特別企画
「ガンプラビルダーズ」世界一は、香港マンソン・ング氏の"シャアの悲しみ"をテーマとした「Fragments of a Star」
2022年12月17日 19:36
- 【GBWC10thトーナメント 世界大会決勝戦】
- 12月17日開催
BANDAI SPIRITSは12月17日、YouTubeにてガンプラ製作の世界一を決めるコンテスト「GUNPLA BUILDERS WORLD CUP 10th TOURNAMENT 世界大会決勝戦」を開催した。
「GUNPLA BUILDERS WORLD CUP(GBWC)」は11月に行われた日本予選に続き、15エリア・3コースの42名のファイナリストによって世界一が決められた。
選考により「製作技術」、「塗装技術」、「アイディア(独自性)」の3つの視点で採点され、総合点で順位が決められた。作品のレベルは非常に高く、接戦の末、各コースの世界一が決定した。
「U-14コース世界チャンピオン」は、Inland China、Liu HaoWen氏の「Trails of New Type」。「U-20コース世界チャンピオン」はInland China、Feng ZheKai氏の「-THE LAST ZEON-」。「OVER-21コース世界チャンピオン」はHong Kong SAR、manson ng氏の「Fragments of a Star」。
GBWC実行委員長の川口名人ことBANDAI SPIRITSの川口克己氏は総評として、「何を見せたいか」、「どんなテーマを持った作品であるか」を明確にすることを大事な要素であることを語った。そして作品そのものだけでなく、写真撮影の工夫、自分の作品をどう写真でアピールするかを語った。写真撮影は作品製作と同じくらい時間を掛けても良いのではないか。また、家族などの協力、理解も大事な要素だという。
川口名人は最後に「ガンプラは40年という長い歴史を持つコンテンツです。ガンダム世界をどれだけ知っているか、ガンプラを愛しているかも大事な要素です。工作、塗装スキルは続けることで引き上げられます。しかしアイディアを形にするのは年齢や性別、国籍は関係なく、どんなアイディアで作品に接するかの姿勢が問われる。自分の作品にどんな思いを掛け、それを表現するか、これからも作品に向き合っていただきたいと思います」と語りかけた。
「Trails of New Type」、Liu HaoWen氏
選評
複数体の完成品が融合し、とても見応えがある。各機体の完成度に加え、融合させるアイディアが評価された。
受賞者インタビュー
――作品のテーマと、一番見てもらいたいところどこでしょうか?
HaoWen氏: ニュータイプを巡るストーリーの豊かさを表現したいと思いました。見て欲しいのは各機体のデザインです。特に爆発の効果の表現には力を入れました。使用しているのは、大好きなユニコーンガンダムや、RX-78-2ガンダムを配置しています。
――作品へのこだわりと、使ったガンプラで代表的なものを教えてください。
HaoWen氏: 爆発とそれを意識した塗装は特にこだわった部分です。影の効果をどう出すかは考えました。使った機体はガンダムやユニコーンガンダムなど、好きな機体を組み合わせています。
「-THE LAST ZEON-」、Feng ZheKai氏
選評
ネオジオングをベースとしている。非常に大きなモデルだが、写真を拡大してみると表面処理や、塗装の仕方など、大サイズのプラモデルにもかかわらず、非常に細かい技量が込められている。塗装も巨大感をきちんと感じさせる塗装が施されている。
受賞者インタビュー
――作品のテーマと、一番見てもらいたいところどこでしょうか?
ZheKai氏: 大型のモデルに複雑なディテールを何種類も組み合わせて盛り込み、そこに一体感を出すというのが、テーマであり、見てもらいたいところです。
――作品へのこだわりと、使ったガンプラで代表的なものを教えてください
ZheKai氏: 特にこだわった部分の1つとして、上半身に手作りのオリジナルパーツをたくさん盛り込んでいます。手作りですので違和感を持たせず、全体と細部のデザインのバランスを考えながら盛り込むことができました。そして形だけでなく、塗装でより効果的に見せるかは苦労しましたね。使った機体はもちろん「ネオジオング」です。
「Fragments of a Star」、manson ng氏
選評
ゲルググが主役だが、破壊されたエルメスの装甲がゲルググの背中で描写されている。基本工作の高さはもちろんだが、全体から醸し出される物語性、世界観で魅入ってしまうものがあった。世界チャンピオンにふさわしい作品と感じた。
受賞者インタビュー
――作品のテーマと、一番見てもらいたいところどこでしょうか?
ng氏: テーマはズバリ「愛」です。アニメ「機動戦士ガンダム」において、ララアと、アムロ、シャアの関係はアムロがララアを失った悲しみを描いていますが、シャアの方はそこまで描かれなかったと思うんです。この作品を通じて、シャアの悲しみを表現したいと思ったんです。
――作品へのこだわりと、使ったガンプラで代表的なものを教えてください。
ng氏: 作品全体を1つの棒で支えているのですが、そのバランスをきちんと成立させるのが大変でした。ゲルググの赤をどう印象的にするかを考え、そこで後ろに緑のエルメスと、破壊されたスペースコロニーの残骸を配置することを思いついたのです。このコントラストでゲルググの赤は印象的になったと思います。
今回は中国勢の受賞が目立った。ちなみに日本代表のU-20コースのFA green氏の「The spirit of Zeon」は3位、OVER-21コースRin papa氏の「The power to make the ideal a reality」は2位だった。
どちらも塗装技術、製作技術では世界一を狙えるポテンシャルを持っていたが、「The spirit of Zeon」に関しては「見る人が作品のどこに注視するか、そのポイントをきちんと設定してから回りを組み立てることで、もっと印象が強くなったのではないか?」。「The power to make the ideal a reality」は、台座部分をもっと低くしてキュベレイをもっと目立たせ、さらに電飾で照明などにこだわれば作品をもっと印象づけられたと感じた」という選評があった。
技術は世界のモデラーも高いものになっている。しかし「作品」は、いかに見る人を捕らえられるか? 見せ方、テーマをどのようなアイディアで昇華するかが問われる。非常にレベルが高い大会であることを再認識させられた大会だった。