特集
「エアソフトガン超入門」 第5回:ショットガンならではの“散弾”をエアガンでいかに表現するか? 電子制御など最新技術で挑む電動オートショットガン
2020年12月4日 00:00
- 【電動ショットガン AA-12】
- 2016年発売
- 価格:54,800円(税別)
- 種類:フルオートショットガン
- 全長:839 mm
- 重量:4,200g
- 装弾数:93発
エアソフトガンの多彩な世界を紹介する「エアソフトガン超入門」。これまで私達はエアーコッキング、ガス、電動とエアソフトガンのパワーソースを学び、さらにハンドガン、マシンガン、ライフルと言ったそれぞれの銃の特性をエアソフトガンでどう表現してきたかを見てきた。
今回は東京マルイが「ショットガン」というテーマに対してどう取り組んできたかを紹介していきたい。「ショットガン」は日本では「散弾銃」と呼ばれ、文字通り発射した複数の弾が散らばる銃である。ライフルと比べると有効射程は短くなるが、弾が散らばるため対象に当たりやすく、狩猟やクレー射撃などに多用される他、ゴム弾等の特殊な弾で暴徒鎮圧などに使われる。
ショットガンはアサルトライフルやサブマシンガンより歴史を持つ銃であり、映画やドラマで効果的に使われ、コンピュータゲームでも独特の役割を担う。だからこそエアソフトガンメーカーはショットガンならではの“散らばる弾”を表現したいと挑戦を行なってきた。
今回の教材は「電動ショットガン AA-12」。“オートショットガン”という他に例を見ないユニークな機構を電動で再現したこの東京マルイの商品は、様々な新しいチャレンジが行なわれ、エアソフトガンの可能性を広げたアイテムである。今回はエアソフトガンでショットガンをどう表現してきたかと、「電動ショットガン AA-12」に込められた様々な技術を東京マルイの広報を務めるデカこと島村優氏の解説で紹介していきたい。
これまでの「エアソフトガン超入門」では人気が高く実銃の雰囲気が楽しめる「ガスブローバックハンドガン」を皮切りに、サバイバルゲームで人気の高い「ガスブローバックマシンガン」、「次世代電動ガン」などなど東京マルイの商品を教材に、エアソフトガン開発者達はどんな挑戦をしてきたか? 東京マルイはどんな革新をもたらしてきたかをたっぷり語っている。今回と合わせてぜひお読みいただきたい。
3つの銃身を束ねることでショットガンならではの“散弾”の特性を表現
40代後半の筆者の世代にとって、「ショットガン」は「ワイルド7」、「西部警察」など漫画、ドラマなどでお馴染みだ。特に「西部警察」での渡哲也さんが演じる大門団長が持つスコープが搭載されたカスタムショットガン「レミントンM31」を覚えている人は多いのではないだろうか?
ショットガンはライフルやハンドガンに比べ口径が大きい。ハンドガンで大口径と言われる44口径でも11.6mm。ショットガンは13mm以上の大きさを持っている。これはショットシェルと呼ばれる弾丸(実包)を使うためだ。
通常の弾丸は火薬の詰まった薬莢の先に1発の弾丸だが、ショットシェルはプラスチックケースの中に、散弾という小さな粒の弾が数十から数百個入っており、引き金を引くことでまるでホースから勢いよく水が出るように散弾が散らばって飛んでいくのである。
エアコッキングの銃は何らかのアクションでピストンを動かし空気を圧縮する準備が必要だ。ショットガンは次弾の装填をするために銃身の下のスライドを動かす「ポンプアクション」を必要とする銃があり、エアコッキングガンと非常に相性が良い。「スパス12」や「ベネリM3」、「ウィンチェスターM1912」は実銃さながらのポンプアクションで射撃準備ができる。ちなみに本物のスパス12やベネリM3は後に記載するが、セミオートと手動(ポンプアクション)の切り替えができるコンパーチブルショットガンである
しかしエアソフトガンのショットガンでは“散弾”を表現することが難しかった。薬室に複数のBB弾を入れて1度に発射しても、空気圧に対して複数のBB弾に充分なエネルギーは与えられず、飛距離がかなり落ちてしまう。エアソフトガンでのライフルやマシンガンに対して、ショットガンは使い勝手の悪い商品が多かった。
そんな中、東京マルイが複数発射のショットガンで、エアコッキング方式で発売したのが、1998年4月発売のエアショットガン「スパス12」である。「スパス12」は、3本のバレルと3本のシリンダーを使うことで、いわば「通常のエアソフトガンを3つ束ねる」状態にし、固定ホップと相まって電動ガンにはない遊びの提案を実現したのである。
あくまで“3発同時発射”なのでショットシェルのように多数は弾が飛び出ないが、ちゃんと弾が広がるように設計され、ショットガンならではの“面”での攻撃ができる。この3発同時発射は東京マルイのショットガンへのこだわりで、以降の商品の基本となった。
さらに、他社の商品では箱形のマガジンか本体内蔵式だったBB弾の給弾を、30発入りのリアルさにこだわったショットシェル型マガジンにした点も新しかった。東京マルイは1999年にはメタルストックを装備した「スパス12」と「M3スーパー90」、2000年には、グレネードランチャー型の「M203」、2001年には「M3ショーティー」とエアショットガンを展開していく。ただ、現在では「スパス12メタルストック」、「M203グレネード」は現在絶版となっている。
なお、エアーショットガンのデメリットは、やはり3本のピストンゆえのコッキングの重さ。機構としては3つのエアコッキングガンを束ねているのだから、空気を圧縮するためのポンプアクションを引く力も3倍必要になるのだ。イベントでエアーショットガンの操作のデモンストレーションをやり続けたスタッフが、イベント終了時には片腕がムキムキになったという逸話があるぐらいだ。
とはいえポンプアクションと3発同時発射の面白さは大きな魅力で、フォアグリップを引きながらグリップ側を押す様にすると比較的楽に引けるといったコツもあり、今も3機種が販売されるロングセラーとなっている。
もちろんエアコッキングではなくパワーソースを使えばこの“引きの重さ”は克服できる。2013年、東京マルイはガスショットガン第1弾「M870タクティカル」を発売する。
「M870タクティカル」はエアーショットガンと共通のショットシェル型マガジンを採用し、1本のガスシリンダーから3本のバレルに分岐させて3発同時発射、さらにレバーの切り替えで倍の6発の発射を可能にした。
一部実銃採寸のリアルさに加え、ガス式となった事でコッキングもホンモノ同様軽々引けるようになっている。エアーショットガンからさらに広がる様に設計された固定ホップの角度と相まって、よりショットガンとしてリアルになった「M870」は、2014年に「M870 ブリーチャー」、2016年には「M870 ウッドストック」も発売、さらにブルパップショットガン「KSG」も発売され、こちらもロングセラーとなっている。
そして東京マルイは次なる課題に挑戦する。「フルオートショットガン」である。電動ガンが出始めれば、3発同時発射のBB弾をフルオートで連射できる電動ガンができないだろうか? という期待もユーザーからは上がってくる。だが、ここには様々な技術的な課題が存在し、ユーザーからも「未来永劫実用化しない」とまで言われていたのだ。
……しかし東京マルイは実現した。次ページでは「電動ショットガン AA-12」誕生のストーリーに迫っていきたい。電動ショットガンにはどんな課題があって、東京マルイはそれをどうクリアしていったのだろうか?
(C)TOKYO MARUI Co., Ltd. All rights reserved.
(C)CAPCOM