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「エアソフトガン超入門」 第7回:2021年電動ガン30周年に新しい波が来る! 東京マルイが描くエアソフトガンの未来

「実銃への憧れ」にこだわり続ける東京マルイのポリシー

 ここからは「エアソフトガンの未来」に対して島村氏に聞いてみた。ここでは東京マルイの今後の商品の姿勢をまとめてみたい。ユーザー層が広がっていく中、「銃の玩具」というエアソフトガンへの要望も幅広くなりつつある。「銃としてのリアリティにこだわらなくては良いのでは?」という方向性だ。

 「サバイバルゲームを遊ぶにはもっと軽い方が良い。銃の形にもこだわらない。実銃の形をしていなくても弾が出れば充分遊べるのではないか?」。敢えて極端に言えば、「実銃を模した玩具」の方向性を不要だという声もあるという。しかしやはり東京マルイは「実銃への憧れ」は今後も重要視していきたい方向性だと島村氏は語った。

 実銃は無骨で、重い。火薬の爆発で弾を撃ち出すそのエネルギーに耐えるため堅牢な構造が求められ、素材も鉄が多用される。昨今では軽さを重視した樹脂部品が使用されることも多くなっているものもあるが、実弾そのものが重い。この重さこそが“リアルな感触”を生む。法律や自主規制でエアソフトガンは樹脂を多用しているが、重さは重要なファクターである。

 そして“銃としての理屈”だ。どうすれば薬莢の雷管を叩き火薬が爆発し弾が発射されるのか? どのような構造なら発射時のガスが銃から排出されるか? 引き金を引くとハンマーが打ち付けられるダブルアクション、セイフティの構造、照準器……実銃は1つ1つの機構、そして部品にその機構が取り付けられた理由、その形をしている理由がある。実際に使っていく中で違う形が求められ、変化していく銃もある。東京マルイの商品はその“理由”までもこだわって商品化を行なっているのだと、島村氏は語る。

 アサルトライフルM4の東京マルイカスタムとしての「次世代電動ガン MTR16」。オートショットガンの機構を応用し、拡張性を考えた設計にした「SGR-12」など、実銃が存在しない東京マルイオリジナルデザインの商品もあるが、これらは「実銃がもし存在しているならばこういう形になる」という、こだわりを込めた設計が成されている。

【次世代電動ガン MTR16】
2018年9月に登場した「次世代電動ガン MTR16」。実銃は存在しない東京マルイオリジナルカスタム。後に東京マルイは実銃でこのカスタムを制作している

 また、アニメ「SAO オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」に登場する「P-90 バージョン・レン」と、「AM .45 バージョン・レン “ヴォーパル・バニー”」。ゲーム「バイオハザード」との様々なコラボレーションの銃といった架空の銃をモチーフとした商品も販売しているが、これらはまずモデルとなる実銃があるからこそ商品化をしているという。

【P-90 バージョン・レン】
こちらも「SAO オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」に登場する銃だが、実銃の「P-90」があるからこその商品化だ

 アニメやコミックなどクリエイターがデザインした銃は人気があり、東京マルイにも企画が持ち込まれたことがあるが、殆どがGOサインが出ないという。かつてとある著名デザイナーによるオリジナルデザイン銃の製品化企画が持ち込まれた事があったが、弾の出る構造や、マガジンの位置など、実銃としての理屈に合わず実現しなかったとのこと。

 そもそもBB弾を発射することが前提なので、それができない構造はモデル化できない。またそのようにデザイン修正をすると、今度はデザイナーの意図と異なってしまうというジレンマがある。「弾を撃てないデザインありきのコラボはしない」それが東京マルイのポリシーだと島村氏は語った。

 ユーザーの要望に応えるのも、その方向性を持った実銃をモデルにした商品を出すという応え方をしていく。「もっと軽く射撃を楽しみたい」という要望に応えるのが固定スライド式ガスガンの「コンパクトキャリーガスガン LCP」と「コンパクトキャリーガスガン ボディガード.380」だ。手のひらに収まる様なサイズながら、10発の弾が発射できるこの銃は、サバイバルゲームのサブウェポンの他、屋内での背広姿でのスパイ戦をイメージした戦い方など、新たな遊び方も提案できる商品と言える。

 もちろん物理的に軽くする研究もしている。それは素材を見直し、設計をにつめたりもする。多角的に判断し、ユーザーがワクワクする製品を開発しているからだ。

【コンパクトキャリーガスガン】
発売が予定されているコンパクトキャリーガスガン。左が「LCP」、右が「ボディガード.380」

 劇場アニメ「銀河鉄道999」の「戦士の銃」をモチーフとしたモデルガンをハートフォードが販売し、アニメ/コミック「シティーハンター」のコラボモデルである「コルトパイソン 冴羽獠モデル ガスガン」はタナカワークスが販売している。それぞれのメーカーの特色を活かしたコラボレーションは業界の活性化には良いことである。各メーカーの考えがある中で様々な製品が生まれているというわけだ。

【戦士の銃】
ハートフォードが販売している「銀河鉄道999」の「戦士の銃」をモチーフとしたモデルガン。手に取ると銃のバランスなど、実銃とは異なる独特のロマンでデザインされているのがわかる
【コルトパイソン 冴羽獠モデル ガスガン】
タナカワークスの「コルトパイソン 冴羽獠モデル ガスガン」は劇中のサイレンサー装着を再現。タナカワークスのガスガンの機構「ペガサスシステム」により、きちんとサイレンサーが機能するという、劇中のロマンと、ガスガンとしての実用性を両立している

 東京マルイのポリシーに賛同するクリエイターもいるのではないだろうか。実銃にこだわるクリエイターと、東京マルイのコラボモデルは、今後登場する可能性もあるのではないか? きちんと実銃の理屈にこだわった架空の銃というのは見てみたいという気持ちもある。ワクワクさせられる想像だ。