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「2021上期おもちゃのトレンド」記者発表会、「ジグソーパズル」が前年比150%の好調!
コロナ禍だからこそ求められる「玩具の使命」
2021年6月15日 22:50
- 6月15日発表
一般社団法人日本玩具協会はが東京国際フォーラムにて開催した「2021上期おもちゃのトレンド」記者発表会では、今年のおもちゃ業界の動向、ユーザーの傾向などの分析がなされた。
最も大きなキーワードは「コロナ禍」である。新型コロナウィルス蔓延防止のための官民の様々な施策により、テレワーク、外出や旅行の自粛などが増え、人々の生活が一変した。玩具業界もその影響を大きく受けた。その中で問われたのは「玩具の使命」だという。玩具業界は現状をどう捉え、自分たちの"役割"をどう考えているのか? 本稿では発表会で行なわれた分析と、玩具業界の取り組みを取り上げていきたい。
「玩具は生活必需品である」。ストレスの高まる現在だからこそ求められる玩具の役割
発表会では日本玩具協会見本市専門委員の伊吹文昭氏により、市場の分析が発表された。2020年度の日本国内のおもちゃ市場の規模は8,268億円、前年比で101.5%と、好評であった。玩具業界は2014年からずっと8、000億円を超える規模を維持しているが、昨年はその内容が大きく変化しているという。
2020年度特に伸びたのが「ジグソーパズル」。前年比158.7%だという。また、「スポーツトイ」の躍進も130%と大きかった。これは“お家需要”といえる家の中で遊べる玩具としてジグソーパズルの需要が高まったこと。旅行ができない、家にいることを求められる中で、体を動かす玩具の需要が高まったという見方ができる。
また昨今好調な「ハイテク系トレンドトイ」も好評だ。ハイテク系トレンドトイは、タブレットやPCの形をした玩具で、カメラ機能や、キーボード配列もJIS配列など本格的な機能を持っている。このジャンルの玩具の需要は「テレワークでお父さんやお母さんが実際にPCやタブレットを扱うことを目にすることが多くなり、より欲しくなった」という声が聞かれているとのこと。子供を取り巻く家庭環境の変化が、玩具を求める方向性に変化を加えているとのことだ。
コロナ禍で玩具に求められたのは「よりよい家庭環境への必需品」と言う側面だと中村氏は語った。これまで同様「子供の成長のための必需品」であるのはもちろんだが、お父さん、お母さんと家の中で一緒に過ごすことが長くなる上、外に出れない、自由に遊びに行けないというストレスもたまる。また、両親の仕事の邪魔をしてはいけないと言うことも求められる。
学校へ行く時間が短くなったり、家庭内学習の重要性もこれまで以上に大きくなる。こういうとき楽しく学習ができる、キャラクターが勉強を後押ししてくれる、ハイテク系トレンドトイや知育玩具、昨今の流行である「プログラミングトイ」も重要になってくる。親も子供に「勉強の助けになってほしい」と言うことで、学習系の玩具は需要がより高まっているという。
また今年から「日本おもちゃ大賞2021」には、「男の子向け玩具部門」、「女の子向け玩具部門」がなくなったが、現在の玩具業界を牽引する大きなキャラクター「鬼滅の刃」、「すみっコぐらし」は男女だけでなく、小さな子供から大人まで人気が高く、年齢のボーダレス、ジェンダーニュートラルの傾向が顕著になっているという。「コロナ禍によるお家需要」という側面は間違いなくあるが、ストレスの緩和、新たなニーズ、ターゲットの拡大など様々なプラス要因と、「玩具の役割、使命の大きさ」を実感した年だったと中村氏は語った。
日本玩具協会会長の富山完太郎氏は、「玩具は生活必需品ではないのか。確かに玩具は食料品のように緊急性が高いものではないかもしれません。それでも子供たちにとって、玩具が必需品ではない、と言うことは、玩具業界の我々にとって、どうしても受け入れられません。遊びは紀元前の昔から人々の生活の当たり前の要素です。今のような平常ではない、有事の時期だからこそ、心の安定、人とのつながりを担う玩具の存在が、発揮されるのではないかと、私は信じています」と語った。
中村氏の分析、富山氏の言葉は強く共感するものがあった。現在のコロナ禍により大人はもちろん、子供も目の前のことだけではなく、今後の生活といった未来にも不安を覚えている。様々なところでストレスが増大していると言うことを誰もが感じているだろう。そういった中で"玩具によって楽しさ"を提示し、社会に貢献していくか、メーカーや開発者たちも様々な方法で楽しさへの努力を重ねていることが実感できた発表会だった。