レビュー

「フローティングモデル 銀河鉄道999 キャプテンハーロックエディション」レビュー

「男なら、死ぬとわかっていても行動しなければならないときがある」、名シーンが蘇る!

【フローティングモデル 銀河鉄道999 キャプテンハーロックエディション】

開発・発売元:ノエルコーポレーション

ジャンル:プラモデル

8月末日発売予定

価格:7,678円

全長:約280mm(車体本体)

素材:ABS、異方性フェライト磁石

 ノエルコーポレーションは半完成品プラモデル「フローティングモデル銀河鉄道999キャプテンハーロックエディション」を8月末に発売する。本商品の最大の魅力は列車が磁力により"浮いている"ディスプレイモデルというところにある。

 アニメ「銀河鉄道999」の主役メカである999号は、その名の通り宇宙を進むことができる列車だ。各惑星を離れるとき列車は線路からふわりと浮き上がり、まるで見えない線路があるかのように空中を、そして宇宙を進んでいく。本商品は「フローティングモデル」の名の通り、実際磁力の力で列車が宙に浮いているプラモデルなのだ。その不思議さは、目にすることで大きな驚きをもたらす。

磁力で999号が線路から浮き上がる! 「フローティングモデル 銀河鉄道999 キャプテンハーロックエディション」の最大の魅力はここにある

 空に飛び上がる999号の姿はアニメそのものを知らなくても、印象的なシーンとして記憶に残っている人も多いだろう。フローティングモデルはこれまで数種類販売されているが、今回の「キャプテンハーロックエディション」は、キャプテンハーロックが駆る宇宙海賊船「アルカディア号」と併走するシーンが再現できる。

 今回、発売に先がけてサンプルを組みたてることができたので、「フローティングモデル 銀河鉄道999 キャプテンハーロックエディション」の魅力を紹介したい。組みたても簡単で多くの人に手に取ってもらいたい商品だ。

「劇場版銀河鉄道999」での、鉄郎を守るアルカディア号の姿を再現

 商品紹介の前にモチーフとなる999号、アルカディア号、そして劇場アニメ「銀河鉄道999」に触れていきたい。「銀河鉄道999」には原作者の松本零士氏が執筆した「マンガ版」と「TVアニメ版」そして「劇場版」が存在する。マンガ版は1977年の週刊少年キングで連載が開始、TVアニメ版は1978年から放映、劇場版の公開は1979年となる。

 「銀河鉄道999」は遙かな未来、人間は「機械の体」を手に入れることで、永遠の命を得ることができる物語だ。しかし機械の体は非常に高価で、一部の人間だけがその特権を手にできる。主人公の少年・星野鉄郎は母と共に「機械の体をただでくれる星に行くことができる銀河鉄道」のあるメガロポリスを目指すが、"人間狩り"を行う機械伯爵によって母を殺されてしまう。機械の体を得て永遠の命を手にした人は、生身の人間に対して冷酷になる人も多いのだ。

 絶体絶命の鉄郎を謎の美女・メーテルが救う。彼女は999号のパスを持っており、鉄郎に同行を願う。鉄郎はメーテルと共に999号に乗り星の海を旅することになる。その中で鉄郎は限りある命か、永遠の命か、悩みながら旅を進めていく……。

「劇場版 銀河鉄道999」。原作のエピソードを凝縮しているためこの作品だけでは駆け足に感じるが、作画、音楽のクオリティの高さ、そしてハーロックやエメラルダス、トチローの登場といった、松本SFの集大成と言える構成、そしてラストシーンは見るものの胸を強く打つパワーがある。マンガ版やTVアニメ版でエピソードを補完すればさらに楽しさは広がる

 TVアニメ版はマンガ版をベースにしながらオリジナルエピソードも挿入してストーリーが進行していたが、「劇場版 銀河鉄道999」は大きくアレンジが加えられた。マンガ/アニメ版では10歳の鉄郎が15歳となりデザインも変わった。エピソードはマンガ版から抽出する形で構成、そして最も話題を集めたのが"結末"である。1979年当時、まだまだ謎に包まれていた999号の終着駅と旅の終わりのエピソードを、マンガ版に先がけ設定し、鉄郎の旅を1本の映画にまとめ上げたのだ。

 さらに「劇場版 銀河鉄道999」では、「キャプテンハーロック」、「クイーンエメラルダス」といった同名マンガの主人公に加え、彼等の親友であり、「ガンフロンティア」や様々な短編作品で活躍した「大山トチロー」が集結、彼等と鉄郎の交流も描かれた。松本SFの集大成となった「劇場版 銀河鉄道999」は、大ヒットとなった。

 999号はマンガ版、TVアニメ版、劇場版で細部のデザインが異なる。宇宙を進む銀河超特急である999号は、1950年代に特急列車として活躍した蒸気機関車C62形の姿をしている。クラシカルな姿の理由について、メーテルは「2度と帰らないお客のためにはこんな型の列車じゃないとだめなの」と語る。外観こそ旧型だが、人類の科学力以上のコンピューターで制御され、耐エネルギー無限電磁バリヤーに守られる超近代的宇宙列車なのだ。

アルカディア号に守られて進む999、映画の名場面を再現

 「フローティングモデル 銀河鉄道999 キャプテンハーロックエディション」では、先頭車両と客車一両で999を再現。パネルによってキャプテンハーロックの駆る宇宙海賊船「アルカディア号」と併走する姿を表現している。アルカディア号は全長400mの巨大な船であり、パネルはその一部を表現している。

「フローティングモデル 銀河鉄道999 キャプテンハーロックエディション」ではアルカディア号を描いた背景パネルが付属する。映画の名シーンが蘇る

 アルカディア号の中枢にあるコンピューターにはこの船を設計した大山トチローの魂が宿っている。鉄郎はトチローの最後の願いを聞き届け、アルカディア号に彼の魂を転送する装置のスイッチを入れたのだ。トチローはハーロックの親友であり、友を助けた鉄郎を救うため、ハーロックは強大な機械化帝国の母星へと艦を進める。

 ハーロックは仲間達に言う。「男なら、危険を顧みず、死ぬと分かっていても行動しなければならない時がある。負けると分かっていても戦わなければならない時が。鉄郎はそれを知っていた。いいか、鉄郎に掠り傷一つつけるな。無事に地球に帰すのだ!」。

 これまでの「フローティングモデル 銀河鉄道999」は駅から飛び立つ999号をイメージしていたが、今回アルカディア号のパネルを配置することで、アルカディア号に守られながら宇宙を進む999号を再現できる。映画の名シーンが蘇る商品となっている。それでは商品を触っていこう。

アルカディア号も幾つものデザインがあるが、「劇場版 銀河鉄道999」で艦首に巨大なドクロを配置した姿がデザインされた。画像はハセガワのプラモデル

簡単な組立で精密な999号が組み上がる

 ここから「フローティングモデル 銀河鉄道999 キャプテンハーロックエディション」を組みたてていく。本商品はプラモデルだが、メインとなる999号と客車は車輪などをのぞいて組みたててあり、塗装もされている。

【パーツ】
先頭車両と客車の基本パーツは組み立て済み、塗装もされている。客車と機関車は接続されていて動かない
ランナーは2つ。主に車輪を接着する
台座となる線路パーツ。本体と線路には磁石が内蔵されており、反発力で本体を浮かす
アクリル板とシール。アクリル板には鉄郎、メーテル、ハーロックが印刷されている

 付属部品は2つのランナーと、アクリル板、シールである。ランナーを切り離すためのニッパー、部品を付けるための接着剤、ゲート跡をきれいにするためのヤスリ、シールを貼るためのピンセットといった工具は必要だが、組みたてそのものはプラモデル初心者でも簡単にできるだろう。

 組立の最初は本体に車輪を取り付けていく。蒸気機関車の蒸気の力で動かす大きな車輪は"動輪"と呼ばれており、注目ポイントだ。動輪の数はアルファベットで現されており、「C62」は動輪が3つ、貨物列車として知られる蒸気機関車「D51」は動輪が4つある。車輪はプラモデル用接着剤で取り付けていく。

C62ならではの3つの動輪を取り付ける

 次は従輪を取り付けていく。その後は炭水車の車輪、客車の車輪を取り付ける。取り付ける車輪はそれぞれ形が異なっており、"模型"としての強いこだわりを感じさせる。車輪がずらりと並んでいる姿は、メカとしての魅力、そして飛び立つ999号を思い出させて、楽しい。

従輪、炭水車の車輪を取り付ける
客車の車輪も取り付ける
車輪がずらりと並んでいるのは、メカニカルな魅力がある

 次は蒸気機関車の顔と言える部分。側面にある煙を後ろに流しやすくする「除煙版」と、「煙室の扉」を取り付ける。蒸気機関車は運転を行う機関室の前方はまるまる巨大な蒸気機関であり、前方に煙室があり煙突から煙を噴き上げ進む。蒸気機関車の先端は扉になっていて、ここを開けてメンテナンスを行う。

 パーツの取り付けに加えシールも貼っていく。劇場版の999号の形式は「C62 48」、999のヘッドマークは黒地に白の文字だ。ちなみにTV版は赤の下地に黄色の文字となっている。このヘッドマークの色の違いは999のデザインの大きな違いとなっている。

 機関室の下にもシールを貼り、さらに炭水車の上に石炭のパーツを配置、あとは台座にシールを貼り、鉄郎、メーテル、ハーロックの姿が描かれたアクリルプレート、線路の後端に999号を安定させるサポート板を取り付けたら組み立て完了だ。

 この台座に999号を配置すれば完成なのだが、この配置は"フローティングモデル"である本商品の大きな見せ場だ。配置は動画で、完成形は次章でお見せしたい。

機関車の顔と言える煙室の蓋部分と、側面の除煙版を取り付ける。ヘッドマークと銘板のシールを貼る
機関室の窓の下の銘板もシールで再現
炭水車の石炭部分を貼り付ける
台座にアクリル板を配置。奥の板は浮遊する本体を安定させるもの
磁石の反発力で浮遊する。配置の様子は次章の動画で見せたい

磁力で浮遊し、999号の魅力をしっかり表現するディスプレイモデル

【「フローティングモデル 銀河鉄道999」、劇中さながら磁力で宙に浮く面白さ】

 「フローティングモデル 銀河鉄道999 キャプテンハーロックエディション」の最大の面白さは磁力で本体が浮き上がるところにある。磁力の反発で実際に宙に浮いている姿は実際に見ると独特の面白さがある。動画ではその不思議な雰囲気が強く伝わるだろう。

アルカディア号のパネルを配置。劇中の名場面をしっかり思い出させる

 ここからは細部をチェックしていこう。写真で側面、前面、後ろから見ていく。浮遊する999のかっこよさをしっかり確認することができる。

【様々な角度から】

 そして、浮遊する999号を満喫できるのはやはり見上げるときだ。カメラを本体の下に配置し、見上げる。線路から飛び上がる999号の姿は、999号が始めて中に飛び上がったシーンや、各惑星を飛び立つ姿を思い出させる。日常では決して見ることができない、機関車の底面を見ることができるのも楽しい。

【飛び上がる999】
飛び上がる999号を実感させるのはやはり浮いた999号を見上げるアングルだ

 最後はおまけとして以前紹介したタカラトミーの「トミカプレミアムunlimited 10 銀河鉄道999 999号」と並べてみよう。「トミカ 999号」は機関車がダイキャスト製、デザインはTV版999号を再現している。並べて面白いのは、車両の"長さ"の表現だ。前面の大きさはそれほど変わらないのだが、車体の長さが大きく違う。またディテールの表現の仕方も異なる。どちらの表現も味があり、並べることでそれぞれの表現が楽しめる。

【トミカと並べてみた】
奥がノエルコーポレーション、手前がトミカ
並べることでそれぞれのデザインが楽しめる

 「フローティングモデル 銀河鉄道999 キャプテンハーロックエディション」はやはり台座から浮かせた姿の不思議な雰囲気が楽しい。磁力で浮く999号が、劇中の飛び上がる999号の姿を思い出させる。「本当に浮いてるよ!」という驚きはぜひ実物を見て欲しい。

 そしてキャプテンハーロックエディションとしてアルカディア号の側面のパネルが楽しい。「劇場版 銀河鉄道999」のハーロックの名台詞も蘇る。ファンならずとも手にして欲しい商品だ。