インタビュー

「ゲートルーラー」の今後はどうなる? プロジェクトに完全復帰した池っち店長が赤裸々に語る(後編)

「第4弾は作り直した」。今後は各種グランプリやDiscord大会を開催予定

1月収録

 大遊から2020年12月26日に発売された「ゲートルーラー」は、池っち店長こと池田芳正氏が発案したTCGであり、ルールを司る「ルーラー」の選択によって、プレイ感覚が大きく変わることが特徴だ。

 筆者も、下手なりに「ゲートルーラー」をプレイしてきたが、確かに他のTCGとはまた違った面白さがあると感じている。公認サークルも主催しており、カードショップのデュエルスペースをお借りして対戦会も行ってきた。それだけに、さまざまなトラブルで、取扱店舗やユーザーが減ってしまったことを残念にも思っている。

 今回、池田氏からインタビューのオファーがあり、それを受けることにした理由の一つが、「ゲートルーラー」の今後はどうなるのか、今後に期待していいのかを知りたかったからだ。前編では、池田氏がプロジェクトから外れてから、再び復帰するまでの経緯を語ってもらったが、この後編では、「ゲートルーラー」の未来について語っていただいた。その主な内容は、3月31日に発売予定の第4弾の情報や今後のイベント、第5段の発売時期、海外展開などである。このインタビューが初出となる情報もあり、「ゲートルーラー」の今後について希望が持てる内容となっている。「ゲートルーラー」に関心がある方は是非読んでいただきたい。

池田氏「第3弾の売上げは第1弾の1/6以下、第4弾は作り直した」

――それでは第4弾についてお伺いしていきますが、その前に第1弾、第2弾に比べて第3弾の売上げが落ちたということですが、例えば第1弾の売上げを100とすると、第2弾、第3弾の売上げはそれぞれどのくらいになったのでしょうか?

池田氏: 正直、びっくりされると思いますよ。第1弾を100とすれば、第2弾は50です。ここまでは「ヒットしているTCG」といえる規模でしたが、第3弾では15、という程度にまで落ち込みました。私は第3弾の発売時期には関わっていませんでしたが、流石にどうにかしなければならない状況だと思いました。

 公式コラムでご説明した通り、第3弾の売上の結果を見て、大遊としては「ゲートルーラー」を第4弾で終わらせる決定を一度はしました。しかし私が大遊の株を買わせて頂くことで、決定権を握り、第4弾以降の開発を決定したのです。「ゲートルーラー」が終わるか、池っち店長が復帰して続くか、という二択であれば続くほうが良いと考えて下さる方もいらっしゃると思います。私はそういった方々のために、続けることを選択しました。

――2022年春に出る第4弾のカードは、池田氏復帰までの開発部隊が開発していたものではなく、新たに池田氏が中心になって開発されたものに全て変わったのでしょうか?

池田氏: はい。前スタッフの仕事を踏まえつつ、発売に耐えられる物へと昇華させました。短期間でクオリティを上げる為に、一部のユーザーの有志の方々からもご協力を仰ぎ、可能な限り多くの人々の意見を取り入れたカードリストになっています。有志の方々の意見は非常に有益でしたので、もはや第4弾は私が作った、と言えない程、様々な方の意見が取り入れられており、そういう意味でも、面白さ的には今までの最高傑作ではないかと思います。

この時、有志の方々からご協力頂いた件については、いずれ別のところで話させていただきたいと考えています。第5弾では、一般の方々からも広く有志を募りたいと考えていますが、実現できるかどうかはまだ不透明ですね(※1)。「ユーザーの皆さんと一緒に作るTCG」になると、本当に楽しいと思うので、何とか実現したいです。

※1:実現できるかどうかはまだ不透明…… 2月中旬からテストプレイヤー希望者を募る予定だということが発表された

【プロジェクトに復帰した池田氏】
ゲートルーラーの開発・広報に再び取り組むことになった池田氏

――第4弾のウリについて教えてください。第4弾でも新ルーラーがいくつか登場するのでしょうか?

池田氏: はい。前回は3種類の新規ルーラーが出ましたが、今回の新規は「ヴァンキッシャー」、「センチュリオン」の2種類です。前回登場したルーラー、特に「オーバーロード」と「トリックスター」は、今までとかなりプレイ感覚が違うものになっておりましたし、デッキ構築理論も全く0から考えられるものでした。ユーザーの間でも、これらの研究が盛んに行われていますが、まだまだ完全に「消費した」と言えるものではないと思います。もう少しゆっくり研究したい、遊びたい、というご意見が多く届いております。

 そこで第4弾では、ルール的には新規性の薄い「種族ルーラー」を2種類投入し、ゲームの環境的な変化をあえて抑えめにしました。毎回、新規ルーラーによりゲーム性が激動する事は、ユーザーにもあまり求められていないとの判断です。とは言え今回の「種族ルーラー」は、アプレンティスとナイトというベーシックなルーラーの「味変」と言えるもので、親しみやすい上にデッキ構築の幅は圧倒的に膨らむと思います。

 また、特別に第4弾で登場する新フィールドカード「護国の鉄神」の原画とカードを公開します。この記事が初出となります。左の巨大ロボが「ダイジンキ」、右が「 益荒男 『金剛体』」です。カードの効果については公式からの発表をお待ちください。

【第4弾に登場する新フィールドカードの原画とカード】
第4弾に登場する新フィールドカードの原画。2体の巨大ロボ「ダイジンキ」と「益荒男 『金剛体』」が並ぶ迫力のイラストだ
これが初出となる第4弾の新フィールドカード「護国の鉄神」。東妖群レベル1のフィールドカードで、CNTでフィールドに置く。4種類の効果を選んで使える便利なカードだ

池田氏「アリスデッキは第5弾で出すことを検討中」

――以前、エクストラデッキ「絶対正義のソルジャー」と「完全防御のアリス」も発売されるという話がありましたが、こちらはどうなったのでしょうか? 他のアリスや残りのA7については第4弾に入るということでしょうか?

池田氏: はい。こちらのスターターは旧開発チームの企画なので、旧開発チームの解散と同時に開発不可能となってしまいました。よってスターターに入る予定だったカードは全てブースターに投入されています。ただ、「アリスのスターター」という企画には、期待してくださっていたユーザー様も多かったようなので、第5弾の発売時に同様の企画を進めたいと、現在検討している所です。今考えているのは「竜型決戦兵器デッキとアリスデッキのセット」です。買ってすぐ対戦できる商品として再録も大変豪華な内容にしたいと考えています。

――海外での売上げは好調とのことですが、日本よりも欧米の方が売上げがすでに大きくなっているということでしょうか。

池田氏: はい。その通りです。

池田氏「2022年春から中国市場にも進出」

――2022年には中国市場に参入予定だそうですが、いつ頃になるのでしょうか。第5弾からスタートみたいなイメージでしょうか。

池田氏: 意外と早くて、今年春発売の予定です。第1弾と第2弾が同時発売される……という想定で動いていますが、中国市場は中国の会社様に任せていますので、我々が責任を持って言えることはあまり多くありません。ただ、どうも私が想像していないぐらい、最初から強気に行くみたいですね。先方からは、「「ゲートルーラー」を扱う理由は、その世界観やイラストが魅力的なこと、そして“ゲームそのもの”が面白いからだ。」と言っていただいています。炎上とかは関係ない、ゲームとして面白いかどうかが大切だ、と仰る。こういったところは、世界のどこでもゲーマーはゲーマーだなぁ、と思いました。

――中国語版が発売されることになった経緯を教えてください。

池田氏: 間に一社入っていて、そこに全ておまかせしているので、私が答えられる事は少ないのですが、ちょっとおもしろい話があります。 中国本土での「ゲートルーラー」中国語版の運営をやって下さるところは、とある有名TCGのSNS掲示板の運営で実績をお持ちの方々で、中国全土で大会の運営等も行っておられます。 そこの方々から「ちょっと『ゲートルーラー』というTCGが気になるから、見本を送ってもらえないか」という話が出て、見本をお送りしてプレイして頂いたところ、「イラストもゲーム性も非常に気に入ったから、ぜひ取り扱いたい」と御返事をいただきました。 曰く、日本のネットで「ゲートルーラー」の情報を集めようと思っても、炎上騒ぎの件ばかりでよくわからないと(苦笑)。

 ですが海外の感想を見ると、ゲーム性が非常に高く評価されている。自分たちは正に「ゲームとして面白いTCG」を探していたので、「ゲートルーラー」はマッチした、という事だそうです。 炎上なんて関係ない。面白いTCGだから取り扱う、と率直に評価していただけたのは、とても嬉しかったですね。

――中国語版ではパックなどの仕様が変わるのですか?

池田氏: 英語版もそうですが、国によって売れる商品形態は全く異なるので、全て現地の方々の判断で仕様を決定しています。 ですから中国語版が1パック幾らとか、レアリティがどうなるかとかは分かりません。 ただ、高レアリティカードの加工が日本とは異なるとかで、見た目もかなり変わるようです。楽しみです。

池田氏「第5弾は7月末から8月にかけて発売予定」

――「ゲートルーラー」の今後のロードマップについて教えてください。第4弾が2022年3月31日と発表されていますが、第5弾はいつ頃になりそうですか?

池田氏: 公式で一番に発表すべきことですが、非公式ということでよろしければお答えします。第4弾発売は3月31日です。そしてミニグランプリや、参加者数に留意した上での“グランプリ”を挟み、第4弾までの環境を十分にプレイし、研究していただいた上で、7月末から8月にかけて、第5弾を発売したいと考えています!

@@em|s|――第4弾ではハイレアパックがフルコンセット(全種類1枚ずつのセット)として販売されましたが、第5弾ではどうなるのでしょうか?

池田氏: ハイレアのフルコンセットは、お客様の要望に応えて実験的に出して見たのですが、やはりパックを自分で剥きたいという声が多かったようです。第5弾では、ハイレアも以前と同じパック形式での販売になると思います。

――今後の新弾の発売ペースは年何回になるのでしょうか?

池田氏: 公式で発表した通り、我々はインディーズとして継続することに致しました。なので開発力には限界がありますが、4カ月に一度の発売ペースを守っていきたいと考えています。

――ミニグランプリの3rdシーズンやグランプリについてもやる予定だと表明されていましたが、いつ頃になるのでしょうか。

池田氏: ミニグランプリ3は2月から4月にかけて行い、様子を見て第4弾発売後の環境を楽しめるミニグランプリ4を立て続けに行いたいと考えています。グランプリも2月から4月に行えるよう、調整している所です。すでに東京と大阪で行われるのは間違いなさそうですし、店舗様のお申し込み次第では、グランプリが全国最大10箇所で開催!というのもできそうです。とは言えコロナには最大限の対策が必要だと思うので、場合によっては人数をかなり絞っての大会になるかもしれませんね。

【ミニグランプリ3の参加賞プロモカードや優勝プロモカード】
ミニグランプリ3の参加賞として配布される「夢見鳥」ノーマル版。もとは第3弾のシークレットカードである
ミニグランプリ3の参加賞として配布される「白骨姫」拡大トリミングフルアートフォイル仕様
ミニグランプリ3の参加賞として配布される「聖杯の女神」拡大トリミングフルアートフォイル仕様
ミニグランプリ3の参加賞として配布される「グイベル・オブ・ウェールズ」フルアートフォイル仕様
ミニグランプリ3の参加賞として配布される「月下の狙撃手」
ミニグランプリ3の参加賞として配布される「銀河剣豪グランギャラック」フルアートフォイル仕様
さらに、ミニグランプリ3で優勝するか大会終了後に行われるじゃんけん大会に優勝すれば、この「竜型決戦兵器“鳴雷”」(WINNER)がもらえる

――以前のヴィルマ杯のような「ゲートルーラー」公式Discordでのオンライン大会や交流会は開催されるのでしょうか?

池田氏: はい。そのつもりで動いています。旧運営が切り捨てた部分で、一番もったいないと感じていたのがオンライン大会です。ですから何とか復活させて、2月中旬からは隔週で開催していきたいと考えています。

――公認サークル制度については今後はどうなるのでしょうか?

池田氏: サークル制度は「ゲートルーラー」の生命線だと思っています。しかし恥ずかしながら、インディーズゆえのマンパワーのなさで、サークル様と十分なコミュニケーションが取れていると思えません。私が個人的に何とかしたいとも思っているのですが、開発と広報と経営をやりながら、サークルの方々への窓口になっても、中途半端な時間しか割けないのが辛い所です。本当はサークルの方々と、もっと身近にお付き合いしたいと考えているのですが……お店様と同様、サークル様専用のプロモーションカードに魅力的なものを用意し、配布し続ける、というのが私の出来ることだと思います。どこかで時間と予算が取れたら、サークル様の告知を公式からも大々的にやりたいですね。

【2022年2月以降に配布されるサークルイベント用プロモーションカード】
新しくサークルイベント用に配布されるプロモーションカード「火星人」
2021年11月にサークルイベント用に配布された「轟撃の魔王 ストライダム」も追加配布される
枚数は少ないが、ミニグランプリ2ndの上位賞であった「聖戦世界のアリス」(WINNER)も追加配布される
さらに最初にサークルに配布された「冬将軍 御影」(WINNER)も少数だが追加配布される

――最後に読者やTCGプレイヤー、さらに「ゲートルーラー」のプレイヤーへのメッセージをお願いします。

池田氏: 「ゲートルーラー」は、TCG業界に育てていただいた「池っち店長」の恩返しであり、本当に面白いTCGをプレイしたい!と純粋にお考えの方々に向けて作っているTCGです。第1弾で爆発的に大ヒットした「ゲートルーラー」が、ここまで縮んでしまった事は、本当に恥ずかしいことだと思います。私や運営が、炎上や誹謗中傷に対して必要以上に反応してしまったのが最大の失敗でした。今後はそれらに対しては、専門家に全ておまかせして、我々は関知しないシステムを構築しましたので、落ち着いて、ただゲームそのものを楽しんでいただくために作り続けます。

 2年、3年ほど経った頃、気がついたら「ゲートルーラー」のプレイヤーがそれなりにいる。文句や嫌がらせをいう人はまだいるが、プレイしている人達はみんな凄く楽しそう……そんな環境を目指していきたいと思います。

――ありがとうございました。