レビュー

模型用塗料「真・黒色無双」/「黒色無双」レビュー

世界一黒い水性塗料でプラモデルが宇宙を駆ける!

【真・黒色無双 100ml】

開発・発売元:光陽オリエントジャパン

ジャンル:模型用水性塗料

発売日:2020年10月10日

価格:2,500円(税込)

【黒色無双 100ml】

発売日:2020年5月12日

価格:2,500円(税込)

 「世界一黒い水性塗料」としてネットでも大いに話題になった、光陽オリエントジャパンの塗料「黒色無双」は、「可視光域全反射率0.8%」(エアブラシ塗装時)と謳われている通り、光を吸収することで塗装したものを限りなく黒くしてしまう塗料です。

 現在は、10月10日に発売された新バージョン「真・黒色無双」が販売されています。こちらは、環境に配慮された成分になっていて、EUの「REACH(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)」や、「RoHS(Restriction of Hazardous Substances Directive)」といった規制にも対応した製品です。さらに黒さも向上。エアブラシ塗装時の可視光域全反射率は0.6%とされています。

光陽オリエントジャパンから発売中の「黒色無双」と「真・黒色無双」。いずれも容量は100ml。

 今回は、記事作成時に入手しやすかった「黒色無双」を使って、プラモデルやフィギュアを“宙に浮かせる”作業にチャレンジしてみたいと思います。フィギュアやプラモデルを宙に浮かせるというのはつまり、スタンドを「黒色無双」で塗装して目立たなくさせよう、ということです。プラモデルやフィギュアに同梱されているスタンドに関してはもともと目立たない成型色だったり、逆に無色透明のクリアーなどが使われてディスプレイの雰囲気作りに一役買ってくれるので、それはそれで製品の「味」ではありますが、逆に考えれば黒子としてのそうした存在が消えてしまったら、ちょっとリアルっぽくなるのかな?とも期待できます。

【おっさんずボレロ [真・黒色無双]】

 さて。今回検証用に用意したアイテムは、以下の3つです。

  • バンダイプラモデル アクションベース4 ブラック(税込660円)
    BANDAI SPIRITSホビー事業部が販売しているディスプレイ用のベース。ガンプラを飾る際にはスタンダードな存在で、小型の「アクションベース5」も存在する。
バンダイプラモデル アクションベース4 ブラックのパッケージ。MGサイズまでのガンプラなら、たいてい飾ることができます。
アクションベース4の内容。六角形のベース3枚が同梱されており、これらは単体でも繋ぎ合わせて使用可能。複数買いすれば無限接続もできます。アームは大小2種類が付属し、ジョイントパーツも多くの形状に対応できるように、複数用意されています。
  • アクアシューターズ(税込500円)
    ウォーターガンを手に女の子たちが戦う、バンダイのガシャポンフィギュアの人気シリーズ。専用スタンドが同梱されており、派手なポージングも安定してディスプレイ可能。
アクアシューターズ。オプションパーツセットなども用意されており、組み換えも楽しめます。ガシャポンなので手軽なのが魅力ですし、数を揃えるのも楽しいでしょう。
アクアシューターズのスタンド。背中でしっかりと固定されます。
  • HG 1/144 ガンダムAGE-FX(税込1,760円)
    「機動戦士ガンダムAGE」の主役機。クリアーパーツで構成された大小14基の遠隔武装「Cファンネル」を装備しており、専用スタンドも付属した筆者お気に入りのガンプラ。
ガンダムAGE-FXは宇宙を縦横に駆け巡ったので、こうしたディスプレイパーツの付属はうれしいですね。
ディスプレイベースを後方から。MS本体に使われる部分はグレーで、Cファンネルを配置する円状の部分は無色透明で成形されています。

塗ってみると立体感が消えるほどの黒さ

 では、実際に塗装をしていきます。

 まず「黒色無双」を塗料皿に取り出します。原液はかなりドロっとしているので、エアブラシで吹ける濃度まで水で薄めました。水性塗料ということで、匂いはほぼしません。

塗料皿にとって、水を入れて薄めています。

 吹き付けですが、注意書きを読むと、乾いた塗肌を維持する、とあります。つや消しということは表面がザラザラしているというわけなので、その状態を保って、ということなのでしょう。塗面がヒタヒタにならないように気をつけながら、若干遠い位置から吹きました。もっとも、ともするとムラができてしまう明るい色と違って、「黒色無双」という黒一色をベタ塗りするだけなので、私のようなヘタな人間でもヒタヒタにさえ注意すれば簡単に塗装できます。

パーツ表面の水分に注意しながらエアブラシを使って塗装。

 塗装が終わったときに、ふと気がついたのですが塗料皿が乾ききっており、「黒色無双」の実力を垣間見せていました。白い紙の上に置いたらなんだかよくわからない物体に……。

塗料皿。もはや丸くて黒い物体にしか見えないですね。立体感もゼロ。

 もちろん、光の当たり具合にもよりますが、なかなか気持ちのいい黒さです。

アクションベース4。なお、手前の六角形のみ塗装していません。無塗装時と比べて、「黒色無双」を塗装したベースやアームの立体感が失われているのがわかります。
ガンダムAGE-FXのスタンドです。後方から見ていますが、こちらも立体感がないために、どの角度から見ているのか、今ひとつわからないですね。
アクアシューターズのスタンド。こちらもスミで絵を描いたようになっています。実は、アクアシューターズに関しては蛍光色のスタンドも大好きなのですが。
普段愛飲しているコカ・コーラゼロのキャップが黒かったので、「黒色無双」で塗装してみました。どこからが上面でどこからが側面なのか、見分けがつきません。
ペットボトルに塗装してみました。こちらはウィルキンソンのボトルで細かい凹凸が成形されているのですが、「黒色無双」塗装部は完全に消えていますし、ボトルのツヤも「黒色無双」塗装部分は消失しています。

全部塗り終えたところで、いよいよ実験開始!まずは白地に黒という対称的な組み合わせで見てみましょう。

アクアシューターズをディスプレイ。おっと!塗り残しが……と思いましたが、もしかしたら指で触りすぎて塗膜が剥がれたのかもしれません。「黒色無双」の注意書きにもありますが、粉っぽい塗膜はさすがに弱いので、塗装後はあまり触らないほうがいいですね。
後ろから。真っ黒ですねさすがに。
ガンダムAGE-FXのスタンドにCファンネルを配置。もやは前後がよくわからない状況ですが、後ろから撮影しています。
ガンダムAGE-FX本体を配置してみました。うーん、MSのベースは「黒色無双」でいい感じですが、Cファンネルの場合は透明のほうが映えるかも。バックを黒にしたらどうなるか?

背景紙の選び方にも一工夫

 さて。ここまでの撮影は白バックで進めてきました。ここでバック紙を黒に変えようと思ったのですが若干の不安が。「これ、後ろの黒紙のほうが反射して浮くなあ……」と。私のような素人が模型を撮影する場合、カメラの設定もそうなのですが、ライティングにどうしても難儀します。その最たるものがバック紙の光沢というか反射で、たとえ撮影ボックスを使っていたとしても、バック紙の折れ曲がった部分が光ったりすることはままあること。これを回避するにはライティングのほかにバック紙を工夫するしかありません。たとえば箱庭技研さんのジオラマシートシリーズなどは、こうした反射が抑えられた素材で作られており、ちょっとオススメなので見てみてください。

 話は戻って、こうしたバック紙問題は、プロカメラマンではないので致し方なしとはいえ、「黒色無双」をテーマにした撮影となると、ちょっとなあ……。そこで考えたのが、「だったら背景も『黒色無双』にしてしまえばよいのでは?」ということ。

 というわけで、白いバック紙に「黒色無双」を吹き付けてみました。どうなることやら……。

白(若干クリーム色)の紙に吹き付けています。

 と、やっぱりちょっと、失敗だったかも……。というのも、吸水する紙質だったので、いくらやっても黒がムラになってしまっております。もっと固い紙を使うべきでした。

中央部に、白いムラが出来てしまっています。さすがに紙に直接吹き付けるのは無謀だったなと。

 試しに、ガンダムAGE-FXのスタンドを置いてみました。

ガンダムAGE-FXのスタンドを配置。背景黒の上に置くと、カメラの露出の関係で(カメラ的には正しいわけですが)、なるべく明るく撮られてしまうため、こうなります。

 これは失敗かな……と思いはしたものの、すこし照明を落としたら、なんとベースが背景に溶け始めました。強すぎる照明が原因だった模様。「黒色無双」も暗黒物質じゃあるまいし、強い光と露出を上げれば、それは写って然るべきものは写るというものですね。というわけで、少し照明を落として続行したところ、いい感じに。

完全に宙に浮いているガンダムAGE-FXとCファンネル。部屋の明かりだけで撮影したらこうなりました。
実際の撮影風景。バック紙の「黒色無双」がそもそもポッカリと穴のように見えてきますね。
気を取り直してアクアシューターズも。まずはガッツリ照明を当てて撮影。
続いて部屋の明るさで撮影。完全にベースがわからなくなっています。

 さて、最後にアクションベース4の撮影に入りたいと思います。ガンダムAGE-FXを配置しようと思ったのですがちょっと待てよと。アクションベースといえば、自分なりにカスタマイズして様々なシチュエーションをディスプレイできるのが醍醐味です。ほかのアクションベースからアームだけを持ってくれば、複数のファンネルを飛ばすことができる。そしてAGE-FXのCファンネルは専用ベースの配置がめちゃくちゃカッコいい! ならば、別の機体を試したいもの。

 そこで積みプラの山の中から取り出したのは、THE GUNDAM BASE TOKYOで購入したイベント限定アイテム(G-BASEではイベント限定品が手に入ります)「HG 1/144 ムーンガンダム[クリアカラー]」(税込3,300円)です。この機体、U.C.0092つまり「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」直前を描く「機動戦士ムーンガンダム」の主役機でして、サイコ・フレーム実装以前に、その元となるサイコプレートを搭載しています。このサイコプレートはνガンダムのフィン・ファンネル同様宇宙を飛び回るので、成型色がクリアーということもあり今回のネタにはピッタリ。ついでに、ガンメタで成形されている関節部をシルバーで塗装して、ちょっとメタリック風味を強調してみました。

そこで撮った写真がこちら。

HG 1/144 ムーンガンダム[クリアカラー]。足元のサイコプレートは、別のアクションベースから持ってきて「黒色無双」で塗装し、浮かせています。

 もう少し寄って見てみれば、アームがほぼわからない状態に。

実はところどころアームが下から伸びています。ここまで拡大しても、言われないと気づかないレベル。

 その構造はこのようになっています。

照明を最大限あてて撮影しました。これだけのアームが、上の写真では消えていたことがわかります。

 せっかくなので、白バックに戻して撮影してみましょう。

バックを白くして撮影。これはこれで、アクションベースの質感がプラモデルとはまったく異なるので、アリですね。

取り扱いと照明には要注意!宇宙の再現にも使える「黒色無双」

 これにて、「黒色無双」の実験レポートを終わります。黒いバック紙を作った際、紙が吸水性だからいけないのか?とも思いましたが、それよりも強い照明を当てて露出が明るければ、どんなものも形が出てしまいはするよなあと。逆に言えばバックが白だった場合は、ここまで黒が黒として引き立つのも気持ちがいい。

 また、模型用の塗料としてどうか?といえば、値段はともかく塗膜が弱い点(実際、注意書きにもあるように、少しこすっただけでも剥がれます)、上からコートしたら特質が失われてしまうであろう点(表面のザラつきというか、粉っぽさが大事なので)を考慮すると、なかなか模型本体に使う機会はないかもしれません。とはいえ決してネタ商品ではなくて、たとえば、パステル系を使うようなエンジン廻りの焦げ表現などは、乾くと粉状になるだけに面白いのかなと思いました。

 もちろん、今回のようにベースを塗装して消す、という用途には大いに役に立ちます。宇宙っぽいバック紙で使ってみたり、もしかしたら電飾と組み合わせるといいのかもしれませんね。プラモデルの範囲を超えて、いろいろと実験してみるのも面白そうです!