特別企画

【ちょい組み】「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 単騎仕様 Ver.」

最小限の塗装でもここまでカッコイイ! 「FSS」の世界を満喫できる

「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 単騎仕様 Ver.」

開発・発売元:ボークス

発売:2018年4月

価格:9,790円(税込)

ジャンル:プラモデル

サイズ:全高約280mm

パーツ数:507

 今回、“ちょい組み”として、ボークスのプラモデル「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 単騎仕様 Ver.」を組み立てていきたい。このプラモデルは筆者にとって「憧れのプラモデル」だった。本商品の発売は2018年、筆者は先日の再販でこのキットを入手した。このようにちょい組みでは作者の憧れのキットだったり、気になった商品など、最新のものから再販商品、作者自身の宝物など、様々な商品を取り上げていきたい。

 今回取り上げる商品のモチーフであるL.E.D.ミラージュ(レッドミラージュ)は、永野護氏のコミックス「ファイブスター物語」に出てくる“最強のモーターヘッド(MH)”である。L.E.D.ミラージュはMHを代表する存在であり、設定資料集では内部機構などまで細かい設定が描かれた。「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 単騎仕様 Ver.」は発売された2018年当時のボークスの最新技術でL.E.D.ミラージュを再現した、現時点で最高のL.E.D.ミラージュのプラモデルといえる商品なのだ。

「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 単騎仕様 Ver.」の完成見本。美しく、カッコよく、そして難易度が高そうで、これまで挑戦できなかった

 しかし、組み立てる難易度が非常に高いというイメージだった。ネットではモデラーたちの優れた作例が紹介されており、これらを見ていた筆者にとって、「これはすごいけど、とても自分では作れないなあ」と思っていた。しかし、先日筆者は同シリーズの「IMS 1/144 scale A・トール BS」に挑戦してみた。確かに難しいところがあったが、ほとんど塗装しなくてもカッコよく組み立てられた。なにより組み立てることで細部まで永野護氏のMHのデザインを隅々まで味わうことができたのがとても楽しかった。

 「失敗してもかまわない、挑戦しよう」と思ったのだ。組み立てる前は不安があったが、予想よりしっかり、カッコよく組み立てられたので、“ちょい組み”の記事として紹介していきたい。模型技術があればもっともっとカッコよく、美しく仕上げることができると思うが部分塗装とスミ入れでも、キット本来の魅力でそれなりにカッコ良くできるのである。満足感をもたらしてくれるプラモデルとして、多くの人にオススメしたい。

「IMS 1/144 scale A・トール BS」を組み立てられたことは「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 単騎仕様 Ver.」への挑戦の大きな後押しとなった
部分塗装とスミ入れだけでもここまで組み上げることができる

“史上最強、星団最悪の白い悪魔”と呼ばれるL.E.D.ミラージュの魅力

 そもそもL.E.D.ミラージュとはどういう存在なのか、筆者にとってなぜ魅力があるか、ここをまず語っていこう。L.E.D.ミラージュは、物語の主人公・アマテラスが所有する騎士団ミラージュ騎士団が使用するMHである。アマテラスが治めるA.K.D.(アマテラス・キングダム・ディメンス)には ゴーズ騎士団という正式な騎士団がいるが、ミラージュはアマテラスの私設騎士団であり、表立っての活動はあまり行なわないが、その実力は星団最強とも言われている。

 実は「ファイブスター物語」本編ではL.E.D.ミラージュの大きな活躍は、それほど描かれていない。プロローグとして物語の時間軸としては現在描かれている地点よりずっと後の時代に黒騎士・バッシュ・ザ・ブラックナイトとの一騎打ちが描かれたのと、こちらも初期のエピソードの「コーラス-ハグーダ戦争」に先行試験型が投入された姿、そしてアマテラスの“お披露目”で立っている姿が全星団に公開されたというくらいである。

 しかし、バックストーリーである“年表”においてL.E.D.ミラージュは恐るべき存在として語られている。星団史3159年、アマテラスによる「アドラー星侵攻」の際、「インフェルノナパーム」という炎を吹き出す武器を集団運用し、星団史に残る圧倒的で残虐な戦いを展開、L.E.D.ミラージュわずか15機で星を制圧してしまうという。この戦いの後、L.E.D.ミラージュは“史上最強、星団最悪の白い悪魔”と呼ばれることとなる。

【フレームランチャーを装備した「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3」】
今回扱う「単騎仕様 Ver.」の前に、2014年に発売された「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3」はインフェルノナパームを装備した姿を立体化している。すさまじいボリュームだ
フレームランチャー部分は80cmにもなるという

 L.E.D.ミラージュはこれまでのMHで胸部に搭載されていたエンジンを2基脚部に搭載、エンジン自体も従来のエンジン以上の出力で、単機の性能でも破格と言える能力を持っている。そしてL.E.D.ミラージュの真価は集団運用にある。騎士をサポートするファティマの演算能力を共有する「RAID-GIG(ライド・ギグ)」システムにより各機が密接な連携を取ることが可能。

 通常のMHと決定的に違うのは、L.E.D.ミラージュの“本能”は破壊と殺戮であり、騎士やファティマはその制御装置に過ぎない。インフェルノナパームはMHどころか、霊的な存在にも効果があり、アマテラスがL.E.D.ミラージュを生み出したのはそういった存在と戦うためではないかと言われている。後の歴史家にMHとは次元が異なる存在として、「モーターメシア」、「モーターカイザー」とまで呼ばれるというのだ。

 現時点の「ファイブスター物語」では、L.E.D.ミラージュの“本当の姿”はまだ描かれていないが、非常にワクワクさせられる設定である。こういった設定を聞くと、筆者ならずともL.E.D.ミラージュが魅力的な存在と感じるのではないだろうか? そのL.E.D.ミラージュを再現したのが、ボークスの「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 」なのだ。

 「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 」はまず、その真価を発揮する姿、インフェルノナパーム搭載時の姿で2014年に商品化された。巨大な背部タンクと大きなフレームランチャーは甲冑をまとった騎士がモチーフの他のMHと大きく雰囲気が異なり、圧倒的な力、そして恐ろしさを感じさせる。インフェルノナパームはその複雑なデザインから立体化不可と言われたが、商品ではその細部を再現している。

設定資料で描かれたフレーム部分だけの姿に組み上げることも可能だ

 また、L.E.D.ミラージュは“白く輝く半透明装甲”をまとっているという設定だが、透明度のある素材でこの雰囲気を再現、さらに強力な力を秘めた両足の2基のエンジンをクリアパーツと炎を思わせるデカールで再現した。

 L.E.D.ミラージュはMHを代表する存在であり、様々なイラストや資料で描かれているため、商品化も多いが、「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 」はその決定版と言える存在となった。設定資料集で書きおこされたMHの内部フレームもキットで再現しており、設定画と同じように内部フレームだけの組み立ても可能なのだ。この内部骨格に半透明のアーマーをかぶせていくという、設定通りの組み立てが楽しめるのである。

 ……しかし正直、“でかすぎる”のである。インフェルノナパームを搭載した「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 」はインフェルノナパームの長さが80cm、ユニットを背負った本体もすさまじいボリュームで、置くのにもかなりスペースが必要となる。

 そういった声に応え、2018年に登場したのが今回取り上げる「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 単騎仕様 Ver.」だ。インフェルノナパームを取り外し、武器として剣を付属。L.E.D.ミラージュ本体の魅力をしっかり味わえるプラモデルとなっている。作例のように美しく仕上げられれば最高だが、塗装は最小限でもしっかり魅力が感じられる商品だ。組み立てをレポートしていこう。

繊細な“永野ディテール”を満喫しながらの組み立て

 「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 単騎仕様 Ver.」はまずパッケージがカッコイイ。この大きなパッケージにぎっしりとランナーが詰まっている。ランナーは20枚、総パーツ数は507点、かなりボリュームのあるプラモデルだ。

 大きな特徴がアーマー部分の成型色。乳白色だが、透き通っているような印象があり、「半透明装甲」というL.E.D.ミラージュの設定を聞いているとグッと来る。モデラーは全塗装で仕上げる人も多いと思うが、本キットの場合はあえて装甲に色は塗らない、もしくはスジ彫りにクリアのコートを掛ける、という人も多いのではないだろうか。

大きなパッケージ。20ものランナーがぎっしり詰め込まれていた
本商品の特徴の乳白色の成型パーツ。透明感があり、設定の装甲を思わせる

 パーツはかなり細かく色分けされている。アーマーは前述の通り半透明の乳白色。フレーム部分は灰色と黒の2色で、腰などの一部のアーマーは銀色となっている。さらに足のエンジン部分は赤のクリアパーツが使われている。今回筆者は各部のスミ入れと、目の塗装、足関節などワンポイントに金の塗装を行なったが、それだけでも充分雰囲気が出る。当初思っていたよりずっと、間口が広く、筆者のように工作スキルが低めの人でも充分楽しめるキットである。

 早速組み立てていこう。最初は顔部分を組み立てる。この顔パーツは前回挑戦した「Aトール」より小さいんじゃないかというパーツだったので、非常に大事な目の部分を塗るのに苦労をした。

 L.E.D.ミラージュはこの目の部分以外を覆う白いパーツをつける。目玉だけがのぞく白い仮面は道化師風の不気味な雰囲気だ。この顔を取り付けて、長くひさしのついた頭部全体を組み立てていく。MHは頭部に騎士を補助する“ファティマ”が搭乗するコクピットが設定されている。「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 単騎仕様 Ver.」ではファティマコクピットはオレンジのクリアパーツで作られていて雰囲気がある。

 「IMS 1/100 L.E.D.MIRAGE V3 単騎仕様 Ver.」は装甲をつけないスケルトンモデルでも組み立て可能な設計になっているが、装甲をつける場合は接着となる。ファティマコクピットや、フレームの多くは白いアーマーに隠されてしまう。ただ、アーマーの隙間からのぞくフレームは非常にカッコイイので、スミ入れでフレームのモールドは際立たせておきたいところだ。

【頭部の組み立て】
ものすごく小さい顔パーツ。ここの目はしっかり塗っておきたい
クリアパーツで表現されたファティマコクピット
鳥のくちばしのように鋭く前に突き出した形が印象的だ
ファティマコクピットも含め、白いアーマーで覆っていく
古代ローマ兵のカブトを思わせる巨大な頭頂部の飾りは、頭部の先の刃・レーザーカッターを相手に打ち込むためのカウンターウエイトとなる

 今回のフレームのスミ入れだが、筆者はガンダムマーカーで行なった。丁寧に溝に合わせて塗料を流し込む箇所もあったが、かなり乱暴に上から塗り、ざっと拭き取るやり方をしたところも多かった。それでも本商品のモールドを浮き立たせると非常にカッコイイ。モールドはかなり熱心にガンダムマーカーでなぞっていった。

 半透明のアーマーも四角いモールドなどディテールのある部分はガンダムマーカーでなぞるとしっかり浮き出る。黒くなりすぎないように拭き取りながら進めていった。本商品ではフレームとアーマーが完全にわかれているので、実はアーマーの取り付けが難しい。うまくやったと思ったのに、ちょっとしたずれが生じ、頭部の左右でアーマーの取り付け位置がずれてしまった。モデラーは両面テープなどを使って“仮組み”を行ない、接着位置や、アーマー自体の調整などを行なうようだ。

【胴体の組み立て】
繊細なモールドが楽しめる。特に腹部は永野氏の“ロボットの可動デザイン”に対してのこだわりを強く感じる

 頭部の次は胴体だ。こちらもフレームに繊細なモールドが施されていてとても楽しい。胸には騎士のコクピットがあり、コミックでも騎士の体の前面を覆うパーツは印象的だった。このパーツは設定通り金で塗装してみた。これらは装甲で覆われてしまうが、装甲の隙間からフレームが見える。……こちらも慎重にアーマーの取り付け位置などを調整すれば、装甲はもっとぴっちりとフレームを覆うようだが、これもまた“味”とポジティブにとらえよう。

 腰アーマーは銀色の成型色で、半透明の装甲とはっきり違う。1パーツが非常に大きいのが特徴で、細かく分割された他のアーマーとはっきり違うのが面白い。この腰アーマーをつけると“騎士の鎧”という雰囲気が一層強まる。ここまでのパーツを組み合わせるとかなりの充実感がある。大スケールのL.E.D.ミラージュのプラモデルを組み立ててるんだという充実感がこみ上げる。細部をいろいろ眺めたくなってしまう。

 次ページでは手足を造り、この胴体に取り付けていきたい。

【胴体・腰部の組み立て】
コクピットのパーツは金色で塗装した
こちらも白いアーマーをかぶせていく
腰のアーマーは1つのピースが非常に大きい
取り付けることで、甲冑の雰囲気が強く出てきた