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【年末特集】2023年話題を集めたモデルガン! 歴史に残るモデルアップ「ライトニング」、10年ぶりの再販「M4」、マニアもうなる商品化「コブラ」など

 本稿では2023年にファンの間で話題を集めたモデルガンを取り上げたい。BB弾を発射するエアーソフトガンではなく、外見やギミック、発火によるブローバックなどが楽しめるモデルガンだ。

 近年、エアーソフトガン、モデルガンへの人気が復活しつつある。エアーソフトガンに関しては、ガスブローバックの登場とバリエーションの拡充、電動ガンのクオリティアップなどのほか、サバゲーなどのレジャーが定着しつつあることが理由として挙げられるだろう。

 モデルガンに関しては、映画やドラマに登場する銃を実際に手にしてみたいという理由のほかに、銃そのものの機構やデザインなどに興味がある人、年齢制限のためにエアガンが買えない年少者でもモデルガンなら買えるということで若年層にも愛好者が見られる。2023年は、待望の新製品や、人気モデルが改良されて再販されるなど、モデルガンのファンにとっても嬉しい年となった。

 BB弾を散らかしたくない、火薬の音を出せないなど、住宅事情や家庭の事情もあり、弾も音も出ない、ダミーカートリッジのモデルガンも注目されている。リアルなダミーカートを使用するモデルガンは、精密なディスプレイモデルとしても完成度が高く、所有する満足感を得られるアイテムとして通用する。今年発売された数あるモデルガンの中で、筆者が心に残ったモデルガンをご紹介したい。

ハートフォード(HWS)コルトM1877ライトニング

メーカー:ハートフォード
発売日:11月20日
価格:39,380円
全長:約230mm

 コルトM1877ライトニングは、西部劇でも登場するコルト初のダブル/シングル・アクションリボルバーだ。実銃は1877年から1909年まで合計166,849丁が製造され、ビリー・ザ・キッド、ドク・ホリディなど名だたるガンマンが使用したと言われる。その複雑な機構はアメリカでですらレプリカを作るのは困難と言われたが、ハートフォードでは、3年以上の開発期間をかけ、発火を重視した独自の機構を採用することで「快調発火」と言われるモデル化を実現した。

 ピースメーカー(S.A.A)は、複数のメーカーがモデルガン、エアガンを発売しており、それぞれのモデル化の味を比較するのも楽しいが、ライトニングはこれが最初と言って良いモデル化で、ファンの眼差しも熱い。ユーザー自身で調整するのが当たり前のモデルガンにおいてメーカーが自ら「快調発火」と謳うことからも自信のほどが窺える。

 発売以来メーカー直販分は完売、品切れのショップも出ているようで、出足は好調のようだ。困難なモデル化を実現したというストーリー、快調発火を謳う動作性能、即完売という商品力、いずれの面でも今年ナンバーワンのモデルガンだったのではないだろうか?

【M1877ライトニング】

タニオコバM4 10.5inch ショートモデル

メーカー:タニオコバ
9月29日発売
価格:157,300円
全長:685mm(10.5インチバレル)

 M4は米軍特殊部隊が採用するアサルトカービンとして知られている。ベトナム戦争期に制式採用されたアサルトライフル・M16をベースに改良や派生モデルが開発され、そのバリエーションは数えきれないほど存在する。米軍御用達でもあり、さまざまな映画やドラマでも登場するので日本でも人気が高く、エアガンでも多くのモデルがラインナップされている。

 モデルガンでは、かつてのMGCやマルシンがM16などをモデル化していたが、現在入手できるのはタニオコバのものがほとんど。しかし、生産数が限られており、価格も高額なのでなかなか手にできないのが玉に瑕だ。

 そのレアなタニオコバのM4モデルガンが、2014年以来ほぼ10年ぶりの再販となった。2014年モデルが14.5inchに対して、今回は10.5インチのショートモデルとなり、突入部隊などの特殊部隊が愛用するモデルのイメージで、構えるだけでも隊員の一員になった気になれる。外に持ち出す際にも、ショートモデルはコンパクトで助かる。

 リアルな外観とレシーバー上部に設けられた20mmレイルにはウェポンライトやドットサイトなど、エアガン用、実銃用のアクセサリーを搭載することができる。(一部加工が必要なものあり)マガジンに関しても、MAGPULの樹脂製マガジンをイメージしたモデルガンカート専用設計のものが用意されている。チャージングハンドルを引いてボルトを後退させないとセイフティにセレクターレバーが入らない機構や、フィールドストリッピングなど、実銃同様の機構を楽しめるのもモデルガンならではといえる。

 ブローバックを楽しめるアサルトライフルモデルガンは今や唯一と言って良いタニオコバのM4、その10年ぶりの再販を待ち望んでいた人も多かっただろう。機会があったらアサルトライフルのフルオートを体感してみたいものだ。

【M4 10.5inch ショートモデル】

マルシン ブローニング ハイパワー

メーカー:マルシン
9月19日発売(コマーシャルモデル)
価格:23,800円
全長:約195mm

 ブローニングハイパワーといえば、英国特殊部隊S.A.Sがかつて使用していたり、ビバリーヒルズコップやボディガードといった映画にも多く登場するので知名度は高い。ハイパワーの由来となる複列(ダブルカラム)弾倉を世界で初めて採用し、改良されたショートリコイル機構など、設計者ジョン・ブローニングによる集大成とも言える名作拳銃だ。マルシンでは古くからモデル化されており、PFC、NEW PFCカートリッジでもそれぞれ発売されていた。今回、新しいX-PFCカートリッジ採用のオートマチックモデルガンとなって復活した。

 X-PFCカートリッジは、ケースが真鍮からアルミ製に変更されたほか、より実弾風の外観となった。インナーにも改良が加えられ、プライマーやプラグ(インナー)の形状も変更となり、発火音が大きくできるようになった。あわせて、デトネーターも改良されている。

 これによって動作性と発火音の両立を実現し、モデルガンの醍醐味である大きな発火音と、勢いよく飛んでゆくカートリッジなど爽快感が得られる。撃って楽しいモデルガンとなった。惜しむらくはデトネーターの長さが変更になったことで従来のNEW PFCカートリッジとの互換性が失われたことだろうか。一方で、マルシンではハイパワーとベレッタM92F(M9)など同じ9mmカートリッジ使用の銃でも微妙にカートリッジ規格が異なっていたのが、X-PFC化によって悲願の統一となりそうだ。

 ベレッタM92F(M9)の受注も開始され、来年もマルシンのモデルガンの展開に期待が集まる。

【ブローニング ハイパワー】

タナカ Colt Cobra 2inch 1st issue “R-model” HW

メーカー:タナカ
9月17日発売
価格:38,280円
全長:約175mm

 タナカからコルト ディテクティブ・スペシャルが「R-model」として発売されてモデルガンファンの話題となった。R-modelとは従来の商品からシリンダーやトリガーに改善を加えたモデルで、今後続々とR-model化をして欲しいという期待が高まったのだ。

 特に実銃の世界では形状としてはディテクティブ・スペシャルと同じ型、見た目で、素材・刻印違いのバリエーションであるコブラか、さらにマイナーな存在といえるエアクルーマンも出るのか? という声もあったが、ファンの反応は「ディテクティブ・スペシャルを出したばかりでそんなバリエーションは当面ないだろう」というものも多かった。

 そこに発売の発表があったのが、このコブラと、エアクルーマンだったので「まさか本当に発売するとは思わなかった」と筆者自身も驚いた。

 筆者が特にコブラに注目したのは、R-model 化され動作が確実になっただけでなく、実銃(425g)とほぼ同じ重さの421gを実現したことにある。モデルガンは、実銃に近づけようと表面仕上げを工夫したり、HW樹脂で作りグリップにもウェイトを入れるなど、「重くしよう」という工夫が随所にある。一方で、実銃の世界では少しでも軽くしたいというニーズのもと、軽量化が図られている。

 実銃のコブラも、ディテクティブ・スペシャルを軽量化したいというニーズに応えてフレームやサイドプレートをアルミ合金に置き換えたものだ。グリップも木製からベークライト(樹脂)製となり、「アルミとプラスチックの銃」という次世代銃の先駆けとなった。

 ちなみに、エアクルーマンに関しては実銃の312gより重い450g前後で、装薬を減らしたエアクルーマン専用「M41弾」を再現したカートリッジが付属する。実銃の人気と相まって、日本でもモデル化を待望する声は多かったが、なかなかモデル化される機会がなかった。そんな待望の「リアルなモデルガン」を是非手にとってみてほしい。

【Cobra 2inch 1st issue】
【Aircrewman】

タナカ S&W M66 6inch Combat Magnum Ver.3

メーカー:タナカ
11月9日発売
価格:39,380円
全長:約290mm

 「S&W M66 6inch Combat Magnum Ver.3」はSmith & Wesson M19のステンレスバージョン、M66をモデルガンで再現したもので、6インチバレルの長銃身となっている。Ver.3となり刻印の変更をはじめ、外観形状の見直し、グリップ内にはウエイトも入り、重量はもちろん、構えた時のバランスも向上している。

 ステンレスの金属感を再現するためにメッキが施されているが、今回から腐食に強く、傷にも強いクロームメッキに変更となっている。従来ではメッキモデルは勿体無くて発火できないとか、シリンダーの傷が気になるので動作を躊躇うなどの課題もあったがクロームメッキによってバンバン撃ってお手入れも簡単という、実銃同様のメンテナンス性が確保されたと言える。近年、シルバー(メッキ)モデルの発売がなかったが、これをきっかけに他の銃のシルバーモデルも期待できそうだ。

 永遠のマスターピースコンバットマグナムといえば、M19を思い浮かべるが、シルバーモデルのM66もその美しさでは負けてはいない。特に6インチ銃身のスラッとしたスタイルは非常に官能的だ。

 年の瀬も見えてきた中で発売されたタナカの今後を占う意欲的なモデルだった。

番外編 来年の発火モデルが楽しみな、A!CTION「Mauser C96 Red9」

メーカー:A!CTION
発売日:2024年発売予定
価格:未定
全長:308mm

 「Mauser C96」は1896年からMauser社から販売された大型の自動拳銃で、ドイツ以外にも様々な国で使用された。「Mauser C96 Red9」はドイツ陸軍で採用された9mmパラベラム弾仕様のモデルで、銃把の部分に赤色で「9」と刻印され"Red9"と呼ばれた。モデルガンはこの赤い刻印を再現している。

 「Mauser C96」は2度の大戦を経て多くの国で使われたため、映画などでも登場する機会が多いが、"Red9"はなかなか見る機会がないレアモデルだ。ドイツ陸軍で弾薬の共通化という課題のために製造されたので、実銃の世界でも希少な存在と言える。

 他社から発売されているモデルガンも7.63x25mm仕様のものがほとんどだ。Mauserといえば、「モーゼル」と読むか「マウザー」と読むかで熱い議論が繰り広げられるネタの一つでもある。銃の弾丸や仕様違い、読み方に至るまで、熱く語れる素材であるのも魅力の一つなのだ。

 A!CTION「Mauser C96 Red9」はダミーカートリッジモデルなため発火こそできないものの、リアルなカートリッジ形状が再現され、装填から排莢までの各動作を手動でリアルに再現できる。発火仕様のモデルガンも楽しいが、ダミーカートリッジモデルは別の楽しさがある。

 ダミーカートリッジ仕様のモデルガンは、レアな9mmモデルということもあり、人気を博した。その発火モデルが来年にも発売される予定とのこと。大いに期待したいところだ。

写真は手動でアクションを行うダミーカートリッジモデル。火薬式も近日登場予定だ

 エアソフトガンやモデルガンは、日本独自の文化と言っても良い。その精密さ、リアルさにより、ハリウッド映画などでも日本製のトイガンを使用するシーンがあるという。近年海外製のエアガンやモデルガンも日本で売られるようになってきたが、海外では外観がリアルなおもちゃの銃の販売が難しいという国も多い。

 日本では、銃規制が厳しく実際の銃を手にすることはほぼないと言って良い。だからこそリアルな外観と機構のトイガンで遊べるというのもある。また、銃を使った凄惨な事件や、テロや戦争の脅威が身近にないというのも大きい。逆にいえば、安全で平和だからこそ楽しめる趣味なのだ。

 これからもトイガンを存分に楽しめる世の中であることを祈りたい。