特別企画

最小レイアウトで鉄道模型を走らせる! 路面電車「宇都宮ライトレール」を自宅で愉しむ

【宇都宮ライトレールHU300形HU301 LIGHTLINE】

3月再販

価格:5,500円

 鉄道模型には独特の魅力がある。鉄道が走る姿は様々な楽しみ方があるが、精密に再現された鉄道模型が走る姿は、現実の走る列車を見る興奮を蘇らせてくれるし、自分の手でその風景を再現するというのがたまらない。

 筆者は小学生の頃から鉄道模型に親しんでいる。いまや半世紀を越えて楽しんでいることになる。中学生の頃はブルートレインがはやっていたので、20系や24系といった寝台車を中心に集めたりして走らせていた。ただし走らせるといってもレイアウトを作るわけではなく、レールを出してきては絨毯の上でだ円形につなぎ、走らせたあとは片付けるといった程度だ。

 しかしそれだけだと何となく寂しい。鉄道模型を楽しんでいる人なら、一度は「レイアウト」を作って楽しんでみたいと思うもの。レイアウトとはプラモデルのジオラマのように風景を再現した上で、そこで実際に鉄道模型が走れるようにレールを敷いたものだ。

KATOのページで掲載されているレイアウトプラン。レイアアウトとは風景を表現するジオラマに、鉄道模型が走れるようにレールを設定したものだ

 筆者は以前6両編成の模型が走る「1畳レイアウト」を作ったことがあるが、3LDKのマンションの部屋にそんなばかでかいものを常時置いておけるわけでもなく、家族から邪魔者扱いされ、仕方なく壊したという経験もある。

 しかしやはりレイアウトは男のロマン。大きいのがダメなのなら小さいのを作ればいい。今回、ある程度の大きさを持つものの、普段は物置にしまっておき、楽しみたいときだけ取り出して遊べるサイズを目指してレイアウトを作成してみた。

 小さなレイアウトに何を走らせるか? 調べてみるとトミーテックの鉄道コレクションで「宇都宮ライトレールHU300形HU301 LIGHTLINE」が3月に再販されるということを知った。「宇都宮芳賀ライトレール線」(以下、宇都宮ライトレール)は、2023年8月に開業したばかりの路面電車だ。日本国内の路面電車としては、富山県を走る万葉線以来75年ぶりの新規開業路線となる。目新しいところでもあるし、できるだけ宇都宮ライトレールの雰囲気を醸し出したレイアウトに挑戦することにした。

筆者が撮影した宇都宮ライトレール。宇都宮駅東口停留所にて

「どんな風景を走らせるか?」、レイアウトプランを練る

 レイアウトを作るのに大事なのは、「具体的な線路のイメージ」だ。トミーテックのサイトには路面電車用レール「ワイドトラム」のレイアウト例がPDFでアップされているので、これを参考にしてみた。このレイアウト例には、「ワイドトラム エンドレスセット+基本セットの発展例」「ワイドトラム鉄道模型運転セットの発展例」「ワイドトラム 基本セット+十字クロスセットの発展例」の3系統15種類ほどのレイアウト例がある。大まかなレイアウトサイズも書かれているので、作り上げる際の目安になった。

 レイアウト例で紹介されていたのは小型楕円形のものからクロスレールを使って8の字にするもの、それをもっと発展させてクローバー型にするものなどさまざまだ。ただし今回はなるべく小さいもの、かつレイアウトとして楽しめるものを目指したいということで、「MA-WT」と「MX-WT」を2個使うというものをチョイスした。単線でぐるぐると周回するパターンだ。

トミックスが公開しているレイアウトプラン。今回は「STEP4」の「MA-WT+MA-WT+MX-WT+MX-WT」を利用した

 ただし宇都宮ライトレールには高架区間もあるので、できればそれを再現したいということで少し改造した。改造には「トミックス鉄道模型レイアウターNXF2023」を利用した。そのレイアウトは以下の通りだ。

 高架部分を作るときには注意が必要だ。トミックスのトラムレールは半径が最大177mmなのだが、通常の線路であるFineTrackレールの場合は最小半径が243mmなので、半径の差が大きく、どうしてもつじつまが合わなくなる。そういった箇所をつなぐため、バリアブルレールを利用した。最終的に使用した部品は以下の通りだ。

【レール】

部品価格(税込み)
ワイドトラムミニレールセット基本セット(レールパターンMA-WT)2個6,600円
ワイドトラムミニレールセット十字クロスセット(レールパターンMX-WT)2個6,600円
TOMIX 高架橋付レールHC243-45-PC(F)(4本セット)1,892円(税込)
TOMIX 高架橋付レールHS99-PC(F)(4本セット)1,573円(税込)
TOMIX 高架橋付レールHS140-PC(F)(4本セット)1,518円(税込)
TOMIX バリアブルレールV70(F)1902円(税込)
TOMIX ストレートレールS70(F)(4本セット)726円(税込)
TOMIX ステップ(2個入)440円(税込)
TOMIX PC勾配橋脚(10本1組)1,188円(税込)
21,439円

 製品は4本入りなどで販売されているため、今回のレイアウトではどうしても余ってしまう線路もあるのは致し方ないところか。なお値段はあくまでも希望小売価格なので、Amazonなどで購入するとこれよりも少し安い価格で販売されているが、予算の目安となるだろう。

トミックスのWindows向け「鉄道模型レイアウターNXF2023」を利用して設計したレイアウト

「宇都宮の景色に近いストラクチャーを!」、レイアウトの作成

 レールを引くことについてはこれで解決できた。あとはレイアウトを組み上げるだけだ。できるだけ宇都宮ライトレールの雰囲気をそのままに作り上げたい。宇都宮ライトレールは路面電車としての道路と並行する場所に加えて、先ほど述べた通り高架部分もある。また川を渡る高架もあるので、これもできれば盛り込みたいところだ。そこで高架部分に川を作ることにした。

 ストラクチャーだが、なるべく宇都宮ライトレールのシーナリーに近づけたいが、ぴったりのストラクチャーは販売されていない。そこで雰囲気だけでもなんとか近づけるよう、ワイドトラムレールの部分にはトミーテックの「建物コレクション」からストラクチャーをチョイスし、マンションやオフィスビルを配置する他、郊外部分には田んぼ、そして芳賀町にある工業団地のイメージで工場を置いてみた。

宇都宮駅近くの市街地を走る宇都宮ライトレール
信号には「電車用」という黄色矢印のものが追加されている。余談だが軌道が道路中央を走っているケースでは全てが矢印信号だ。左折と直進に合わせて電車用の直進矢印信号があり、自動車の右折用矢印信号は左折と直進が全て赤になった状態でのみ表示されるようになっている
沿線に広がる田園風景
鬼怒川を渡る高架部分
かなり高い場所を走る
取材に行った日は晴れていて雪の日光白根山や赤城山が見えた
宇都宮ライトレールには、芳賀町工業団地管理センター前とかしの森公園前の間に碓氷峠と同じ60パーミル(1000m走って60m上がる)という急勾配が存在する。そこを一生懸命登っている宇都宮ライトレール
沿線にあるショッピングモール
宇都宮ライトレール終点近くにある本田技研工業の工場群

 レイアウトには川や道路が必要となるが、道路についてはKATOから販売されている「ジオラマ入門キット」を利用した。また木を配置するために同じくKATOから販売されている「広葉樹キット(大)」「針葉樹キット(大)」を使うことにした。

KATOの「広葉樹キット(大)」。価格は3,190円

 ジオラマ入門キットには道路や川を作成するための塗料やリアリスティックウオーターといったアイテムが同梱されており、これを使えば川や道路が簡単に作れるようになっているのでオススメだ。広葉樹キット/針葉樹キットについても同様で、葉を表現するためのフォーリッジが同梱されているので、これを使うだけで樹木が作成できる。そして川だが、KATOのリアリスティックウォーターと波音カラーを利用して表現した。

 ところでレイアウトだが、今回の場合はサイズが800×700mmでちょうど収まる形となっている。そこで何でレイアウトベースを作るかなのだが、板を加工するのは面倒くさいので、軽量化を図るためにも発泡スチロールを利用した。今回は、いつもは物置にしまって置いて楽しむときだけ取り出すという方針なので、軽い方がよいだろう。

 発泡スチロールだが、「発泡すちろーる屋さん」というサイトがあり、ここでは指定したサイズに切り分けて販売してくれる。そこでここに発注をし、それをベースとした。発注したサイズは800(縦)×700(横)×30(厚さ)mmである。30mm程度の厚みがあれば、ある程度の耐久性は保てる。

注文で大きさを指定した発泡スチロールが購入できる「発泡すちろーる屋さん」

 レイアウトで芝や土の表現したい場合、緑色や茶色のパウダーをまいたりして作るのだが、広範囲に及ぶ場合は正直面倒だ。そこで今回はヨドバシカメラで購入した「ジョルダン101 [芝生マット 75×100cm ライトグリーン]」をレイアウトベース全体に貼り、基本的には芝が生えている状態とした。

「ジョルダン101 [芝生マット 75×100cm ライトグリーン]」。写真は使用例で動物フィギュアを配置している

 今回用意したストラクチャーは以下の通りだ。

【レイアウト】

品名価格(税込み)
生食パン専門店 タピオカドリンク屋3,080円
焼肉屋4,180円
家電量販店3,080円
デザイナーズ・アパート2,420円
交差点の建物B21,980円
円筒形ビル31,650円
駅前商店A21,980円
倉庫B2,750円
ジョルダン101 [芝生 マット 75×100cm ライトグリーン]2,570円
アーテック 55611 [ミニチュアジオラマ素材 田んぼの稲 黄金色]2個2,200円
ジオラマ入門キット 道路を作る2,805円
広葉樹キット(大)3,190円
針葉樹キット(大)3,190円
リアリスティックウォーター3,850円
波音カラー ターコイズ770円
ジオラマリキッドカラー マットブラウン1,210円
発泡スチロール(送料込み)2,607円
43,512円

「樹脂を流し込み川を作る」、木や道路で作り込んでいく

 では早速実作業に移っていこう。まずは川を作ってみたい。川を作るのは高架部分なので、大まかに川の幅を決めたら発泡スチロールを堀り、川に深さを付けていく。川の両岸にバラストを巻いて砂利を表現する。川底部分はジオラマリキッドカラーを塗布する。これが乾いたらリアリスティックウォーターに波音カラーを混ぜて水色にし、これを流し込んで終了だ。

川を掘ったらバラストをまき、ジオラマリキッドカラーで川底を塗る
リアリスティックウォーターに波音カラーを混ぜて水色の液体を作る
リアリスティックウォーターを流し込む

 続いては道路の作成だ。こちらもジオラマ入門キットに同梱されている舗装テープで道路の形を作ったら、その上にプラスターを塗っていくだけで作成できる。プラスターが乾いたらトップコート アスファルトを塗り、道路を表現していく。

まずは舗装テープで道路の場所をバミる。その上からプラスターを塗り、へらで平らにする
舗装テープを外す
最後にトップコート アスファルトを塗ってアスファルトを表現する

 川や道路ができたら広葉樹、針葉樹を配置する。それに続いて行うのは線路の固定だ。それに続いて建物を配置していく。線路や建物については木工用ボンドを底面に塗って固定した。

樹木や建物を設置する。簡易的にするために両面テープで止めた
レイアウトを俯瞰で見てみる

車両に動力ユニットをはめ込み、車両を作成する

 続いては線路を走る重要な登場人物である宇都宮ライトレールの車両そのものを作り上げていく。と言っても「鉄道コレクション 宇都宮ライトレールHU300形 HU301 LIGHTLINE」(以下、HU301)に動力ユニット「TM-LRT04(LRT用3連接C)」をはめ込むだけなので簡単だ。それぞれの価格は以下の通りとなる。

【車両】

品名価格(税込み)
鉄道コレクション 宇都宮ライトレールHU300形 HU301 LIGHTLINE5,500円
TM-LRT04(LRT用3連接C)4,840円
10340円

 なおHU301は2024年3月末に再生産分が発売されることになっており、Amazonをはじめとした模型を販売している各サイトでは現在予約を受け付けている。ただし、中には2023年に発売されたものをとんでもないプレミア価格で販売しているケースもあるので、間違えないように注意しよう。

鉄道コレクション 宇都宮ライトレールHU300形 HU301 LIGHTLINE
HU301にはパンタグラフも取り付けられており、可動式だ
前面の拡大。行き先表示などはすでに取り付けられているが、シールも添付されており、表示を変更できる
HU301には停留所(電停)が付属する
TM-LRT04(LRT用3連接C)
TM-LRT04は先頭車両と中央車両で集電して走るタイプだ。モーターは先頭車両に取り付けられているが、駆動用のシャフトが中央車両まで伸びており、先頭車両と中央車両で駆動して走る
TM-LRT04底面。駆動する2両の車輪にゴムが巻かれている

 さて、これで全てのパーツが完成したことになる。パワーパックを取り付けて運転してみよう。このパートはムービーでご紹介する。

【路面電車「宇都宮ライトレール」をテーマに「レイアウト」に挑戦!】
現実の時速50kmをイメージした速度でレイアウトを走行させてみる

 今回のレイアウトで自分なりにこだわったのが高架部分だ。川を渡るように配線できたのがよかった。また市街地の所はレールに合わせてストラクチャーを配置したので、それなりに市街地のように見えるだろうか。今回は制作期間が2週間と短かったので追い込み切れていない部分もあるのが残念だが、ひとまずはまとまりとして提示できたかと思う。

線路の配置上、森の中に設置することになった電停。かしの森公園前のようなイメージ
高架部分にさしかかる宇都宮ライトレール
川を渡る宇都宮ライトレール
市街地を走る宇都宮ライトレール

小型レイアウトを作る楽しみ

 ここまで宇都宮ライトレールのレイアウトを作ってみたが、だんだんとできていく様は本当に楽しい。見ていくと分かるようにそれなりのコストはかかるものの、川や道路を作るのは工作っぽくていい。そしてストラクチャーや木を配置していくとどんどんとそれなりに見えるようになっていく。まだレイアウトを作ったことがないのであれば、これを機会に作ってみてはいかがだろうか。