レビュー

タミヤ「1/12 ロータス タイプ78 (エッチングパーツ付き)」レビュー【前編】

F1初の本格的なウイングカーをビッグスケールとエッチングパーツで堪能する!

【1/12 ロータス タイプ78 (エッチングパーツ付き)】

開発・発売元:タミヤ

4月1日発売

価格:14,080円

ジャンル:プラモデル

サイズ:全長381mm、全幅171mm、全高76mm

 今回レビューするのはタミヤから再びリリースされることになった「1/12 ビッグスケールシリーズ No.37 ロータス タイプ78 (エッチングパーツ付き)」です。タミヤは実車がデビューした1977年に最新マシンを再現したプラモデルを発売。その後2008年にエッチングパーツ付きでリニューアルしました。今回発売されたキットは2008年以降、約15年ぶりに再登場することになったモデルです。型番も(ITEM 12037)で変更はありませんがメタルインレットや布製シートベルトが付属しています。

【F1初のウイングを本格的に導入】
空気の力を身にまとって大活躍!

 F1初の本格的なウイングカーとして誕生した「ロータスタイプ78」はシャープなウェッジシェイプ(くさび形)のボディを採用することでサイドポンツーン内部を航空機とは上下逆のウイング形状としました。それによって“グラウンドエフェクト”による強力なダウンフォースを発生。

 タイヤの接地力を究極的に高めるという革新的なアイデアで圧倒的なコーナリングスピードを獲得。マリオ・アンドレッティとグンナー・ニルソンがドライブして、アンドレッティが3つのグランプリで勝利し、ニルソンも1勝。「ロータスタイプ78」は名門復活を強く印象づけました。

【ロータスタイプ78の特徴】
巨大なウイングを採用
翼断面形状のサイドポンツーンで車体を地面に押し付ける
当時のF1マシンのスタンダードだった名器DFVエンジン
複雑なアーム構成で剛性を確保したリヤセクション
フロントウィングは航空機と上下逆の羽根となっており、ダウンフォースを獲得できる
リヤウイングのダウンフォースを受け止める巨大なウイングステー

 今回のキットはもともと2008年に発売されたものをいくつかの新しいマテリアルを追加して再登場となるものです。タミヤが持つ作りやすさをそのままに、1/12スケールという特大サイズ(全長381mm!)でロータスタイプ78を組み立てることができます。そのためボディはもとよりDFVエンジンも燃料パイプ、点火コードなども配線され、リアリティの高いエンジンを再現しています。

 サスペンションも実車同様のラック&ピニオン方式を忠実に再現。スプリングによってサスペンション機構も楽しめます。F1初の本格的な前後のウイングの翼端板は77年と78年を選択できる金属製のエッチングパーツを採用、とてもシャープなフォルムを実現できます。

 今回、発売前の製品版を提供いただきました。筆者にとってタミヤのビッグスケールF1は超久しぶり(1/12 マクラーレン・ホンダ MP4/6 初回生産分・約30年前)の挑戦となりそれぞれのマテリアルを組むのが楽しみでした。接着剤や塗装も久しぶりの感触でドキドキです。今回はこのボリュームたっぷりなキットを前・後編でレビューしていきます。前編となる本記事ではクルマを構成する各パーツを組み上げる工程をお届けいたします。

「1/12 ロータス タイプ78 (エッチングパーツ付き)」のキット内容をチェック!

 それではキットの内容をざざっとチェックしていきましょう。ランナーはA~Pの13枚。エッチングパーツ、タイヤ一式、デカール2種、インレットマーク、シートベルト、説明図とビッグスケールを体現するボリューミーなキットになっています。

 カウルはなるべく少ないパーツで組み上がるような配慮も見られます。ロータスタイプ78の後部は複雑なパーツ構成となっていますが、それも当時のF1の製造技術を感じられるのが楽しい部分となります。

【キット内容】
2023年版のパッケージ。ノーズ先端・前後ウイング翼端板・タイヤに“GOODYEAR”ロゴが見られます
ビッグスケールゆえにパーツも大きく、多いです
ドライバーシートはポリ素材でやわらかいものとなっています。一体成型なのがうれしいポイント
エッチングパーツはフロント・リヤのウイングやブレーキディスク、シートベルトのバックルまで作れます
カウルは金型から徹底的に磨かれているのでそのままでもつやつやです
塗装せずにこのまま組んでデカール貼ってもよさそうですが、ウェルドライン(成型時に樹脂が合流するところ)も見えるので基本は塗装したほうがよさそうです
サスペンションアームなども実車の形状を忠実に再現している。複雑な形や、立体的なパーツを分割せずに成型しているところも見所です
ホイールはメッキ処理されています
巨大なシャシーもなるべく一体成型
足回りなどのシルバー系のパーツ
シャシー関係のパーツ、上方左右にある巨大なパーツはリヤウイングステーです
内部のメカ関係のパーツがならびます
V型8気筒であることが理解できるエンジンパーツ
デカールは2種、インレットマーク、シートベルト

組立開始。細かいパーツを組み上げ、ユニットを構築していく

 今回は、まずは組立説明書を一通り読み込んで、先に組むべきパーツや同じ色で塗装できるパーツ群になるまで絞り込んでいき、組めるものを先に組むようにしました。ロータスタイプ78が1977年・1978年ごろのF1マシンということもあり、特に接続アーム類の「何に使うんだろう?」みたいなパーツが山ほどあるようにも感じます。

 説明書を読み進めていくと組み立てやすさで定評のあるタミヤのカーモデルとはいえ1977年のキットでもあり、最新のキットと較べると接着用の穴やガイドも少ない印象です。だからこそ説明書をよく読み組立・塗装順を練りながら工法を探るというのも頭フル回転で楽しいものです。なお、ここに紹介するものは組立順を追うものではなく主な構成要素をまとめたものです。

【同色になるパーツ群を組んで塗装しておく】
塗装に入れるものは矢継ぎ早に塗っていきましょう!今回は缶スプレーと筆塗りメインです
1色で塗れるパーツを見極めて組んでおき、ざざっと塗装していきます

 F1マシンとはいえ、構造は4輪のクルマであることにはかわりありませんから構成する主な要素は「シャーシ」、「エンジン」、「トランスミッション」、「4本のタイヤ」、「外装(カウル)」となるでしょうか。F1マシンにドア類はありませんからその組み立てはありませんね。クルマを構成する要素の単位になるまで細かいパーツを組み上げていきます。

【足回り】
フロントのブレーキディスク
リヤのブレーキディスク
各ブレーキディスクは左右貼り合わせでディスク側面の冷却用ダクト穴も再現されます
エッチングバサミで切り出して、エッチングやすりで跡を削ります
エッチングパーツは最近話題の「セメダイン ハイグレード模型用」で接着してみます
ざざっと接着剤を塗って貼りこんでいきます。はみ出た接着剤は乾く前なら水で拭き取れます
さらに各ディスクにエッチングパーツを貼りこんでいきます
細かい作業で少々ミスもしましたがなんとかできたようです
ブレーキディスクはエッチングパーツ分厚くなるのでブレーキキャリパーのパッド部分を削ります※わかりやすい色合いに調整してあります
中央パッド部分(4つの四角部分)削り後
貼り合わせて4つですが、これでフロントのみ!つまりフロント片側でキャリパー2つ必要です
フロントアップライトのブレーキエアインテーク
リヤ用ブレーキキャリパーがとても巨大です※写真は片側のみ、リヤも片側2つのキャリパーで構成されます
これらもエッチングパーツ分の厚みを稼ぐためにパッド部分(中央付近にある突起)を半分ほど削ります
アップライトを組んでいきます。ブレーキディスクを中心に軸を設置します
フロントアップライトを組みます。片側ディスクブレーキ1枚とブレーキキャリパー2基、エアインテーク1基で構成されます
当時の素材の事情もあるでしょうがキャリパー2つはどれだけの制動力をもたらすのか怖いくらいです
ブレーキディスク周りってなんかかっこいいんですよね
リヤアクスルはギアボックス直結!すさまじいパワーがロスなく得られそうです
こちらはリヤのアップライト
前後ともサスペンションは3ピース構成
ホイールは前後とも1本を3ピースで構成します。中に入れるゴールドのスポークは塗装です
工程は増えますが、確かな仕上がり!
ホイールにタイヤをセットしてみました。リヤが太い!

 ロータスタイプ78のエンジンはフォード・コスワース製のV型8気筒のDFVエンジンと呼ばれるものです。“DFVエンジン”といえばF1で155勝を誇るすばらしい成績を残したエンジンです。V8であるためメンテナンス性にも優れ、低コストも実現していたためプライベートチームがグランプリに参戦しやすかったのも特徴です。

 過去フェラーリ以外のコンストラクターがワークスエンジンを持つ必要がないと判断し、このDFVエンジンを使うようになったこともあるほど有名なエンジンです。“フォード”と名を聞けば“コスワース”や“DFV”の文字が頭に浮かぶ方も多いのではないでしょうか。2026年からレッドブルはフォードのPU(パワーユニット)でF1を戦うことになっています、

【フォードDFVエンジンとギアボックス】
エンジンブロックは基本的に箱組で前後左右から組み上げていきます
片側4気筒、V型8気筒のDFVエンジンができあがっていきます
エンジン左右に補器類を組付けます
エンジンのインジェクションユニットを組みます。ここにチューブを配線しますがコネクタが互い違いになっていて興味深い構造です
インジェクションユニットのチューブ等を配線します。組立説明書には切り出すときの長さ指示が書いてあるのでそのとおり切り出せばOKです
細かい作業が続きますが、根気よくゆっくりやっていきましょう!
エンジンの吸気ファンネルを組んでいきます。メッキパーツなので接着部分は削り落とします
インジェクションユニットからのチューブはそれぞれのエアファンネルに接続されます
各チューブはどこからどうめぐらせたらいいのか……
組立説明書をよく見て無理のないようになるべくきれいにできると最高です
ギアボックスはいわゆる“もなか割り”なのでせんたくばさみでがっちり組んでおきます
強大なトルクを受け止めるべく強力なブレーキシステムが搭載されます
ギアボックスとリヤアクスルの構成は愚直なまでのメカメカ! リヤのブレーキユニットが、ホイール側でなくギヤボックス側についているところは、現代の一般車と異なる特徴です

 ロータスタイプ78は現在のF1のように空力を突き詰めたものではなく、本格的に採用され始めたころのF1マシンですから空力エレメントとしてのウイングはあまり構成要素は多くありません。そのため1パーツが大きいのが特徴です。前後ウイングの翼端板はエッチングパーツとなり、とてもシャープな仕上がりが期待できます。ただしプラスチックと金属ですのでプラスチック用の接着剤による接着はできませんから別途瞬間接着剤などが必要になります。

【外装(カウル・ウイング)】
ボディーワークは大きいパーツで構成されます。フロントウイングはメインプレートのみ、左右接着です
仮組してみたらやっぱり大きい!
リヤウイングもメインプレートのみ、裏から裏打ちパーツでフタします
コクピット前方のカウル、後方の丸い部分にはバックミラーが内蔵されます
ドライバーの後ろには入口が左右に分かれたエアインテークがあります
ここのカウルは上下2ピースの貼り合わせになります
ここの貼り合わせでできる合わせ目が目立ちすぎるのでここだけペーパーかけて慣らしました
コクピット脇のふくらみ(シフトノブと手が入るスペース)は別パーツ
エッチングパーツをつかったウイングを組みます。こちらもハイグレード模型用を使いましたがくっつかなかったのでゼリー状瞬間接着剤をつかいました
がっちり接着できました。適材適所というものですね

 このビッグスケール・ロータスタイプ78は、ステアリングを回すとタイヤの方向を変えられたり、4輪のサスペンションは実際に伸縮機構を持っています。大スケールならではのギミックですね。ここではクルマを構成するバッテリーやラジエーターなどの補器類も組んでいきます。

 こういった小さいものから自分で組んでいくことでそもそもの構造や存在する場所やその意味、設計・製造技術の時代背景さえも感じられるところがプラモデルを組むことの楽しさがあります!

【メカや補器類】
ステアリングギアボックスは実際にギアを組み込んで左右にステアさせることができます
フロントアップライトを接続されるサスペンションアームは一部マスキングでカラーリングします
ステアリングギアボックスとサスペンションアームをがっちり接着します
驚きの構造!アクセル・ブレーキ・クラッチペダルはサスペンションアームのベースに取り付けられています
走っているときの振動はどうだったのか興味津々の構造ですね
バッテリーボックスは箱組、中にバッテリーを搭載
ドライバーの足元付近にあるバルクヘッドの一部
ラジエーターは全部で4基あり、それぞれにエッチングパーツを貼ります
金属ならではのシャープさがカッコイイですね
フロントサスペンション・アッパーアーム
燃料リザーブタンク
オイルタンク
エグゾーストパイプ
消火器
ステアリング
こちらはシートベルトのバックルです。全部で9枚のエッチングパーツを接着しながら重ねていきます
これは慣れてないと大変な作業ですが、完成したら満足度たかし!

前編はここまで!後編ではカウルの塗装と全体のアッセンブルを行います

 さて、ここまでの組み立てはいかがだったでしょうか。1/12ビッグスケールは各部のディテールが細かくなるのと各パーツが大きいことで組みやすさも感じられました。小さいパーツを組み上げていくとクルマの各構成要素ができあがっていくのがプラモデルの楽しさであることを再確認することもできました。

 ガンプラばかり作っていると接着剤もいらなかったりパーツ同士もかっちり固定されることが当たり前だったりしますが、接着前提のキットは一筋縄ではいかないことも多々ありました。特に固定するガイドがないパーツがいくつかあることで接着しても固定されずやり直しになることもありますね。そこはどうしたら手間なく組み上げられるかを考えるのもまた楽しいと感じました。

【前半では各要素を組み上げました】
さすが大スケールのF1モデル!
各部品がどう繋がっていくか、組み上げていくのが楽しみです
この状態でも色々な角度で眺めるて、組み上がった姿を想像するとワクワクします

 さて、後編では残った細かなパーツの処理を行いカウルの塗装と全体アッセンブリ、デカールの貼り付け作業となります。実車では線のデカールが特徴的ですが失敗せずに貼れるでしょうか。ビッグスケールだけに大判なデカールは取り扱いが難しいのでは?と想像しています。後編もぜひご覧ください。