特別企画

【ドローン空撮】九十九里浜の南端「釣ヶ崎海岸」で美しい海岸線と激しい波を撮影する

 ドローンはやはり広い空間を思いっきり飛ばしてこそ本当の楽しさがある。大空を思いのまま飛び、雄大な風景を眺める。飛行と空撮の醍醐味はドローンを飛ばせる広大な空間あってこそだと思う。

 一方でドローンの飛行に関しては明確な法規制があり、飛ばすためには幾つもの注意点や、飛ばす場所によっては許可を取る必要があるホビーである。弊誌で掲載したドローンの特別企画では、100g以上のドローンに関して、飛ばすための基本的なルールと、どうしてそういったルールができたかを解説し、ルール内での飛行の一例として「自宅上空の飛行」をしてみた。

 ドローンを飛ばすことになれてくるともっと色々な場所で飛ばしてみたくなる。外に出れば「ここでドローンを飛ばせそうだな」と考えることが多くなった。今後ドローンを飛ばしたい、購入したいという人の参考になるように、どうすればドローンを色々な場所で飛ばせるのか、実際に手順を踏んで実現してみよう。というのが今回の「ドローン空撮」のテーマである。

 今回、ドローンの飛行区域として筆者の地元・千葉県一宮町の観光名所の1つである「釣ヶ崎海岸」で飛行許可を取り、空撮を行った。その模様をレポートしたい。

今回、一宮町の観光地「釣ヶ崎海岸」でドローンを飛行させた

町の「産業観光課」に連絡を取り、飛行の許可を得る

 最初に今回の飛行場所である「釣ヶ先海岸」を紹介したい。釣ヶ崎海岸は、JR外房線一宮町駅から東南の東浪見(とらみ)とよばれる地区にある。房総半島東側の弧を描いているような地形である「九十九里(くじゅうくり)浜」の南端に位置する場所だ。

 釣ヶ崎海岸は一宮町町民にとって、毎年秋に行われるお祭り「上総十二社祭り」の大きな山場となる、御神輿を海に向けて進める場所として親しみのある場所だ。「上総十二社祭り」は、「裸祭り」とも呼ばれ、祭り装束に身を包んだ男女が上総の一宮である玉前(たまさき)神社だけでなく、5社9基の神輿を担ぎ、海に向かって進む。町が大きく盛り上がるお祭りだ。

一宮町の「上総十二社祭り」では、5社9基の神輿が釣ヶ崎海岸から海に入っていく。写真は玉前神社のHPで公開されているもの

 この東京2020オリンピックサーフィン競技の会場「釣ヶ崎海岸サーフィンビーチ」に選ばれた。オリンピックそのものはコロナ禍のため、無観客で行われたが、一宮海岸と釣ヶ崎海岸はサーフィンの名所として広く知られ、十数年サーフィンを目的とする移住者が増加している。オリンピック会場となった釣ヶ崎海岸はきれいに整備され、観光案内施設やシャワー施設が建築された。オリンピックを記念したモニュメントも建てられている。

釣ヶ崎海岸がオリンピック会場となったことを記念するモニュメント

 今回、この釣ヶ崎海岸をドローンの飛行場所に選んだのは第一は雄大な海の景色が楽しめること。オリンピックのサーフィン会場として知られた場所であることが大きい。何よりも建物などがない広い空間でドローンを飛ばしてみたかった。

 ドローンは「上空150m以上の空域」、「空港周辺の上空」、「人口集中地区の上空」以外の場所ならば国交省へ申請なしで飛ばせる。ただし、土地の管理者がいる地域での飛行は管理者の許可が必要だ。釣ヶ崎海岸の管理は「一宮町産業観光課」が行っている。

一宮町役場の公式ページ。撮影に関する手続きが公開されている

 一宮町では「テレビや雑誌の撮影の相談」という形で手順が設定されており、連絡を取ったところそのフローに従った申請を求められた。最初に提出したのは「企画書」である。ドローンを釣ヶ崎海岸で飛ばしたいこと。その際、観光案内所「ステラ釣ヶ崎」の前は人が多いため、そこから北の区域を飛行範囲として指定し、早朝の7:30~9:00までで撮影させて欲しい、という趣旨の企画書を作成した。

 撮影は10月22~24日のいずれかで行うという形にした。ドローンは雨天はもちろん、曇天でもGPSの受信に支障をきたし、安定した飛行ができない場合がある。さらに風が強い日も飛ばせない。天気予報で晴れが予想でき、風も吹かない期間を考えて日にちを考えたのだ。

 産業観光課は企画書を受理し、返信で「砂地使用届」という書類を送付してきた。こちらは一宮町町長宛に砂地の使用を申請する書類で、必要事項を記入するだけの書類となっていた。飛行場所はグーグルマップの取り込みで、飛行区間を申請するという簡素なものでOKとのこと。同時に「誓約書」も用意されており、「騒音に注意すること」、「海岸を損壊したり、汚損しないこと」、「危険物を持ち込まないこと」など10の項目の遵守が求められた。最初は役場に行って申し込むといったことを考えていたのだが、メールのやりとりだけで撮影許可が得られた。

申請は「砂地使用届」と、「誓約書」に必要事項を記入し、グーグルマップの画像も添付した

 次章で撮影した映像をお見せしたい。海岸の美しさを実感できる映像が撮影できたと思う。ドローンの空撮の魅力を感じて欲しい。

釣ヶ崎海岸を飛ぶ! 九十九里浜南端ならではの絶景

 とにかくまずは映像を見て欲しい。九十九里浜は日本で最大級の砂浜海岸であり、崖などに遮られない砂浜がおよそ66kmも続く。釣ヶ崎海岸はその南端付近にあり、北に進むことで広大な砂浜地帯を一望できる。その雄大な景色はドローンでの空撮によってさらに魅力的になる。

【ドローンで千葉県一宮町・釣ヶ崎海岸を飛ぶ!】

 2日前が強風だったためか海の波は細かく荒かった。サーファーの数も少なく、彼等の頭上を飛行するようなことなくドローンの飛行、空撮をすることができた。自宅上空だとどうしても飛行区域が限られてしまうため、飛行範囲は注意していたが、海岸では大きな弧を描いてドローンを飛ばすことができた。

 筆者のドローン「DJI Mini2 SE」はDJIの空撮ドローンの中では小さい機種で全長約20cm、重量は約249gだ。小型だが非常に安定した飛行が楽しめる。飛行は快適なのだが遠距離を飛ばすと見失ってしまう可能性がある。ドローンがカメラで撮っている映像はコントローラに接続されているスマホで確認ができるため、どこを飛んでいるかはリアルタイムに確認はできるのだが、法律でドローンは目視での飛行が義務づけられているためドローンが見えなくなるような遠距離までは飛ばせないので注意しながら飛行した。

今回飛行した「DJI Mini2 SE」。全長約20cmの小型ドローンだ

 それでも広大な場所でドローンを飛ばす爽快感はとても大きい。「DJI Mini2 SE」は最高時速で60km/h以上も出る。高速でドローンを飛ばし、海の上で旋回する。ドローンの飛行での旋回はドリフト走行のように大きくバンクする。どこに機首が向いているかを考えながら方向転換していくその操縦感覚が楽しい。

雲間から太陽が出て明るい海を撮影できた

 泳いでは簡単にはたどり着けない海の沖の方まで一瞬に飛行し、その上を自由に飛び回ったり、砂浜上空を高速で飛ぶ体験は本当に爽快で楽しかった。筆者にとって海岸は子供の頃から慣れ親しんでいる場所だが、ドローンを飛ばすこと、その空撮映像を見ることで全く新しい楽しさを見つけることができた。

 今回撮影に要した時間はおよそ1時間、飛行そのものは約15分で2回行った。「DJI Mini2 SE」は稼働時間が長くなった「インテリジェントバッテリー」を搭載し、スペック上ではおよそ40分の飛行が可能だが、初めての場所でもあるのでバッテリー残量が40%くらいで飛行を取りやめ、予備のバッテリーに交換し再度飛んだ。今後の撮影も考え今回予備バッテリーを購入したのだが、用意して置いて良かった。

 先ほど見せた映像は2回目の飛行である。1回目は太陽が大きな雲に覆われてしまいかなり暗くなってしまった。雲のあるなしでどのくらい風景が違うかも見て欲しい。15分ほどでも大きく景色が変わる場合がある。その場での状況変化も空撮の楽しさだと実感した。

【雲が日を遮る釣ヶ崎海岸上空をドローンで飛ぶ】

 釣ヶ先海岸はかなりの人気のスポットで、早朝でも出社前や朝の散歩で駐車場を訪れ、海を眺める人が多かった。撮影後には犬の散歩をする人もいた。ドローンは人の頭上を飛ばないように注意しなくてはいけないので、人のいない時間、場所をより考えなくてはいけないと感じた。

 今回、きちんと土地の管理者に許可を取ることで飛ぶことが可能なことがわかった。海岸で思うままドローンを飛ばすことができたのはたまらなく楽しい体験だった。区域を管理しているのは様々な組織があり、手続きは異なる。一方で飛行を許可している「ドローン飛行練習場」といった場所もある。今後も色々な場所でドローンを飛ばせるか、レポートしていきたい。