特別企画

【年末特別企画】HOBBY Watchライター陣が選ぶ2020年オススメ「美少女フィギュア」

 HOBBY Wachではグッドスマイルカンパニーの「東方Project 霊夢」と「Fate/Grand Order 水着ジャンヌ&水着ジャンヌオルタ」の2回ほどしか記事を書いていませんが、いずれも美少女フィギュアの歴史や現状など周辺情報込みの蘊蓄多めで書いています。

 もともとはフィギュアマニアックス(アスキーメディアワークス刊)というフィギュア専門誌の企画&編集を2000年ころから12年以上やっていて、最近は月刊ホビージャパンでフィギュアJAPANマニアックスというフィギュアの歴史をインタビューで振り返る連載記事を書いています。

 今回、2020年発売の美少女フィギュアというテーマですが、フィギュアの場合、受注して発売が1年以上先というのも当たり前という状態なので、今年発売になった物に絞るのではなく今年発売or受注開始で話題になった物という絞り方で紹介したいと思います。

2020年オススメ「美少女フィギュア」その1:「霞 C2ver. Refined Edition」

発売日:2020年7月
価格:15,556円(税別)
全高:約210mm
スケール:1/72
メーカー:マックスファクトリー
販売:グッドスマイルカンパニー
原型:片山博喜
彩色:あきもとはじめ

 1つめはマックスファクトリーから今年7月に発売された「霞 C2ver. Refined Edition」です。2004年に発売された「DEAD ORALIVE 霞 C2ver.」が15年の時を経て最新技術で生まれ変わったというフィギュアです。

 オリジナルのフィギュアは、PVC製完成品フィギュアブームのきっかけとなったもので、これによってフィギュアの注目度が高まりファンが爆発的に増えたのです。同時に流通や予約といった販売方法に大きな変革をもたらし、通販中心で予約が必要というフォーマットが一般的になったのです。

 Refined Editionとして2020年の現在再登場となったこのフィギュアには、この15年のフィギュアの進化が集約されています。2005年に発売された際は、“乳神様”とも称された破壊力あるボディライン&あどけなさの残るカワイイ表情などで、それまでフィギュアに興味がなかった人たちまで惹き付け争奪戦になる位衝撃的だったのです。

 ただ、現在の目で当時のフィギュアを見ると、原型の持つ魅力を完成品として完全に再現しきれているかというとそう言い切れない部分があるわけです。もともとこの原型は当日版権フィギュアとしてワンフェスなどでガレージキットとして販売されていたもの。ガレージキットは原型の造形としての魅力をダイレクトに伝えられるものなのですが、当時のPVC製完成品では再現出来なかったことも多いのです。

 しかし、PVC完成品フィギュアの造形と塗装の技術はこの15年で途方もなく進化しています。当時できなかったことを最新の技術を使って再現しようというのがこの商品です。昔の物と並べて比較して、造形の再現や塗装の細かさなどどこがどう変わったのかその違いを楽しむというのがオススメです。

【霞 C2ver. Refined Edition】
2018年2月ワンフェスでの展示より。この霞はfigmaやねんどろいど、プラモデルとしても発売されています。面白いのはゲームの霞ではなく、フィギュアの霞が別シリーズで登場したということ。フィギュアのフィギュア化なのです
Amazonで購入

2020年オススメ「美少女フィギュア」その2:「アヴェンジャー/ジャンヌ・ダルク〔オルタ〕」

発売日:2021年6月予定
価格:31,500円(税別)
全高:約460mm(台座・旗含む)
スケール:1/7
メーカー:リコルヌ
原型:石長櫻子(植物少女園)
彩色:星名詠美

 この数年、最もフィギュア化が多い作品となっているのが『Fate/Grand Order』。作品人気の長さ(TVアニメだとほとんどの作品が放送後すぐに忘れられてしまうので製作&販売に1年以上かかるフィギュアは向かない)、登場する人気キャラクターの多さ&衣装のバリエーション(メーカー同士の直接的なバッティングを避けられる)など、フィギュアにも非常に向いたものになっています。

 大作からデフォルメ、プライズフィギュアや低価格帯商品などいろいろ出てるのですが、2020年に発表されたものの中でもひときわ目をひいたのがこのフィギュアです。

 まず注目はそのボリュームと造形。『FGO』関係はウマだったりバイクだったりで大ボリュームになることは多いのですが、このジャンヌオルタ、旗の大きさも設定通りの比率で作って(こういったものは若干スケールダウンして作られることも多いのです)大きく翻し、さらに構えた剣は旗とは別アングルに伸びて、全高だけではなく幅&奥行きもとんでもないことになっているのです。

 台座にはワイバーンの頭骨がごろんと転がっていてこれもまた大ボリューム。飾るのはかなりの覚悟とスペースが必要です。そして表情も非常にジャンヌ〔オルタ〕らしいとはいえ、フィギュアに多いニッコリ笑顔とはほど遠い冷笑(しかも左右非対称)。最近のフィギュアは原型師の個性を消してキャラクターに似せることを重視する傾向が強いのですが、このフィギュアに関しては原型師の石長櫻子氏の個性を活かした物になっています。

 さらにこのフィギュアを発売したリコルヌは、代表がフィギュアを作ることに関わりたいからと、安定したIT会社から脱サラして立ち上げた新メーカー。だからこその情熱と野心にあふれたフィギュア&メーカーとして要注目なのです。

【アヴェンジャー/ジャンヌ・ダルク〔オルタ〕】
2019年11月のメガホビEXPOでの展示より。彩色された状態では初展示となりましたが、そのボリュームと造形、彩色は会場でも一段と目をひく存在でした

2020年オススメ「美少女フィギュア」その3:「Figure-riseLABO 式波・アスカ・ラングレー」

発売日:2021年3月予定
価格:7,000円(税別)
全高:約250mm
スケール:ノンスケール
メーカー:BANDAI SPIRITS
原型協力:アルター

最近の美少女フィギュアでは、PVC完成品フィギュアだけではなくプラモデルも要注目。先鞭をつけたコトブキヤのメカ+美少女の「フレームアームズ・ガール」や「メガミデバイス」など可動美少女プラモデルの人気が高くなって、他社からも同系統の商品がいろいろ登場するようになっています。

 ですが、プラモデルの最大手BANDAI SPIRITSは同系統の物だけではなく、美少女フィギュアそのものに挑戦しているとも言えるFigure-riseLABOを展開中。固定ポーズの美少女フィギュアをプラモデルで作るというこのシリーズ、第4弾では『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』式波・アスカ・ラングレーが登場します。

 もともとFigure-riseBUSTというシリーズで塗装無しの多色成形で瞳を再現するという技術で驚かせてくれたのですが、Figure-riseLABOは「ガンダムビルドファイターズ」ホシノフミナで肌、初音ミクでV4でグラデーション、「ラブライブ!」南 ことりで衣装とそれぞれテーマを定め、LABOの名の通りある種実験的なシリーズになっています。

 第4弾のアスカのテーマは「肌と密着した透明スーツ」。肌色パーツに透明パーツをインサート成型するという技術でアスカのテストスーツ姿をプラモで再現しています。ただ、毎回のテーマとその結果ももちろんスゴイのですが、それ以前の基本的なこととして、プラモデルで美少女フィギュアを作っているということが、とんでもないことなのです。

 業界トップクラスのフィギュアメーカーのアルターが原型に協力して、普通ならシールやデカールを使うしかない複雑な瞳も最初から出来てて(しかも多色成型だからこその透明感も)、だれもが簡単に組み立てられる。しかも価格は通常フィギュアの半額くらい。今後美少女プラモデルがどうなっていくのかわかりませんが、これからの先の美少女フィギュアというジャンルに大きな影響を与えるのは間違いありません。

【Figure-riseLABO 式波・アスカ・ラングレー】
2020年12月のエヴァンゲリオンワンフェスでの展示より。テストショットのランナーも一緒に展示されていましたが、その構造などとても興味深いものになっていました

2020年オススメホビー記事!

 おすすめする記事は“Fateスケールフィギュア最新作水着ジャンヌ&ジャンヌ〔オルタ〕の魅力をグッスマ企画担当に聞く!並べて飾りたい。魅惑のコントラスト”です。

今年HOBBY WATCHで書いた記事は2本ですが、いずれも写真を撮り下ろしつつ関係者に話を聞いて、さらにそのフィギュアや元になった作品がフィギュアの歴史の中でどのような意味があるかといったネタを入れつつまとめています。

 特にジャンヌ&ジャンヌ〔オルタ〕の記事の方では「Fate」シリーズがフィギュアに与えた影響を押さえつつ、このフィギュアの企画担当者のチャン・シュウ氏にかなりいろいろお話しを伺って、「Fate/Grand Order」フィギュアを作ることの魅力やこの2体のフィギュアで特に意識したことなどを記事にしています。写真もポイントになるところを撮り下ろし。あまり他では読めないようなものになっているかと思います。

 価格やら中国工場、市場の変化など、現在フィギュアはいろいろ難しい問題が山積み。でも、あえて高価で大ボリュームフィギュアを出したり、逆に低価格フィギュアシリーズを立ち上げたり、進化し続けるデジタル技術を取り込んだり、さまざまなトライが行なわれていて、なかなか興味深いことになっています。この数年はまだまだ変革が続きそうで楽しみです。