特別企画
川口名人と一緒に、300組のガンプラファンがリモートでガンプラ制作を楽しんだ、「みんなでガンプラ オンラインガンプラ会」レポート
2020年6月26日 00:00
- 6月20日実施
BANDAI SPIRITSは6月20日、同社ホビー事業部の“川口名人”こと川口克己氏と一緒にリモートでガンプラを作るスペシャルイベント「みんなでガンプラ オンラインガンプラ会」を開催した。
当日は一般より募集した希望者から選ばれた約300組のガンプラファンが「Zoom」を介してイベントに参加。川口氏と「吉本プラモデル部」に所属する芸人モデラーの佐藤哲夫さん(パンクブーブー)、横山きよしさん(ものいい)の3名とともに、オンラインでのガンプラ作りを楽しんだ。
イベントなどでたくさんの人がガンプラを組むというのはあるが、300名という規模はない。今回は画面を通し川口名人が目の前にいるという状況でガンプラが組めるのだ。どういった雰囲気になるか、筆者も初体験であり、期待と不安があった。しかし実際にイベントに参加することでとても楽しい体験ができた。そのレポートをお届けしていこう。
300人が川口名人を前にガンプラを組み立てるオンラインイベント
プラモデル作りは、昨今の“ステイホーム”期間をインドアで楽しむ娯楽として優れていて、それと同時にオンライン上でのコミュニケーションを取るための環境が一般的となったことにより、オンラインで一緒にガンプラを作る機会を設けたら面白いのではないかということで今回の企画を立ち上げたという川口氏。オンラインでありながら、オフラインのような感覚でガンプラ作りを楽しむことを、この企画で目指したそうだ。
まず、「川口名人」について少し触れていこう。川口名人は模型サークル「ストリームベース」に所属していた人物で、「プラモ狂四郎」にも出演しており、その頃から有名人だった。そこからバンダイに入社、現在はガンプラのオピニオンリーダーとして様々なイベントなどでも活躍している。
"名人"の呼び名の通り、ガンプラの組み立て、改造に対して初心者からモデラーにまでわかりやすく、親しみやすい姿勢で接し、ユーザーとメーカーの架け橋として現在も活躍している人物だ。気さくさと高い模型技術でガンプラファンにとって憧れの人物であり、名人を前にガンプラを作れるというのは、やはり特別なものがある。
参加者は当日、未組立のガンプラを一つ用意し、全員の「みんなでガンプラ、レディ、ゴー!」コールで制作をスタート。今回は完成させるのはなく、あくまで“みんなで一緒に作る”ことが目的であり、何を作るかも作り方も自由だ。親子やきょうだいで仲良く一緒に作る家族から、配信環境を揃えた作業場で本格的に作る人まで、実にさまざまな顔ぶれが参加していたが、共通項は全員が「ガンプラが好き」ということ。これだけの人数が一同に集まって一緒にガンプラを作るというのは、イベントでもなかなかない機会で、筆者も参加諸氏の制作環境や作っている様子には大いに興味を惹かれた。
作っている最中は、川口名人らと参加者のトークも実施。「ガンプラあるある」のテーマでは、川口氏は「作っている最中にパーツを落っことすと、妖怪のしわざかと思うぐらい見つからない(笑)。あきらめて別のキットからパーツを持ってこようと探していると、明後日の方向から出てくる」という“あるある”を披露すると、参加者からは次々と「いいね」の反応が。
筆者も当日作っている最中にパーツを落として、まったく同じ気分を味わった。また参加者からも「ポリキャップを挟むときに失敗して潰れてしまう」、「積んでいるのを忘れて2個目を買ってしまう」、「関節をくみ終わってから逆だということに気づく」「ふと組みたくなって買いに行くと、それだけ売ってない」といった、思わず「あるわー!」と賛同したくなる“あるある”が挙がっていた。
「ガンプラテクニック披露」のトークでは、川口名人や佐藤さんへの質問を募った。「ジオラマを作るときに、イメージするコツは?」という質問に佐藤さんは、「“これをやりたいから、このジオラマを作る”と、先にやりたいことが浮かぶ」と返答する。作る前に必ずテーマを決めておくことで、作っているときにぶれていくことがなくなり、多くの作品の中でも印象に残りやすくなるとのこと。
これは模型制作に限らず、漫才のネタを作るときも同じだそうだ。川口氏も同じ意見だそうで、「作りたいシーンやテーマをしっかり決めておくことで、作っている最中に出てきたいろいろなアイデアを盛り込んでも、散漫になることがない」と続けている。
「透明パーツを自作するときの、ヒートプレスが上手くいかない」という、技術的な質問も挙がった。これに対し川口氏は、「あまり厚い板を使わないこと。0.2mmか0.3mmの塩ビ版を使うことをオススメします」と回答する。一般的なプラ板は暖めると縮んでしまうことがあるので、塩ビ版がいいとのこと。なお塩ビにはプラ用の接着剤は使えず、瞬間接着剤などを使うと曇ってしまうので、エポキシ系接着剤を使うことも勧めつつ、場合によっては両面テープでもいいことを付け加えた。
「ガンプラを作る上で気をつけていること」という質問に対して佐藤さんは、「ガンプラを買うときは、必ず嫁さんの顔色をうかがう」と返答する。佐藤さんは「トリプル・ドム」を作ろうと思ってドムを3個買ったことを忘れて、さらに3個ドムを買ってしまったことがあったそうで、「同じものを6個買うということは、世の中のほとんどの奥様方には考えられない」と笑いを取ると、参加者からもたくさんの「いいね」の反応が挙がった。
トークの最中も参加者は作品を作り続けていて、約1時間半が経過したラストには、全員がどこまで完成したかをカメラに向かって披露した。中には完成させてしまったという人もいて驚かされたが、各々の作るのペースも興味深いところであった。Twitterで「オンラインガンプラ会」で検索すると、参加した方々が何をどんな風に作ったのかのつぶやきも見られるので、チェックしてみるといいだろう。
会を終えた川口氏は、「普段はSNSを使ってファンとのコミュニケーションは取っているものの、リアルタイムで話したり作っている姿を見られたりしたことは凄く刺激的でした」と語り、同時に「プラモデルを作ることは、みんなでも楽しめるものだということを実感した」と続ける。昨年の静岡ホビーショーの学生招待日に、大勢の学生が参加したイベントがあったそうだが、それでも人数の限界はあり、今回の同時に約300組という数は同時に作る模型イベントでは史上最大といえるのではないかと推測し、これまで感じたことのない新しい手応えを感じられたと語る。
参加者が多かったことで「全員にスポットを当てることができなかったことが残念で、双方向性という部分については特に大事にしたいことなので、今後の課題としていきたい」とも述べている。
今回の成功といえる結果となったことにより、第2回以降の開催も前向きに検討中だと川口氏。参加人数を増やすだけでなく、逆に減らして双方向性を強めるといった案も挙げ、「参加される方全員が満足できるような企画を考えていきたい」と語った。
筆者も普段は音楽や映像をバックグラウンドに1人で作ることが多いが、今回のようにリアルタイムの会話を聞いたり、実際に話したりしながらすることは初めてで、さらに参加者の皆さんの顔や手元を見て一緒に作るのは楽しく、大変貴重な経験であった。次回の公式イベントの開催にも期待がかかるが、それだけでなく、仲間内でこうしたオンラインガンプラ会をやってみるのも面白いかもと思った。
(C)創通・サンライズ