レビュー

KRYTAC「KRISS VECTOR V2」レビュー

新型ロータリーホップアップで集弾性能向上

【KRISS VECTOR GEN V2】

12月末発売

希望小売価格:85,800円

開発元:KRYTAC

全長:682~765mm

銃身(インナーバレル)長:155mm

銃身(インナーバレル)径:6.05mm

重量:2.6kg(マガジン含む)

弾丸:6mm BB

装弾数:102発

指定バッテリー:7.4V/11.1Vリポバッテリー(後方配線、Tコネクター)

種別:サブマシンガン

「KRISS VECTOR GEN V2」85,800円

 独特なスタイルに加え、外観からは想像つかない使い勝手のよさから熱烈なファンが多いのが「KRISS VECTOR(クリスベクター)」。電動ガン版と、ガスブローバック版の2種類がリリースされており、「KRISS VECTOR」を持った人が集まるイベントの「ベクサバ」もあり、12月1日に開催されたばかりだ。

 そのように熱い支持を集めている「KRISS VECTOR」に、電動ガンの第2世代「KRISS VECTOR GEN V2」が12月末に発売される。最新の「ネオジムモーター」によりレスポンスがよくなり、アップグレードされた「ロータリーホップアップ」により集弾性能が向上したと謳われた期待のモデルだ。今回発売前の実機をLayLaxより借用したので、スペック、使い勝手、そしてレスポンスや集弾性能についてじっくりと検証していこう。

反動を下方向に逃がす「KRISS SUPER V」により独特なフォルムを実現

 「KRISS VECTOR」はKRISS USAによって開発されたサブマシンガンだ。実銃においては、V字型機構により反動を下方向に逃がす独自システム「KRISS SUPER V」を採用。ブローバックエネルギーを下方向に転換し、射撃時に銃身が自然に上昇するのを防ぐとされている。また銃身とグリップが一直線上に並ぶレイアウトも、反動を制御するための構造的な優位性だ。

反動を下方向に逃がす独自システム「KRISS SUPER V」を採用

 実銃の「KRISS VECTOR」は現行品として現在も販売されており、2023年には16インチバレル、丸型バレルシュラウド、ヒンジ付きアッパーレシーバー、サイドフォールディングストックなどを備えた「KRISS VECTOR Origin」が発売された。また、5.5インチ、6.5インチのバレル構成を採用したストックレスの「VECTOR Gen 2 SDP」も販売中だ。SDP(Special Duty Pistol、特殊任務用ピストル)版も魅力的なフォルムなので、エアガンとして製品化されることを強く期待したい。

KRISS USAの公式サイト。「VECTOR Gen 2 SDP」はインドア、CQBで取り回しがよさそうだ

ストックの異なる2モデルをそれぞれ3色展開

 「KRISS VECTOR GEN V2」は、前述した実銃の開発元であるKRISS USAのエアソフトブランド「KRYTAC」が開発した電動ガン。日本国内ではLayLaxが販売を行なう。今回レビューしていく伸縮式ストックを採用した「KRISS VECTOR GEN2 V2」(85,800円)に合わせて、折り畳み式ストックを装備した「KRISS VECTOR V2」(82,500円)も同時展開。それぞれにBK、FDE、2Tone BK/FDEの3つのカラーバリエーションが用意されている。

 「KRISS VECTOR GEN2 V2」の全長はストック短縮時に682mm、伸長時に765mm。銃身長は155mm、銃身径は6.05mm。重量はマガジン込みで2.6kgだ。ボディーは基本的に樹脂製だが、リアルガンメーカーならではの高い剛性が確保されている。また、金型についても実銃の製造に使用されるものを使っており、高い剛性と合わせてリアルサイズのボディが臨場感をさらに高めてくれる。

左側面
右側面
前面と背面
上面と下面

 パッケージには本体、マガジン、フロントサイト、リアサイト、20mmレール(7スロット)、クリーニングロッド、変換アダプター(T型→ミニタミヤ)が同梱されている。マガジンは、スプリング給弾式の「KRISS VECTOR 95連マガジン」(4,730円)だ。

 なお、別売で「KRISS VECTOR 純正ショートマガジン 50連」(3,520円)、東京マルイ製「MP5用400連射ドラムマガジン」を利用可能にする「KRISS VECTOR 400連射ドラムマガジンアダプター」(2,420円)がリリースされている。

 指定バッテリーはT型またはミニタミヤ型の7.4Vリポバッテリー。「KRISS VECTOR GEN2 V2」はストックパイプ内にバッテリーを内蔵可能で、「GIGA TEC EVOリポバッテリー 7.4V/2050mAh ミニバッテリーS ワールドワイドコネクター(T型コネクター)」が推奨されている。

同梱品一覧
マガジン前面・背面・左側面・右側面
マガジン上面・下面

 実測重量は銃本体が2,522g、マガジンが176g。1500mAhのバッテリーと合計すると、2,778gとなる。さらに光学機器を合わせると3kgは超えるだろうが、銃身長が155mmということもありサバゲーでの取り回しは容易だ。

本体の実測重量は2,522g
マガジンの実測重量は176g
本体、マガジン、1500mAhバッテリーの合計重量は実測2,778g

伸縮式ストック版はバッテリーを出し入れしやすい

 折り畳み式ストックを採用した従来型「KRISS VECTOR」のウィークポイントはバッテリー収納スペースが小さいこと。その点、伸縮式ストックを採用した「KRISS VECTOR GEN2 V2」は、2050mAhの大容量バッテリーをストック内に無理なく収められる。ストックの長さを6段階で調節し、適切なポジションを取れるという点もアドバンテージだ。

 一方、折り畳み式ストックを採用した同時展開の「KRISS VECTOR V2」は、短縮時に448.9mmとコンパクト化できる。狭い場所での取り回しや、公共交通機関で運搬するときなどに、コンパクトボディーは重宝するはずだ。

ストックは6段階で調整できる
変換アダプターにより、T型とミニタミヤのふたつの端子に対応できる
バッテリーはストックパイプ、または、その下側にも収納できる
グリップ内部はちょっとした収納スペースとしても利用可能

 ホップアップの調整方法は従来モデルと同様。チャージングハンドルを引くとダストカバーが開くので、奥に回すと強ホップ、手前に回すと弱ホップとなる。ダイヤルには数字が刻まれているので、数字の位置を覚えておけば、使用するたびに素早く、かつBB弾の重さに合わせて調整できるわけだ。

 なお、「KRYTAC Neoロータリーホップアップ」という新たなホップアップ調整機構を採用したチャンバーが搭載されており、集弾性能が向上しているとのこと。どのぐらいの精度を実現したかについては、のちほど触れていく。

チャージングハンドルは左側に配置
チャージングハンドルを引くとダストカバーが開く。奥に回すと強ホップ、手前に回すと弱ホップ
マガジンハウジング内部

 このほかの使い勝手は従来モデルと共通。安全セレクタースイッチとファイアセレクトは別々に用意されているので、誤操作しにくい。上面には36スロット、ハンドガード下面には7スロットのピカティニーレールが装備され、左右どちらかにもうひとつの7スロットレールを装着できる。コンパクトなボディーながら拡張性は高いと言える。

 なお、7スロットレール「KRISS Vector Picatinny Side Rail Kit」(4,840円)は別売されているが、記事執筆時点でLayLaxオフィシャルサイトでは在庫切れとなっている。

ハイダーの形状は従来モデルから変更されている
安全セレクタースイッチとファイアセレクトはべつべつに用意
ハンドガード下に7スロットレールを用意。また取り外し可能な7スロットレールがひとつ同梱されている
上面には36スロットのピカティニーレールを装備
レールは375mmと長いので適切な位置に光学機器を取り付けられる
フロントサイトは上下、リアサイトは左右の調節機構を備えている。穴の大きさは2種類から選択可能

 「KRISS VECTOR」はマガジンを抜きにくいとよく指摘されているが、手が大きければ、親指でマガジンキャッチボタンを押しながら、手のひらでマガジンを抜き取れる。グリップを握ったままで右手人差し指でマガジンリリースを可能にする「クリスベクターカスタムマガジンキャッチNEO」(8,580円)という純正パーツが用意されているが、まずは左手でスムーズに抜けるかどうか確認してからの購入を検討することをオススメする。

手が大きければ左手でマガジンを抜き取れる

30m先のターゲットで、0.25g弾なら手のひらを狙えるだけの集弾性能を実現

 「KRISS VECTOR GEN2 V2」は前述のとおり内部をアップデートしたモデルだ。滑らかな「ソリッドスチールブッシュ」、ポート付きのフルメタルラックピストンを採用している。また、アクティブブレーキ、低バッテリー検出、ギアストリップ保護機能などを装備したFCU搭載の「マイクロスイッチEトリガーシステム」を実装。さらに最新のネオジムモーターが内蔵されている。最後に、どのぐらいの実性能を備えているのかチェックしていこう。

 まずトリガープルだが平均1.49kgと軽めだ。セミオートで連射していても、すぐに指が疲れることはない。ただし今回試用したかぎりでは、トリガーの遊びが少し大きく感じた。セミオートで素早く連射したいのなら、トリガーを全部戻さずに、連続して引いたほうがよさそうだ。とは言え、前モデルよりレスポンスがよくなっているので、オーバーキルにはくれぐれも注意してほしい。

トリガープルは平均1.49kg
トリガーの遊びは少し大きく感じた
トリガープルのバラツキは少ない

 射撃音はセミオートで平均94.27dBA、フルオートで最大103.3dBA。バネ鳴りやピストンの打撃音はそれほど気にならず、長めのサイレンサーを取り付ければ射撃音をかなり低減できる。隠密的な立ち回りをしたいのであれば、サイレンサーはかなり効果的だ。

セミオートの射撃音は平均94.27dBA
フルオート射撃音は最大103.3dBA
射撃音を10回計測したところ、最小が87.4dBA、最大が99.3dBAとなった

 初速は、銃身長155mmの電動ガンとしては高め。室温22.3℃、湿度45.2%の部屋で計測したところ、セミオート時に0.2g弾では最大90.6m/s、平均89.7m/s、最小88.9m/s。0.25g弾では最大79.7m/s、平均79.3m/s、最小78.7m/s、フルオート時に0.2g弾では最大91.1m/s、平均90.6m/s、最小88.2m/s、0.25g弾では最大81.4m/s、平均80.6m/s、最小78.5m/sとなった。

 以上からセミオートよりもフルオートのほうが初速は高いことになる。インドアフィールドではレギュレーションの初速を超える可能性がある。その場合にはスプリング交換による調整が必要かもしれない。

【セミオート時の初速】
0.2g弾使用時
0.25g弾使用時
【フルオート時の初速】
0.2g弾使用時
0.25g弾使用時

 「KRISS VECTOR GEN2 V2」を従来モデルと比較した時に最も進化したと感じるのが集弾性能。30m先のターゲットで、0.2g弾ではヘッドショット、0.25g弾では手のひらぐらいの大きさを狙えるだけの精度を備えている。0.25g弾のフルオートであればこぶし大も十分狙えそうだ。

 銃身長155mmの「KRISS VECTOR GEN2 V2」の着弾がこれだけまとまるのは予想していなかった。初速が少し高めということもあり、屋外フィールドにぜひ投入したい電動ガンに仕上がっているといえよう。

【「KRISS VECTOR GEN2 V2」実射】

箱出しで屋外のサバゲーフィールドで戦えるだけの性能を実現

 「KRISS VECTOR GEN2 V2」は、内部機構のアップデートによりキレが向上しているほか、集弾性能も大幅に向上している。ここまで性能がアップしているのであれば、同時に発売されたほかの電動ガンシリーズも同程度のパフォーマンス向上が期待できる。

 KRYTAC製電動ガンは外観がよく、メカボックスも頑丈だが、「カスタム前提」と指摘されることが多かった。実際筆者も、複数のエアガンショップでそのような前置きをしつつ、勧められたことがある。

 しかし、今回の「KRISS VECTOR GEN2 V2」は、箱出しで屋外のサバゲーフィールドで戦えるだけの性能を備えている。価格は一般的な電動ガンと比べて高めではあるが、唯一無二のデザインに惹かれているのであれば、買って後悔のない1丁であることは間違いない。