インタビュー

「ゲートルーラー」の今後はどうなる? プロジェクトに完全復帰した池っち店長が赤裸々に語る(前編)

プロジェクトに復帰した本当の理由とは!?

1月収録

 「ゲートルーラー」は、大遊から2020年12月26日に第1弾が発売されたTCGであり、まだ1年ちょっとの歴史しかないが、度重なる運営のトラブルやTwitterなどでの炎上を経て、開発責任者の池っち店長こと池田芳正氏が、2021年8月4日にプロジェクトから解任されるという異例の事態を招くことになった。

 池田氏がプロジェクトから離脱後、「ゲートルーラー」第3弾が2021年10月29日に発売された。第3弾発売前までは、「ゲートルーラー」放送局や公式Twitterが積極的に第3弾の情報告知を行っており、ユーザーの期待も高まっていたのだが、池田氏が離れてから数ヶ月経った第3弾発売後、ぱたりと公式からの告知が止まってしまい、ユーザーに不信感を与えていた。そうした中、池田氏がプロジェクトから離れてから約5カ月後の2021年12月24日に突如池田氏がプロジェクトに復帰し、第4弾の制作に関わるというアナウンスが公式サイトに掲載され、再び話題となった。

 池田氏復帰後、公式Twitterや公式サイトでのゲートルーラーに関する情報発信が再び活発になり、今後の方針が明らかにされた。そうした中、現役にカムバックした池田氏から筆者に「インタビューをして欲しい」とのオファーが持ちかけられた。今回は池田氏の希望により、メールベースでインタビューを行った。メールインタビューでは、一度回答をいただいた後、再び追加質問をいくつか行い、答えられるものについては答えていただいた。

 インタビューの内容は、プロジェクトに戻ることになった経緯や過去の振り返りから、今後登場する第4弾の内容やイベント予定など多岐にわたるため、前編と後編の2記事に分けて掲載する。この前編のテーマは、プロジェクトへの復帰経緯やこれまで起きたトラブルについてである。後編では、3月31日発売の第4弾や今後のゲートルーラーの展開について語っていただいている。

【ゲートルーラー第4弾】
3月31日発売予定の「ゲートルーラー」第4弾「装着!俺がヒーローだ!」

池田氏「リーダー不在が致命的だった」

――まず、プロジェクト解職(8月4日)からプロジェクト復帰までの経緯について教えてください。

池田氏: 病院で「重い適応障害」と診断され、薬を処方されて通院を始めたので、当初は仕事ができない状況でした。その間、現場を支えて下さった方々には感謝しています。そこから3カ月ほど、治療に専念していたのですが、事情で戻らざるを得ない状況になりました。

 その事情は2つあります。1つは、第3弾の売上が大きく落ち込んでしまったので、対処する必要があった。そのためのマンパワーが足りていなかったという事情で、もう1つが第4弾以降の開発を任せようとしていたスタジオ様と現場の連携が取れず、第4弾の開発が頓挫しかけたという問題です。この2つの問題を解決するためには、私が復帰せざるを得ませんでした。幸い、ある程度私の状況が落ち着いてきたので、プロジェクトに戻り、第4弾の開発を行うことができました。

――池田氏が解職されてから2日後に、ブシロードとの和解が成立しています。タイミングがあまりにもぴったりなのですが、これはたまたまなのでしょうか?

池田氏: はい。これは完全にたまたまです。あの日に和解発表があることは半月以上前から決定していました。和解調停には時間を要しますので、何かとタイミングを合わせることは難しい事は解っていただけると思います。確かに、「なんかあったのか?!」と思ってしまうタイミングでしたよね。

――好評だった公式Discord大会が停止したり、2カ月ほど公式Twitterの更新がほとんどなかったりとか、運営の動きが明らかに鈍い時期がありましたが、今はTweetや販売店向けメルマガの配信等、動きが活発になっていると思います。それは池田さんが復帰されたからでしょうか。

池田氏: 私が離職してからの旧運営(遊縁内部)は、2カ月ほどは稼働していましたが、公式Discord大会が停止され、「ゲートルーラー」放送局の更新も止まり、Twitterすらほとんど更新されなくなりました。さすがに、「何をしているのだろう?」と心配になり、現場に確認しようとしたのですが、一切の回答がありませんでした。完全に締め出されていたのです。

 この待遇に関しては、私と現場で意見が分かれています。現場は「池っち店長は病気だから」と一切の連絡をあえて断っていたのだと思いますが、それでは私が彼らの仕事ぶりを確認することができませんし(私は経営者のはずなのですが……)、現場の方に私に相談事をしたいスタッフが居たとしても、SOSも届きません。旧運営は公式Twitterからも私をブロックしていましたし、スタッフ達と何度会おうとしても会ってもらえませんでした。これは流石にやりすぎだったと思います。

 そんな状況が数カ月続き、10月末頃から旧運営は外部から見える動きが殆どなくなりました。ご質問にあった「動きが鈍かった」というのはこの辺りの話だと思います。その理由は、遊縁側の旧運営現場にプロジェクトを中心的に牽引しているリーダーとなる人間がいないためだということが解りました。お店様に対する営業やメールマガジンもほぼ止まっていました。本来なら第3弾発売によって、プロモーションカードの更新や、ミニグランプリ3の企画も動かさなければならない時期だったはずなのに、現場はそこに手を回していませんでした。

 リーダー不在の現場は、リーダーがいなくなっても1カ月やそこらは動きますが、その後は「何も始められない」し、「何かをやめる」だけとなり、動きが止まっていきます。11月ぐらいになってから、やっと解ってきたのは、誰も旧運営の現場をコントロールできていないという事でした。完全に組織としてリーダー不在ゆえの作動不良を起こしていたのです。この時点で一部の身内からは、「池っち店長が帰って色々と決済しないと、現場はグダグダで動かない」といわれ始めました。

 現場を信じて任せるか、再び帰ってまとめるか。2カ月間は信じて任せていたのですが、もうその時点で、現場の人間に熱意はあっても現実には実を結ばない、という事態になっていたと思います。そんな事情もあって、私が帰らなければならないと判断せざるをえませんでした。しかし一部のスタッフから抵抗され、復帰に2カ月近くかかり、時間を浪費しました。私が復帰して第4弾の開発を終わらせた後は、止まっていた運営の引き継ぎが山積していました。

 メールマガジンの発刊、停止していたプロモーションカードの配布の企画、Twitterや公式ホームページの更新、ミニグランプリやグランプリの企画推進、サークル様への案内等、全て再稼働させました。ここ1カ月はこの仕事の準備にかかりきりでした。最近になって、やっと記事やメルマガを配信できるようになってきたところです。現場のスタッフは、熱意と責任感を持って仕事にあたっていたと今でも信じています。しかしリーダーの不在は致命的でした。

【2月以降の店舗大会で配られるプロモーションカード】
2月以降の店舗大会で上位賞として配布される「フルアーマーポルヴィス・モウス・レクス」(WINNER)

――「ゲートルーラー」からユーザーや販売店が離れた理由は、リーダー不在以外にも構築デッキの仕様不備や「Discord居酒屋」での個人への強要など、さまざまな原因があると思います。これまでを振り返って、池田さんが最も後悔していることはなんでしょうか?

池田氏: 私には様々な落ち度がありましたし、謝罪しきれるものでもないと思いますが、改めて謝罪いたします。申し訳ございませんでした。そして、それ以外で後悔している事と言いますと、「炎上や誹謗中傷に対し、対応が中途半端だった事」です。「ゲートルーラー」は発売の一年前から、私が広告の中心として働いてきました。そして発売した第1弾は、今から振り返れば最も熱く、盛り上がっていました。しかし勿論、それゆえの炎上や失敗があり、反省すべき点は多かったと思います。ですが、だからといって「池っち店長」が引っ込んでしまえば、第1弾の時に「池っち店長が盛り上げることを期待して「ゲートルーラー」を買って下さった方々」全てを裏切ることになります。

 「池っち店長が居ないほうがいい」という人と、「池っち店長が居てこその「ゲートルーラー」だ」という方、両方の意見があるのは事実です。我々はそれに対して、「中間」を取ろうとして、及び腰になってしまった。これは良くない選択だったと今では思います。どっちを選ぶべきだったかではなく、中途半端だったこと、これを後悔しています。

――「Discord居酒屋」での個人への強要(※1)については、強要された本人が謝罪を受けていないとツイートしていましたが、そちらはどうなっているのでしょうか?

※1:「Discord居酒屋」での個人への強要…… カードキングダムが運営していた「Discord居酒屋」で、池田氏への質問をした個人に素性を明かすように強要した事件

池田氏: 直接ダイレクトメッセージにて、謝罪させていただきました。わざわざ公開するのも嫌らしいかと考え、内容については公表していませんが、ご本人からはお許しを得ています。ご本人もわざわざ、「謝罪を受けました」という事を公開されておられないので、一般には知られていない話だと思います。

――「蛹の虫籠」氏と和解されたとのことですが、実際に「蛹の虫籠」氏と会われたのですか?(※2)

※2:「蛹の虫籠」氏と和解…… YouTuber「蛹の虫籠」氏が2021年12月25日にゲートルーラーの非公認オフ会を企画していたが、同氏の動画が「誹謗中傷に当たる」と法律事務所に判断され、ゲートルーラー公式が前日に警告を行ったことで、オフ会をゲートルーラー以外のTCGフリー対戦会に変更し、過去動画も全部消した事件。このインタビューの後、「蛹の虫籠」氏はYouTuberとして復活し、同氏の動画に池っち店長が友情出演したりしたが、改めて2月6日に引退宣言が発表された

池田氏: 会いました。「カードを煮る」などの行為は許しがたいものでしたが、彼が「ゲートルーラー」というゲームそのものを愛していることは理解できました。ですから私も、彼をその場で必要以上に非難するつもりはありませんでしたので、話は始終、穏やかなものでした。彼も今は一時的に活動を停止していますが、いずれ復活すると思います。彼も望んでくれているので、コラボもやってみたいですね。

公式Twitterアカウントの運用も池田氏が担当

――大遊は100%遊縁の出資になりましたが、これは池田さんが大遊のオーナーであり、これからの運営方針をすべて池田さんが自由に決められるということなのでしょうか?

池田氏: はい。そうなります。

――公式Twitterアカウントの運用も、池田氏が行うことになったのでしょうか?

池田氏: 恥ずかしながら人材不足なので、そうなります。第1弾の頃は私とスタッフで掛け持ちしていましたが、その頃に戻ったとも言えますね。

――今回、池田氏が復帰に至った理由の一つとして、開発を委託した制作会社との間にトラブルが発生したとの説明が公式サイトにあり、それに対して、その制作会社スタジオアックスの代表中条兜氏から真っ向から反論がありましたが、真相はどうなっているのでしょうか?

池田氏: このご質問に対しては私が答えるのは適切ではないかもしれません。私は会社の持ち主なので「責任」はありますが、このトラブルは私が居ない時期に発生したもので、当事者ではないため、詳しく知らないのです。ですから無責任なことは言えません。

 もちろん、今では関係者から話を聞いてはいますが、私も第三者的に見て、双方の言い分に食い違っている部分があると思います。なので法廷に申し立てることにしたのです。私達が訴えられたのだ、と誤解している人がいるかも知れませんが、今回の場合は、私達は訴えられた側ではありません。相手方を訴えたわけでもありません。「こういうトラブルがありますので、法に照らし合わせて判断をお願いします」と私達が裁判所に申し立てをしたのです。

 また、この場で私達の主張を訴えることも、相手に対してもフェアではないと思うのでいたしません。こういってはなんですが、この件は一般的な、いわゆる「契約書がしっかり整っていない状況での仕事の請負トラブル」ですので、前例も多く、裁判所はしっかりと対応して下さると思います。我々はあくまでも、法に照らし合わされ、下された結果に従いたいと考えています。

――改めて、現場に復帰してどう感じましたか?

池田氏: 大変だ、の一言ですが、そもそも帰るまでが大変でしたね。以下はすべて、大遊ではなく遊縁内部の運営スタッフの話なのですが…… 先程一部のスタッフに抵抗された、と答えましたが、「あれだけトラブルを起こしたのだから、池田は帰ってくるべきじゃない」と考えるスタッフがいたのです。が、だからといって彼らは代わりに働けていたかというとそうではなかった。私に文句を言いつつも、開発も運営も十分な動きができていませんでした。だからTwitterも止まっていたんですね。

 私自身、帰ってくることに恥ずかしいという想いはありましたし、許して貰えるとも思いません。しかし、ゲートルーラーが続かない事自体がユーザーに対する最大の裏切りなので、恥を忍んで帰る事にしました。その際、現場と話し合いを行って、一緒に続けていきたいと私は考えたのですが、一部のスタッフが話し合いにすら応じてくれなかったので、2ヶ月間を浪費し、発売が遅れ、結果的にユーザー様にご迷惑をおかけしてしまいました。これ以上時間を浪費することは許されなかったので、最終的には経営者として人事権を使い、力ずくで戻らざるを得ませんでした。

 普通、上司が話し合いに応じない、というトラブルはあると思いますが、私の場合は「部下が話し合いに応じない」でしたからね。パワハラにならないように気を遣って話し合おうとした結果が2ヶ月の浪費ですから、ユーザーに申し訳ない。いっそのことパワハラだとの非難を恐れず、もっと早く人事を動かすべきだったかも知れません。私も療養中ですし、気が弱くなっていたのだと思います。

 私が帰ってきた結果、一部のスタッフは離れましたが、残ってくれたスタッフは十全に働いてくれています。私はこれをとても嬉しく感じています。そして、今の開発と運営は、人手不足故に十全では無いかも知れませんが、旧運営よりは動けていると思います。

――先日、第4弾の受注が締め切られましたが、手応えはどうでしたか?

池田氏: 私が帰ってきたことで、ユーザー離れが加速する可能性もありました。ひとつのジャッジが下される訳で、非常に緊張しましたが……結果的に、想定していた数の1.6倍のご発注を頂きました!

 出来過ぎです。Twitterを毎日更新して、新規カードをご紹介させて頂いた事がご評価に繋がったと、お店様からは伺っています。同時に、私が帰ってきたことで、良くも悪くも活気が戻ってきたとユーザー様もご判断されたようです。とてもありがたく思っています。