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「エアソフトガン超入門」 第5回:ショットガンならではの“散弾”をエアガンでいかに表現するか? 電子制御など最新技術で挑む電動オートショットガン

様々な技術で毎秒30発の速射を実現した「電動ショットガン AA-12」

 東京マルイの1998年の「スパス12」を皮切りに、“マルイのショットガンは3発同時発射”という認識がユーザーにも定着したころから、電動ショットガン待望の声は寄せられていたという。当時、実銃の世界ではスパス12などの半自動(セミオート)ショットガンが世界的に流行し、「ターミネーター」などの映画に頻繁に登場していたという時代でもあった。

 半自動ショットガンはオートマチックハンドガンと同じように、射撃によって生じるガス圧を利用して次弾を装填する機構を持っている。つまりトリガーを1回引くと、発射と装填を完了しポンプアクションがない。東京マルイがこれまで発売したガスショットガンでは次弾の装填はポンプアクションなど手動で行なっていた。ガス式のショットガンを発売した時も、これを自動化して欲しいという声があったのだ。

 東京マルイが実現したのはそこからさらにもう一歩進んだ「フルオートショットガン」だった。「AA-12」という銃で、アメリカ合衆国のミリタリー・ポリス・システム(MPS)社が製造しているフルオートショットガンである。引き金を引いたままにすると、まるでアサルトライフルやマシンガンの様に弾が出続けるのだ。AA-12は毎分360発での射撃が可能であり、これはかなり制圧力のある銃と言えるだろう。

 映画「エクスペンダブルズ」はシルヴェスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリスら名だたるアクションスターが出演する豪華な映画だが、この中でAA-12はメンバーの1人の愛銃として活躍する。特に「2」ではシュワルツェネッガー演じるトレンチがAA-12を借りて大暴れをするシーンもある。AA-12が登場するゲーム作品も様々なものがある。

【電動ショットガン AA-12】
フルオートショットガンという他にはあまり見ないコンセプトのAA-12。外見も大きな特徴がある

 当時のマルイが持てる全ての技術を導入し、チャレンジする言わば「F1マシン」を作るという目標を掲げ、フルオートショットガンを電動ガンでいかに表現するか、ここの最大の“壁”となったのが「BB弾の自動装填」である。東京マルイのショットガンであるからこそ「3発同時発射」は譲れない。しかしこの3つの発射口(チャンバー)に同時に、連続でBB弾を装填するという方法をどのようにするかに苦労した。「未来永劫実用化しない」とまで言われる難しい課題だったという。

 しかし東京マルイはこの機構の開発に成功する。2016年1月に発売された「電動ショットガン AA-12」はマガジンの1つの給弾口から3発の銃口への同時装填を実現、モーターの力でシリンダー3本を動かし毎秒10発を3つのチャンバーから、1秒で30発を発射可能という圧倒的連射を実現した。

 ピストンを動かすメカボックスもシリンダーの材質から見直し、ノズルに油がしみ出すことで動作をなめらかにするという“自己潤滑型処理のカシマコート”を施した。そして毎秒30発の連射を制御する為に東京マルイとしては初めてデジタルFET方式のトリガースイッチを採用した。従来のアナログトリガースイッチではこの制御は焼き付きかねないという判断によるものだ。

【「エアソフトガン超入門」 毎秒30発の速射を可能にした「電動ショットガン AA-12」】

 さらに東京マルイのショットガンとしては初めて“可変ホップ”を採用。しかも3本別々に調整できるので、弾を広げたり、収束させることが可能となった。また実銃はフルオートオンリーだが、東京マルイではサバイバルゲームでの使用を考えてあえてセミ/フル切り替え式にした。こうして様々な戦術に対応できる多彩な機能を搭載した「電動ショットガン AA-12」が誕生したのである。

 もう1つ、AA-12といえばドラム状のマガジンだ。実銃のAA-12は通常のボックスマガジンでは8発しか装填できない。このためフルオートで撃つと一瞬で弾切れしてしまう。そこで最大32発の射撃が可能なドラム式マガジンが用意された。「エクスペンダブルズ2」でシュワルツネッガーが使うのはこのドラムマガジンを装備したタイプだ。

 「電動ショットガン AA-12」では通常のボックスマガジンで93発、ドラムマガジンを装備することで3,000発という驚異の装弾数を実現した。3発同時発射するので実際には1,000回の発射であるが、安定した供給を行なうためマガジン内に電動巻き上げ式オート給弾システムを採用。弾をばらまき戦場を制圧できる火力を実現したのだ。

【電動ショットガン AA-12】
ドラムマガジンを装備した「電動ショットガン AA-12」。大迫力の外見である
この給弾口から内部の3つの銃身に動じに弾が装填される
3つのホップを別々に調整可能
ドラムマガジンにはダミーのショットシェルが見れる
蓋を開け、3,000発のBB弾を一気に流し込むことができる

東京マルイオリジナルの「SGR-12」、これこそが新世代のフルオートショットガンだ!

 いくつもの技術的課題を克服し、マシンガンに負けない大火力を実現した「電動ショットガン AA-12」はユーザー達に歓迎され、そのあまりの火力にサバイバルゲームのルールによっては使用が制限される程に存在感を見せた。

 しかし一方で東京マルイの“商品展開”に1つの課題を生じさせた。この機構を活用した他の商品が出せない。「フルオートショットガン」というジャンルは、実銃ではAA-12かこれを元にした「U.S. AS12」くらいしか存在しないのである。

 実銃でフルオートショットガンが流行しなかったのは、フルオートで散弾を発射するというところで人道的な観点からのブレーキや、マガジンの大きさに比べ携行弾薬数が少ないため継続戦闘力の不安、重量など様々な要因で軍で採用されなかったというところが大きい。フルオートショットガンは実銃の世界でマイナーなジャンルなのだ。

 このため東京マルイとしてもこのコンセプトと機構は魅力的なものの、これらを応用しての商品展開がしづらかった事も見据えていた。「F1マシン」を製作しても、ある程度の展開をしないと広がらない。

 そこで東京マルイは“オリジナルの銃”に活路を求める。“独自のガンスミス思考”により、「現代のフルオートショットガン」を考え、オリジナル商品として実現する。M-LOKやシースルーマガジンなどを採用し、オリジナルデザインの「電動ショットガン SGR-12」を2017年8月にリリースした。

 様々な装備を取り付けられるM-LOKにより、ドットサイトやライトなどを取り付けられる拡張性を実現。マガジンを敢えてシースルー構造にしてライフル弾ではなく“ショットシェル”を装備していることをアピールするという“ケレン味”を加えることで、ユニークな銃を生み出した。

【電動ショットガン SGR-12】
2017年8月にリリースした東京マルイオリジナルの「電動ショットガン SGR-12」。価格は69,800円(税別)

 この「SGR-12」プロジェクトには島村氏も開発当初から参加。カプコンの「バイオハザード7 レジデント イービル」とのコラボレーションを平行して企画し、このSGR-12のゲームオリジナルバージョンをカプコンと話し合いながら決め、「トールハンマー〈アルバート.W.モデル 02〉」としてゲーム内での登場を果たした。実銃の存在しない東京マルイオリジナルの架空銃が、「バイオハザード7 レジデント イービル」のDLC「Not A Hero」で活躍するのだ。

 そしてこの「トールハンマー」が改めてエアソフトガンとして発売されることとなる。リアルプロップシリーズ vol.15「トールハンマー〈アルバート.W.モデル 02〉」は、2018年2月に発売された。現実には存在しない銃がゲーム内で登場、そしてゲーム内の姿を再現した特別商品として販売されたのだ。そのシナリオを島村氏が考え実現させた。様々なコラボレーションを行なってきた東京マルイとカプコン「バイオハザード」ならではの、とても楽しい展開である。

【ゲームの世界に現われたSGR-12】
2018年2月に発売された「バイオハザード」コラボレーションモデル「トールハンマー〈アルバート.W.モデル 02〉」。東京マルイオリジナルの銃がゲーム世界で活躍する上、ゲーム専用デザインの特別モデルのエアソフトガンとなった。価格は98,000円(税別)

 最後に筆者の体験によるサバイバルゲームとショットガンの関係を語りたい。筆者は長いことサバイバルゲームで遊んでいる。その中でエアソフトガンにおけるショットガンの歴史も体験してきた。初期のショットガンはカートに複数の弾を込め1本のバレルから撃ち出すものがあったが、飛距離やパワーは低く、気分重視の物であった。そんな状況に登場した「エアショットガン スパス12」などの東京マルイの3バレル+固定ホップのエアコッキングショットガンは、ようやく実戦で活躍できるものになったという印象を持っている。

 90年代、電動ガンのフルオートが席巻するサバイバルゲームシーンでエアコッキングショットガンは、静音性と面制圧を活かしてスナイパーライフルの役割を担ったりといった使われ方が多かった様に思う。その後、主に2000年代以後に増えてきた、連射マガジンやフルオート発射禁止などのルールが出てくる中で、エアコッキングショットガンは電動ガンのセミオート射撃やハンドガンに勝るとも劣らない火力が見直されてきた。

「AA-12はホントは腰だめで撃つのが似合うと思います。映画の影響が大きいですね」と熱く語った島村氏は腰だめでの射撃ポーズを披露してくれた

 物陰から身体を出して射撃し、また隠れるという一連の動作はサバイバルゲームで基本的な事の1つだが、セミオートで正確に狙おうとするとそれだけ全身が射線にさらされる事になる。そこで、しっかり狙わずとも目標に向けて3発、あるいは6発を同時に発射できるショットガンは非常に有効になるのだ。筆者も、2発はバリケードが防いでくれたが1発当たってしまった、という経験を何度かしている。

 結果として、フォールドには電動ガンとショットガンを両方持っていき、セミオート戦などではショットガンを使うゲーマーが少なくないのが2010年代のサバイバルゲームシーンとなっていた。

 そこに投入されたのが東京マルイの「電動ショットガン AA-12」だった。ただでさえ有効なセミオート戦でのショットガンが、さらに速射性をも持ったのだ。その圧倒的火力は、セミオート戦での使用を禁止されるフィールドが出ている事が証明しているだろう。また、通常のフルオートでのゲームでも、毎秒30発という「面の制圧」が可能な電動ショットガンの火力は、重火砲の無いサバイバルゲームで支援火器の役割を果たしている。

 遮蔽物に隠れている場合、通常のフルオート射撃であれば撃たれている反対側からの反撃が可能だが、電動ショットガンのフルオートを撃ち込まれると顔を出す事も出来ない。そんなシチュエーションに追い込まれる事もあるのが、現状サバイバルゲームのトレンドとなっている。ショットガンやライフルなど、自分のこだわりでの選択肢が増えているのが、現代のサバイバルゲームシーンなのだ。