レビュー

「レゴ®アート 葛飾北斎 <富嶽三十六景 神奈川沖浪裏>」レビュー

葛飾北斎の代表作を半立体で再現!本格的な額装まで楽しめる浮世絵のレゴ®ブロック

【レゴ®アート 葛飾北斎 <富嶽三十六景 神奈川沖浪裏>】

発売元:レゴ ジャパン株式会社

発売日:2023年2月1日

価格:オープン価格

参考価格:13,980円(税込)(媒体調べ)

サイズ:52×39cm(WxH)

 今回は2023年2月1日に発売されたばかりのレゴ®アートシリーズから、「葛飾北斎 <富嶽三十六景 神奈川沖浪裏(おきなみうら)>」を紹介するぞ。

 レゴ アートシリーズは、これまでバットマンなどのスーパーヒーローや、ローリングストーンズのマークなどを発売してきた。しかし、絵のタイプとしては、ドット絵をベースにしていたため、せっかくの立体物であるレゴ®ブロックの持ち味を活かしていないかったと思う。だが、レゴ®アイデアシリーズから、ゴッホ の「星月夜」が半立体の絵で発売されたことがきっかけとなったのか、今回紹介する「神奈川沖浪裏」は、一部ドット絵でありながら、半立体の絵画となっているのが面白い。しかし、逆にいえば、どこまでレゴ ブロックの楽しみがあるのか、疑問も残る。そこで今回は、レゴ ブロックを知り尽くしたと思い込んでいる筆者が、レビューをしていこう。

パッケージ&製品ポイント

 まずは、パッケージをチェック。大人レゴのシリーズにラインナップされているため、黒を基調した格式高いボックス。製品自体も日本を代表する浮世絵なので、とてもしっくりくる。ちなみに、「神奈川沖浪裏」ポイントとしては、3艘の舟が荒れ狂う波を受けてもなお立ち向かう姿を描いている作品で、葛飾北斎の代表作となっている。

 余談だが、僕のようなオタク人生を歩んでいると、「富嶽三十六景」と聞けば山田五十鈴が三味線のバチを持って悪人退治する作品が脳裏に浮かぶ。まったくもって、芸術とは縁がなさ過ぎるのだが、そんな人たちにもやさしいのがレゴ社の製品。なんと、本作品をじっくりと楽しめるように、英国博物館キュレーターのアルフレッド・ハフト氏など、美術に造型の深い識者が、<富嶽三十六景 神奈川沖浪裏>の歴史や文化的な影響について語る、音声を聞くことができるのだ。これは、製品を買わなくてもレゴ公式サイトの商品ページ(https://www.lego.com/ja-jp/themes/art/the-great-wave)からダウンロードして聞けるので、興味がある方は聞いてみてもいいだろう。言語は英語のみだが、とてもゆっくり話してくれているので、結構聞き取りやすいと思う。

 インストラクションの中にも、北斎の情報などが記載されているので、文字で読みたい人はこちらも楽しめる。

大人レゴのパッケージは、シックで格調高い。これだけでも、飾れるのが嬉しい
インストラクションはかなり分厚く、組み方以外にも様々な情報が載っている

「神奈川沖浪裏」の平面部分を制作

 まずは「神奈川沖浪裏」から組んでいく。袋のナンバーだけでも15袋を超えている。だが、1~11までが「神奈川沖浪裏」、残り12~15までが額縁パートとなっているので、わかりやすい。

 「神奈川沖浪裏」部分の組み方としては、2つの工程があり、まずはベース部分に平面で下絵を構築し、その上から半立体へと加工していくというもの。はじめに、袋1~6を使ってベースとなる絵を組んでいこう。平面なので、ドット絵的な雰囲気もあるが、インストラクションのサイズが製品と同じサイズなので、じっくり見て組んでいけば、まず間違うことはないだろう。もし、大量の1×1丸タイルを貼り込んでいく作業に自信がなければ、一度埋めるべき範囲をタイル貼りしてから、スキ間を埋めていけば、間違わずに済む。たくさんあるタイルも、色でナンバリングされているので、覚えやすくなっているはず!

袋1とベースでまずは6分割された下絵のひとつを組む
珍しいパーツは入っていないが、ウエッジと呼ばれる斜めのパーツが、左右片方しかないのが本作のポイント。あとでバラしたときに、パーツが左右ないのは、ちょつと痛いが、それもまた風情。
原寸大の組み立て図なのでわかりやすい
袋2を組み上げたら、袋1で作った部分と合体させる。これを繰り返していけばいいだけだ
袋3を空けたときに、あまりに細かいパーツで絶望したが、ガイドラインを作って貼っていけば楽に完成する
袋4~6もこれまでどおりに組んでいき、最後に合体させれば下絵が完成

立体絵として昇華させていく工程が楽しい

 下絵ができたら、次は袋7~11を使って、半立体の絵に仕上げていく。荒れ狂う波の表現はどのように組むのか? 対する小舟はどのようなパーツで表現するのか? 袋を空けつつ、そんな想像をしながらレゴ社のデザイナーの感性を受け取る準備をし、パーツのひとつひとつを貼り付けていく作業がとても楽しい。

 異なる形状のパーツを上から組み込んでいくために、下になるパーツはそのほとんどが隠れたり、それなりに見えたり、なんというか普段とは違うよそ行きの顔を見せてくれる。どうやってパーツを選定し、設計していったのか、普段の立体製品からは、まったく想像できない領域だ。それでもなお、斜めのパーツなどを駆使し、波の泡、海の色、そして、その中間色などを、盤上に再現していると、なんだか絵師にでもなったような気分になってくる。

 さすがに、人の顔はプリントパーツだったが、白い「葉」のパーツを使った「波」の表現や、白い「鳩」を使った「荒波の泡」の表現は脱帽せざるを得ないパーツセレクトだった。

袋7で珍しいパーツを見つけたが、これは額として飾るときのパーツの模様。このパーツがあれば、自分のオリジナル作品も壁に飾りやすいかも
半立体だからこそできる波のシルエットを組んでいくのがポイント
袋8では船、袋9では人、袋10と11で波というディテールが徐々に姿を表していく。立体物でないところが、完成品を想像させないので、組んでいて飽きない
絵画部分が完成。立体物なので、なんとはみ出している部分もある

額縁を作って絵画を組み込む

 ここまでくれば完成は目前だ。袋11以降と、別途用意されていたロングプレートパーツを使って、額縁部分を仕上げていく。単調な作業ではあるのだが、世界的に有名な浮世絵を貼る額縁を作ると思うと、気合いが入る。特に後で「飾る」という目的があるため、通常よりも頑丈につくらなければならないし、絵を組み込む仕組みも必要だ。完成した額縁自体は汎用性が高いので、自分で作った絵を飾っても楽しいかもしれない。

 額縁が完成したら、レゴ®テクニック系のパーツを使って固定する。絵を組み込む瞬間は、「俺今額装してるんだぜ」という気分でテンションが上がった。失敗しても後で修復できるのがレゴ ブロックのいいところだが、最後に「ガツッ!」とハマった時には、ほっと一安心だ。

袋11~15を使った額縁づくりは単調ではあるが、強度を考えた組み方をしているので、よくインストラクションを見ていけば参考になる点も多い
完成品を額縁にはめるというのは、これまでレゴ ブロックの製品でしたことがないので新鮮
完成品は、正面からだけでなく斜めから見ても「神奈川沖浪裏」そのものだ。

平面と立体を組み合わせた、いつものレゴ ブロック作りとは異なる新しい体験

 今回の「神奈川沖浪裏」は、パーツ数の多さもさることながら、ひとつでもパーツを違うところに付けてしまったら、それは広重じゃなくなるというプレッシャーを感じた。幸い余剰パーツもあるので、細かいパーツを部屋の中でなくしてしまっても、リカバリーは効く。だが、逆にパーツが余っているのがデフォルトであるぶん、「ちゃんと全部パーツ付けたっけな?」と心配になるケースもあった。平面パートこそ間違えることはないだろうが、立体パートは見た目以上の難しさだ。そこで、不安がある方は、インストラクションにある「どのパーツを何個使うか」書かれている部分を必ず読み、先にパーツを手に取ってから組み込むことをおすすめしたい。

 こんな風に書くと「結構大変?」って思うかもしれないが、個人的にはレゴ ブロックの立体物を作る楽しさと、ジグソーパズルのように頭を使う感覚を併せ持ち、完成品ができる達成感が味わえる希有な製品だと感じた。せっかくなので、次はゴッホの「星月夜」でも作ってみようかな。

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