特別企画

特大サイズのガンプラやフィギュアが出現! iPhoneの「Object Capture」でAR写真を撮ろう

【iOS 17/iPadOS 17】

9月19日 配信開始

 iPhoneに搭載されているオペレーティングシステム「iOS」は年々アップデートを重ね、毎年様々な新機能が追加されている。今年も9月19日に「iOS 17」が配信されたばかりだが、そのiOS 17に搭載されている新機能「Object Capture」が密かに話題を集めている。

 「Object Capture」は、iPhoneを用いて物体をスキャンし、3Dモデルとしてデータ化できる機能。本来は開発者向けの機能だが、この「Object Capture」を用いて、プラモデルやフィギュアを3Dモデル化することで、どこにでも3Dモデルを出現させて“AR写真”を撮ることができるのだ。

 そこで本稿では、iOS 17の「Object Capture」の利用方法からAR写真の撮影方法を紹介。手持ちのプラモデルやフィギュアを簡単に3Dモデル化して、等身大写真が撮れる「Object Capture」の魅力をお伝えしていく。

iPhone 12 Pro以降の“Proシリーズ”が必要。対象物を3周するだけの簡単スキャン!

 まずは「Object Capture」を利用する前に、お手持ちのiPhoneが「Object Capture」に対応しているか確認しておこう。「Object Capture」は「LiDARスキャナ」というセンサーを搭載したiPhoneもしくはiPadにて使用できる。具体的には2020年に発売された「iPhone 12 Pro」以降のiPhone Proシリーズ、2021年以降発売の「iPad Pro」が対応端末だ。

 Proという名前を冠していても2019年に発売された「iPhone 11 Pro」はLiDARスキャナを搭載しておらず、2020年に発売された「iPad Pro(A12Z搭載モデル)」はLiDARスキャナはあるが搭載しているチップの関係上、非対応となっているため注意が必要だ。なお、今回の検証では2022年発売の「iPhone 14 Pro Max」を使用している。

最新モデル「iPhone 15 Pro」の仕様ページより。「LiDARスキャナ」と呼ばれるセンサーが「Object Capture」の肝となる
同じく最新モデルの「iPhone 15」の仕様ページ。Proの名を冠さないiPhoneは「LiDARスキャナ」を搭載しないため、「Object Capture」は非対応だ
今回は筆者所有の「iPhone 14 Pro Max」を使用
画像では少々わかりにくいが、フラッシュから見てレンズの向かい側にある黒丸が「LiDARスキャナ」だ

 対応端末をお持ちの方は、搭載しているiOSが最新の「iOS 17(9月28日時点でiOS 17.0.2)」になっているか確認しておこう。まだアップデートしていない方は、ご自身の利用状況に合わせてアップデートを検討しておきたい。

 2020年以降のiPhone Proシリーズを所持していて、最新の「iOS 17」が必要と若干ハードルが高いが、これらの条件を満たした方は次のステップへ進もう。「Object Capture」に対応したアプリをApp Storeからインストールしておく。「Object Capture」は、APIと呼ばれるインターフェースとして「iOS 17」に搭載されている。だがApple純正のカメラアプリは「Object Capture」に対応していないため、App Storeから対応したアプリをダウンロードする必要があるのだ。

 既にApp Storeには「Object Capture」に対応したアプリがいくつかリリースされている。今回は日本語に対応しており、シンプルなUIが特徴的な「Photogrammetry」を使用した。App Storeにて無料でダウンロード可能で、小さな広告が表示されるが、アプリ内課金はない良心的なアプリだ。

搭載されているiOSは設定アプリの「一般」→「情報」→「iOSバージョン」より確認できる
「Object Capture」対応アプリとして今回は「Photogrammetry」を使用した
シンプルなメニュー画面。小さな広告が表示されるだけで、追加料金などは発生しない

 早速「Photogrammetry」を使用して、プラモデルやフィギュアを3Dモデル化していく。メニュー上部の「+」ボタンを押すと新規プロジェクトを作成でき、名前を入力する欄が表示される。今回は、アニメ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」よりプラモデル「HG 1/144 ガンダムエアリアル」のYOASOBIコラボステッカー仕様を3Dモデル化する。

 名前を決めて「作成」を押すとカメラが起動。表示されている枠にスキャンしたいものが入るよう調整して「続ける」を押すと、ガンダムエアリアルが四角い枠に囲われた。これはスキャンする範囲を決める枠で、ガンダムエアリアルが入るようこの枠の長さ・幅・高さを調整する必要がある。3次元的に表示されており、iPhoneを動かすと枠からはみ出ているか判別できるので、非常にわかりやすい。

 枠の調整が済んだら「キャプチャ開始」を押して、スキャン開始。即座に点描のような3Dモデルが表示されるが、気にせず「ガンダムエアリアル」を中心にiPhoneをゆっくりと一周させる。この際、iPhoneが対象物に近すぎる場合や、明るさが足りない場合は注意してくれるので、画面の指示に従ってスキャンしていこう。

 なお、スキャン時は“iPhone本体を持って”プラモデルやフィギュアの周りを一周する必要がある。なるべく広いスペースを確保しておきたいほか、iPhone本体を固定して“プラモデル本体を回転させてもスキャンできない”ので注意が必要だ。

メニューの「+」ボタンを押すと新規プロジェクトを作成可能
作成するとカメラが起動。四角い枠の中にガンダムエアリアルを収めて「続ける」を押す
するとガンダムエアリアルを囲うように四角い枠が表示。エアリアルが収まるように枠のサイズを調整する
初期状態では少しだけシールドがはみ出ていたので調整
準備が整ったらキャプチャ開始!
近すぎると画面に警告が表示される
ガンダムエアリアルの周りを丁寧に回っていこう
スキャンしている様子
必要に応じてLEDライトも発光できる。今回は撮影ボックスを使用したが、スペースが狭いのでブラインド操作が必要になったのが悔やまれる

 「ガンダムエアリアル」の周りを一周すると1回目のスキャンが終了。すると「このオブジェクトは向きを変えて撮影するのに適しています」と表示され、今度は向きを変えて仰向けの状態で1周スキャンする。2回目のスキャンが終わると、今度はうつ伏せの状態でスキャンし、合計で3周するとスキャン完了だ。

 なお「ガンダムエアリアル」は仰向けやうつ伏せなど向きを変えることができたが、繊細なパーツのあるプラモデルやフィギュアは、横倒しを避けたい場合もある。その際は向きを変えずに「別の高さからさらにキャプチャ」を選択して、1回目より低いまたは高い位置からスキャンさせることができる。プラモデルやフィギュアの破損は、持ち主にとって避けたい出来事のため、この点は安心だ。

 また、今回はスキャンしている時に撮影ボックスを使用しているが、本来であれば撮影ボックスやグリーンバックなどは必要ない。スキャン時に他の物が写っていても自動で切り取ってくれるので、精度の高い3Dモデルを生成してくれる。もちろん、背景を1色で統一したりすると、より良い3Dモデルを生成してくれるだろう。

1回目のスキャンが終了。対象物の向きか、スキャンする高さを変えて2回目・3回目のスキャンを行なう
「ガンダムエアリアル」の場合は向きを変えてスキャンを行なった
画面に表示される点群が面白い

 スキャンが完了すると、あとの処理はiPhoneが行なってくれる。スキャン終了後に「モデル生成」をタップすると、前処理中→画像を処置中→点群を生成中→メッシュを生成中→テクスチャマッピング中→仕上げ中の順で自動的に処理。3回のスキャンから3Dモデルの生成まで、全部で15分ほどで終わった。

 だが、スキャンから3Dモデルの生成には負荷がかかり、バッテリー残量がかなり減っていくほか、iPhone本体も発熱する。外出先でのスキャンは避け、充電しやすく涼しい自宅であらかじめ3Dモデル化しておくことをオススメする。

 生成された3Dモデルは、iOS純正「ファイル」アプリの“このiPhone内→Photogrammetry”より「Model」というフォルダに保存される。早速、生成された「HG 1/144 ガンダムエアリアル」の3Dモデルを見ていこう。

「ガンダムエアリアル」のスキャン完了! モデル生成をタップすると……
あとはiPhoneが自動で処理してくれる
生成された3Dモデルは、iOS純正アプリの「ファイル」より確認できる

街に出かけて“AR写真”を撮りたくなる!iPhoneでホビーを簡単3Dモデル化

 続いては作成した3Dモデルを確認しながら、ARを用いた写真を撮っていく。先ほどの「ガンダムエアリアル」の3Dモデルは「.usdz」という拡張子で保存されており、「ファイル」アプリに保存されている「ガンダムエアリアル.usdz」をタップするだけで、自動的にiOSの「AR Quick Look」というアプリが開く。

 「AR Quick Look」では、作成した3Dモデルを仮想空間上で見るか、AR(拡張現実)を用いてディスプレイ越しに現実世界へ登場させるか選ぶことができる。「ガンダムエアリアル」の3Dモデルを様々な角度から見るだけでも楽しいが、真価を発揮するのはやはり“AR”だ。

iOS純正の「ファイル」アプリ。先ほどの「ガンダムエアリアル」の3Dモデルが.usdzという拡張子で保存されている
こちらが先ほどスキャンした「ガンダムエアリアル」の3Dモデル
多少の粗はあるが、この3Dモデルが15分ほどでつくれるというのが驚きだ
もちろん3Dモデルなので、グルグルと回すことができる

 ARを通して、現実世界に現れた“第二のガンダムエアリアル”は、実物と並べても遜色のないほどリアル。もちろん、スキャンした時の光源や環境でばらつきがあるため、ある程度の見分けはつく。だが筆者の場合は、エアリアルの角度を変えようとして、ディスプレイ越しに3Dモデルを触ろうとしたら実体がなかったという“事故”が撮影中に何回か起きた。

 あとは、シャッターボタンを押して写真を撮るだけ。さらに、ARで表示している3Dモデルは拡大させることもできる。最大1,000%(=10倍)までと制限はあるが、「HG 1/144 ガンダムエアリアル」であれば1m40cmほどの高さとなるため、現実世界に溶け込む「ガンダムエアリアル」の姿を撮ることができそうだ。

ARを用いて撮影した3Dモデルの「HG 1/144 ガンダムエアリアル」
空間を認識して3Dモデルが留まるので、アップの写真を撮ることもできる
実物(左)と3Dモデル(右)で記念撮影
角度を変えようとして、3Dモデルの方を触ろうとする“事故”も起きてしまった。こういった写真を撮る時はディスプレイ越しではなく、ちゃんと現実世界を見よう
最大1,000%まで拡大も可能。巨大化した「HG 1/144 ガンダムエアリアル」の姿も撮影できる

 ここからは、先ほどの「HG 1/144 ガンダムエアリアル」の3Dモデルのみならず、筆者宅にある様々なフィギュアを「Object Capture」で3Dモデル化し、散歩がてら「AR Quick Look」で撮影したAR写真を紹介。この機能を用いると、様々なアニメ・ゲームのキャラクターが日常生活に現れたような写真が撮れるので、非常に楽しい。

 だが「AR Quick Look」は、通常のカメラアプリとは異なり画質に若干の粗があるほか、スキャンした3Dモデルの色味などは簡単に補正できないため、風景によっては3Dモデルが浮いてしまうことがある。また2つ以上の3Dモデルを同時に配置できないため、バトルシーンの再現なども少し難しい。このあたりは今後のアップデートに期待したい。

 一方で、LiDARスキャナが測距できない範囲に3Dモデルを設置すると、稀に1,000%よりも大きなサイズ感でAR写真を撮ることができ、リアル感が増す時もある。ここに紹介する画像は、以上の点を踏まえた上でご覧頂きたい。なお、作中の設定と実寸が合わない場合もあるが、ご容赦いただきたい。

アイスコーヒーとガンダムエアリアル(HG 1/144 ガンダムエアリアル)
エレベーター待ちをするガンダムエアリアル(HG 1/144 ガンダムエアリアル)
街を歩いていると仮面ライダーがサイクロン号で疾走していた! (「S.H.Figuarts 仮面ライダー(シン・仮面ライダー)」&「S.H.Figuarts サイクロン号(シン・仮面ライダー)」)
後ろを振り返るとリンクが声をかけてきた(スタチュー ゼルダの伝説 Nintendo TOKYO)
ヴィランと戦うデク。筆者がヒーローを撮る野次馬みたいになってしまう(フリーイング 1/4スケール「緑谷出久」)
この日は野球観戦に……と思ったら第一種戦闘配置!?(METAL BUILD エヴァンゲリオン初号機)

 アプリを1つダウンロードするだけでプラモデルやフィギュアを3Dモデル化でき、そのままAR写真を撮ることができる「Object Capture」。従来であれば3Dスキャンには大きなハードウェアが必要だったが、これら全てをiPhone1台で行なえるというのは、便利な時代になったものだ。

 「このフィギュアやプラモデルが実物大にならないかなあ」というのは、多くの人が一度は夢見たことだろう。皆さんもiOS 17×iPhoneの組み合わせでお手持ちのホビーを3Dモデル化し、日常生活を送る推したちの姿を撮影してみてはいかがだろうか。

3Dモデル撮影中の様子。傍から見ると“虚無を撮っている”と思われそうだ