レビュー
タミヤ「16式機動戦闘車C5(ウインチ装置付)」レビュー
少数配備のウインチ装置付も再現できる最新改修型のプラモデル
2023年7月7日 00:00
- 【1/35 陸上自衛隊 16式機動戦闘車C5 (ウインチ装置付)】
- 7月8日発売
- 価格:5,720円(税込)
- 全長:約248mm
- 全幅:約85mm
- 付属品:マスクシール、デカール、乗員フィギュア、実車解説文&カラー塗装図
タミヤが7月8日に発売する「1/35 陸上自衛隊 16式機動戦闘車C5 (ウインチ装置付)、以下、16式C5(ウインチ装置付)」はタミヤの造形技術の粋を集めた商品だ。新規金型により新たに追加された緻密なモールドとパーツ、こだわりの造形により16式C5最新調達仕様が見事に再現されている。
このキットは「16式(ひとろくしき)機動戦闘車、以下16式」の最新調達仕様であるC5をプラモデル化したものだ。5月に開催された「第61回 静岡ホビーショー」のタミヤブースでも展示され、同会場で展示されていた実物の16式と共に話題になった。筆者も実際にタミヤブースで「16式C5(ウインチ装置付)」のプラモデルを目にしたが、細かいモールドの造形や、細部へのこだわりに驚かされた。今回は販売に先駆けてこのキットを組むことができたので、実際に組みながら内容を紹介したい。
トラブルに対応できるウインチ装備式の16式機動戦闘車
「16式C5(ウインチ装置付)」のプラモデルを紹介する前に、まずは16式機動戦闘車について触れておきたい。16式は2016年から陸上自衛隊で調達が開始された装輪装甲車だ。日本では戦車をはじめとした大型車両の移動が容易ではないため、それを補うために採用された。名前は正式採用された2016年の下二桁からきている。
16式は主兵装に74式戦車の弾薬が転用可能な国産の105㎜砲を装備している。また、8輪の大径タイヤにより、最高速度は100㎞/h以上という高い機動性を持っている。
既に量産開始から7年が経過している車輌だが、隊員達のフィードバックを元に今も進化を続けている。今回プラモデルのモチーフとなったのは、2020年度から改修製造が行われた最新のC5と、その部隊に少数配備された「ウインチ装置付」の2つから選択できる。
装輪装甲車は装軌(キャタピラ)式の車両に較べ、舗装道路や平坦な地形では迅速に動け、小回りもきくが、雪道、泥道、凹凸のある地形では行動が制限される上、場合によっては地形にはまり、走行不可能な状況になってしまう。ウィンチ装置は走行ができなくなった車両を迅速に引き上げ、走行可能状態に復帰させる。部隊の中にウインチ装置付の車両が配備されることで、より素早い部隊展開が可能となるのだ。
「1/35 陸上自衛隊 16式機動戦闘車C5 (ウインチ装置付)」のキット内容を確認してみよう。ランナーはA~Fの6枚。ランナーの枚数は多くないが緻密に再現された細かなパーツが多いため、取り扱いには注意が必要だ。ポリパーツは大小の2種類、砲塔バスケット用のエッチングパーツ、デカール、クリアパーツと主砲用のマスクシール、組み立て説明書と車体解説書、そして組み立てワンポイントアドバイスをまとめたものが同封されている。
ウインチ装置付と標準仕様から選べる2種類のマーキングとパーツ
このキットには2種類のマーキングデカールとそれぞれウインチ装置付きと標準車用のパーツが用意されている。そのため、駒門駐屯地機甲教導連隊第4中隊所属の16式機動戦闘車C5 (ウインチ装置付)か朝霞駐屯地第1偵察戦闘大隊戦闘中隊所属の16式機動戦闘車C5(標準車)のどちらかを選択して組み立てることができる。
4つのサスペンションと連動するアームで再現された車体の足回り
それでは実際にキットを組み立てていこう。まずは車体を組み立てるところから始まる。「1/35 陸上自衛隊 16式機動戦闘車C5 (ウインチ装置付)」の車体部分は大型の上下パーツと前後左右のフロント、リヤ、サイドパネルに分かれている。これら大型のパーツに細かいパーツを取り付けた後、組み合わせることで16式の車体部分ができあがる。各パーツには取り付け穴やガイドが施されているので、ピンセットや接着剤を用いることで初心者でも問題なく取り付けることができるように工夫がなされている。
車体上部の次は足回りの組み立てとなる。足回りは4つのサスペンションを個別に組み上げた後、車体に取り付けていく。サスペンションに組み付けた前4輪のアップライトは全て可動するようになっており、アームを接続することでタイヤが連動して動くようになっている。
異なる角度で連動する前輪で実車同様のステアリング機構を再現
「1/35 陸上自衛隊 16式機動戦闘車C5 (ウインチ装置付)」を組んでいて一番驚かされたのがこの足回りだ。このキット、用意されたランナーの半分が足回りのパーツとなっている。そのおかげで駆動部は細かく再現されており、ホイールやアップライトなど多くのパーツが稼働するつくりとなっている。
こんなに小さなパーツなのにフロントの4輪が前と後ろで異なる角度で連動して動くという実車同様のステアリング機構が再現されている。サスペンションも細かく造られており、普通にキットを置いた状態では隠れてしまうのがもったいなく感じてしまうほどだ。隠れる箇所にも妥協せず、拘って造るところにタミヤの熱意と凄さを感じる。
新規金型によるC5の新たな特徴が盛り込まれた砲塔
車体の次は砲塔の組み立てとなる。16式C5の砲塔にはエアコンの追加により変更された砲塔バスケットや、上部全体に追加された滑り止めなど、初期調達仕様のC1から大きく変更された箇所が多数存在している。これらを実際に組みながら確認していけるのが実に楽しい。
砲塔も車体同様に上下のパーツに分かれており、そこにサイドパネルとリヤパネルをはめ込む形になっている。最初は車長のハッチ基部に取り付けられているのぞき窓部分になるクリアパーツをはめ込んでいく。その後はハッチのパーツや、砲塔各部の部品を取り付けていく。
砲塔にはスモークディスチャージャーやハッチの可動部分など、細かい部品が多い。また砲塔上部に取り付けるアングルと呼ばれる(柵)やエアコンのフレームパーツなどは破損しやすいので注意が必要だ。
砲塔の次は主砲だ。主砲の基部にはポリキャップが使用されており、上下に可動するようになっている。キット付属の砲身でも十分かっこいいのだが、別売りの「1/35 陸上自衛隊 16式機動戦闘車 メタル砲身」を使用することで、多孔式マズルブレーキが精巧に再現された実車さながらの主砲にディテールアップすることができる。
砲塔の組み立てで最後にくるのが砲塔バスケットとエアコンユニットだ。砲塔バスケットには専用のエッチングパーツが付属しており、パンチングメタル部分をリアルに再現できるようになっている。エッチングパーツの取り付けには瞬間接着剤を使用する。
バスケットが完成したら砲塔後部に取り付けることで砲塔の完成となる。
迷彩塗装でさらに魅力を引き出す
細部まで再現されたディテールのおかげで、素組みでも十分カッコいいのだが、スケールモデルならではの魅力を最大限に引き出すために今回は簡単な塗装も行う。色見本をもとに16式の迷彩塗装を再現してみる。
今回使用した道具はこの6つ。
・タミヤスプレー TS-70 OD色(陸上自衛隊)
・タミヤスプレー TS-90 茶色(陸上自衛隊)
・タミヤスプレー TS-91 濃緑色(陸上自衛隊)
・Mr.スーパークリアー つや消し
・マスキングテープ
・練り消しゴム
今回のキットは表面の滑り止め表現など、細かいディテールが多いため塗膜が厚くなるともったいないと感じたのでサーフェイサーは使用しないことにした。
まずは簡単な足回りから塗装開始。パーツを全て取り付けた状態では全体を塗装するのが難しいので、サスペンションは取り外して塗装を行った。色見本の指定通り、車体下部はTS-70 OD色(陸上自衛隊)で塗装。
車体下部と足回り以外は迷彩柄にするので、まずは全てTS-90 茶色(陸上自衛隊)で塗装する。塗料が乾いたら練り消しゴムで迷彩の境界線を作り、そこを基準にマスキングテープで塗装したくない箇所を覆っていく。迷彩柄の歪曲部分のボカシ効果と、マスキングを簡単にするために今回は練り消しゴムを使用している。
マスキングが完了したらTS-91 濃緑色(陸上自衛隊)で塗装。塗料が手に付かない程度まで乾いたらマスキングを剥がしてから完璧に乾燥させる。
塗料が完全に乾いたら、Mr.スーパークリアー つや消しを表面保護のため塗布する。再び乾いたら、最後にパーツを全て組み上げて完成だ。
塗装は手間もかかり大変ではあるが、難しい作業ではない。塗装することでプラモデルの見栄えが見違えるほど変わるので、是非ともチャレンジしてみてほしい。
1/35 陸上自衛隊 16式機動戦闘車C5 (ウインチ装置付)の見処
完成した「16式機動戦闘車C5(ウインチ装置付)」を眺めてみるとその完成度の高さが伺える。大型パーツはどれも綺麗にハマっており、砲塔をはじめ、多くのパーツで結合部の合わせ目が隠れる工夫がなされている。
細かな装備も全てC5仕様に変更されており、キットと解説書でC1からの進化を学ぶことができる。今回のキット16式C5では、2018年に販売された初年度調達仕様の16式C1から以下の箇所に変更が加えられている。
「1/35 陸上自衛隊 16式機動戦闘車C5 (ウインチ装置付)」には車長、装填手の半身像、そして車外で警戒にあたる乗員の全身像が含まれている。車長、装填手のフィギュアは16式の砲塔上部にあるハッチを開くことで設置することができる。
最新の16式機動戦闘車C5で学べる16式の歴史と模型作りの楽しさ
「1/35 陸上自衛隊 16式機動戦闘車C5 (ウインチ装置付)」は細かいところまでしっかりと再現された素晴らしいプラモデルだ。このキットは表面のモールドはもちろん、小物の一つ一つまでもが細かく再現されている。小さいパーツや、折れやすいパーツが多いため、パーツの切り出しからヤスリがけまで、長時間神経を研ぎ澄ます必要はあるが、取り組むごとに情報量が増えていくため、完成後の達成感は別格だ。
スケールモデルは接着剤やピンバイスなど専用の道具が必要となるため、プラモ初心者には難易度が高く感じてしまうかもしれない。だが、このプラモデルはパーツを合わせるための穴や凹凸の設置方法、説明書や付属品によるアドバイスなど、初心者でも安心して組めるように様々な工夫がされている。リアルさと組みやすさの両方を追求したタミヤの設計のおかげで、筆者も楽しく組むことができた。タミヤのプラモデルの楽しさを体験できる商品となっているので、この機会に是非とも手に取ってみてほしい。