特別企画
ダイソー初のオリジナルTCG「蟲神器」プレイレポート
110円で2人分揃う驚愕のコスパ! そのゲーム性や入手方法をチェック
2022年11月18日 00:00
- 【蟲神器】
- スターターセット:110円(50枚入、税込)
- ブースターパック:110円(5枚入、税込)
100円ショップ大手のダイソー初となるオリジナルTCG「蟲神器(むしじんぎ)」は、子会社である大創出版が開発したTCGであり、11月7日の発売開始以来、全国で品薄が続く人気製品となっている。
ダイソーはこれまでにも、人狼やCELLなどのカードゲームを110円で販売してきたが、オリジナルTCGの発売は初めてであり、110円で2つのデッキが入ったスターターセットを購入できるという、TCGの常識を破る驚異的な低価格と、「蟲(虫)」をテーマにしたオリジナルTCGということで、TCG界でも話題となっている。今回、なんとか「蟲神器」のスターターセットとブースターパックを購入することができたので、早速、レビューしていきたい。
スターターセットには20枚デッキが2種類と10枚の説明カードが封入
「蟲神器」は、いわゆるTCG(トレーディングカードゲーム)であり、デッキと呼ばれるカードの束を使って対戦を行うものだ。有名TCGタイトルとしては、「デュエル・マスターズ」や「遊戯王」、「ポケモンカードゲーム」などがある。
このTCGを始めるには、スターターデッキなどと呼ばれる構築済みデッキを購入するのが一番手っ取り早い。パックから出たカードを集めてデッキを作る必要がなく、買ってきてすぐに遊べるからだ。
「蟲神器」も、スターターセットという名称で構築済みデッキが販売されている。パッケージはトランプの箱のような大きさで、中にはカードが50枚入っている。通常のTCGでは、スターターデッキには、1人分のデッキしか入っていないため、2人で対戦するにはスターターデッキをそれぞれ1つずつ、合計2つ購入する必要がある。
しかし、「蟲神器」の場合、デッキのカード枚数が、他のTCGの40~60枚と比べて半分以下となる20枚と決められており、スターターセットには、2種類の20枚デッキと説明用カードが10枚入っているため、スターターセットを1つ買うだけですぐに2人で対戦できる。もちろん、ダイソーの商品なので、スターターセットは1つ110円だ。1人あたりわずか55円で始められることが大きな魅力だ。
スターターセットの中身は、下記掲載の写真の通り、カブトムシを切り札としたカブトムシデッキとオオカマキリを切り札としたオオカマキリデッキの2つのデッキが入っている。残りの10枚のカードには、「蟲神器」の世界観やルール、Q&Aなどが書かれているので、一通り目を通しておくとよい。ゲームのルールは「デュエル・マスターズ」と「ムシキング」をあわせたようなルールであり、「デュエル・マスターズ」や「マジック:ザ・ギャザリング」などのマナベースのTCGをプレイしたことがある人なら、すぐに理解できるだろう。
「蟲神器」のデッキ枚数は、前述の通り20枚と他のTCGの半分程度で、同名カードは2枚までしか入れられない。カードの種類は、「虫カード」、「術カード」、「強化カード」の3種類とシンプルで、他のTCGでいえば、虫カードがクリーチャーカードやユニットカード、術カードが呪文カード、強化カードが装備品カードやクロスギアなどに相当する。
各カードの左上には、そのカードを使うために必要なコストが書かれており、虫カードの場合はその下に体力や技が書かれている。また、虫カードには3種類の属性があり、肉食の虫は赤、蜜を吸う虫は青、草食の虫は緑の属性を持つ。属性によって相性があり、赤の虫は緑の虫へ、青の虫は赤の虫へ、緑の虫は青の虫へそれぞれ2倍のダメージを与える。術カードは使い捨てで、使った後は捨て札置き場に置く。強化カードは、場に出ている虫カードに重ねて場に出し、虫を強化できる。
スターターセットのカブトムシデッキとオオカマキリデッキは、どちらも虫カードは2枚ずつ入っているが、術カードと強化カードは1枚ずつしか入っていない。ブースターパックからはスターターセットに含まれているカードは出ないので、スターターセット限定の術カードと強化カード(便利なカードが多い)を2枚ずつ揃えるために、スターターセットを2つ以上購入することをおすすめする。なお、スターターセットでは、上から2番目のレアリティであるSR(スーパーレア)のカードが全部で2種類入っているが、ブースターパックから出るSRとは異なり、いわゆるキラカードにはなっていない。
なお、TCGのカードサイズは、主に2種類あるのだが、「蟲神器」のカードサイズは「デュエル・マスターズ」や「マジック:ザ・ギャザリング」、「ポケモンカードゲーム」などと同じスタンダードサイズであり、他のTCGのスタンダードサイズ用スリーブを利用できる。
通常は箱1枚のLRが16枚!? 超神箱を引いてしまった……?
「蟲神器」はスターターセットを1つ買うだけで、2人で遊べる“神TCG”なのだが、やはりTCGの醍醐味は、ブースターパックでデッキを強化していくことにある。このため、スターターセット1つだけではなく、ブースターパックもいくつか欲しくなる。ところが、ブースターパックはスターターセット以上に品薄で、「蟲神器」をすでに販売しているダイソー店舗でも、1箱(20パック分)しか入荷していない店舗が多いようだ。筆者は地元のダイソーで「蟲神器」を取り寄せてもらい、未開封の1箱、20パック分を入手したのだが、これがとんでもない代物であった。
「蟲神器」のカードのレアリティは、下からN(ノーマル)、R(レア)、SR(スーパーレア)、LR(レジェンドレア)の4段階あり、SRとLRはいわゆるキラカードになっている。レアリティを示す文字はカードの右下に大きく書かれている。
前述したように、ブースターパックから出るカードとスターターセットに含まれているカードは被っておらず、ブースターパックからは、LRが5種類、SRが23種類、Rが26種類、Nが52種類で合計106種類のカードが出る。
1パックは5枚で、必ずSR以上(SRまたはLR)が1枚含まれることになっている。1箱(20パック)に入っているLRの枚数は未公表だが、すでに入手されている方の報告を見ると、基本的には1箱に1枚、たまに2枚入っている当たり箱があるようだ。他のTCGでも、最上位レアリティの数が箱によって多少異なる場合があり、当たり箱や外れ箱などと呼ばれる。
筆者も、LRが2枚出ればいいなあと思いながら、パックの開封を始めたのだが、いきなり1パック目からLRのオオキバウスバカミキリが出た。もう1パック開けたら、またLRが入っていた。おお、ラッキーと思って3パック目、4パック目と開けていったのだが、ここまで全てのパックにLRが入っていたのだ。
「一体これはどういうことなんだ?」と疑心暗鬼になりつつも、どんどんパックを開けていったところ、13パック目まですべてLRが入っていた。14パック目で初めてSRが出たのだが、次はまたLRが出た。結局20パック中、16パックにLRが1枚ずつ入っており、残りの4パックにSRが入っているという、とんでもない超神箱であった。
Twitterのパック開封報告を見ても、基本は1箱にLRが1枚のようで、筆者が開けたような紙箱は報告されていない。筆者のTCG歴は10年をちょっと超える程度しかないが、他のTCGでもこんな上振れをする箱があるとは聞いたことがない。ただ、ここまでLRだらけだと、ミスということも考えにくく、あえてそういう箱を作った可能性もある。一番人気の高いLR「瀬戸際の虫時雨」も3枚出ており、まさに爆アドである。
TCGとしては「デュエル・マスターズ」に似たルールだが、展開がスピーディで面白い
実際に子どもたちと「蟲神器」をプレイしてみた。せっかく箱を開けてLRが16枚も出たので、デッキを強化したいところだが、今回は、スターターセットの構築デッキそのままでプレイしてみることにした。
まず、「蟲神器」の勝利条件から説明する。「蟲神器」では、相手の縄張りをすべて破壊した状態で、相手に直接攻撃を行えば、勝利となる。「デュエル・マスターズ」をプレイしているのなら、ダイレクトアタックだといえばわかるだろう。また、縄張りは、「デュエル・マスターズ」のシールドに相当する。もしくは、ターン始めのドローの際に、山札が0枚になっており、ドローできなくなった場合、その時点で縄張りが多い方が勝ち(同数なら引き分け)となる。他のTCGでは、山札が切れた瞬間か、ドローできなくなった瞬間に、山札がないプレイヤーが負けとなることが多いが、「蟲神器」では縄張りの数で決まるので他のTCGに慣れている人は注意が必要だ。
ゲームの準備も、「デュエル・マスターズ」によく似ている。山札をシャッフルして場に置き、山札の上から6枚を裏向きのまま場に並べて縄張りとする。そのあと山札からカードを4枚引いて、初期手札とする。手札の交換(マリガン)などのルールはない。準備ができたら、ジャンケンなどで先攻・後攻を決める。
「蟲神器」は、一般的なTCGと同じく、自分と相手で交互にターンを進めてプレイを行う。ターンは、ドロー→セットフェイズ→メインフェイズ→ターンエンドの手順で進行する。先攻1ターン目のみドローはないが、それ以外のターンでは最初に1枚山札の上からドローを行い、セットフェイズで手札からカードを1枚選んでエサ場(縄張りの手前)に置く。
エサ場は、「デュエル・マスターズ」でいうマナゾーンに相当し、メインフェイズではエサ場に置かれているカードの枚数分のコストを使って、虫を場に出したり、強化カードや術カードを使うことになる。クリーチャーを出したターンには攻撃できない(召喚酔い)ルールを採用しているTCGも多いが、「蟲神器」には召喚酔いはなく、出したターンにすぐ攻撃が可能だ。
攻撃は虫カードに書かれている技を選び、相手本体または相手の場に出ている虫を対象として行う。相手の場に虫が出ているときには、基本的にその虫を無視して相手本体に攻撃を行うことはできず、虫vs虫のバトルとなる。技のダメージが相手の虫の体力を上回れば、その虫を破壊できる。虫へのダメージはそのターン中は蓄積するので、例えば、体力1000の虫に、攻撃力600の技を持つ虫と、攻撃力400の技を持つ虫の2匹で攻撃すれば、その虫を破壊できる。虫が破壊された場合や、虫がいなくて直接攻撃された場合は、縄張りのカードを1枚、攻撃された側のプレイヤーが選んで手札に加える。「デュエル・マスターズ」だと、攻撃側が破壊するシールドを指定するが、「蟲神器」では、攻撃を受けた側が選ぶので混同しないように。なお、虫の攻撃ではなく、術カードや強化カードの効果で虫が破壊された場合は、縄張りはそのままとなる。また、<とびだす>という文字が書かれている虫カードは、縄張りから手札に加える代わりに、他に<とびだす>持ちの虫カードが場になければ、直接場に出すことができる。「デュエル・マスターズ」でいうシールドトリガーに相当する能力だが、「デュエル・マスターズ」とは違って、すでに場に<とびだす>持ちの虫が出ていると、その能力を使うことはできない。
文章で書くと長いが、公式サイトにはルール解説動画も掲載されているので、それを見ればTCG経験者ならすぐに理解できるだろう。なお、ルールでは、使ったエサ場のカードをタップ(横に寝かす)したり、攻撃指定後に虫をタップするような記述はないが、「デュエル・マスターズ」と同じように、カードのタップ、アンタップをした方が、プレイはしやすい。
この流れを繰り返して対戦を行うのだが、召喚酔いがないことと、虫が戦闘によって破壊されても縄張りが減っていくため、ゲームの展開がかなり早い。もともとデッキが20枚しかなく、そこから最初に縄張り6枚、手札4枚を引くので、山札は10枚スタートである。普通にプレイしていても10ターン後には山札がなくなってしまうわけだが、スターターセットのデッキで対戦を繰り返して見たところ、山札が切れる前に決着がつくことが多い。いわゆるチャンプブロックのようなことはできないので、例えば、相手の場に体力1000、技の攻撃力300の虫が見えているなら、こちらの場に何も虫がいない場合でも、攻撃力400、体力200といった虫を出しても、相手の虫をこのターンで破壊できず、返しのターンに破壊されるため、虫を出す意味がほとんどない。あえて虫を出さずに攻撃を受けて手札を増やし、その次のターンに2匹虫を出して、強い虫を破壊するプランを選ぶほうが結果として勝ちにつながることも多そうだ。また、属性の相性も重要だ。一時的に虫の属性を自由に変更する術カードなどもあるので、相手の裏をかくこともできる。
娘や息子はかなりのTCGオタクで、特に娘はこれまで10種類以上のTCGをプレイしてきているが、娘にも「蟲神器」は好評であった。スターターセットのデッキだけでも楽しめるが、ブースターパックでデッキを強化したり、一からオリジナルデッキを作れば、もっと楽しいだろう。
よくできたTCGであり、虫に抵抗がない人にはおすすめ
「蟲神器」は、ダイソーが初めて発売したTCGだが、ルールがわかりやすく、サクサク遊べる完成度の高いTCGだ。スターターセットとブースターパックをあわせるとカードプールは130種類になるので、さまざまなデッキを構築できそうだ。また、大創出版の公式ページには、Q&Aが多数掲載されており、Twitterでのルールサポートも行われているなど、サポート体制もしっかりしている。
すでにダイソーの予想以上の反響があるようで、非公認大会を開催するショップや、シングルを高価で買い取りしているショップもある。ブースターパックには第1弾という文字は書かれていていないので、第2弾以降の発売は想定されていないのかもしれないが、このまま盛り上がっていけば、続編が発売される可能性もあるだろう。
「蟲神器」は、関西地方や中部地方から出荷が始まり、関東地方ではようやく11月15日あたりから出回り始めたようだ。すでに倉庫からなくなったという話もあるようだが、追加生産もなされるはずなので、もう少し待てば、全国で買えるようになるだろう。何より値段が安いので、TCGに触れたことがないという人も、気軽に手を出せるだろう。カードのイラストがリアルな虫のイラストであり、虫が嫌いな人にはおすすめしにくいが、虫に抵抗がない人なら是非プレイしてみて欲しい。虫が好きな小学生へのちょっとしたプレゼントとしても喜ばれそうだ。
ダイソーの製品という性格上、カードショップで販売されているわけではないので、公式大会や公認大会を開くのは難しいかもしれないが、そうしたイベントの開催も期待したい。