レビュー
SYSTEMA「SPEED STAR」レビュー
軽量さと高い剛性でプロっぽさ感じる競技専用電動ガン
2024年9月7日 00:00
- 【SPEED STAR】
- 8月発売
- 購入価格:605,000円(MOVE購入価格)
- 全長:実測625mm
- 銃身長(インナーバレル):150mm
- 重量:1494g(空マガジン、バッテリー含む)
- 弾丸:6mm BB(0.25g)
- 装弾数:30発/120発切り替え可能
- 指定バッテリー:11.1Vリポバッテリー(14.8V対応)
- 種別:アサルトライフル
「Professional Training Weapon(略称:PTW、通称:トレポン)」は、電子トリガー搭載によるキレのいい動作性、真っ直ぐに伸びてゆくような素直な弾道、実パーツを組み込める忠実かつ高い精度、ちょっとした衝突・落下では壊れない高剛性などから、熱烈な支持を受けている魅力的な電動ガンだ。そのため、憧れの存在となっている人も多いだろう。
本稿では、そんなトレポンの最新製品「SYSTEMA INFINITY」のスペシャルモデルとして数量限定で発売された「SPEED STAR」を、実機を用いた各種計測結果や使用感などをお届けする。
「SYSTEMA INFINITY」は、小型ブラシレスモーター、ダブルセクターギア、ARM型CPU搭載基板をギアボックス内に搭載している。撃ったときにグリップ内から回転に伴う振動を感じることはなく、発射音も「ポッ」という独特な音だ。価格が30万超えと高価だが、実際に試射してみるとそれだけの価値はあると感じさせられる。
「SPEED STAR」とはなにか?
「SPEED STAR」は、「スティールチャレンジ」向けの競技専用電動ガンだ。元になっているのは「SYSTEMA INFINITY」で、SYSTEMAとプロシューター兼YouTuberであるマック堺氏がコラボレーションして作り上げたモデルとなっている。
「SPEED STAR」と「SYSTEMA INFINITY」の違いは改めて後述するが、大きく異なるのは究極の軽量化と操作性を実現するため、内部ユニットを含めて専用品を使用している点。また、14.8V対応基板を採用するなど、カリッカリのレーシングチューンが施されている。
「SPEED STAR」と、そして本製品の開発の過程で生み出されてきた特別パーツは、トレーニングウェポンのカスタムガン、パーツ、関連商品が多数展示される「2024 TRAINING WEAPON FESTIVAL」で4月19~21日に展示され、その前後に予約も行なわれた。
価格は、ストレートトリガー、8.5インチカーボンアウターバレルを選択したコンプリートモデルで605,000円。もちろん一般的な電動ガンとは比較にならないほど高価だが、プロシューターの求める水準に達した性能のレーシングチューンモデルであることを考えれば、その性能と機能を求める人にとっては納得の価格設定と言えよう。
「スティールチャレンジ」向けの競技専用電動ガンのスペックを確認
それでは本製品の基本スペックについて解説していく。「SPEED STAR」は前述のとおり、「SYSTEMA INFINITY」を元にした「スティールチャレンジ」向けの競技専用電動ガン。究極の軽量化と操作性を目指したモデルであり、ほとんどすべてのパーツに軽量化が施されており、マガジン、バッテリーを含めて1,500gを切る。
全長は実測625mm、銃身長(インナーバレル)は150mm。アウターバレルが8.5インチ(215.9mm)なので、インナーバレルはかなり短めだ。ただ、これはトレポンの仕様だ。シリンダー容積、インナーバレル長は高精度を実現するための黄金比となっている。
本体のみの実測重量は1,263g、マガジン「SYSTEMA PTW対応マグプルタイプマガジン BLACK」の実測重量は164.9g、11.1Vリポバッテリーの実測重量は66.3g。合計重量は前述のとおり1,494gとなる。
「SPEED STAR」の付属品は、「SYSTEMA PTW対応マグプルタイプマガジン BLACK」、BBローダーM4系マガジン用、HOP調整ドライバー(PB六角ドライバー1.5mm)、マニュアルCD。トレポン用のマガジンには「SYSTEMA純正M4/M16 120連マガジン」も存在するが、軽さを重視して「SYSTEMA PTW対応マグプルタイプマガジン BLACK」が選ばれているわけだ。
「SYSTEMA PTW対応マグプルタイプマガジン BLACK」は30発/120発の切り替えが可能で、ダミーカートリッジ柄のステッカーが同梱されている。
「SPEED STAR」は「SYSTEMA INFINITY」とどこが違うのか?
「SPEED STAR」はまず材質からして通常のトレポンとは異なっている。ロアレシーバーとストックパイプは金属製だが、アウターバレル、ハンドガード、アッパーレシーバー、ストック、グリップは樹脂製。SYSTEMA公式Xの投稿によればアッパーレシーバーはナイロン製とのことだが、ぱっと見はまるで石のような質感だ。ハンドガードとストックについては全体的に白みを帯びているが、手や頬が触れている箇所は黒く変化した。使っている内に落ち着いた黒色に変わると思われる。
なお、本来であればアッパーレシーバーとロアレシーバーを開くテイクダウンをお見せしたいところだが、通常のトレポンのように膝に乗せて、ストックパイプを叩くといった手順では開けなかった。極限の精度、剛性を実現するために、ギリギリの寸法で調整、組み立てられているのかもしれない。
今回はトレポン専門ショップ「MOVE」の店長が「SPEED STAR」を分解したときの写真を掲載させていただく。
モーター、ギア、基板などが組み込まれた内部ユニットには、A7075(超々ジェラルミン)が使用されており、強度、硬度が高い。それでいて軽量さも兼ね備えているのだ。そして、ARM型CPU搭載基板は14.8V対応。ダブルセクターギア(DSG)の色も異なっているようだ。
軽量化は内部にも及んでおり、シリンダーはステンレスバージョンからアルミバージョンが採用されている。マガジン挿入口から見える赤いシリンダーがなんとも艶めかしい。「SYSTEMA INFINITY」のユーザーも欲しがる人が多いだろう。
削り出しストレートトリガーは同じくA7075(超々ジェラルミン)製で、前述の「2024 TRAINING WEAPON FESTIVAL」では赤、青、紫、金、シルバー、黒の6色が展示された。このストレートトリガーのフィーリングについてはのちほど言及する。
ハンドガードは左右に分割されており、PTW純正のリングバレルナットのみを使用して固定できるようになっている。「SPEED STAR」の試作機ではハンドガードなしバージョン、右利き専用バージョンも作られていたが、最終的には両利き対応のハンドガードとなったわけだ。
ストックはABS切削品で、前方のネジのみを緩めることで取り外し可能。工具が必要とはいえバッテリーの抜き差しは容易だ。また2.5cmぐらいであればストックを伸ばして固定もできるので、体格に合わせた調整ができる。さらに、ストックパイプとしては標準的な形状なので、ほかのストックも取り付け可能だ。とは言ってもせっかくの専用ストックなのだから、「SPEED STAR」純正ストックを使うのがいいだろう。
グリップには「New SPEED STARグリップ」を採用。樹脂製ながら剛性は高い。グリップ内にモーターがない「SYSTEMA INFINITY」を元にしているからこそ、細身で握りやすく、大胆な軽量化も実現されている。
カーボンバレルには、強度が必要な根元部分はジュラルミン、銃身部はピュアドライカーボンというハイブリッド構造を採用。重量物を中心部に持ってくることで、素早いサイティング、切り返しが可能となっている。長さは8.5インチ、10.5インチ、12.5インチ、14.5インチ、16インチを用意している。なお、軽量化にこだわった仕様のため、バレル先端はねじ切りされていない。
軽量化を追求した「SPEED STAR」では、競技に不要なものはとことん削られている。右側にはセレクターがなく、ダストカバーどころかエジェクションポートも開いていない。もちろん、フォワードアシストノブも省略されている。一般的なM4系のライフルと比べるとあっさりとしているが、これこそ「SPEED STAR」のコンセプトを体現したデザインだと思う。
マウントレールには13スロット用意されており、スコープなども装着可能だ。とはいえ「SPEED STAR」に大きなドットサイトを装着しては本末転倒だ。アッパーレシーバーはナイロン製ということだが、ドットサイト装着後に適度に締め上げる程度であれば視認できるようなキズは付かなかった。もちろん締め上げのトルクによるが、金属製のマウントレールよりも擦りキズなどは目立ちにくいのかもしれない。
「SPEED STAR」を構えるとプロシューターになった気分を味わえる
それでは「SPEED STAR」を実射した感想をお伝えしていく。とにかく印象的なのが構えたときの軽さ。1,500gを下回っているだけに、銃口を上げたり下げたり、左右に振ったときの動きがスムーズで、狙った箇所でピタリと止められる。……というのは大げさかもしれないが、「SPEED STAR」を構えると、プロシューターになった気分を味わえるのは確かだ。
トリガープルは実測0.36kg前後、トリガーストロークは実測2mm前後とギリギリまで攻めた仕様。扱いづらいのではないかとの心配もあったが、ストレートトリガーが剛性高く組み込まれ、適切な押圧力が与えられていることから、意図せず発射してしまうようなアクシデントはいっさいなかった。SYSETMAは推奨しないだろうが、サバゲーでも使いやすく、そしてとっさに撃ち勝てるストレートトリガーだと感じた。
初速、連射速度についても確認していく。「ファイネストBB 0.2g」弾使用時の初速は最大91.5m/s、平均90.4m/s、最小89.6m/sだった。また、「ファイネストBB 0.25g」弾使用時の初速は最大82.2m/s、平均90.4m/s、最小89.6m/sとなった。「ファイネストBB 0.2g」弾使用時のフルオート射撃の連射速度は最大14.9RPS、平均13.6RPS、最小88.6RPSだった。
今回の結果は、「SYSTEMA INFINITY」とほとんど変わらないものだった。少なくとも11.1Vリポバッテリーを使用した場合には、セミオートのキレ、フルオートの回転速度については「SYSTEMA INFINITY」と同等だ。機会があれば14.8Vリポバッテリーも試してみたいが、少なくともセミオートのキレについては11.1Vリポバッテリー使用時の性能でまったく問題ないと思う。
続いて発射音だが、セミオート射撃時の音量は95.8dBA、フルオート射撃時の音量は103.6dBAだった。サイレンサーなどを装着しなくても、射撃時の音量は低めだ。一番大きく聞こえるのはピストンの打撃音で、モーターの回転音、ギアの駆動音はまったく聞こえなかった。軽量化を追求した「SPEED STAR」だが、静粛性という点でも「SYSTEMA INFINITY」と遜色ないと思う。
実際に的を撃ってみると、「ファイネストBB 0.25g」弾使用時には、30mの距離で35×30cmの的なら必中するだけの精度を備えていた。フルオート時の集弾性も高く、何度も述べているが撃ち勝てるだけの性能を持っている。
「SPEED STAR」のような一点突破型のモデルが増えることを期待したい
今回、友人が購入した「SPEED STAR」を試用してみたが、一貫して感じたのが剛性の高さだ。軽量化を追求するにあたって剛性がある程度犠牲になるのは避けられないはずだが、実際に射撃していてキシミやたわみは感じなかった。筆者自身はスティールチャレンジなどの経験はないものの、競技に参加する方にとっては頼れる道具となることは想像に難くない。
一方で、多くのパーツが樹脂製ということで耐久性については未知数だ。友人は「SPEED STAR」をサバゲー用に購入したが、屋外フィールドである程度ラフに扱ったときにどのぐらい耐えられるのかはわからない。
トレポン……特に「SYSTEMA INFINITY」の内部ユニット、インナーバレルアッセンブリー、シリンダーアッセンブリーの性能、耐久性、機能性は非常に高い。それらを心臓部にトレポン取扱店がいろんな外装を組み合わせて多彩な完成品を発売している。そんな多様な製品が出ている中で「SPEED STAR」のように特定の用途に特化した製品も非常に魅力的だ。SYSTEMA自身からも、そしてトレポン取り扱い店からも今後も魅力的な一点突破型モデルが登場することを楽しみに待ちたい。