インタビュー

次のMETAL BUILDはケンプファー! 「METAL BUILD ケンプファー」企画担当者インタビュー

【METAL BUILD ケンプファー】

2024年2月発送予定

価格:39,600円

 BANDAI SPIRITSコレクターズ事業部は、「METAL BUILD ケンプファー」を2024年2月発送にて魂ウェブ商店で発売する。価格は39,600円。デザインに大胆なアレンジを加え、金属パーツを印象的に使うハイクオリティアクションフィギュア「METAL BUILD(メタルビルド)」シリーズの最新作は「ケンプファー」となった。このチョイスに驚いたファンも多いだろう。

 「METAL BUILD」は今やガンダムシリーズの完成品アクションフィギュアを代表するブランドと言える。「フリーダムガンダム」や「ガンダムエクシア」などをモチーフにパネルラインを加えたりエッジを効かした大胆なアレンジを行い、金属パーツを効果的に使用することでリッチでカッコイイ独特の質感を生み出している。現在そのラインナップは充実しているが、ガンダム系のモチーフが中心である。だからこそケンプファーをモチーフにするところに驚きがある。

大胆なアレンジを加え、金属パーツを印象的に使うハイクオリティアクションフィギュア「METAL BUILD(メタルビルド)」シリーズの最新作は「ケンプファー」となった

 ケンプファーはOVA「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」で初登場したジオン公国軍のMS。敵陣に資材と偽装して運搬、その場での組立が可能な強襲に特化した機体であり、ジャイアント・バズやシュツルム・ファウスト、専用ショットガンなど多数の実弾兵器を装備、大出力のスラスターと全身のバーニアでスピードを活かした攻撃が可能。反面装甲は薄く継戦能力は高くない。攻撃に秀でたMSである。

 「METAL BUILD ケンプファー」はケンプファー本来のデザインを活かしつつ、METAL BUILDらしい複雑で見応えのあるデザイン、関節のみならず様々な部分に金属パーツを使用したリッチな雰囲気のあるカッコイイ商品となっている。今回、本商品の企画担当者である洲崎敦彦氏に話を聞くことができた。METAL BUILDのモチーフにケンプファーを選んだ理由、商品の魅力的なギミック、担当者の込めた想いなどを聞いていきたい。

【METAL BUILD】
「METAL BUILD フリーダムガンダム CONCEPT 2 SNOW SPARKLE Ver.」。11月に発売されるTAMASHII NATION 2023 開催記念商品。価格は30,800円
「METAL BUILD ガンダムデヴァイズエクシア」。2022年10月29日発売、価格は22,000円

装甲の表現や金属の多用などで宇宙世紀のMSをMETAL BUILDで表現する手法を見せる!

――やはり最初にお聞きしたいのは、METAL BUILDの新モチーフとしてケンプファーを選んだ理由です。存在感のある人気の高いMSではありますが、ケンプファーを選んだのはなぜでしょうか? これまでの商品展開だと、「ガンダムとライバル」と言った感じで、ケンプファーならばまずガンダム NT-1 アレックスを商品化してからという流れもあったかもしれませんが、いきなりケンプファーというのは驚きました。

洲崎氏:今までMETAL BUILDは、「ガンダム00」や「ガンダムSEED」系列のラインナップを数多く展開してご好評いただいておりますが、「METAL BUILD Hi-νガンダム」をはじめ、宇宙世紀のMSをモチーフにしてさらに幅広いユーザーに注目してもらいたいと考えました。

ディテールを追加、印象的な部分に金属パーツを使うMETAL BUILDの手法でケンプファーを表現
バーニアカバーを大きく展開、シルエットが変化するアレンジも加えられている

 UC(宇宙世紀)のMSで何がいいか? という話になったとき、ケンプファーが候補に挙がりました。他にもいくつか候補が挙がったのですが、その中でも「お客様が驚いてくれるモチーフは何だろう?」ということを考え、ケンプファーを選びました。

 今回はあえてガンダム系ではないものを選びたかったですね。「今までとは異なるユーザーにも興味を持っていただきたい」その上で「お客様を驚かせたい」というのが第⼀でした。ケンプファーはこれから続くシリーズとか、ライバルとガンダムとかそういったところではなく、METAL BUILDのこれまでのイメージに一風変わった新しさを加えたいという想いがありました。

――試作品の写真を見るとダイキャスト部分が際立ちますね。

洲崎氏:商品として「METAL BUILD ケンプファー」は重たいですよ。やり過ぎたかなと(笑)。装甲で覆う部分が少なくフレームが露出している部分が多いケンプファーですが、関節部分だけでなく、ふんだんにダイキャストパーツを使っています。肩のフレームの丸い部分などもダイキャストです。膝の隙間から見えるフレーム、胸からもチラリとダイキャストがのぞいています。他にも爪先、さらに足裏など、様々な箇所に使っています。

【金属パーツの多用】
肩の丸いパーツはダイキャストとなっている
胸の間のパーツにもダイキャストを使用
膝や肘なども金属で保持力も高い
足の爪や足裏にもダイキャストを使用

――ケンプファーはデザインも魅力的ですが、全身に武器が装着できるといったコンセプトや、チェーンマインのようなケレン味のある装備が魅力ですが、やはりこの"プレイバリュー"はMETAL BUILDのモチーフの理由として大きかったでしょうか?

洲崎氏:スタッフの中で重視したのは機体イメージでした。シャアやアムロのようなパイロットと機体のイメージが密接になっているような華やかな機体というより、もう少し重厚感のある硬派な機体を選びたかったんです。もちろん原作でケンプファーのパイロットとなるミハイル・カミンスキーも魅力的な人物ですが、ケンプファーは他のパイロットが乗る姿も想像ができる。

 ケンプファーは非常に独創的でありつつ、量産機的な運用も想像できる。このようなユーザーが⾃由に活躍を想像できる機体をMETAL BUILDで表現したいと考えました。選定基準には「リアリティ」や「硬派」といったイメージも意識していて、彩色(塗装)もリアルな印象にしています。これまでのMETAL BUILDは劇中のキャラクター性や、パイロットの個性を考えたものでしたが、今回は兵器感を強調してみました。監修していただいたメカデザイナーの出渕裕さんからも「玩具感ではなく、実際のメカのような仕上がりを重視して欲しい」といったコメントをいただいており、そのお言葉で方向性がより明確になりました。

 従来と比較してメタリックカラーを差し色やバーニアなどのメカニカルな部分にとどめ、メインは落ち着いた色で装甲をしっかり⾒せていく色合いにしてくださっています。
装甲の基本色は青ですがもちろん単色では無く、いくつかのトーンの青を盛り込んでいます。これまでもメインとなるカラーを2色や3色で表現していますが、「METAL BUILD ケンプファー」での組み合わせは、より重厚感と、差し色によるメタリックの輝きのメリハリを感じて頂けると思います。

【カラーリングと装甲アレンジ】
リアルなメカ感のあるバーニア
面積の大きな装甲にディテールを加えさらに彩色で情報量を増やしていく
モノアイでの表情付けもポイント

 今回改めて感じたのですが、UC系のMSは装甲が広い。丸い肩や胸、足の装甲など装甲の面積が大きいデザインが多い。この外装が約180㎜の完成品トイとしてのっぺりした退屈な表現にならないようにするにはどうするかを、デザインと彩色で取り組んでいます。

 また、ジオン系MSとしてモノアイによる目線を意識したポージングも楽しんで欲しいと思います。ガンダム系とはまた違ったポーズの幅も楽しんで欲しいですね。モノアイは一度頭のカバーをずらすことで左右に動かせます。モノアイ周辺のデザインも特徴的なので、ここにも注目して欲しいです。

――宇宙世紀のMSのポイントの1つは「外装の広さ」ですか。

洲崎氏:ドムやゲルググのスカートや脛部分もそうですが、UCのMSデザインは大きな1パーツで外装を形成しているデザインが特徴の1つと感じています。ここを製品的に間延びしないようにディテールを検討するのですが、手を加えすぎるとイメージが変わってしまう。甲冑のように体を覆う装甲にどのような情報量を与えるか、ここはケンプファーでトライした部分です。様々なクリエーターの方にお力添えいただいて、今回のアレンジには手応えを感じています。

――出渕さんのメカデザインの特徴である装甲に穴を開ける"ブチ穴"とファンの間で呼ばれる表現も使用していますね。

洲崎氏:ケンプファーは装甲を薄く、機動力を重視した設計と受け取っています。このため放熱用だけではなく、軽量化の意味合いも込めて穴を増やしたデザインにしています。穴からはむき出しのメカが見え、メカとしてのリアリティも強調しています。

 今回、ケンプファーの機動力を意識した演出として「ディスプレイ」にもこだわっています。これまでのMETAL BUILDは機体を傾かせたり、派手なポーズを取らせて遊んでも、ディスプレイ台座に置く場合はバランスを考えてポーズを変えなくてはならなかった。ケンプファーの場合、地面と水平に地上すれすれを飛ぶポーズでディスプレイしたいという声が社内メンバーの間でも聞かれたので、専用のディスプレイ台座も用意しました。装甲を展開しバーニアを全開にして飛ぶイメージで机の上にそのままディスプレイできるようにしています。

【飛行状態でのディスプレイ】
台座は飛行状態でのディスプレイが可能。ハードポイントにより多彩な武器が取り付けられる

――写真を見るとやはりケンプファーはフル装備、様々な武器を体に装着して進軍していくイメージがあります。「METAL BUILD ケンプファー」の場合はこの武器を付けるためのハードポイントを体にくっつけて武器を懸架するイメージでしょうか?

洲崎氏:今回はシュツルムファウストなどを取り付けるハードポイントジョイントを用意して2つ⼀度に付けられるようにもしてみました。このため、最大で4本のシュツルムファウストを同時装備できます。このジョイントは腕に取り付けることも可能で、ヒートホークやシュツルムファウストを懸架できます。これらはifの展開としてユーザーの想像する形でカスタマイズしていただきたくて採用しました。

 背中にはバズーカを取り付けられるユニットを装着できますが、こちらも幾つかの取り付け方法が選べるので砲⼝を前に向けるだけでなく、後ろに向けた形にもできます。また平⼿でショットガンの銃⾝を持ってみたり、多くの武器をどのように持たせるか、そういったところでプレイバリューを感じていただきたいとと考えています。

 ギミックという点では、今回曲がる角も付属します。これは原作でケンプファーが起動したときに折れ曲がっていた角がまっすぐになる場面を再現したギミックです。

――そしてMETAL BUILDオリジナルのチェーンマインを収納できるラックの存在ですね。

洲崎氏:劇中ではトラックに乗せて戦闘中に運ばれるチェーンマインですが、ちゃんと持ち運ぶことができたらどのような装備になるだろう? とデザインしていただいたのがこのチェーンマインラックで、「METAL BUILD ケンプファー」オリジナル装備となります。

 写真では、チェーンマインラックから引きずり出して使用するというイメージでもポーズ付けしてみました。ケンプファーのチェーンマインはこれまでも立体化されてますが、実際に遊ぼうとするとデザイン上、床に長く垂れた形になってしまいがちで、せっかくの見せ場なのでディスプレイにもこだわりたいと思いまして。そこで「METAL BUILD ケンプファー」ではこのラックを使うことでより躍動感のあるポーズ付けが可能となりました。皆さんにも是非手に取っていただきたいです。

【チェーンマインラック】
オリジナル装備としてチェーンマインを収納できるラックを新規デザイン
ラックから引き出す躍動感のあるポーズも

――先ほどの飛行形態用の台座もそうですが、"ディスプレイ"を意識した商品になっていますね?

洲崎氏:そうですね、せっかくのクオリティの完成品なので飾って楽しんでもらおうというのは意識しています。その上での工夫として「指先の表情」もあります。ショットガンの銃身を持って支えたり、チェーンマインを抜き出すためにハンドルを平手に引っかけたり、ディスプレイ映えする手首パーツも意識して設計していただいてます。今回に関しては"躍動感"を特に意識しています。色々なポーズで飾って楽しんで欲しいです。

――様々な仕様が明らかになりましたが、洲崎さんが特にお気に入りのポイントはどこでしょうか?

洲崎氏:今回は「一年戦争のMSならではの装甲や各部の質感」というところを、これまでのMETAL BUILDファンにこそ注⽬していただきたいです。従来のMETAL BUILDガンダムシリーズとは異なり、「METAL BUILD ケンプファー」は全体を覆う広い面積の装甲を質感豊かに仕上げ、その奥にダイキャストが輝いたりしている。フレームや内部機構に金属パーツを使い装甲との質感の違いを印象づけるようにしています。「00」や「SEED」シリーズとは異なる、UCのガンダム系でないMSをモチーフとしたMETAL BUILDはこういった金属パーツの使い方をするんだ、というところを楽しんで欲しいです。

動きのあるポーズを取らせるのが楽しい。前進の塗装やアレンジなど、プラモデル製作の参考になる部分も多いという

 胸部分は装甲から覗くフレーム部分がダイキャストで、まるでフレームすべてが金属かのような演出を盛り込んでいます。装甲で覆われてないフレーム部分で目につくところにダイキャストを使うことで、ダイキャストが多く使われていることを感じて頂けるかと。。ダイキャストを使った新しい演出⼿法を採り入れた商品とも言えると思います。

 塗り分けで個人的に見て頂きたいのがバーニアです。バーニアはアニメ設定の「⼭吹⾊」と出渕さんがイメージとして持っている「カッパー (銅)」のイメージを合わせて塗り分けていただきました。、をカッパーと⼭吹⾊のメタリックカラーを配することで、ケンプファーならではのキャラクター性と、NASAのロケットバーニアをのぞき込んでいるようなリアリティのあるメカニカル感を両立させています。こういった"彩色の深み"は今回特に効果を発揮していると思います。

 こういった微妙な塗り分けや、ダイキャストと樹脂の素材の違いを演出として盛り込む⼿法は、プラモデルを仕上げる方々にも楽しんでいただけると思います。こういった細かい塗装の⼯夫はモデラーの⽅にもチェックして欲しい要素です。「METAL BUILD ケンプファー」は従来のユーザーの皆様とこれまでMETAL BUILDに触れていない方々にも⼿に取って欲しいという想いを込めて作りました。

 ダイキャストも昨今の造形、メッキ技術でディテールを大きく崩さずに商品にすることができます。モールドをしっかり⾒せつつ金属の質感も主張するコストを掛けた製法も採⽤しています。今回、ダイキャストと塗装の表現も大きなテーマなので、写真の試作品の時点で、商品と同じようにダイキャスト部品を使っており、試作品の質感は実際に生産される製品と近いものとなっています。

――バーニアの展開ギミックは非常に凝っていますね。

洲崎氏:バーニアのギミックはアレンジがわかりやすい部分ですね。特攻するときには装甲を⼤きく展開しバーニアを露出して推力を全開にして進むイメージで、⽔平状態のディスプレイと相性が良いギミックとなっています。

 しかし当然、オリジナルデザインが好きという人のことも考え、あえて装甲などを動かさないという遊び方を想定しています。ギミックを動かさなければシルエットも元のケンプファー寄りになる。アレンジとオリジナルをユーザーが選択できることにも気を付けました。

 今回強く意識したのは「UCのMSをどうMETAL BUILDにするのか」というアプローチの⽅法論です。⼤きな外装へのディテールの⼊れ⽅もそうですが、アレンジの振れ幅やオリジナルシルエットとのバランスなど、ユーザーさんがどう受け取ってくれるか、色々な意図を盛り込んだ商品となります。1つ新しい答えが出せたのではないか、そう考えて企画しています。

【バーニア展開】
こちらはバーニアのアレンジギミックを作動させてない状態。ケンプファーのオリジナルのシルエットを意識している
バニアカバーを跳ね上げ、機動力を強化したように見えるシルエットに。元のケンプファーから大きくアレンジした形状になる。この姿はユーザーの好みで選択できる

――他にはどんなギミックを搭載していますか?

洲崎氏:太ももの部分のバーニアの可動ギミックはオリジナルデザインそのままだと、膝を曲げるとバーニアに⼲渉してしまうので。ここでバーニアを上に逃がすように可動させ、より深く膝を曲げられるようにしています。

 商品写真に関してはいくつか原作のケンプファーがとらないようなポーズも取り入れています。チェーンマインをラックから引き抜くポーズもそうですし、バーニアを動かして膝を曲げるポーズなどMETAL BUILDだからできるポーズを⼊れているのでこういった遊びも自由に楽しんでいただきたいです。ビーム・サーベルを逆⼿持ちしているポーズは、「こう戦っていればアレックスに勝ったかも︖」というイメージを個人的に盛り込んでみました(笑)。

 アレンジに関してはバーニアの可動や、装甲の展開など、お客様に"幅"を選択してもらおうと考えています。装甲展開などは意図的にしなければ、シルエットはかなりオーソドックスなケンプファーに近づけています。アレンジはあまり好きじゃないという人はギミックをあえて使わなければ、原作に近いシルエットで商品を楽しめる。そういう選択肢も意識しました。

 おかげさまでMETAL BUILDは幅広いユーザーの皆さんに楽しんでいただけております。だからこそ遊び心を全力で盛り込む部分と、オリジナルをリスペクトした部分、どちらも大事にし、お客様の遊びの幅を拡げたいと私は考えています。原作風が好きな人はアレンジギミックを活用しなければシルエットも含め原作的なディスプレイができる。一方でギミックをガチャガチャ動かしてMETAL BUILDとしてのケンプファーを楽しんでもらう、どちらの楽しみ方も大事にしたいと思っています。

――最後にユーザーへのメッセージをお願いします。

洲崎氏:「METAL BUILD ケンプファー」はこれまでのMETAL BUILDとはひと味違うモチーフ、アレンジの方向性となっています。METAL BUILDを触っていなかった方にもこの機会に興味を持っていただければと思います。我々がUCのMS、そしてガンダムではない機体をMETAL BUILDにするとどうなるか、その方向性や方法論、私たちがどうイメージを持っているかぜひ楽しんでください。

――ありがとうございました。

新しいMETAL BUILDとしてこれからを期待させる商品だ

 やはり今回は「ケンプファーをMETAL BUILDで!?」という驚きが大きい。その上でガンダムではない宇宙世紀のMSをMETAL BUILDで表現するという新しい方向性は大きく期待させられる。「Zガンダム」や、「ZZガンダム」のMS、さらには「Vガンダム」のMSなど、様々なモチーフを取り上げてこちらを驚かせて欲しい。

 まずは「METAL BUILD ケンプファー」発表のユーザーの反応と、実際の商品の魅力を見た上ではあるが、今後どのような動きを見せてくれるかはとても興味がある。今後の情報も楽しみにしたい。