レビュー
ガレージキット「T’s system ウマ娘 タマモクロス」レビュー前編
パーツ洗浄から軸打ち固定、塗装直前までの組み立て全工程を紹介
2022年9月29日 00:00
- 【タマモクロス ウマ娘 プリティーダービー Season 2】
- 開発・発売元:T’s system
- 発売日:7月24日(ワンフェス2022[夏])
- 価格:15,000円(ワンフェス2022[夏]時)
今回は先日開催されたワンダーフェスティバル2022夏にて販売されたガレージキット「タマモクロス ウマ娘 プリティーダービー Season 2」の作例を紹介します。ガレージキットという名前のキットを一度は聞いたことがある方もいるかと思いますが、まだまだマイナーな模型ジャンルです。そこでプラモデルとは制作方法の違うガレージキットの作り方を一から紹介していきましょう。
前編となる本稿では、キットの開封から組み立てを進め、塗装直前までの工程を紹介します。後日掲載予定の後編では、今回の続きから塗装工程を扱います。
ガレージキットとはどんな模型なのか
まずはガレージキットがどのような模型ジャンルであるかということを解説いたしましょう。ガレージキットとは一般的にレジンキャストを用いて生産される組み立て式キットの事を指します。レジンキャストを使用した複製方法にて生産される方法は個人で行なうことも容易なため、プロアマ問わず様々な作家が愛用しています。
世界最大のガレージキット展示・販売イベントとなるワンダーフェスティバル
ガレージキットは、通常の模型店ではなかなか入手することができません。主な入手方法としては展示即売イベントやインターネット通販による入手が一般的となります。その中でも最も一般的な入手方法が展示即売イベントでの入手ではないでしょうか。
展示即売イベントとは、プロやアマチュアの造形作家が腕によりをかけて作成したガレージキットを販売するイベントです。主な展示即売イベントには「ワンダーフェスティバル」などがあります。ワンダーフェスティバルとは造形メーカーである海洋堂が主宰する世界最大級のガレージキット展示即売イベントで主に夏と冬の年2回千葉県の幕張メッセにて開催されています。
T’s systemの新作ガレージキット「タマモクロス」
今回はフィギュアサークル「T’s system」がイベント「ワンダーフェスティバル 2022 Summer」にて販売した新作ガレージキット「タマモクロス」の制作方法を紹介します。T’s systemはフリーの原型師である宮川武氏が主宰しているフィギュアサークルで、宮川氏は様々なメーカーにて原型の制作を担当しています。
タマモクロスは、メディアミックスプロジェクト「ウマ娘 プリティーダービー」に登場するキャラクターで、1980年後期に活躍した実在競走馬がモチーフです。「ウマ娘」では、特に久住太陽氏が手掛ける漫画「ウマ娘 シンデレラグレイ」で主人公・オグリキャップのライバルとして活躍しています。今回のキットでは、TVアニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」から、タマモクロスがレース出走時に着用する勝負服での立体化となります。
ガレージキット制作の第一歩、ゲート処理
ガレージキットの制作は一般的な模型であるプラモデルとは少し手順が違います。順を追って説明していきましょう。ガレージキットを購入したら、最初にパーツチェックを行ないます。ガレージキットは個人が複製したりしている関係上、パーツの過不足が発生している可能性がプラモデルと比較して多くなっています。
そのため、購入後のパーツチェックは必須です。イベント購入後すぐであれば、不足・不良パーツの代替品を発送してもらうことも可能です。購入後時間がたっている場合は対応してもらえない可能性もあるため注意が必要です。例えば、本キットの場合はイベント後1週間以内が期限とされています。
パーツチェックが完了したら次にパーツの洗浄を行ないます。ガレージキットは複製の製法上、表面に離型剤が多く付着しています。このままでは塗装時に塗料を弾いてしまうだけでなくパテなども剥離してしまう原因となります。そのため、最初に離型剤の除去が必要となるのです。パーツの洗浄には市販のクリームクレンザーと歯ブラシを使用します。
洗浄方法は歯ブラシにクリームクレンザーを適量塗布し、パーツの隅々まで洗浄していきます。
洗浄が完了したらゲート跡の処理を行なっていきます。ガレージキットのゲートはプラモデルと比較し大きく、そして太くなっています。そのため、昨今のプラモデルでは主流となっている薄刃のニッパーを使用すると刃を痛めてしまいます。ニッパーは刃の厚い丈夫なものを使用しましょう。また、太いゲートをニッパーで切断する際は切り口がえぐれてしまうことが多々あるため少し残した状態でカットしましょう。
ニッパーによるゲートカットが完了したら残ったゲートをデザインナイフでカットしていきます。ナイフでカットする際は一度にすべてをカットしようとしてしまうと、パーツに負荷がかかりすぎ、パーツが破損してしまうことがあります。そのため、少しずつカットしていきましょう。
ナイフによるゲット処理が完了してもカットした跡が平らになりすぎていたりしているため、目立ってしまいます。そこで、最後の仕上げとしてやすり掛けを行ないます。今回はゴッドハンドの「神ヤス」400番で仕上げを行ないました。
以上の工程でゲート処理は完了です。次はパーティングラインの処理をしていきましょう。
キットの仕上がりを大きく変えるパーティングラインの処理
ガレージキットにもプラモデルと同様に型の合わせ目跡がパーティングラインとして残っています。昨今のプラモデルではパーティングラインを目立たない箇所に配置することできれいに仕上がるようになっています。しかし、ガレージキットはパーツの真ん中や細かいディテールの真上にパーティングラインが配置されていることが多々あります。
また、プラモデルでは金型による成型のため、パーティングラインは少ない段差にとどまっています。しかし、ガレージキットでは柔らかいシリコン型を使用しているため型に変形が生じやすく、パーティングラインもよりはっきりと発生してしまいます。そのため、パーティングラインの処理はガレージキットをきれいに制作するためには必須といっても過言ではありません。パーティングラインは全パーツに必ず発生するのでしっかりと処理していきましょう。
まずは、デザインナイフによるカンナ掛けを行ない、大まかにパーティングラインを処理していきます。カンナ掛けを行なう際はあまり力を入れず、パーツを削りすぎないように注意しながら行ないます。
カンナ掛けが完了したパーツは、ゲート処理の時と同様に跡が平らになりすぎていたりしているため、目立ってしまいます。そこで、最後の仕上げとしてやすり掛けを行ないます。やすり掛けはパーティングラインの処理と同様にゴッドハンドの神ヤス400番で仕上げを行ないました。
また、ハンドパーツなどはパーティングラインの処理を行なう際に隙間が小さく、「神ヤス」が入らない箇所もあります。その場合は紙やすりを使用して処理を行なっていきます。
本キットのジャケットのパーツはファスナーの造型部分にパーティングラインが配置されていたため、パーティングラインを処理した際にディテールが消滅してしまいました。そのため、加工箇所の掘り直しを行ないます。ディテールの掘り直しは、デザインナイフを使用し、元の形をイメージしながら掘り進めていきます。
© 2021 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」製作委員会