インタビュー

ダイソー初のオリジナルTCG「蟲神器」クリエイターインタビュー

「蟲神器ブースターパック第2弾」カード21種類を先行公開

【蟲神器ブースターパック第2弾】

今夏 発売予定

価格:110円(税込、1パック)

 100円ショップ大手のDAISO(ダイソー)が2022年11月7日に発売を開始した「蟲神器」は、ダイソー初のオリジナルTCGである。税込み110円で2人で遊べるスターターセットが買えるという手軽さもあり大人気となり、発売直後から品薄が続いた。特にブースターパックは今年春頃までなかなか買えない状況であったが、ようやく店頭で見掛けるようになった(これは1人5パックまでといった購入制限が設定された影響も大きい)。

 ダイソーはご存じの通りTCGショップではないため、プレイスペースなどはなく、公式大会を開催するのも難しいと思われたが、希望者を公認サポーターとして認定する制度が2023年春から始まり、公認サポーターが主催する公認大会が全国で開催されるようになっている。また、夏にはブースターパックの第2弾が発売されることもアナウンスされた。公認サポーターの数は全国で150人を超えており、今後もさらに盛り上がっていきそうだ。

 そこで今回は「蟲神器」を開発した大創出版代表取締役社長の西田大氏に「蟲神器」開発経緯や今後の展開についてインタビューした。また、2023年夏発売予定の「蟲神器ブースターパック第2弾」の新カード21種類の情報もいただいたので、合わせて紹介する。

【大創出版代表取締役社長】
大創出版代表取締役社長の西田大氏

 「蟲神器」については、プレイレポートを掲載しているので、「蟲神器」がどんなモノか知りたい人はそちらをご覧いただきたい。

2020年11月頃から「蟲神器」の企画がスタート

――「蟲神器」を開発した大創出版とはどんな会社なのですか?

西田氏: 弊社は100円ショップ「ダイソー」を運営する大創産業の子会社で、ダイソー向けに書籍・玩具などの商品の企画開発・編集制作を行っている出版社です。

 主な商品は小学生や未就学児向けの学習ドリル、シールブック、絵本、ナンプレをはじめとするパズル雑誌、その他スクラッチアートや知育玩具などですが、それ以外にもカレンダー、家計簿、運勢暦や携帯電話の液晶保護ガラスをはじめとする携帯グッズ、近年ではカードゲーム、ボードゲームの開発など、幅広く商品開発しております。

――どういう流れで蟲神器の企画が始まったのですか?

西田氏: 弊社の主な業務は書籍の制作でしたが、人狼や本格トランプなどを商品化したところ大きな反響をいただいたことから、ゲームクリエイターが制作するゲームに可能性を感じ、カードゲームの制作にも力を入れるようになりました。ピザーラ様などと一緒に企業タイアップのカードゲームを商品化し、変顔マッチは、YouTubeやTV番組などで取上げてもらうなど、ゲーム分野でも予想以上の反響をいただきました。

 そこで、2019年頃からさまざまなカードゲームを検討するようになり、その一つとしてトレーディングカードゲームの構想がありました。また、初のダイソーオリジナルとして制作したいという思いもありましたので、簡単に制作できるものではないと、ゲームクリエイターに色々相談していたなか、2020年11月頃に今回のゲームデザインを担当したNIZAさんとの出会いが大きなきっかけとなり、「蟲神器」の企画がスタートしました。

【大創出版が制作した商品】
大創出版がこれまでに制作してきた商品
子ども向けのドリルからナンプレなどのパズルまでさまざまな商品を制作

「虫」をテーマにしたことと「シンプルなゲーム性」がウリ

――蟲神器のウリは何でしょうか?

西田氏: 一番はダイソー初のオリジナルTCGというところだと思います。2番目は「虫」をテーマにしたところ。そして「シンプルなゲーム性」に特化したことかと思います。また「虫の図鑑」にもなるよう学べる要素を加えたり、世界観をしっかり作り込んだり、スターターで2デッキ入っていたり…などとにかく盛り込めるだけ盛り込みました。ダイソーという売場だからこそ、小学生やこれまでTCGに興味はあっても触れてこなかった方への「初めてのTCG」になる事を目指しました。

――見た目のカードデザインでこだわっているところは何でしょうか?

西田氏: 裏面を見ればゲームシステムの重要要素「色による三すくみ」がわかるようになっている点と、和風かつ神話をモチーフにしているので鳥居を模したデザインになっていることです。

 あとは、できる限り文字を大きく配置しています。読みやすさはそのままゲームへのハードルの低さになると考えています。

――イラストはかなりリアルタッチですが、イラストへのこだわりを教えてください。

西田氏: あくまで「実在する虫である」ということが学べる・分かるようにリアルにしなければならない反面、リアル過ぎても気持ち悪いと思われてしまうので、若干クリーチャーっぽく表現するように依頼しました。

 また、虫ではないカードについてはリアルタッチにしていただいています。設定上これらのカードは蟲神器世界での「過去実在した出来事」ですので、かっこよさを重視したイラストをご依頼しています。

 いずれもそれを描ける・表現できるイラストレーター探し、イメージの共有、交渉などは大変苦労しました。

――開発で苦労された点は何でしょうか?

西田氏: 色々有り過ぎて…。「はじめてTCGを遊ぶ人へ向けた、子どもから楽しめるシンプルなもの」というコンセプトで開発を開始したため、スタッフをどう集めるか、ゲームの設計、調整、はもちろん、虫のイラストはどの程度リアルに描くか、多くの虫を誰に描いていただくか、その費用はどう捻出するかなど、制作は大変苦労しました。もちろん製造においても、紙質やパッケージ、ホログラムのキラカードを入れるなど、限界を超えるクオリティを目指したため、そもそも製造費が高いなか、為替の影響も有り、100円という価格帯で製品化する交渉には本当に苦労を重ねてきました。

 ただ、ダイソーという環境はもちろん、ゲーム設計のNIZA氏、世界観考案の原氏、イラストでは中村先生、猪狩氏、XIONさん、碧さん、鹿助さん、スミレさん、JAIBON、監修の伊藤先生、そして製造の協力会社、弊社のディレクターやデザイナー、校正、どれも欠けていたら今回のような作品は生まれなかったと思います。

 これらの協力者と出会い、共に商品開発していくことが既に大変なことでしたし、ゲーム面では「初心者向けのシンプルなTCG」を徹底するためできるだけわかりやすく、かつ面白さや駆け引きの共存する範囲で面白さを模索しました。

――蟲神器の主な想定ターゲットは何でしょうか? また実際の購入層、プレイヤー層はどんな感じでしょうか?

西田氏: 開発時点では「小学生や大人の初めてのTCG」にこだわって制作してきましたが、発売当初は従来からTCGをプレイされていた大人のコアユーザーが興味をもって下さり、今でも中心になって盛り上げてくださっているようです。最近は、買いやすくなったこともあり、小中学生が購入したという声も届き始めていて、幅広い年齢層に遊ばれていると感じています。

――発売後、しばらく品切れが続きましたが、想定を大きく上回る売れ行きだったのでしょうか?

西田氏: ある程度は予想しておりましたが、発売を発表した11月初旬のTwitterでの「蟲神器」に対するコメントが、当日の17時から日付が変わるまでの7時間で2,000件を超え、1ヵ月で約1万5千件まで伸びるなど、拡散速度は大きく想定を上回りました。入手困難な状況が続いており、大変申し訳なく思っています。

【カードデザインへのこだわり】
裏面を見れば色による三すくみが分かる
表のフレームデザインは、神社の鳥居をイメージしたものだ

ルールをシンプルにするために、タップ・アンタップの概念はなくした

――ルールやシステムが近いTCGもあると思いますが、タップやアンタップの概念はありませんよね? また、公式の説明では、山札を縄張りの左に置くことになってますが、実際はデュエル・マスターズやその他のTCGのように右に置いてプレイする人が多いようです。大会では山札を右側に置いてもいいのでしょうか?

西田氏: そもそも「蟲神器」は基本的にお子様向けで、かつ、初めてのTCGというところを大事に作ってるんです。タップ・アンタップなど、目印が増えるのは分かりやすいですが、そのために手間が増えると、どんどん難しくなってしまいます。「蟲神器」は、そういった目印を必要としない形にして、難しい説明を少しでも省いて遊びやすくしました。もちろん、お客様の方でわかりやすく、目印としてタップしていただいたり、動かしていただくなどはかまわないです。「蟲神器」では、 エサ場と場が中央の縄張りで分かれているので、縄張りの前に出ているのは戦える虫で、後ろに出ているのはエサになるものとわかるようになっていますが、さらにわかりやすくするために、エサ場のカードを上下逆さに置いたり、山札の位置を変えたりすることも、特に問題はありません。

【カード配置について】
「蟲神器」の対戦開始時のカード配置。説明書では縄張りの左に山札を置くように指示されているが、こだわらなくてもいいとのこと

今後も公式でカードリストは公開しない方針

――第2弾の発売が発表されましたが、第2弾が発売されても、第1弾もそのまま併売するのでしょうか?

西田氏: このまま併売し、共に製造をしていきます。

――まだブースターの購入は1人5パックまでに制限されているところが多いようですが、順次制限はなくなるのでしょうか?

西田氏: 少しずつでも緩和されるよう、引き続きフル稼働で製造を続けております。ご迷惑をおかけしまして申し訳ありません。

――第3弾、第4弾の発売予定はありますか? 発売ペースについてはいかがでしょうか?

西田氏: 具体的にはお答えできませんが、ご期待いただければと。

――ホームページでのQ&Aなどがしっかりしていて素晴らしいと思います。カードリストを公式で載せない理由は何でしょうか? 第2弾以降もその方針は変わらないのでしょうか?

西田氏: ありがとうございます。カードリストは近年公開するのが当たり前で、多くのユーザーが購入の判断をするのにカードリストを利用しているということも理解しているのですが、何が入っていて、どんな出会いがあるのか分からないワクワク感や、初めて出会ったカードを見て「どのように使うのが強いのか、楽しいのか」を考える楽しさが、公式がカードリストを公開することで薄れてしまうと考えています。

 カードリストから使用感を想像して、新弾のカードプールを全て理解してから購入を検討することも楽しいかもしれませんが、逆にカードリストを知ったことである程度満足してしまうという人も少なからず存在すると思います。第2弾は、実験的な部分も含めて一部のカードを発売前に公開しておりますが、そういったスタンスは変えるつもりはありませんので、今後もカードリスト全公開は行なわない方針です。

【「蟲神器」の公式サイト】
公式サイトにはルールや公認大会の案内は掲載されているが、全カードリストは公開されていない

公認サポーターにはとても感謝している

――公認サポーター制度は当初から考えていたのでしょうか? 素晴らしい制度だと思いますが、現在何人くらいの公認サポーターがいるのでしょうか?

西田氏: TCGである以上対戦環境が最も大切であると思っているのですが、ダイソーでのみ取り扱っている商品ですので、カードショップ様などでの大会開催は難しいと考えていました。

 この状態で対戦相手と場所を準備するには、ユーザーの皆様のお力を借りるほかないと発売前から考えておりました。そのために必要な事やルール整備、弊社のサポートなどを考え、公認サポーター制度を実施することになりました。現在約150名を超える公認サポーター様が全国にいらっしゃいます。

――公認サポーターが中心となって全国で対戦イベントが開催されていますが、サポーターの活動について、どのような感想をお持ちですか?

西田氏: 何よりもまず感謝の気持ちを持っております。皆様のお力を借りるほかないと感じている反面、こちらでできることは限られています。皆様「蟲神器が楽しいから」と仰って下さいますが、対戦相手がいて初めてできる遊びですので、活動してくださることが本当にありがたいです。

 また、公認サポーターの方々、そしてTwitterから感じるユーザーの皆様は特に温かく、私たち公式が勉強になることも多く、頭が下がる思いです。

 だからこそ、公式としてまずはお客様に裏切らないコンテンツを開発しなければなりませんし、公認サポーターの方の意見や思いを聞きながらできる限りのフォローをしていきたいと考えております。初めての取り組みだからこそ模索しながらではありますが、この「蟲神器」の魅力を一緒に盛り上げていただければと思います。

――CS(チャンピオンシップ)など規模が大きい公式大会を開催する予定などはありますか?

西田氏: 公認サポーター制度を決定する前から、弊社による公式大会が何よりも必須であると考えています。まだ具体的に決まっているわけではありませんが、皆様が遊んでくださる中で、大きな目標のようなものが必要だろうとは考えています。

【「蟲神器」に込めた想いを語る西田氏】
西田氏自身も「蟲神器」のプレイを楽しんでいるという

スリーブやプレマなどのサプライ品の発売も検討中

――スリーブやプレマなど、蟲神器専用サプライが発売される可能性はありますでしょうか?

西田氏: 現在どのような方法で皆様へお届けできるのかを含めて検討しております。

――ダイソー店舗以外での販売の可能性はありますか?

西田氏: ダイソーのプライベートブランドではありますが、更に多くのお客様に届けられるよう引き続き検討して参ります。

――今後、蟲神器をどのように展開していきたいと考えていますか?

西田氏: 今はまだ内緒です。既に数社からお声掛け頂いておりますし、私達もこちらもどんなことができるのか、色々な各方面で議論を重ねております。

 いずれにしても蟲神器がもっと盛り上がるよう、ユーザーの皆様に楽しんでいただけるように考えています。大人から子供まで分け隔てなく遊べる状況と、この面白さをもっと多くの方に知っていただくための施策を考え、日々検討しています。

――TCGファンに向けてメッセージをお願いします。

西田氏: 「ダイソーで売られているTCG」という言葉の面白さから触れてくださった方は多くいらっしゃるかと思います。各地への入荷が遅れてしまったことや、依然として購入制限が続いてしまっていること、本当に申し訳ございません。

 開発は本当に大変でした。NIZAさんをはじめ、イラストレーターの方々、監修、製造会社、そしてダイソーと全ての熱い思いがこの商品にたどり着きました。誰一人欠けてしまったら、このような結果にならなかったと思います。開発に関わった全ての方に感謝していますし、このような反響を頂いたことが何よりのご褒美です。

 その分頑張らなければならないのはむしろこれからだと思っています。追加のブースターパックを出すためには、コンセプトと世界観を大事にしつつ、慎重にならなければなりません。やりたいことが山積みですね。まだまだ始まったばかりのコンテンツです。皆様にご協力していただきながら、少しずつでも大きくなっていければと思っています。今後とも蟲神器をよろしくお願いいたします。

 また、私達は商品を通じて、多くの方に遊んで楽しい時間と笑顔を作って欲しいと願っています。「蟲神器」だけでなく、これからも「だんぜん」をスローガンに圧倒的な価値ある商品・ゲームを開発していくので、これからもダイソーにご期待下さい。

――ありがとうございました。

発売前の第2弾新カード21種類を先行公開

 今夏発売予定の「蟲神器」第2弾ブースターパックには全55種類の新規カードが収録されるが、その中から21種類のカードの写真を公開する。

 このうち12種類はTwitterの公式アカウントで毎週2種類ずつ公開されていたもので、残りの9種類は5月27日より開催された体験会で追加公開されたものになる。

 この中には、相手の虫のコントロールを奪う「エメラルドゴキブリバチ」など、ユニークなカードもある。目玉カードはまだまだありそうだが、ここに挙げた21種類だけでも、こんなデッキを作りたいといったアイデアがいろいろ浮かんでくる。第2弾の発売が待ち遠しい。

【第2弾の新カード21種類】
5コストの青のSRカード「テイオウゼミ」。<セミの帝王>が強力だ
5コストの緑のSRカード「ヘラクレスサン(幼虫)」。相手を倒すと強化されていくことが特徴
4コストの強化のSRカード「口寄せの時蛹」。手札から虫を踏み倒して出すことができる
2コストの赤のSRカード「エメラルドゴキブリバチ」。操り針で破壊した相手の虫を自分の場に出せる
4コストの赤のSRカード「ハナカマキリ」。他の虫の色に擬態する「擬態攻撃」が面白い
2コストの術のレアカード「電気虫の稲妻」。相手の虫に大きなダメージを与える
0コストの術のレアカード「白夜の羽化」。幼虫を成虫に羽化させるカードだ
6コストの青のLRカード「アレクサンドラトリバネアゲハ」。毎ターン1度目に受けたダメージを0にする<不死蝶の舞>が強い
6コストの緑のLRカード「キマダラドクバッタ」。破壊されたときに相手も道連れにする<トウワタ毒>を持つ
2コストの強化のLRカード「兜虫の甲冑」。体力と攻撃力を500ずつ増やす強カードだ
0コストの術のレアカード「金色の顎門」。自分の虫の攻撃力を500増やす
6コストの赤のLRカード「リュウジンオオムカデ」。出たターン他の色に変化することができる
5コストの青のSRカード「アトラスオオカブト」。ツノ串刺しで相手の虫にとどめをさせる
4コストの青のレアカード。この虫以外に攻撃できなくなる<鳴く>を持つ
5コストの青のレアカード「レックスゾウカブト」
1コストの青のノーマルカード「チッチゼミ」。<とびだす>持ちだ
3コストの青のノーマルカード「クラウディーナミイロタテハ」。攻撃後、かくれることで相手からの攻撃対象にならない
3コストの緑のレアカード「アレクサンドラトリバネアゲハ(幼虫)」
5コストの赤のSRカード「ダイオウサソリ」
1コストの赤のレアカード「ヨコヅナサシガメ」。相手の虫を倒すと強化される
1コストの術のレアカード「金ぶんの甲冑」
体験会では3種類2枚ずつの6枚がセットとなって参加者に配られたが、そのセットの1つ。セミ科のシナジーに着目したセットだ
こちらはかくれたり色を変えたり、変幻自在な虫たちが集まったセットだ
<トウワタ毒>を持つキマダラドクバッタを中心にしたセット
攻撃力と体力を増やす「金ぶんの甲冑」で、ダイオウサソリを守るセット
エメラルドゴキブリバチの操り針は攻撃力が低いことが欠点だが、それを術カードや強化カードでカバーするセット
幼虫を成虫に進化させることがコンセプトのセット
強力な術カードと強化されていくヘラクレスサン(幼虫)が要のセット