時の立体的な表現、塗装の処理、手足のきめ細やかなポーズの整合性などでさらに大きくなる。また、企画者の熱い想いや、版元のキャラクターを大事にする方向性とのすりあわせも大事であり、それらがフィギュアの魅力を増していることも確認できた。

 現在、フィギュア文化は本当に華やかだ。BISHOUJOシリーズが生まれた10数年前とは比べものにならないほど様々なメーカーが、ハイクオリティなフィギュアを生み出している。その中で山下氏とコトブキヤのBISHOUJOシリーズが唯一無二の価値を提示し続けているのは本当にすごい。

 今回まだ企画段階の商品も見せてもらった。こちらはまだ明らかにできないが、かなり話題を集めそうで正式発表が楽しみだ。BISHOUJOシリーズはまだまだ発展し、進化していく。これからの展開にも大いに期待して欲しい。

 なお、今回紹介した「MY LITTLE PONY美少女」シリーズと「初音ミク」のコラボ商品「初音ミク feat. MY LITTLE PONY美少女」が現在予約受付中である。受注締め切りは11月30日まで。「MY LITTLE PONY美少女」シリーズのフォーマットで初音ミクを表現、さらにそのミクがポニーになるという非常にユニークなフィギュアだ。興味を持った人は、ぜひ予約をして欲しい。