レビュー
「ARTIST SUPPORT ITEM ハンドモデル/R」レビュー
加々美高浩氏×白髭 創氏が提唱する、眺めて美しく、触って楽しい究極の“美手”
2024年1月26日 00:00
- 【ARTIST SUPPORT ITEM ハンドモデル / R -GRAY- / R-WHITE-】
- 2024年3月発売予定
- 価格:13,200円
- サイズ:全長約210mm
コトブキヤが応援購入サービス「Makuake」にて先行販売したアクションフィギュア「ARTIST SUPPORT ITEM ハンドモデル/R」。
TVアニメ「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ」などのメインアニメーターで知られる加々美高浩氏が提唱する「美手」を、コトブキヤの原型師、白髭 創氏が立体造形として完成させた究極の「手のアクションフィギュア」であり、造形としての美しさと、実際の手と同じ動きができる全20カ所の可動を備えている。
アクションフィギュアとして動かしたり飾ったりして楽しむだけでなく、加々美氏が監修した美手の造形を自在に動かして、デッサンなどの作画参考資料としての用途も意図している。「ARTIST SUPPORT ITEM」のシリーズ名もそこを意味していて、2022年12月に弊誌で掲載したコトブキヤ開発者へのインタビューでもその旨が語られている。
「Makuake」での応援購入金額はおの右手モデルだけで最終的に1億4,800万円を超え、サポーターは13,633人にも及び、プロジェクトは大成功となった。9月にはコトブキヤオンラインショップ他で一般販売分の予約がスタートし、価格は13,200円で、2024年3月の発売となっている。
今回、コトブキヤから「Makuake」にて販売された「ARTIST SUPPORT ITEM ハンドモデル/R」の「-GRAY-(グレー)」(Makuake購入限定パッケージ版)をお借りし、その機構をしっかりと体験することができた。本稿ではその魅力を紹介したい。現在予約受付中の商品の購入の参考にしていただければと思う。なおこちらは先行販売モデルにつき、3月発売予定の一般販売分とは仕様が異なることをご了承いただきたい。
男性でも女性でもない、中性的な魅力のある手を造形。関節の構造はロボットハンドのテイストも
「ARTIST SUPPORT ITEM ハンドモデル/R」が収められた専用のボックスは、一般的なアクションフィギュアとは趣の異なるシックなデザインで、黒い箱に加々美氏の手と商品名が箔押しでプリントされている。マグネットで固定された蓋は下側から上に開く凝った仕様で、蓋の裏側にはやはり加々美氏が描いた手がプリントされていた。
わかってはいるものの、箱の中のブリスターに精密な手の造形が入っていることにはちょっと驚かされる。前述のインタビューでペールオレンジカラーの試作品が「生々しく」ラインナップに入れるか悩んだという開発陣の気持ちにわかる気がした。そもそも手だけのフィギュアを目の当たりにするのは筆者も初めてのことだ。
本体となるハンドモデルは、加々美氏の提唱する美手そのもので、女性とも男性ともつかない中性的な形で造形されている。男性の手のようなごつごつとした形ではないものの、指は女性のそれのようにか細いわけでもない理想的な形で、例えるなら仏像の手のようなイメージだろうか。サイズは全長約210mmで、スケールは1/1で、握手をすることもできる。
改めて本体を眺めてみると、人間の手に存在する爪やシワ、節などの細かなディテールが施され、筋肉の膨らみまで表現されている。手としての造形美を徹底して追求する一方、可動における関節の設計も侮れないほど美しく、手のひらや指の節々、手首など、アクションフィギュアならではの関節はロボットハンド的な美しさがあり、これは実物の手にはない魅力である。実は試しに手袋を被せてみたのだが、魅力が半減してしまうので筆者的にはそのままで楽しみたい。ちなみにコトブキヤ自身は、手袋をはめた状態の利用も推奨している。
実物の手と同じ動きを追求。不自然な形にならず、魅力的な手の形を表現できる
商品のセールスポイントの通り、可動も実物のそれを意識して設計されている。模型などでロボットの可動する手を作ったこともあるが、当然ながらここまで動く手の模型には出会ったことはない。
五指は当然全ての関節が曲がって握り拳もできるが、逆の手の甲側にも反るようになっている。また左右にスイング可動するので、ピースサインをしたときの指を開いたり閉じたりできる。手のひらは内側に曲がるようにできていて、指をすぼめた形にすることが可能だ。特に大きく可動するのは親指の付け根で、その関係でめいっぱい開くと隙間ができてしまうが、そこはあまり気にならない。
動かしてみると「手ってこんなに動いたんだ」ということを実感する。その証がモデルに見られる関節であり、精密な動きを見事にフィギュアとして昇華している。単に動くだけでなく、無理のある方向には動かないのもポイントで、例えば五指のうち四指の第2関節は甲の側には曲げることができず、指が反りすぎることがない。また手のひらも内側にはすぼめられるが外側には開かず、可動を制限することで不自然な形になることを防いでいる。このあたりには加々美氏と白鬚氏の徹底したこだわりが感じられる。
作画参考用のモデルとしての用途を兼ねたアイテムながら、適当に動かしてみるだけでも加々美氏の美手の形になり、なおかつ不自然な形にならないのもいいところだ。形が崩れないように関節の保持力は確保されているので、付属のスタンドを使用すれば好きな形で飾っておくこともできる。
ゲーム好きである筆者が、この自在な手の動きを見て思い浮かべたのが、任天堂の対戦アクションゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズに登場するキャラクター「マスターハンド」である。
主に1人用ゲームプレイ時のボスとして現れる巨大な手の形をしたキャラクターで、自在に動く手の形を攻撃手段としていて、この「ハンドモデル」発表時の紹介動画を見たゲームファンからも同様の反応があったことを開発陣も話していた。モチーフとしているのが同じ「手」なのでその反応は正しく、ゲーム中の動きを再現して、ゲームに登場するフィギュアなどと一緒に飾ってみるのも面白いかもしれない。
また造形の美しさから、インテリアのような飾り方もできるはず。本稿ではグレーを使用しているが、飾るならもう一つのホワイトという選択肢もあるだろう。グレーは影が落ちやすく表面のディテールも見やすいので、作画参考モデルとしての価値が高い。一方ホワイトはディテールの見え方は控えめになるが、同様に関節の影もグレーより薄く見えるので、石膏像のようなイメージで飾れるのではないだろうか。
その他の使い方としては、小さめのフィギュアやプラモデルなどを手のひらの乗せるディスプレイ台としてもいいし、人の手ということで指輪や時計などのアクセサリーなどを飾ってもいいだろう。ただし表面の仕上げが滑らかですべってしまうので、何かを持たせることは難しい。どちらにしても何かを乗せたり、持たせたりする使い方はメーカーで推奨しているわけではないので、あくまで自己責任で。
今回紹介した「ARTIST SUPPORT ITEM ハンドモデル/R」の製品版は3月の発売予定で、一般販売価格は13,200円となっている。さらに左手バージョンの「ARTIST SUPPORT ITEM ハンドモデル/L」も昨年秋よりMakuakeにて先行販売を行い、好評のうちに終了した。今後のバリエーションなども気になるところではあるが、まずは今回紹介した右手の一般発売をお待ちいただきたい。
発売のあかつきにはぜひ手に取っていただいて、これまであまり例のない「手のアクションフィギュア」の面白さを味わっていただければと思う。
(C)加々美高浩
(C) KOTOBUKIYA
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