レビュー
フィギュア「美崎静香 バニーVer.」レビュー
伝説のお色気マンガ「やるっきゃ騎士」のヒロインが、全高45cmのバニーに!
2024年5月24日 00:00
- 【美崎静香 バニーVer.】
- メーカー：フリーイング
- 発売日：5月18日発売
- 価格：36,300円
- 全高：約45cm
- スケール：1/4
- 素材：プラスチック
- 原型制作：二橋孝次
本商品はみやすのんき氏が、月刊少年ジャンプにて1984年から1988年まで連載していたお色気マンガ「やるっきゃ騎士」のヒロイン・美崎静香をモチーフとしたフィギュアだ。メーカーはフリーイング、1/4スケール、全高約45cmの巨大サイズのバニーガールの衣装での立体化である。
フリーイングは様々なキャラクターをバニースタイルで表現、「フリーイングのバニー」として、1つのジャンルを確立している。大サイズでの肢体の表現、体のラインをしっかり現すバニースーツ、足を包むストッキングの表現など手法としての蓄積・洗練を重ねている。
フィギュアの1ジャンルを確立したというフリーイングのバニーフィギュアで、「お色気マンガの代表作」といえる「やるっきゃ騎士」のヒロインを表現する。「美崎静香 バニーVer.」はモチーフ、手法共に注目すべき商品だ。1980年代のキャラクターがフィギュア化になるのも嬉しいが、その表現がまた秀逸なのだ。フィギュアの感触を語っていきたいと思う。
伝説のお色気マンガのヒロインが、40年の時を超えてフィギュア化！
最初にマンガ「やるっきゃ騎士」とヒロイン・美崎静香を紹介したい。1980年代は少年漫画において、"お色気マンガ"が一気に花開いた時期だった。スポーツや格闘が中心だった少年マンガに、少女漫画のような恋愛要素が盛り込まれた「ラブコメ」が大きな流れとなり、そこからヒロインのセクシー要素に特化したのが"お色気マンガ"と呼ばれるジャンルが生まれた。
お色気マンガの特徴は「ヒロインが毎回裸になる」というところだ。かわいらしいヒロインが、毎回理不尽に裸になってしまう展開は、少年の憧れをストレートに形にしたものであり、ジャンルとして一大ブームを巻き起こした。「やるっきゃ騎士」が連載された月刊少年ジャンプ以外にも、月刊少年マガジン、週刊少年チャンピオンなど様々な少年誌に多彩な作品が連載された。
その中でも「やるっきゃ騎士」は過激な表現で話題を集めた作品だ。ヒロイン・美崎静香は聖愛学園を支配する"女王様"だ。彼女は理事長の娘であり、校長すらも逆らえない。自身の配下である「自治クラブ」の元、学園で絶対的な権力を持って君臨していた。
しかし、そこに1つの変化が訪れる。転校生・誠豪介。彼は学園の支配に敢然と立ち向かう。豪介は熱血であると同時に猛烈なスケベであり、彼と戦う静香はことあるごとに裸を晒す羽目になってしまうのだった……。
「やるっきゃ騎士」の作者・みやすのんき氏は、成人向けマンガも手がけていた作家で、特に初期の作風は当時の少年漫画とひと味違う雰囲気があった。過激なお色気描写とアナーキーさを感じさせるストーリー展開で「やるっきゃ騎士」は「お色気マンガ」のブームで多数生まれた作品の中でも高い人気を得て、ジャンルを代表する作品の1つとなった。
一方、フィギュア化に関しては1980年代はまだホビーとマンガ、アニメの連動が積極的に行われていない上に、立体化の技術も未発達なところがあった。その中で実は「やるっきゃ騎士」の美崎静香は日東化学からプラモデルフィギュアが発売されていた。お色気マンガのヒロインのプラモデルというのは、当時思春期だった筆者にとってなかなかドキドキさせられた商品だったが、手にするには気恥ずかしかったし、商品は未塗装で劇中のように可愛らしく仕上げるには高い模型スキルが必要だったため、断念してしまった。あの商品がヒットしていたら、今とは違うホビー文化の盛り上がりがあったかもしれない。
しかし美崎静香は、40年の時を超え、バニーフィギュアで多くのファンを集めるフリーイングからの立体化となった。以前からフリーイングのバニーには興味があったし、この「やるっきゃ騎士」のフィギュア化をきっかけに、他の1980年代のキャラクターもフィギュア化されるかもしれないと思った。「美崎静香 バニーVer.」は思い入れのあるキャラクターのフィギュア化というだけでなく、これからのフィギュア化商品を占うという意味合いも感じた。筆者にとって様々な期待がこもった商品なのだ。
全高約45cmの大迫力、本物を目の前にしているかのようなストッキングに包まれた足
「美崎静香 バニーVer.」の最大の魅力はその"大きさ"だ。1/4スケール、全高約45cmのフィギュアは大迫力だ。今回は比較として以前レビューしたハヤブサイラスト「黒チャイナさん」とも並べてみた。こちらも全高約25cmのボリュームのあるフィギュアだが、並べるとその大きさの違いは一目瞭然。「美崎静香 バニーVer.」の大きさが実感できるだろう。
各部をチェックしていこう。1980年代の作品のヒロインである静香の顔は、現代のキャラクターデザインに比べるとシンプルだ。「やるっきゃ騎士」は連載が進むと絵柄が変化していき、劇画的なタッチからシンプルなものに変化していく。フィギュアとなったのは後半の静香に近いが、一番近いテイストとしては永久保存版として刊行された「やるっきゃ騎士パーフェクト」の表紙のデザインに近いだろうか。
顔半分ほどに大きい瞳、つるんとした顔、口の造型もシンプルで、ありていにいえばちょっと懐かしい、時代を感じさせるデザインだ。そして静香のキャラクターデザインの大きな特徴は、"髪型"である。ピンピンととがった、マンガ的な表現がされていた特徴的な髪型をフィギュアはうまく立体に落とし込んでいる。髪の色がピンクなのも、ちょっと懐かしさを感じさせる表現だ。
バニーの耳の表現も注目だ。真ん中辺りが垂れ下がるデザインは、ピンと耳が立っているのよりも色っぽさを感じる。ちなみに耳は取りはずすことができ、パッケージに入れる際は梱包用のダミーパーツを耳の所に差し込む設計になっている。
顔回りの次に注目したいところは、このフィギュアの最大の魅力であり、フリーイングのバニーフィギュアの最大の注目ポイントである、「ストッキングに包まれたお尻から足首までの下半身」だ。この、ストッキングに包まれた足の魅力こそが筆者に「いつかフリーイングのバニーが欲しい」と思わせた。フィギュアにおけるストッキングの表現は、まさにフリーイングが切り開いたといっても過言ではないだろう。
ちなみに足を包む靴下で「タイツ」と呼ばれるもののうち、足をきれいに見せる効果を狙った記事の薄いものは「ストッキング」というのだという。フィギュアに関してはまさに「布に包まれた美しい足」を表現するために使われているこの布はストッキングと呼ぶべきだろう。ストッキングは足の生身としてのディテールを覆い隠すファウンデーション効果と、足のシルエットをきれいに見せる加圧効果がある。
一方、フィギュアに関してはつるりとした樹脂製の足を布で包むことで、2.5次元ともいえる、"実在感"が生まれるのが面白い。2次元キャラクターを立体化するフィギュアが、網目状の布に包まれたすらりとした足を持つことで、さらに生身っぽさが加わるのだ。フリーイングのバニーフィギュアは大きさも相まって本当に目の前にバニースーツに身を包んだ女の子が立っているかのような生々しさが感じられるのである。
そしてストッキングの編み目の表現にも強いこだわりが感じられる。バニーガールのストッキングは網目の細かいもの、目の大きいもの、そのバランスでも違いがあるし、足の後ろ側に「バックシーム」と呼ばれる線があるかないかにも違いがある。このバックシームは縫製技術が現在ほど発展していなかった頃の名残のようだが、このラインでも印象が変わる。「美崎静香 バニーVer.」はバックシームがあるストッキングだ。
最大の注目ポイントである足の次は、体を包むバニースーツだ。光沢を放つ「エナメル処理」をしたバニースーツの素材は、現実ではレザーかビニールが使用されている。フィギュアでも素体の上にバニースーツのパーツをかぶせる形で表現しており、胸の部分の服からこぼれでそうな膨らみや、背中のむき出しになった素肌を効果的に演出している。ちなみにバニーの尻尾は樹脂製で硬質な表現だ。背中にはバニースーツのファスナーまで表現されており、こだわりを感じさせる。
最後は手首のカフスも注目ポイント。やはりこの大きさのフィギュアは細部をチェックするのがより楽しい。次章では背景を変えて写真を撮っていきたい。
花や布を背負ってバニー姿の静香を撮る楽しさ
美少女フィギュアは背景と一緒に写真を撮るのも楽しい。布を配置したり、花をどう置けば映えるか、バランスにこだわりたくなる。背景によって光量が大きく変わってくるのでその試行錯誤も面白い。
「美崎静香 バニーVer.」はやはりバニースーツをどう画面に収めるか、そこに力が入った。エナメルのスーツとストッキングはどうしても画面に収めたくなってしまう。これらが画面に入ると色っぽさがグッと増して嬉しい。
「美崎静香 バニーVer.」は「美崎静香のフィギュアが欲しい」、「フリーイングのバニーが欲しい」という筆者の2つの夢を叶えてくれたフィギュアだ。ボリュームという意味では以前紹介したドロンジョのフィギュアもなかなかだったが、「美崎静香 バニーVer.」はやはりストッキングに包まれた足と尻の実在感と、手に持ったときの手のひらで感じるストッキングの感触が素晴らしい。フリーイングのバニーフィギュアはぜひ1つは手にすることをオススメしたい。フィギュア表現での注目のシリーズだ。
そして「やるっきゃ騎士」のヒロインがフィギュア化されたということで、今後のラインナップにも期待したい。筆者が熱望するのはこちらもお色気マンガの代表作である「いけない ルナ先生」のルナ先生である。現在ルナ先生は「いけないルナ先生R」というリメイク作が連載されているが、できれば、新旧ルナ先生両方をフリーイングでバニー化して欲しい。
ちなみに「美崎静香 バニーVer.」には衣装が外れる「キャストオフ」機能は搭載されてない。「原作では毎回裸になっているのに、フィギュアは何でキャストオフできないんだ」というところは、筆者も少し感じるところがあるが、「美崎静香 バニーVer.」に関してはキャストオフ機能よりも、かっちりしたバニー姿が見れたことが嬉しい。可愛らしくセクシーなバニー姿での静香が目の前にいるというのがいいのだ。本商品は限定発売のため、市場の在庫は少ない。気になった人はぜひ手に取って欲しい。
(C)みやすのんき