特別企画

「日米親善春祭り2023」、F/A-18 スーパーホーネット特別レポート

F/A-18シリーズを間近で見れる興奮! “本物”を前にした圧倒的な情報量

【日米親善春祭り2023】

4月22日 開催

 NAF厚木基地・海上自衛隊厚木基地は、交流イベント「日米親善春祭り2023」は、4月22日に開催した。弊誌ではこのイベントの展示物や催し物などを何本かの記事で紹介した。

 このイベントの大きな目玉の1つが、「F/A-18」である。愛称はホーネット。F/Aとは他の戦闘機と戦う空戦を行う“戦闘機”の役割に加え、地上目標を攻撃する“攻撃機”の役割を持つ。F/A-18ホーネットはアメリカ海軍などで運用される戦闘攻撃機だ。

 今回厚木基地に飛来し、展示されていたのは空母ロナルドレーガンに所属する「F/A-18F」、「F/A-18E」、「EA-18G」の3種9機の機体。これらは「スーパーホーネット」と呼ばれるホーネットの発展型。EA-18Gは、スーパーホーネットをベースとした電子戦機である。

 この3種の戦闘機を会場でたっぷり見ることができた。スーパーホーネットは人気の機体のため、プラモデルも多く発売されている。今回の情報はプラモデルを作る際、参考になるだろう。センサーや、搭載兵装、表面の塗装、マーキングなど本物ならではの情報量はいつまでも見飽きない。今回様々なポイントを撮影し戦闘機の魅力に迫ってみた。“本物”の写真はホビーファン、特にモデラーのマーキングや塗装の参考になるのではないだろうか? 機体のディテールに迫ってみたい。

【プラモデル】
タミヤの「1/72 F/A-18E スーパーホーネット」。価格は1870円。豊富な兵装を再現、アメリカ海軍のデカールを同梱
ハセガワの「1/72 アメリカ海軍 艦上戦闘・攻撃機 F/A-18E スーパーホーネット プラモデル E19」価格は3300円。最新鋭機の鋭角的なラインを実感たっぷりに表現。装備は増槽タンク、AIM-9Xサイドワインダー、AIM-120C AMRAAMを用意

センサー、部隊マーク、搭載装備……3種の機体の違いが細かく確認できる

 「F/A-18F」、「F/A-18E」はスーパーホーネットと呼ばれるホーネットの発展型マルチロール機だ。Eは1人乗り。Fは兵装システム士官が乗り込む復座型となる。ベースとなるF/A-18C/D ホーネット(レガシーホーネットとも呼ばれる)は、1970年代にYF-16と新型戦闘機としての制式採用を争う競合試作機YF-17として生まれた。アメリカ空軍はコストの高いF-15を補う役割を期待し、単発エンジンのYF-16をF-16として採用した。

 アメリカ海軍は艦載戦闘機としてF-14を運用していたが、可変翼のためこちらもコストが高く、F-4から完全な変更ができないでいた。また、攻撃機のA-7の後継機も求めていた。新戦闘機計画なども進めていたが、最終的にYF-16と争っていたYF-17を採用、陸上戦闘機であったYF-17を艦載機化するための改造を施し、攻撃機としての能力も付加する形でF/A-18として完成した。

今回会場に展示されていたのはスーパーホーネットと呼ばれるホーネットの発展型マルチロール機。日本では山口県の岩国基地で整備が行われているが、このイベントのため飛来しその姿を見せてくれた
「F/A-18F」、「F/A-18E」、「EA-18G」の3種9機の機体。装備の違いなども確認できた
F/A-18F、Eは映画「トップガン マーヴェリック」でも大活躍した

 F/A-18は2つのジェットエンジンを搭載する双発の戦闘攻撃機である。陸上とは違い海上ではエンジントラブルにより海に落下してしまえば生存確率は大きく落ちる。1つのエンジンが死んでしまっても、もう1つのエンジンが稼働していれば飛び続けられる双発機を海軍は望んだ。また離着陸能力の底上げのため翼面積を大型化、エンジンも強力なものを搭載したため兵器の搭載能力が増しより幅広い作戦への対応が可能となった。

 そしてスーパーホーネットは1990年代、F-14の退役を見越して生まれることとなる。ステルス機の開発が大きな潮流となっていくものの、冷戦終了で軍事予算が制限される中、ホーネットを改修して時代に対応させようというプランが生まれる。この時代ホーネットは搭載兵器量の少なさ、航続距離の短さが指摘されており、これらを改良した上でステルス能力、電子戦能力を期待されていた。

 スーパーホーネットは機体を大型化、武装を搭載するハードポイントの追加、機内搭載の燃料タンクの増加などが行われている。翼も大きくなったため運動性は向上、一方で重量増加により加速性能は低下したといわれる。

 F/A-18F、Eは映画「トップガン マーヴェリック」でも大活躍した。会場での写真からディテールに迫っていきたい。エンジンや吸気口はカバーが掛けられており、内部をのぞき込めなかった。これらは異物が入れば飛行に支障を来すため、公開時はカバーを掛けておくのだろう。2つのエンジンの間に突き出しているのは「アレスティングフック」だ。空母着艦時、この棒で甲板上のワイヤーを引っかけることで機体のスピードを下げ着艦させるための装備だ。

 カバーで確認できないが吸気口はスーパーホーネットで改良された部分。ホーネットは楕円形だったものが、平行四辺形になった。内部にはレーダーブロッカーという仕掛けも入り、ステルス性が向上しているとのこと。

【エンジンノズルとエアダクト】
エンジンノズルにはカバーが掛かっていた。中央にアレスティングフックが突き出しているのが確認できる
吸気口にもカバーが掛かっている。四角い形状になっているのはスーパーホーネットの特徴だ

 筆者が興味深く最初に見たのが翼の下の「ランチャー」だ。ミサイルを取り付けるための装置で、F/A-18F、Eでは翼の下と翼端にミサイルが取り付けられるようになっていた。こちらは手が触れられるほど近くで見ることができた。ジョイントを接続するための金具も確認できた。この金具が動いてミサイルが本体から取り外れるのだろう。胴体の下の丸い大きなものは航続距離を延長するために燃料を入れる「増槽」だ。

【搭載装備】
ミサイルなどを取り付けるためのランチャー。金具なども細かく確認できる
翼端のランチャー。空対空ミサイルなどを装備する
ランチャー部分のアップ
機体下部には増槽を装備。追加燃料で航続距離を延長する

 機体を支えるランディングギアも興味深い。ごつい支柱とピストンで構成されているが、飛行機全体から見れば小さい。この装置が空母着艦時の機体を支えるというのは、驚きだ。機体の外装と全く違う塗装が行われているところも面白い。前方のランディングギアは内部ものぞき込むことができた。細かい装置が色々ついているのが興味深い。

 駐機状態の機体はフラップ(補助翼)が全開になっていた。驚いたのは水平尾翼。翼の後ろ側だけでなく、全体が、かなりの角度で曲がっていて“水平”では全くなくなっていた。ここまで大胆に動く物だというのは知らなかった。この尾翼の動きは高い機動性を感じさせる。一方で可動部分の負荷は凄まじそうだ。プラモデルだったら折れそうで怖い機構だと感じた。

 F/A-18F、Eの垂直尾翼は垂直ではなく、外側に向け開いた角度となっている。この構造はレーダー波を反射しにくくするためだという。翼の先には様々なセンサーがついている。赤いポイントは他の飛行機に自分の位置を知らせる衝突防止等とのことだ。垂直尾翼には所属部隊のマークが描かれていて、カッコイイ。

【ランディングギアと尾翼】
機体後部の主脚と呼ばれるランディングギア。機体重量をしっかり支えるだけでなく、空母への着艦時の強い衝撃にも耐えうる設計となっている
前脚、ノーズランディングギア。ライトや牽引するためのフックが見える
ノーズランディングギアのアップ
ノーズランディングギアの格納庫をのぞき込む。機体を支えるフレームや、様々な装置が見える
大きく展開しているフラップ(補助翼)。翼を大きくすることで揚力を得る。機体のブレーキにも使われる
F/A-18F、Eは水平尾翼そのものが大きく可動する
垂直尾翼。部隊マークが描かれている。尾翼上部にはセンサーが取り付けられている。赤いものは衝突防止灯だ
機体によって様々なマークが描かれていた

 コクピットは残念ながらのぞき込むことができなかったが、単座と復座が確認できた。機体によっては発達型前方監視赤外線(Advanced Targeting Forward-Looking Infra-Red, ATFLIR)ポッド「AN/ASQ-228」が確認できた。このポッドは様々なセンサーを内蔵しており、敵の脅威の識別判定やピンポイントの爆撃指示などが行える。映画「トップガン マーヴェリック」ではこのポッドを使って目標を指示し、後方の単座機がその目標に爆撃するという運用をしていた。

 見た目は先端が丸い装置だがより精密な攻撃を可能とする、F/A-18F、Eの最先端装備なのだ。

【コクピットとポッド】
単座と復座の機体が確認できる
複合センサーが内蔵されているAN/ASQ-228
センサーはシャッターで覆われていた。

 今回はF/A-18F、Eに加え、「EA-18G」の姿も見ることができた。この機体は外見上はほとんど変わらないのだが、役割としては「電子戦機」となる。電子戦とは敵の目や耳であるレーダーや通信波を妨害する戦いだ。EA-18Gは相手の索敵や連携能力を阻害し、味方を支援する戦闘機なのだ。

 F/A-18F、Eとの外見上の大きな違いは翼端に「AN/ALQ-218(V)」というポッドを付けていること。このポッドは電波発信源を精密に探知できるという。今回飛来した機体は翼の下に2つの増槽、機体の下に「AN/ALQ-99」戦術妨害装置を搭載していた。こちらは敵の通信波などを妨害する装置だという。3種の機体の装備の違いはとても興味深い。そして機体に描かれている様々なマークだろう。機体速度を測るためのピトー管なども確認でき細部をチェックするのは本当に楽しい。

【EA-18Gの装備】
翼端は電波発信源を精密に探知できるAN/ALQ-218(V)
機体下部には戦術妨害装置AN/ALQ-99を搭載
翼の下左右それぞれに増槽を搭載していた
【マーキングや機体ディテール】

 筆者は先日タミヤの「1/48 ロッキード マーチンF-35A ライトニングII」を作ったが、プラモデルを作ることで機体への知識が増したし、ディテールへの興味がわいた。今回実機を見ることでさらに細かく戦闘機の魅力がわかったと思う。

 実在の機械の魅力はやはり「機能美」だ。小さなセンサー1つ、油圧装置1つがそこに配置される理由があり、機能がある。目的のために取り付けられ、運用されて形を変えていく説得力がある。「どうしてこんな形をしてるんだろう?」、「どうしてここにこの機械がついているんだろう」という問いかけに、きちんとした理由があるのだ。その理屈が集まって、巨大な飛行機の形になっているというのは、改めて面白い。F/A-18F、Eのプラモデルを作りたくなった。

 モデラーにとっては運用されている機体のマーキングや、“汚れ”も興味深いのではないだろうか? 実際に訓練を繰り返し、厚木基地までの飛来した今回の機体は様々なところが汚れていたり塗装がかすれていた。こういったリアルな質感をモデラー達はどう再現するのか、ここも興味深い。

【参考書籍】
イカロス出版の「F/A-18E/F スーパーホーネット 世界の名機シリーズ」

 なお今回の執筆に関してはイカロス出版の「F/A-18E/F スーパーホーネット 世界の名機シリーズ」を参考にした。実物を見てからこういった本を読み、知識を深めるのはとても楽しい。実機への興味もさらに深まった。やはり“本物“を見るのはとても面白い。驚きがあるし、新しい知見が得られる。機会があればこういったレポートもまたお届けしたい。