インタビュー
換装と変形、進化する「オルタナティブストライク」企画者インタビュー
狙撃、格闘、全領域戦闘、組み合わせで無限に広がるプレイバリュー
2023年4月3日 00:00
- 【METAL BUILD ディバインストライカー(オルタナティブストライク Ver.)】
- 3月24日より予約受付中
- 8月発送予定
- 価格:13,200円
BANDAI SPIRITSコレクターズ事業部は、「METAL BUILD ディバインストライカー(オルタナティブストライク Ver.)」を8月に発売する。今回受注開始に当たり、この商品の魅力にフォーカスしたインタビューを行った。
「オルタナティブストライク」とは、BANDAI SPIRITSコレクターズ事業部のフィギュアブランド「METAL BUILD」で展開する商品オリジナルの「機動戦士ガンダムSEED」シリーズにおけるMSV(モビルスーツバリエーション)企画となる。アニメ「機動戦士ガンダムSEED」シリーズから設定を発展させ、独自のアプローチで展開していく商品プロジェクトとなっている。
この企画は、2018年に発売された「METAL BUILD エールストライクガンダム」に搭載されている「ストライカーシステム」が起点となる。ストライクガンダムは状況に合わせ様々な装備に換装する「ストライカーシステム」を搭載している。アニメ本編では「エール」、「ソード」、「ランチャー」の3つの「ストライカーパック」が登場したが、後に設定された「ガンダムSEED MSV」でさらに多彩なストライカーパックが登場した。
「オルタナティブストライク」はここから独自アレンジによるストライカーパックシリーズを展開。さらに「METAL BUILD ガンダムアストレイ レッドフレーム改」、「METAL BUILD ガンダムアストレイ ブルーフレームセカンドリバイ」といった新しい“素体”にも対応させ、素体とストライカーパックの様々な組み合わせを可能とする、玩具(フィギュア)ならではの奥深い楽しさを持ったプロジェクトを展開している。
このプロジェクトがスタートしてから4年以上、様々なコンセプトの本体が15商品以上、ストライカーパック単体でも10商品以上が展開している。そしてシリーズはさらに発展しているのだ。
今回、改めて「オルタナティブストライク」のシリーズを振り返り、これまでのプロジェクトの感触、そして今後の展開に繋がる想いを、シリーズ商品の企画を担当した稲吉太郎氏に話を聞いた。
換装の楽しさに加え、連動、多彩な機能と進化を続けたシリーズ
――「METAL BUILDオルタナティブストライク」シリーズのスタートや、企画の経緯を教えてください。
稲吉氏:まず、2015年に「METAL BUILDガンダムSEED ASTRAY」である「METAL BUILD ガンダムアストレイゴールドフレーム天ミナ」、2016年に「METAL BUILD ガンダムアストレイ レッドフレーム」が出て、2018年の「METAL BUILD エールストライクガンダム」が発売されます。
「オルタナティブストライク」という企画が発表されるのは、2019 年のMETAL BUILD INFINITYというイベントで、「METAL BUILD ストライクガンダム」、「METAL BUILD カレトヴルッフ」、「METAL BUILD フライトユニット(オルタナティブストライク Ver.」が発表され、商品プロジェクトも公開されました。
ストライクガンダムは劇中では「エール」、「ソード」、「ランチャー」という3つのストライカーパックが登場しますが、「オルタナティブストライク」ではあえて、ソードとランチャーの前に、「METAL BUILD ガンバレルストライカー」を商品化したのです。
「オルタナティブストライク」の企画は、「METAL BUILDガンダムSEED」を展開するにあたり、アニメ本編である「機動戦士ガンダムSEED」に出てくるストライクガンダムと、外伝である「機動戦士ガンダムSEED ASTRAY」に登場する機体を「METAL BUILD オルタナティブストライク」という企画で連動し、ストライカーパックを両軸で遊べるようにしたら遊びの幅が広がるのではないか? というアイディアがスタートになっています。
もう1つ、私の中に憧れがあって、「スーパーロボット超合金」というシリーズがあったのですが、このシリーズは「クロスオーバージョイント」という共通のジョイントを使っていて、背中の装備を交換したり作品の幅を超えたユーザーがオリジナル装備を追求できる仕掛けがあったんです。色々な装備をくっつけて、自分だけのロボットキャラクターを追求するような、そういう遊びができる商品に憧れていました。
――2019年から4年たっていますが、「オルタナティブストライク」というプロジェクトはオリジナルの玩具企画として、ここまで多くの関連商品が出て広がるというのはあまり例がないのではないですか?
稲吉氏:素体となる商品とストライカーパックという商品数で、バリエーションまで含めると多くの商品が展開できています。決して安価ではない価格帯で、数十商品を展開でき、なおかつユーザー様に愛していただいたシリーズは弊社でもなかなかなかったのではないかと思っています。弊社では「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.」がシリーズでは非常に多いラインナップを展開していますが、「METAL BUILD」というブランド内でここまで濃く展開している商品シリーズはないかな、と自分でも思っています。
デザインとアイディアの多彩さというのもセールスポイントです。「ASTRAY」の系統はメカニックデザイナーの阿久津潤一氏とアストレイズ。「SEED」のストライクの系統はイラストレーターのkoma氏と、ケミカルアタックの坂本洋一氏がデザイン、そしてデコマスラボの広瀨氏に彩色をお願いしているので、それぞれ違ったアプローチで、バラエティ豊かな商品展開を可能としています。
――多くの商品が積み重なって重厚なシリーズとなっている「オルタナティブストライク」ですが、稲吉さんの中で「シリーズのマイルストン」となった商品はありますか?
稲吉氏:「ここまで来たのか」と実感ができたのは「METAL BUILD ストライクノワールガンダム (オルタナティブストライク Ver.)」です。「オルタナティブストライク」をだしていく以上、ストライクのバリエーションでもあり、ストライカーパックとしての複合機能を持つI.W.S.Pの発展型であるノワールストライカーを装備したストライクノワールを、2022年のTAMASHII NATION開催記念商品として発売できたのは感無量です。
もう1つ、「METAL BUILD ストライクルージュ オオトリ装備」が印象に残っています。オオトリは、エール、ソード、ランチャーをすべて付けることで「マキシマムパーフェクトストライク」にすることができます。パーフェクトストライクを超える“全部のせ”は個人的にもすごく実現したかったのです。てんこ盛り装備というのは、男の子ならばみんな憧れると思うんです。それを実現できたのは嬉しかったです。
これだけの装備は、もちろんボリュームも、重量もかなりのものとなる。完成品フォギュアであり、ダイキャストフレームを持つMETAL BUILDだからこそ可能なボリューム感を出せたと思います。また、設定上で「オルタナティブストライク」はジャンク屋のロウ・ギュールと、彼をライバル視するアクタイオン社の技術者ダブルブイのアイディアを具現化するという世界観があります。この世界観があるからこそ様々なアイディアを詰め込めることもできるのかなと思っています。
「マキシマムパーフェクトストライク」は、私の中の夢である“最強ストライク(笑)”を実現できたなと思っています。
――オオトリ装備は全部のせを前提とした設計がされていますが、初期の「METAL BUILD ガンバレルストライカー」や、「METAL BUILD ライトニングストライカー」はあくまで換装の遊びが中心となっていて連携要素は少なく感じます。シリーズでコンセプトが変化していったところはありますか?
稲吉氏:商品を出して、お客様からの反応をいただいて次の商品の仕様や企画に活かしています。商品アンケートやSNS、レビューでも積極的に情報を求めて、お客様の感想を参考にしています。反応があまりなかった要素は反省し、喜んでいただいた部分は強化するようにしています。
デザインはもちろん、ギミック、遊び方……。他の商品との連動要素を強めていった流れも、そこから生まれています。「オルタナティブストライク」はバックパックのストライカージョイントだけでなく、武器の接続のジョイントや、ハードポイントも共通化しています。ストライカーパックの感想だけでなく、武器や装備のアレンジもできるようにしています。そしてやみくもにお客様の声を集めるだけでなく、各デザイナーや、クリエイターの方々、私のやりたいことも盛り込んでお客様に問いかけると言うことは意識しています。
……お客様の声を集めてる上で、「稲吉はすぐに変形させたがる」という指摘は、自分でも自覚していなかったところで、ハッとさせられました。「オルタナティブストライク」のストライカーパックは多くが単体で行動可能な形態を用意していますし、シリーズではないですが先日の「GFFMCガンダムデスサイズヘル(EW版)」も、カトキハジメ氏とじっくり相談した上でオリジナルの飛行形態を盛り込んでいます。「確かにその通りだな」と思いました。
ただ、そういった傾向は「ただ変形させたい」という欲求ではなく、それぞれ理由があるんです。ストライカーパックの自立型への変形は、ディスプレイすることで「支援機」の雰囲気が出ます。主人公を助ける仲間のイメージですね。また、玩具的な意味合いからすれば、「飾る時の面白さ」です。ストライカーパックとしてだとフィギュアの横に飾っててイメージが働かない。独立して飛行する形態だと単体でも見栄えが良くなりますし、他のストライカーを付けたフィギュアの横に置いても違和感がありません。
――そして開発チームの想いとユーザーの声を聞いた上で強化されてきたのが連携要素なのですね?
稲吉氏:連携を明確にセールスポイントとした商品として、「METAL BUILD ガンダムアストレイ レッドドラゴニクス」で提示できたかと思っています。多目的な武器としてまず先行販売している「METAL BUILD カレトヴルッフ オプションセット」から発展したネオカレトヴルッフを複数装備、体中に仕込まれたハードポイントで多彩な連携遊びを可能としています。商品内容での組み替えはもちろん、他の様々な装備を付け替える楽しさを追求しました。「自分流のドラゴニクス」を作ることができるのです。
「レッドドラゴニクス」は他の商品との連携と共に、「1つの商品で色々な遊び方ができる」という遊び方も強く意識しています。1つの商品で様々な遊び方ができる。変形させたり、わざと一部だけを装備して“武器”として使ったり。「METAL BUILD ライトニングストライカー」は装備を展開するとシルエットが大きく変わりますし、「METAL BUILD ローエングリンランチャー」は装備の仕方そのものが複数あります。
最新作である「METAL BUILD ディバインストライカー(オルタナティブストライク Ver.)」は、エールストライカーのような翼が、そのまま巨大なはさみになるなど、シルエットの変化そのものが魅力となっていて、「複数の形態」というコンセプトを明確に押し出した商品と言えます。
そして「METAL BUILD ストライクノワールガンダム(オルタナティブストライク Ver.)」では、連携と複数の遊び方に関して特に意識しました。ストライクノワールという元の設定から翼が剣になったり、全身が武器とも言えるプレイバリューがあるのですが、「METAL BUILD」ではさらに連携に力を入れました。
ストライクノワールの元のデザインでは肩の形状がストライクと異なり、このためソードやランチャーなどを装備できなかったのですが、商品ではこの肩の形をアレンジ、先端を取り外すことで拡張性を持たせています。他のストライカーパックも肩のジョイントを使うので、プレイバリューが広がっています。
――お話を聞いていると改めてラインナップの広がりを実感します。ここまでシリーズが展開できた感想を聞かせてください。
稲吉氏:すごく感慨深いですが、やはりその感慨を実感できているのはお客様からの声です。遊びの幅を拡げることで、私たち開発チームが考えた以上にユニークな遊び方をしてくださっている方も多く、そこで手応えを感じていますね。SNSではカッコイイポーズの写真も多く、こちらとしても勉強になりますし、テンションが上がります。
――商品ラインナップが増えますます魅力を増すシリーズですが、一方で商品は受注販売も多く、これから「オルタナティブストライク」に入門しようとするユーザーにはハードルが高い部分もあります。ただ、「METAL BUILD ストライクガンダム」のバリエーション違いの販売や、「オルタナティブストライク Ver.」といったカラーリングでの展開で、再販的なアプローチも行なっていますね?
稲吉氏:2022年は秋葉原の「魂ネイションズストア」で、「ストライク」。魂ネイション開催記念品で「ストライクノワール」、魂WEB で、「ストライクルージュ」の展開を行い、お客様のタッチポイントを広げ販売を心がけました。
これらの商品を“素体”として、ストライカーパックを購入していただければと思っています。今後もストライカーパックを装備できる機体も増やしていこうと思っています。現在受注中の「METAL BUILD ガンダムアストレイ ゴールドフレーム(オルタナティブストライク Ver.)」もこれまでのストライカーパックを装備できます。
ストライカーパックもソードやランチャー、ライトニングストライカーはバリエーション展開していますし。今後も色々アイディアはあります。
「METAL BUILD」は完成品フィギュアです。箱を開けたらすぐに、彩色済み/完成済みで遊ぶことができます。そして自分ならではの形態や、オリジナルの設定を想像できる。もちろん1つ1つの商品は、独立しても遊んでもらい、色々なポーズや組み替えができるように、プレイバリューも強く意識しています。少ない商品で遊んでも楽しい、いっぱい持っていても楽しい、そういう商品にしたつもりです。
――すこしデザインの話もできればと思います。「METAL BUILD ディバインストライカー」に関しては、私は後期GAT-Xやザムザザー、ゲルズゲーのような、ちょっと生物的な有機的なシルエットと、悪役っぽいデザインの方向性を感じました。「機動戦士ガンダム SEED」シリーズには様々なMSが登場しますが、ZAFTや連合といった勢力でのデザインセンスもありますが、そういった技術の系譜やデザインの違いも意識しているのでしょうか?
稲吉氏:「オルタナティブストライク」は、それぞれの勢力の技術者が勢力を移動したり、技術を融合させたりしているのではないかという考察は、デザインに活かしています。このパーツ、この武器の“初出”はどこなのか? なども考え、メカの設定に深みを加えています。例えば「ライトニングストライカーはオーブ製の技術が強く反映されている」などですね。そこから阿久津さんのオリジナルアイディアなど、色々なアレンジも加えてデザインを行っています。
技術体系やデザインの相似性などはあえて明確にしていない部分も多いです。お客様に様々な想像や、解釈をしてもらいたいと考えています。この武器の発射口はどうしてここについているのか。この武器がストライカーパックについているのはどういう運用方法を想定しているのか、商品の中からそれを考えるのも楽しいですし、組み合わせて自分なりの設定も考えて欲しいと思います。こちらの想いも探っていただき、見つけてもらえれば嬉しいですね。
――ユーザーに対して、これまでとこれからでメッセージをお願いします。
稲吉氏:皆さんがシリーズを支えてくださったおかげで「METAL BUILD オルタナティブストライク」は、ストライクが3種、アストレイはレッド、ブルー、ゴールドで6種類、バリエーションを含めると実は既に本体だけで15種類以上の商品を販売できています。ストライカーパック単体でも10種類以上、高価な商品でここまで幅のある展開ができたのは、今までなかったのではないかと思います。これもお客様が支え、様々な感想を寄せてくださったからこそです。これからも皆様をワクワクさせる商品を生み出していければと思います。
――ありがとうございました。
今回話をして改めて「METAL BUILD オルタナティブストライク」シリーズの面白さを実感できたと思う。これだけのバリエーション展開を数万円の商品群で展開できているところに、現在の玩具/ホビー文化の充実を感じさせる。しかもその価格帯に見合う幅広いプレイバリューと、完成品フィギュアならではの耐久性があるからこそ換装遊び、コレクションも楽しいんだと思う。
個人的には「METAL BUILD ディバインストライカー」の巨大なクローやハサミといった凶暴なデザインアイディアも面白いと思う。全身がトゲトゲのレッドドラゴニクスも従来の機械的なラインとは異なる有機的なものを感じる。デザインや機能でも拡張を見せるシリーズの今後が楽しみだ。
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